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第八章
汚れた魔力の天女を止めて10
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「カレン!」
「お兄さん! 大丈夫なのか?」
呆然と立ち尽くすカレンの肩に圭が触れた。
カレンが振り返ると苦しんでいたみんなが起き上がりつつあった。
「とりあえず汚れた魔力の影響はもうなさそうだ」
さらに外に目を向けるとクワインデカルトが血を吐き出して倒れている。
チュビダスの放出した汚れた魔力にクワインデカルトですら耐えられなかったのである。
「……空も晴れてる」
黒い霧が晴れたからだけでなく空も黒い雲がなくなっていて青い空が見えていた。
カレンが盾に込めていた魔力を弱めて盾の効果範囲を狭めてももう苦しくはならない。
「よく……やったな」
「エスギス!」
胸を貫かれ剣も盾も落としてただエスギスは立ち尽くしていた。
ダメージが大きすぎてもう一歩も動けないでいるのだ。
みんなの肌は黒さが抜けて元に戻っていたが深く汚れた魔力に侵食されたエスギスはもう元には戻らなかった。
「カレン……といったな。盾を……」
「これを?」
カレンがエスギスに盾を差し出す。
「エスギス!」
ゆっくりと手を伸ばしたエスギスがカレンの盾に触れた瞬間ジュッと音がしてエスギスの手から灰色の煙が上がる。
一瞬痛みに顔を歪めたエスギスだったけれど縦から手を離すことはない。
「あいつらの卑怯な策略にハマって……私の姪は怖い思いをしただろう」
姪とはイスギスの娘のことである。
イスギスの娘が攫われたので仕方なくイスギスは盾が力を発揮しないように封印を施したのだ。
「イスギスに伝えてくれ。私は怒ってもいないし、恨んでもいないと。むしろ巻き込んでしまって申し訳ないと」
戦いの時と打って変わってエスギスの目はとても穏やかだった。
「ゲホッ! ……私は最後まで戦った。カレン、私のことを楽にしてくれ」
エスギスが再び血を吐いた。
胸を貫かれて無事な訳がない。
このまま何もしなくても死を迎えるだろうが、汚れた魔力でじわりと死んでいくぐらいなら潔く最後を迎えたかった。
「わ、私が?」
「そうだ。イスギスの盾を受け継いだ者よ。私を倒して終わらせてくれ。私を倒して……一歩でも高く先に行くといい。私の世界は救われなかった。でもまだあなたの世界は助けられる」
エスギスは穏やかに笑みを浮かべて真っ直ぐにカレンを見つめる。
けれどカレンは動揺に瞳が揺れていた。
「あなたがイスギスの盾を手にしたのはきっと偶然じゃない。運命なのよ。……あなたはどこか私やイスギスに似ている。強くなるためにためらいは捨てなさい」
「カレン、大丈夫か?」
「…………うん。私、やるよ」
覚悟を決めたカレンが落ちていたイスギスの短剣を拾う。
「できるなら顔はやめてちょうだい。こんなんでも女の子だから」
「分かってる。いくよ」
「いつでもどうぞ」
まるで相手を抱きしめるかのようにエスギスは手を広げた。
「はああああっ!」
カレンは短剣で胸をひと刺しした。
短剣はエスギスの心臓に突き刺さり、エスギスの目が大きく見開かれた。
「これは……」
「カレン!」
エスギスの体から灰色の煙が噴き出してカレンとエスギスが煙に覆われる。
「…………ありがとう」
灰色の煙の中、エスギスの肌が白く戻っていく。
イスギスの短剣の力によって体の中から汚れた魔力が体外に押し出されているのだ。
体から汚れた魔力が出ていくのと同時に力も入らなくなる。
エスギスはカレンにもたれかかるように倒れてきた。
そして最後に一言感謝を述べるとエスギスの瞳は光を失っていき、目を閉じてゆっくりと地面に伏していった。
「はっ!」
風馬が刀を振って風を起こして灰色の煙を吹き飛ばす。
「カレン……泣いてるのか」
灰色の煙が吹き飛ばされて、そこにはただ立ち尽くしてあるカレンと元の肌色に戻り穏やかな顔をして眠るように地面に倒れるエスギスの姿があった。
圭がカレンに近寄ってみるとカレンは涙を流していた。
特にエスギスと関係を築いたわけではない。
それでも悲しさが胸に広がっていた。
「なんなんだろうな、このゲームってやつ。何が楽しんだか私にはわかんねぇよ」
「……俺にも分からない。でもこんなゲームに負けないようにしよう」
「ああ……絶対負けたくないな」
カレンは涙を腕で拭った。
「ハンカチ使うか?」
「……あんがと」
圭がハンカチをカレンに渡すとカレンは涙で濡れた顔を拭く。
「……なんだ?」
急に地面が揺れ出した。
圭はバランスを崩して地面に手をつき、半分崩れた城がガラガラと崩壊していく。
「いかん! ゲートの消滅が始まった! みんな、早く外に出るぞ!」
ボスが倒されたゲートは一定時間経つと閉じてしまう。
普通はこんなに早くゲートが閉じるものではないのだが時に早く閉じるものもある。
閉じたゲートの中にいた人がどうなるのか。
帰ってきた人はいないので誰にも分からない。
「走れ!」
気を失ったままのD級覚醒者を風馬などが抱えてゲートまで走る。
揺れのせいで家が壊れ、道が歪んでいく。
世界の終わりのような光景。
全てが崩れていく世界を背に圭たちは必死で走っていく。
「飛び込むんだ!」
ゲートが見えてきた。
しかし足元まで崩れてきて走りにくく、圭たちは思い切り地面を蹴ってゲートに飛び込んだ。
「お兄さん! 大丈夫なのか?」
呆然と立ち尽くすカレンの肩に圭が触れた。
カレンが振り返ると苦しんでいたみんなが起き上がりつつあった。
「とりあえず汚れた魔力の影響はもうなさそうだ」
さらに外に目を向けるとクワインデカルトが血を吐き出して倒れている。
チュビダスの放出した汚れた魔力にクワインデカルトですら耐えられなかったのである。
「……空も晴れてる」
黒い霧が晴れたからだけでなく空も黒い雲がなくなっていて青い空が見えていた。
カレンが盾に込めていた魔力を弱めて盾の効果範囲を狭めてももう苦しくはならない。
「よく……やったな」
「エスギス!」
胸を貫かれ剣も盾も落としてただエスギスは立ち尽くしていた。
ダメージが大きすぎてもう一歩も動けないでいるのだ。
みんなの肌は黒さが抜けて元に戻っていたが深く汚れた魔力に侵食されたエスギスはもう元には戻らなかった。
「カレン……といったな。盾を……」
「これを?」
カレンがエスギスに盾を差し出す。
「エスギス!」
ゆっくりと手を伸ばしたエスギスがカレンの盾に触れた瞬間ジュッと音がしてエスギスの手から灰色の煙が上がる。
一瞬痛みに顔を歪めたエスギスだったけれど縦から手を離すことはない。
「あいつらの卑怯な策略にハマって……私の姪は怖い思いをしただろう」
姪とはイスギスの娘のことである。
イスギスの娘が攫われたので仕方なくイスギスは盾が力を発揮しないように封印を施したのだ。
「イスギスに伝えてくれ。私は怒ってもいないし、恨んでもいないと。むしろ巻き込んでしまって申し訳ないと」
戦いの時と打って変わってエスギスの目はとても穏やかだった。
「ゲホッ! ……私は最後まで戦った。カレン、私のことを楽にしてくれ」
エスギスが再び血を吐いた。
胸を貫かれて無事な訳がない。
このまま何もしなくても死を迎えるだろうが、汚れた魔力でじわりと死んでいくぐらいなら潔く最後を迎えたかった。
「わ、私が?」
「そうだ。イスギスの盾を受け継いだ者よ。私を倒して終わらせてくれ。私を倒して……一歩でも高く先に行くといい。私の世界は救われなかった。でもまだあなたの世界は助けられる」
エスギスは穏やかに笑みを浮かべて真っ直ぐにカレンを見つめる。
けれどカレンは動揺に瞳が揺れていた。
「あなたがイスギスの盾を手にしたのはきっと偶然じゃない。運命なのよ。……あなたはどこか私やイスギスに似ている。強くなるためにためらいは捨てなさい」
「カレン、大丈夫か?」
「…………うん。私、やるよ」
覚悟を決めたカレンが落ちていたイスギスの短剣を拾う。
「できるなら顔はやめてちょうだい。こんなんでも女の子だから」
「分かってる。いくよ」
「いつでもどうぞ」
まるで相手を抱きしめるかのようにエスギスは手を広げた。
「はああああっ!」
カレンは短剣で胸をひと刺しした。
短剣はエスギスの心臓に突き刺さり、エスギスの目が大きく見開かれた。
「これは……」
「カレン!」
エスギスの体から灰色の煙が噴き出してカレンとエスギスが煙に覆われる。
「…………ありがとう」
灰色の煙の中、エスギスの肌が白く戻っていく。
イスギスの短剣の力によって体の中から汚れた魔力が体外に押し出されているのだ。
体から汚れた魔力が出ていくのと同時に力も入らなくなる。
エスギスはカレンにもたれかかるように倒れてきた。
そして最後に一言感謝を述べるとエスギスの瞳は光を失っていき、目を閉じてゆっくりと地面に伏していった。
「はっ!」
風馬が刀を振って風を起こして灰色の煙を吹き飛ばす。
「カレン……泣いてるのか」
灰色の煙が吹き飛ばされて、そこにはただ立ち尽くしてあるカレンと元の肌色に戻り穏やかな顔をして眠るように地面に倒れるエスギスの姿があった。
圭がカレンに近寄ってみるとカレンは涙を流していた。
特にエスギスと関係を築いたわけではない。
それでも悲しさが胸に広がっていた。
「なんなんだろうな、このゲームってやつ。何が楽しんだか私にはわかんねぇよ」
「……俺にも分からない。でもこんなゲームに負けないようにしよう」
「ああ……絶対負けたくないな」
カレンは涙を腕で拭った。
「ハンカチ使うか?」
「……あんがと」
圭がハンカチをカレンに渡すとカレンは涙で濡れた顔を拭く。
「……なんだ?」
急に地面が揺れ出した。
圭はバランスを崩して地面に手をつき、半分崩れた城がガラガラと崩壊していく。
「いかん! ゲートの消滅が始まった! みんな、早く外に出るぞ!」
ボスが倒されたゲートは一定時間経つと閉じてしまう。
普通はこんなに早くゲートが閉じるものではないのだが時に早く閉じるものもある。
閉じたゲートの中にいた人がどうなるのか。
帰ってきた人はいないので誰にも分からない。
「走れ!」
気を失ったままのD級覚醒者を風馬などが抱えてゲートまで走る。
揺れのせいで家が壊れ、道が歪んでいく。
世界の終わりのような光景。
全てが崩れていく世界を背に圭たちは必死で走っていく。
「飛び込むんだ!」
ゲートが見えてきた。
しかし足元まで崩れてきて走りにくく、圭たちは思い切り地面を蹴ってゲートに飛び込んだ。
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