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第八章
暴食の悪魔1
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「うわっ!?」
見慣れない表示に思わず立ち止まった圭は船が爆発を起こして身構える。
「圭君!」
大きな船の破片が飛んできた。
避けたら他の人に当たってしまうかもしれないと剣に手をかけた瞬間船の破片が水に包まれて止まった。
「かなみ!」
振り返るとドレスではなく着替えて装備に身を包んだかなみがいた。
「間に合ってよかったわ」
「その格好……」
「こんなこともあるかと思って近くに人を待機させていたの」
圭たちのようにかなみは装備を持ち込めない。
そのためにかなみは船の近くに自分の装備を積んだ車を待機させていたのである。
船を降りてすぐに圭たちと別れたのも装備を取りに行くためだった。
「あれは……何かしら?」
爆発した船から二人の人と大きな何かが飛び出してきた。
「……デカいハエか?」
飛び出してきた人のうちの一人はダンテだった。
もう一人も覚醒者のようで剣と盾を持った外国人っぽい人である。
そして大きな何かは巨大なハエのようなモンスターだった。
「きゃああああっ! モンスターよ!」
「化け物だ!」
「逃げろ!」
巨大なハエに気づいた人たちに混乱が広がる。
船から逃げ出して何とか少し落ち着いた人たちが再び我先にと逃げようとする。
『ベルゼブブ
暴食を司る魔界の魔王の一柱。
ーー以下閲覧制限ーー』
「あれは魔王です」
「魔王……? 悪魔の親玉ってことかしら?」
「そうですね」
距離はあるものの真実の目で確認することができた。
巨大なハエの正体は魔王ベルゼブブであった。
真実の目では閲覧制限なるものがあってほとんど情報を得られないが魔王であるということだけは確かめられた。
「忌まわしき神の犬……それにルシファーめ!」
ベルゼブブが怒りの声を上げるとそれだけで船の窓にヒビが走る。
「ふん、よほどあの契約者が大事だったようね」
ユファの肩に乗るルシファーがベルゼブブのことを鼻で笑った。
「どういうことですか?」
「この世界に姿を現すということは簡単なことではない。私ですらこうして人形に乗り移るのがせいぜいだ。他の悪魔だって契約者の体と命を使って短い間意識だけ送るのが関の山だ」
圭はパッと以前に戦ったマティオのことを思い出した。
悪魔がマティオの中に乗り移って驚異的な力を発揮していた。
あのような悪魔が乗り移る行為が基本的には限界ともいえるところだった。
しかし今は魔王たるベルゼブブ本体が降臨している。
相当無茶なことをしているとルシファーは思う。
「アザードとかいう契約者を守りたいのだな」
ここまでするということはアザードが相当追い詰められ、ベルゼブブがアザードのことを守ろうと姿を現したのだとルシファーは説明した。
「ダンテは大丈夫なのか?」
「危ないだろうな」
「そんな悠長な……」
「私にできるなどない。今ここに降臨してもいいが周囲の一般人は皆死んでしまうぞ」
「じゃあどうしたら……」
「時間を稼げばいい」
「時間を?」
「そう長いこと降臨はしていられない。ダンテもすぐにはやられないだろうし時間が過ぎればやつは帰るしかなくなるだろうな」
降臨するのにも大きな力を使う。
いかに魔王であっても長時間降臨し続けることはできない。
何とか時間稼げばベルゼブブは帰るだろうというのがルシファーの見立てである。
「ただお主らはさっさと逃げたほうがいいな。やつは暴食を冠する悪魔。周りのものを食らって力を補充するやもしれん」
「……結局やることに変わりはないってことか」
元より逃げようとしていた。
ベルゼブブに食われて力にならないようにしなければいけないのなら逃げることに変わりない。
「まあダンテを信じおれ。もう一人も強い力を持っているしもしかしたらベルゼブブを倒せるやもしれん」
本体とはいうものの本物の本体ではない。
真の本体は魔界にいて、今いるベルゼブブはこちらの世界の物質を使って作られた仮初の肉体を使っているのだ。
主にアザードの体を使っているのだろうがベルゼブブの力を全て受けるにはどうしても不十分である。
ならば魔界におけるベルゼブブの本気とは到底かけ離れた力しか出せない。
それでも強いことに変わりないがダンテならばやってのけるかもしれないとルシファーはニヤリと笑う。
「とりあえず俺たちは逃げよう。このままここにいるのはまずい」
助けられないのならせめて戦うダンテの邪魔になってはいけない。
「逃すかー! お前らは、俺の、エサとなるのだ!」
「なんだこれは!」
逃げていた一般人の一人が急に壁にぶつかったように転んだ。
「ま、前に進めないぞ!」
「どうなっているんだ!」
一定のところから壁に分断されたように進めなくなった。
「百合香!」
「お母さん!」
子供と親が分断され、見えない壁を叩くが二人の手が届くことはない。
「これは……」
見えない壁に阻まれた人たちが騒ぎ立てているけれど、圭の目には船を中心としてドーム状に周辺を囲むうっすらと赤い壁が見えていた。
「チッ……厄介なことを」
ルシファーが舌打ちする。
ベルゼブブが大規模な結界を張って人々を逃さないようにしたのである。
見慣れない表示に思わず立ち止まった圭は船が爆発を起こして身構える。
「圭君!」
大きな船の破片が飛んできた。
避けたら他の人に当たってしまうかもしれないと剣に手をかけた瞬間船の破片が水に包まれて止まった。
「かなみ!」
振り返るとドレスではなく着替えて装備に身を包んだかなみがいた。
「間に合ってよかったわ」
「その格好……」
「こんなこともあるかと思って近くに人を待機させていたの」
圭たちのようにかなみは装備を持ち込めない。
そのためにかなみは船の近くに自分の装備を積んだ車を待機させていたのである。
船を降りてすぐに圭たちと別れたのも装備を取りに行くためだった。
「あれは……何かしら?」
爆発した船から二人の人と大きな何かが飛び出してきた。
「……デカいハエか?」
飛び出してきた人のうちの一人はダンテだった。
もう一人も覚醒者のようで剣と盾を持った外国人っぽい人である。
そして大きな何かは巨大なハエのようなモンスターだった。
「きゃああああっ! モンスターよ!」
「化け物だ!」
「逃げろ!」
巨大なハエに気づいた人たちに混乱が広がる。
船から逃げ出して何とか少し落ち着いた人たちが再び我先にと逃げようとする。
『ベルゼブブ
暴食を司る魔界の魔王の一柱。
ーー以下閲覧制限ーー』
「あれは魔王です」
「魔王……? 悪魔の親玉ってことかしら?」
「そうですね」
距離はあるものの真実の目で確認することができた。
巨大なハエの正体は魔王ベルゼブブであった。
真実の目では閲覧制限なるものがあってほとんど情報を得られないが魔王であるということだけは確かめられた。
「忌まわしき神の犬……それにルシファーめ!」
ベルゼブブが怒りの声を上げるとそれだけで船の窓にヒビが走る。
「ふん、よほどあの契約者が大事だったようね」
ユファの肩に乗るルシファーがベルゼブブのことを鼻で笑った。
「どういうことですか?」
「この世界に姿を現すということは簡単なことではない。私ですらこうして人形に乗り移るのがせいぜいだ。他の悪魔だって契約者の体と命を使って短い間意識だけ送るのが関の山だ」
圭はパッと以前に戦ったマティオのことを思い出した。
悪魔がマティオの中に乗り移って驚異的な力を発揮していた。
あのような悪魔が乗り移る行為が基本的には限界ともいえるところだった。
しかし今は魔王たるベルゼブブ本体が降臨している。
相当無茶なことをしているとルシファーは思う。
「アザードとかいう契約者を守りたいのだな」
ここまでするということはアザードが相当追い詰められ、ベルゼブブがアザードのことを守ろうと姿を現したのだとルシファーは説明した。
「ダンテは大丈夫なのか?」
「危ないだろうな」
「そんな悠長な……」
「私にできるなどない。今ここに降臨してもいいが周囲の一般人は皆死んでしまうぞ」
「じゃあどうしたら……」
「時間を稼げばいい」
「時間を?」
「そう長いこと降臨はしていられない。ダンテもすぐにはやられないだろうし時間が過ぎればやつは帰るしかなくなるだろうな」
降臨するのにも大きな力を使う。
いかに魔王であっても長時間降臨し続けることはできない。
何とか時間稼げばベルゼブブは帰るだろうというのがルシファーの見立てである。
「ただお主らはさっさと逃げたほうがいいな。やつは暴食を冠する悪魔。周りのものを食らって力を補充するやもしれん」
「……結局やることに変わりはないってことか」
元より逃げようとしていた。
ベルゼブブに食われて力にならないようにしなければいけないのなら逃げることに変わりない。
「まあダンテを信じおれ。もう一人も強い力を持っているしもしかしたらベルゼブブを倒せるやもしれん」
本体とはいうものの本物の本体ではない。
真の本体は魔界にいて、今いるベルゼブブはこちらの世界の物質を使って作られた仮初の肉体を使っているのだ。
主にアザードの体を使っているのだろうがベルゼブブの力を全て受けるにはどうしても不十分である。
ならば魔界におけるベルゼブブの本気とは到底かけ離れた力しか出せない。
それでも強いことに変わりないがダンテならばやってのけるかもしれないとルシファーはニヤリと笑う。
「とりあえず俺たちは逃げよう。このままここにいるのはまずい」
助けられないのならせめて戦うダンテの邪魔になってはいけない。
「逃すかー! お前らは、俺の、エサとなるのだ!」
「なんだこれは!」
逃げていた一般人の一人が急に壁にぶつかったように転んだ。
「ま、前に進めないぞ!」
「どうなっているんだ!」
一定のところから壁に分断されたように進めなくなった。
「百合香!」
「お母さん!」
子供と親が分断され、見えない壁を叩くが二人の手が届くことはない。
「これは……」
見えない壁に阻まれた人たちが騒ぎ立てているけれど、圭の目には船を中心としてドーム状に周辺を囲むうっすらと赤い壁が見えていた。
「チッ……厄介なことを」
ルシファーが舌打ちする。
ベルゼブブが大規模な結界を張って人々を逃さないようにしたのである。
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