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第八章

潜入、暴食の悪魔の城8

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「……一度戻ろう」

 リスクが大きいからとこのまま他の人を見捨てることはできないが、助け出した人の数も多く守るのにも負担が大きくなってしまった。
 ここは一般人を引き連れて進むのではなく、助け出した人たちを安全なところに置いてから向かう方がいい。

 圭たちは階段の前で元来た道を引き返す。

「かなみ!」

「あら、圭君。みんな助け出せたのかしら?」
 
 一応見逃しがないかと檻を確認しながら戻ってきた。
 遠くに船の船内が見える入り口が見えてきて、その前にかなみはいた。

 頭から血を流しているけれど大きな怪我はないようだ。
 対してかなみの水で拘束されているページアルはひどい状態だった。

「くく……人間を助け出してきたのですか」

「この状態で生きてるのか?」

 圭は思わず顔をしかめる。
 ページアルは右手右足が無くなっていて首が逆を向いている。

 にも関わらず生きているのだ。

「薫君、かなみを治してあげて」

「分かりました」

 薫がかなみの治療を始める。

「こいつしぶとくて。さすが悪魔ってところね」

 かなみは深いため息をつく。
 本当なら怪我もなくスマートにページアルを倒して圭のところに颯爽と向かうはずだったのに手足が無くとも、首を逆にねじ曲げようとも死なないページアルに反撃を許してしまった。

「それで、全員助け出せたの?」

「まだ分からない」

 階段の奥に何があるのか分かっていない。
 連れて行かれた人がいるという情報もあるしまだ残された人がいる可能性もある。

「とりあえず助けた人を一度外に出そうと思ったんだ」

「賢い判断ね」

 覚醒者とモンスターの戦いに一般人は邪魔にしかならない。
 自分達の倍の数も一般人がいては戦いのリスクにしかならないので無理をせず一度戻るという判断は正しいとかなみは思う。

「ふふふ……主の城から物を盗んで無事に住むだなどと思わないでください」

「こいつはどうしようかしら? 首を捻じ切ったら大人しくなってくれるかな?」

 もはや抵抗もできないのに口だけ出してくるページアルにかなりは苛立つ。

「……カレン」

「そうだな」

 ニヤリと笑ってカレンが前に出る。
 手にはイスギスの作ったメイス。

「そ、それは……」

 メイスを受け止めて手が焼けたことはページアルの記憶にも新しい。
 悪魔にとって神の魔を払う浄化の力は天敵である。

「そいや!」

「ぐあああああっ!」

 カレンがページアルをメイスで殴りつける。
 ジュッと焼けるような音がしてページアルが苦痛に叫び声を上げた。

「効きそうだな」

 やはりカレンのメイスはページアルに対して大きく有効なようだった。

「俺たちはこの間に出よう」

 カレンがページアル退治をしている間に圭は一般人を逃そうと思った。

「ケイ」

「……あなたは?」

 ドアを出て誰もいないことを確認して一般の人に出てもらう。
 外まで送るか、それとも一般招待客の会場に紛れ込ませてまた牢屋に戻るか悩んでいると誰かが圭たちの方に走ってきた。

 悪魔教かと思ったけれど武器も持っていない外国人っぽい女性だった。
 圭は名前を呼ばれて知り合いかと首を傾げるけれど女性の顔には見覚えもない。

「ワタシ……んん、ワタシよ」

「その声……ユファか?」

 一度咳払いすると女性の声が変わった。
 ルシファーの契約者の一人で今回ダンテと共に船に潜入しているはずのユファだった。

「あら、その子誰かしら?」

 ページアルを倒し終えたカレンとかなみも外に出てきた。

「この人は協力者の一人です」

「そうなの。よろしくね」

 また女。
 そう思いながらかなみは圭の腕に自分の腕を絡ませてユファを牽制する。

[よろしく、おばさん]

「あなた今なんて言ったかしら?」

「……ニホンゴ難しい」

[私が英語分からないと思って?]

「エイゴも難しい」

 かなみとユファの間に火花が散る。

「ま、まあまあ! 今はそんなことしてる暇じゃないだろ? ユファ、何かあったのか?」

「ハヤクここから逃げたほうがいい」

「なんでだ?」

「うわっ!?」

「助かったよ、ありがとぅ、カレン」

 船が大きく揺れる。
 バランスを崩した夜滝をカレンがサッと支える。

「ダンテ戦ってる」

 ユファの話を聞くに異端審問官が入ってきてアザードのことを悪魔だと言って攻撃し始めたらしい。
 さらには大人しく機会をうかがっていたダンテも悪魔の契約者だとバレてしまい、ダンテ、アザード、異端審問官で戦いが起きているようだった。

「こんなフネカンタンに壊れる」

 異端審問官もかなり強い人らしくA級覚醒者クラスのようで、A級覚醒者三人による戦いが船の中で繰り広げられている。
 他にも異端審問官と悪魔教の戦いが続いていていかに豪華客船といえど戦いに耐え切れなさそうだった。

 圭たちが危ないかもしれない。
 そう思ったユファは圭たちを逃がそうと船の中を探していたのである。

「しかしまだ中に人がいるかも……」

「やめておけ」

「えっ、何それ?」

 ユファのドレスの中から女性の人形が顔を出してかなみは驚いた。

「私はルシファーだ。まあそんなことどうでもいい。あれば魔界への入り口だ」

 顔を出した人形はルシファーであった。
 ダンテではなくユファの方についてきたようである。

「魔界への入り口?」

 なんとなくそんな予感はしていたと圭は思う。
 あの中は暴食の魔王の城だとページアルは言っていた。
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