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第十章

シャリンパンチ!2

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「なんか……おもちゃみたいだな」

 振り回すコブの威力は高そうだけど幹をねじりながら攻撃する様はちょっと面白いとカレンは思った。

「木材にはなるようですが重たい上にあまり高く買い取ってもらえるモンスターではないので魔石だけ回収してしまうのがいいかもしれません」

「じゃあそうしようか」

 今現在お金には困っていない。
 労力に見合わないのならモンスターを回収することなくゲートの攻略を効率的に行った方がいい。

「ゲートの中は森林……少しハンマーブローツリーは見つけにくいですか特徴的なコブがあるのでよく見れば分かるでしょう。お昼は用意しておきます」

「分かりました。ありがとうございます」

 圭たちはゲートの中に入る。
 ゲートの中はやや明るめの森だった。

 背の高い木が生えていて空は青空が広がっている。
 穏やかで戦いやすい環境である。

「まずはハンマーブローツリーを探そうか」

 ゲート近くにモンスターは出てこない。
 見回した感じでもハンマーブローツリーっぽそうな木は見えない。

 入ってきたゲートから真っ直ぐ森の中を進んでいく。
 
「あっ、アレじゃない?」

 波瑠が少し先に見える木を指差した。
 周りの木よりもやや低めの木がそこに生えている。

「はぁ~分かりやすいな」

 普通の木にも見えないこともないのだけどよく見ると枝の先端が大きく膨らんでいる。
 ハンマーブローツリーは先端の膨らんだコブのところで攻撃を仕掛けてくるモンスターであった。

「とりあえずシャリンは待機!」

「にぇ!? ブゥ……」

 心配はしていないが念のためにハンマーブローツリーがどんなものなのか直接確かめておく必要がある。
 シャリンには後ろで見ていてもらうことにして圭はいつものメンバーでハンマーブローツリーと戦ってみることにした。

 盾を構えたカレンを先頭にハンマーブローツリーに近づく。

「動いてんな」

「風じゃなさそうだねぇ」

 ハンマーブローツリーに近づくと枝葉がサワサワと動き出す。
 一応そよそよと風は吹いているので風の可能性もあるが近づくほどに動きが大きくなる。

 顔のようなものはないのでどこが正面とかないのだろうが圭たちのことを認識しているのは間違いなかった。

「来るぞ!」

 一本の枝が大きく動いた。
 グッとコブを後ろに引いて力を溜め、カレンに向かって横振りで繰り出した。

「フッ!」

 息を吐き出しながらカレンがコブを盾で受け止める。
 体を突き抜けるような衝撃があるけれどカレンは一歩も引かずにコブを受け止め切った。

「はっ!」

 カレンの後ろから波瑠が飛び出して枝を切り付ける。
 神をも切ったナイフはハンマーブローツリーの枝をスパッと切り裂いてコブが地面に落ちる。

 次のコブが波瑠に振り下ろされたけれどもうすでに波瑠はそこにいなかった。

「これはどうだい?」

 夜滝が魔法を放つ。
 植物系に有効な炎が渦巻くようにしてハンマーブローツリーに襲いかかる。

「ただの木じゃないようだねぇ」

 ハンマーブローツリーはコブの生えていない枝を数本ぐるぐるとまとめるようにして夜滝の炎を受けた。
 火がついて燃えた部分を切り捨てて延焼を防ぐあたり木ながら知恵を感じさせる。

「圭さん!」

 薫が圭を強化する。

「こっちこい!」

 前に出た圭に向けられそうになったコブをカレンが引きつける。
 魔力による挑発は有効でコブの軌道がカレンに向かう。

「ピッピッ!」

 カレンに差し向けられた枝をフィーネが大鎌で切り落とす。

「くらえ!」

 幹近くまで踏み込んだ圭はハンマーブローツリーを切り付ける。
 やや硬さを感じたものの薫の強化も得てしっかりと魔力が込められた圭の剣はハンマーブローツリーの幹を切り裂いた。

「どうだ?」

 ハンマーブローツリーが地面に倒れ、圭は大きく飛び退いて様子を窺う。

「まだ生きてるのか?」

「わかんねぇな」

 ハンマーブローツリーは枝をグネグネと動かしている。
 動いている以上まだ生きているのだろうが、コブを圭たちの方に向ける様子はない。

「死にかけて悶えているだけなんですかね?」

 試しに盾を構えたカレンが近づくけれどカレンに攻撃は飛んでこない。
 生命力の強いモンスターが生存できないほどの攻撃を受けても体だけ少しの間動いていることはあり得る話だ。

「動きが弱くなってきたな」

 油断しないようにハンマーブローツリーの様子を見ていると段々と枝の動きが鈍くなってきた。
 そしてそのまま枝がパタリと地面に落ちるとハンマーブローツリーは動かなくなった。

「おりゃ!」

 さらに念のためとカレンがメイスでハンマーブローツリーを殴りつける。

「完全に死んだようだねぇ」

 殴りつけても何の反応もない。
 ようやくハンマーブローツリーは死んだようである。

「結構足掻くもんだな」

「ちょっと気持ち悪かったね」

 ウネウネと枝を動かしている様は木というより軟体生物みたいだった。

「こんな感じでみんなで連携取りながら戦うんだ。分かった?」

 圭はシャリンに目を向ける。
 シャリンは圭の言いつけ通りに手を出さずに戦いの様子を見ていた。

 シャリン単体でも強そうであるが連携をとって戦うことができればより効率的に敵を倒すことができる。
 みんなの能力も上がって今回の連携はかなり完璧なものだったと圭は思った。
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