人の才能が見えるようになりました。~いい才能は幸運な俺が育てる~

犬型大

文字の大きさ
434 / 515
第八章

暴食の悪魔3

しおりを挟む
「ぐわぁぁぁぁ!」

 光が走ってけたたましい叫び声が聞こえてきた。
 空中にいたベルゼブブが落下して船が大きく揺れた。

 船には吹き飛ばされてきた異端審問官以外の異端審問官も多く残っているようで吹き飛ばされてきた異端審問官を全体で支援して戦っているようだ。
 そして今は三つ巴ではなく異端審問官とダンテが協力してベルゼブブと戦っている。

「倒せるかもしれないな……」

 戦いの様子を遠巻きに見ていた圭は思わず呟いた。
 魔王ベルゼブブもすごい力なのだが異端審問官たちも力を合わせて魔王と対等に戦っている。

 ダンテと協力している今ならベルゼブブとも優勢に戦えていたのであった。

「村雨さん、ハエは倒しました!」

 気づけば周りを飛び回っていたブブフライはみんなによって倒されていた。

「後は……もうできることはないのであの中で耐え抜きましょう」

 ダンテたちの戦いに参加できるのはせいぜいかなみぐらいである。

「がああああああああっ!」

「うわっ!?」

 船で大爆発が起きて地面が大きく揺れた。

「船が……真っ二つに……」

 大きな船が真ん中からへし折れたように真っ二つになっていた。
 ベルゼブブが大きな声で叫び、それでまた地面が揺れる。

『!!!キケン!!!
 ゲヘナへのゲートが崩壊します!』

「……マズイ! みんな中に!」

 圭は現れた表示を見て危険を察した。
 外で様子見ていたみんなにカレンの作ったドームの中に入るように促す。

「ゔっ!」

 次の瞬間体が重たくなるような魔力を圭は感じた。
 上から押さえつけられる魔力に膝を屈しそうになりながらなんとかドームの中に逃げ込む。

「どうなってるんだ……」

 ドームの入り口は船の方ではなく一般人が多くいた見えない壁の方に開けられている。
 そのために船の方で何が起きているのか圭たちには分からない。

 一方外では船の中から黒い魔力の塊が膨張して大きくなりながら周りのものを吸い込んでいた。
 まるでブラックホールのようで、二つに折れた船の残骸も魔力の塊に吸い込まれてしまった。

 魔力の塊が大きくなるに連れ吸い込む力が大きくなり、離れたものもだんだんと引き寄せられ始める。

「くっ……! これは……!」

 近くのポールに掴まったダンテは顔をしかめる。
 何が起きているのかダンテも理解していない。

 けれど吸い込まれたら危険だということだけは本能的に理解していた。

「みんな、耐えるんだ!」

 近くに目をやると異端審問官たちも吸い込まれそうになっている。
 力の弱い覚醒者はもうすでに吸い込まれてしまい、ダンテと共に戦っていた異端審問官がみんなを支えてどうにか耐えている。

「あいつらは大丈夫なのか……」

 ダンテが後ろに目を向けるとカレンが作ったドームが見える。
 土のドームが吸引力に耐えられるか、かなり不安である。

「皆さん固まってください! できれば隣の人と腕を組んで離さないでください!」

 ドームの中でもできるだけのことをしようとはしていた。
 真ん中で固まって何があってもいいように備える。

「カレン、入り口を……」

「お母さん!」

「あっ、待ちなさい!」

 危ないからドームの入り口は塞いでしまおうと圭がカレンに言おうとした瞬間一人の女の子が走り出した。
 近くにいた伊丹が手を伸ばすけれど待ち合わずすり抜けて向かっていったのはドームの入り口だった。

 向こうに女の子の母親が見える。
 ずっといたのか、はたまた一度避難したのに戻ってきたようだった。

 小百合と女の子の名前を叫びながら見えない壁を叩く様を見て女の子は思わず走り出してしまったのだ。

「危ない!」

 反応したのは圭だった。
 ドームの入り口から飛び出した女の子に手を伸ばす。

「きゃあ!」

「なっ!?」

 ドームの外に出た瞬間女の子の体がふわりと浮いた。
 魔力の塊の引き寄せる力がかなり強くなっていたのだ。

「くっ!」

「圭君!」

 間一髪女の子を掴んだ圭だったけれど圭も体を引っ張られる。
 入り口の端を掴んでなんとか耐えるけれど少しずつ体がドームの外へと引きずられる。

「この子を……!」

 圭が力を込めて女の子を引き寄せる。
 走ってきたかなみに女の子を渡してなんとか自分も中に入ろうとした。

「お兄さん、手を!」

 カレンが手を伸ばす。

「ぐっ……」

「なに……」

 圭も手を伸ばそうとした瞬間横からブブフライが飛んできて圭に体当たりをした。
 全て倒したと思っていたのに一体どこかに潜んでいたのだ。

「お兄さん!」

「カレン、ダメだ!」

「ピッ!」

「ルシファー様!?」

 入り口の縁から手を放して圭がドームの外に転がっていく。
 助けに行こうとしたカレンを夜滝と波瑠で止める。

「今ならまだ……」

「無理だよ!」

 引っ張る力はかなり強くなっていて入り口付近でも体が外に引っ張られ始めている。
 圭もすでに覚醒者としてB級に近い力を持っているといってもいいのにそんな圭ですら耐えられなかった力が働いている。

 今外に出るのは自殺行為であった。

「でも……」

「私たちだって圭を見捨てたいわけじゃない!」

「夜滝……」

 夜滝だって圭を助けに行きたい。
 しかしそんなことをして、自分も被害に遭ってしまったら圭はそんなことを望まない。

「圭君なら……きっと大丈夫だから」

 波瑠の声も震えている。
 思わずカレンを止めたけれど空を飛べる自分なら助けられるかもしれないとほんのわずかに思った。

「カレン……入り口を塞ぐんだ」

「夜滝!」

「カレン! ここにいる人みんなを危険には晒せないんだよ……」

「…………わかった」

 カレンがドームの入り口を塞ぐ。
 嵐の夜のようなひどい音がドームの中にしばらく響き渡り、そしてやがて落ち着いた。

「…………何もない」

 外に出てみると何も無くなっていた。
 巨大な客船もベルゼブブも周りにあった全てのものがなくなり、船近くの場所では地面が大きくえぐれたようになっていた。

「……圭」

「圭さんどこに……」

 そして圭の姿も外にはなかった。

 ーーー八章完結ーーー
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

シスターヴレイヴ!~上司に捨て駒にされ会社をクビになり無職ニートになった俺が妹と異世界に飛ばされ妹が勇者になったけど何とか生きてます~

尾山塩之進
ファンタジー
鳴鐘 慧河(なるがね けいが)25歳は上司に捨て駒にされ会社をクビになってしまい世の中に絶望し無職ニートの引き籠りになっていたが、二人の妹、優羽花(ゆうか)と静里菜(せりな)に元気づけられて再起を誓った。 だがその瞬間、妹たち共々『魔力満ちる世界エゾン・レイギス』に異世界召喚されてしまう。 全ての人間を滅ぼそうとうごめく魔族の長、大魔王を倒す星剣の勇者として、セカイを護る精霊に召喚されたのは妹だった。 勇者である妹を討つべく襲い来る魔族たち。 そして慧河より先に異世界召喚されていた慧河の元上司はこの異世界の覇権を狙い暗躍していた。 エゾン・レイギスの人間も一枚岩ではなく、様々な思惑で持って動いている。 これは戦乱渦巻く異世界で、妹たちを護ると一念発起した、勇者ではない只の一人の兄の戦いの物語である。 …その果てに妹ハーレムが作られることになろうとは当人には知るよしも無かった。 妹とは血の繋がりであろうか? 妹とは魂の繋がりである。 兄とは何か? 妹を護る存在である。 かけがいの無い大切な妹たちとのセカイを護る為に戦え!鳴鐘 慧河!戦わなければ護れない!

【もうダメだ!】貧乏大学生、絶望から一気に成り上がる〜もし、無属性でFランクの俺が異文明の魔道兵器を担いでダンジョンに潜ったら〜

KEINO
ファンタジー
貧乏大学生の探索者はダンジョンに潜り、全てを覆す。 ~あらすじ~ 世界に突如出現した異次元空間「ダンジョン」。 そこから産出される魔石は人類に無限のエネルギーをもたらし、アーティファクトは魔法の力を授けた。 しかし、その恩恵は平等ではなかった。 富と力はダンジョン利権を牛耳る企業と、「属性適性」という特別な才能を持つ「選ばれし者」たちに独占され、世界は新たな格差社会へと変貌していた。 そんな歪んだ現代日本で、及川翔は「無属性」という最底辺の烙印を押された青年だった。 彼には魔法の才能も、富も、未来への希望もない。 あるのは、両親を失った二年前のダンジョン氾濫で、原因不明の昏睡状態に陥った最愛の妹、美咲を救うという、ただ一つの願いだけだった。 妹を治すため、彼は最先端の「魔力生体学」を学ぶが、学費と治療費という冷酷な現実が彼の行く手を阻む。 希望と絶望の狭間で、翔に残された道はただ一つ――危険なダンジョンに潜り、泥臭く魔石を稼ぐこと。 英雄とも呼べるようなSランク探索者が脚光を浴びる華やかな世界とは裏腹に、翔は今日も一人、薄暗いダンジョンの奥へと足を踏み入れる。 これは、神に選ばれなかった「持たざる者」が、絶望的な現実にもがきながら、たった一つの希望を掴むために抗い、やがて世界の真実と向き合う、戦いの物語。 彼の「無属性」の力が、世界を揺るがす光となることを、彼はまだ知らない。 テンプレのダンジョン物を書いてみたくなり、手を出しました。 SF味が増してくるのは結構先の予定です。 スローペースですが、しっかりと世界観を楽しんでもらえる作品になってると思います。 良かったら読んでください!

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編

天城の夢幻ダンジョン攻略と無限の神空間で超絶レベリング ~ガチャスキルに目覚めた俺は無職だけどダンジョンを攻略してトップの探索士を目指す~

仮実谷 望
ファンタジー
無職になってしまった摩廻天重郎はある日ガチャを引くスキルを得る。ガチャで得た鍛錬の神鍵で無限の神空間にたどり着く。そこで色々な異世界の住人との出会いもある。神空間で色んなユニットを配置できるようになり自分自身だけレベリングが可能になりどんどんレベルが上がっていく。可愛いヒロイン多数登場予定です。ガチャから出てくるユニットも可愛くて強いキャラが出てくる中、300年の時を生きる謎の少女が暗躍していた。ダンジョンが一般に知られるようになり動き出す政府の動向を観察しつつ我先へとダンジョンに入りたいと願う一般人たちを跳ね除けて天重郎はトップの探索士を目指して生きていく。次々と美少女の探索士が天重郎のところに集まってくる。天重郎は最強の探索士を目指していく。他の雑草のような奴らを跳ね除けて天重郎は最強への道を歩み続ける。

現実世界にダンジョンが出現したのでフライングして最強に!

おとうふ
ファンタジー
2026年、突如として世界中にダンジョンが出現した。 ダンジョン内は無尽蔵にモンスターが湧き出し、それを倒すことでレベルが上がり、ステータスが上昇するという不思議空間だった。 過去の些細な事件のトラウマを克服できないまま、不登校の引きこもりになっていた中学2年生の橘冬夜は、好奇心から自宅近くに出現したダンジョンに真っ先に足を踏み入れた。 ダンジョンとは何なのか。なぜ出現したのか。その先に何があるのか。 世界が大混乱に陥る中、何もわからないままに、冬夜はこっそりとダンジョン探索にのめり込んでいく。 やがて来る厄災の日、そんな冬夜の好奇心が多くの人の命を救うことになるのだが、それはまだ誰も知らぬことだった。 至らぬところも多いと思いますが、よろしくお願いします!

「お前と居るとつまんねぇ」〜俺を追放したチームが世界最高のチームになった理由(わけ)〜

大好き丸
ファンタジー
異世界「エデンズガーデン」。 広大な大地、広く深い海、突き抜ける空。草木が茂り、様々な生き物が跋扈する剣と魔法の世界。 ダンジョンに巣食う魔物と冒険者たちが日夜戦うこの世界で、ある冒険者チームから1人の男が追放された。 彼の名はレッド=カーマイン。 最強で最弱の男が織り成す冒険活劇が今始まる。 ※この作品は「小説になろう、カクヨム」にも掲載しています。

氷河期世代のおじさん異世界に降り立つ!

本条蒼依
ファンタジー
 氷河期世代の大野将臣(おおのまさおみ)は昭和から令和の時代を細々と生きていた。しかし、工場でいつも一人残業を頑張っていたがとうとう過労死でこの世を去る。  死んだ大野将臣は、真っ白な空間を彷徨い神様と会い、その神様の世界に誘われ色々なチート能力を貰い異世界に降り立つ。  大野将臣は異世界シンアースで将臣の将の字を取りショウと名乗る。そして、その能力の錬金術を使い今度の人生は組織や権力者の言いなりにならず、ある時は権力者に立ち向かい、又ある時は闇ギルド五竜(ウーロン)に立ち向かい、そして、神様が護衛としてつけてくれたホムンクルスを最強の戦士に成長させ、昭和の堅物オジサンが自分の人生を楽しむ物語。

処理中です...