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第一章
閑話・隣に立つと決めた日4
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「こうなったら!」
時間を稼ぐしかない。
ツキベアグリーの叫びが聞こえてきたのでもうツキベアグリーを倒したか、少なくとも瀕死の状態であるだろう。
どうにかやり過ごして時間を稼ぎ大人たちが来るまで耐える。
それしか方法がないとリュードは覚悟を決める。
リュードはツキベアグリーの突進をかわして走る。
ディグラ草畑の中でもよく日が当たっているところを探す。
見たところ日陰の涼しいところはつぼみのディグラ草がある。
荒らされるなら日があたって咲いてしまったディグラ草の方がいいとツキベアグリーを誘導する。
ただツキベアグリーの動きは想像以上に早く、逃げ回ろうにもあっという間に追いつかれてしまった。
つぼみは守れそうだけど己の身が守れそうにない。
振り下ろされた右前足をギリギリでかわす。
間近に風切り音が聞こえる。
勢いと殺気はすさまじいが先ほどのツキベアグリーと比べて動きが鈍く見える。
それでも素早いことには変わりないし一撃一撃はリュードにとって致命傷になりうる。
相手が巨体なことを活かしてツキベアグリーの周りをグルグル回るようにして攻撃をかわす。
かなり危険な距離であるがほとんど密着するように側面側面に回り込むリュードをツキベアグリーは捉えきれていない。
上手く時間を稼げそうだと思ったがツキベアグリーもバカではない。
ツキベアグリーが突如として立ち上がり二足歩行になった。
側面部分が少なくなってしまったので慌ててリュードが後ろに回り込んでみてもツキベアグリー振り向かない。
何かをしようとしていると身構えた瞬間、ツキベアグリーが咆哮した。
耳を塞ぐこともできなくてまともに受けてしまったリュードは強い魔力が込められた咆哮に体が勝手に委縮して動けなくなる。
やばいと思って体を動かそうとしてできたのは少しだけ体をひねることと構えていた剣を動かすだけだった。
どうせ左腕は使えないのならと左側を犠牲にした。
それでも直撃だけは避けようと剣を間に差し込んでわずかにでも防御する。
ツキベアグリーの腕の一振りでリュードが吹き飛ぶ。
ディグラ草をなぎ倒しながらリュードが地面を転がっていく。
「うっ……ぐっ」
ギリギリのところでリュードは意識を保っていた。
けれど気絶でもした方が楽だったかもしれない。
幸いなことに爪が当たらなくて腕が引き裂かれることはなかったけれど、思い切り殴られて地面に叩きつけられるように転がったせいで全身が痛い。
全身が痛み、脱臼で動かなかったせいで分かりにくいけれど腕が折れていて感覚すら無くなっていた。
痛みでチカチカとする中でもリュードは早く立ち上がって逃げなければやられてしまうと思考だけは動いていた。
剣を杖のようにして立ち上がろうとしてると地面に影が落ちる。
ツキベアグリーがリュードの目の前に立っていた。
「なめるなよ……」
何もしないと死ぬ。ならささやかでも抵抗してみせる。
不穏な空気を感じたツキベアグリーが動き出そうとしたがもう遅かった。
「切り裂け、風よ!」
単純な魔法。
風呂を作るときに木を削るときに使う弱い風の斬撃を出す魔法であった。
ツキベアグリーが相手なら皮膚も切り裂けない魔法、のはずだった。
しかしリュードが放った魔法の威力は尋常なものでなかった。
持てるだけの魔力をすべて注ぎ込んだ。
死んでしまうのなら温存していても無駄になるので何も考えずに魔力を魔法に込めた。
リュードの魔法は一瞬で遠くまで飛んで行った。
あまりの魔力に森の魔物たちが大きく騒がしくなったほどだった。
「どう……だ」
魔力まで使い果たした。
ツキベアグリーがどうなったのかを確認することもできずにリュードは気を失って倒れた。
その直後だった。
立ち上がっていたツキベアグリーの上半身が少しずつずれていき、ベチャリと音を立てて地面に落ちた。
「リュード!」
ルフォンの知らせを受けたヴェルデガーが他の大人たちよりも一足先に洞窟を抜けてきた。
一体何があったのか、とても理解できなかった。
体が半分になったツキベアグリーの前でリュードが倒れている。
駆け寄って容態を確認するとリュードの息はあるものの体の左側がひどいことになっていた。
生きてはいるが相当危険な状態。
ヴェルデガーは全力でリュードに回復魔法をかけた。
「リュード……死ぬんじゃない!」
真っ先にリュードのところに来てしまったヴェルデガーはハッと顔を上げて周りを見回して警戒もする。
あまりの光景に他の脅威を確認することを忘れていた。
ツキベアグリーや魔物の気配はない。
脅威はない。
そして見てしまった。
ツキベアグリーの後ろの山の一部が崩れている。
何か非常に切れ味の良いもので切られたかのように崩れた切り口はなめらかであった。
考えられる原因はリュードなのだがどうやったのか皆目見当もつかない。
まさか初級の弱い魔法で山を切り取ったなどと経験豊かなヴェルデガーにも予想ができない。
「こりゃあ……」
「ルフォンちゃん、見るんじゃない」
遅れて到着した大人たちですら状況を見て言葉を失った。
それなりに経験をしてきているはずなのに山の上の光景に何と言ったらいいのか分からなかった。
ツキベアグリーの状態に慌ててルフォンの視界を塞いだ大人もいたがルフォンはしっかりとグロテスクな状態になったツキベアグリーと倒れたリュードを見てしまった。
こうして、ルフォンが探していたつぼみのディグラ草は見つかったのであった。
ーーーーー
時間を稼ぐしかない。
ツキベアグリーの叫びが聞こえてきたのでもうツキベアグリーを倒したか、少なくとも瀕死の状態であるだろう。
どうにかやり過ごして時間を稼ぎ大人たちが来るまで耐える。
それしか方法がないとリュードは覚悟を決める。
リュードはツキベアグリーの突進をかわして走る。
ディグラ草畑の中でもよく日が当たっているところを探す。
見たところ日陰の涼しいところはつぼみのディグラ草がある。
荒らされるなら日があたって咲いてしまったディグラ草の方がいいとツキベアグリーを誘導する。
ただツキベアグリーの動きは想像以上に早く、逃げ回ろうにもあっという間に追いつかれてしまった。
つぼみは守れそうだけど己の身が守れそうにない。
振り下ろされた右前足をギリギリでかわす。
間近に風切り音が聞こえる。
勢いと殺気はすさまじいが先ほどのツキベアグリーと比べて動きが鈍く見える。
それでも素早いことには変わりないし一撃一撃はリュードにとって致命傷になりうる。
相手が巨体なことを活かしてツキベアグリーの周りをグルグル回るようにして攻撃をかわす。
かなり危険な距離であるがほとんど密着するように側面側面に回り込むリュードをツキベアグリーは捉えきれていない。
上手く時間を稼げそうだと思ったがツキベアグリーもバカではない。
ツキベアグリーが突如として立ち上がり二足歩行になった。
側面部分が少なくなってしまったので慌ててリュードが後ろに回り込んでみてもツキベアグリー振り向かない。
何かをしようとしていると身構えた瞬間、ツキベアグリーが咆哮した。
耳を塞ぐこともできなくてまともに受けてしまったリュードは強い魔力が込められた咆哮に体が勝手に委縮して動けなくなる。
やばいと思って体を動かそうとしてできたのは少しだけ体をひねることと構えていた剣を動かすだけだった。
どうせ左腕は使えないのならと左側を犠牲にした。
それでも直撃だけは避けようと剣を間に差し込んでわずかにでも防御する。
ツキベアグリーの腕の一振りでリュードが吹き飛ぶ。
ディグラ草をなぎ倒しながらリュードが地面を転がっていく。
「うっ……ぐっ」
ギリギリのところでリュードは意識を保っていた。
けれど気絶でもした方が楽だったかもしれない。
幸いなことに爪が当たらなくて腕が引き裂かれることはなかったけれど、思い切り殴られて地面に叩きつけられるように転がったせいで全身が痛い。
全身が痛み、脱臼で動かなかったせいで分かりにくいけれど腕が折れていて感覚すら無くなっていた。
痛みでチカチカとする中でもリュードは早く立ち上がって逃げなければやられてしまうと思考だけは動いていた。
剣を杖のようにして立ち上がろうとしてると地面に影が落ちる。
ツキベアグリーがリュードの目の前に立っていた。
「なめるなよ……」
何もしないと死ぬ。ならささやかでも抵抗してみせる。
不穏な空気を感じたツキベアグリーが動き出そうとしたがもう遅かった。
「切り裂け、風よ!」
単純な魔法。
風呂を作るときに木を削るときに使う弱い風の斬撃を出す魔法であった。
ツキベアグリーが相手なら皮膚も切り裂けない魔法、のはずだった。
しかしリュードが放った魔法の威力は尋常なものでなかった。
持てるだけの魔力をすべて注ぎ込んだ。
死んでしまうのなら温存していても無駄になるので何も考えずに魔力を魔法に込めた。
リュードの魔法は一瞬で遠くまで飛んで行った。
あまりの魔力に森の魔物たちが大きく騒がしくなったほどだった。
「どう……だ」
魔力まで使い果たした。
ツキベアグリーがどうなったのかを確認することもできずにリュードは気を失って倒れた。
その直後だった。
立ち上がっていたツキベアグリーの上半身が少しずつずれていき、ベチャリと音を立てて地面に落ちた。
「リュード!」
ルフォンの知らせを受けたヴェルデガーが他の大人たちよりも一足先に洞窟を抜けてきた。
一体何があったのか、とても理解できなかった。
体が半分になったツキベアグリーの前でリュードが倒れている。
駆け寄って容態を確認するとリュードの息はあるものの体の左側がひどいことになっていた。
生きてはいるが相当危険な状態。
ヴェルデガーは全力でリュードに回復魔法をかけた。
「リュード……死ぬんじゃない!」
真っ先にリュードのところに来てしまったヴェルデガーはハッと顔を上げて周りを見回して警戒もする。
あまりの光景に他の脅威を確認することを忘れていた。
ツキベアグリーや魔物の気配はない。
脅威はない。
そして見てしまった。
ツキベアグリーの後ろの山の一部が崩れている。
何か非常に切れ味の良いもので切られたかのように崩れた切り口はなめらかであった。
考えられる原因はリュードなのだがどうやったのか皆目見当もつかない。
まさか初級の弱い魔法で山を切り取ったなどと経験豊かなヴェルデガーにも予想ができない。
「こりゃあ……」
「ルフォンちゃん、見るんじゃない」
遅れて到着した大人たちですら状況を見て言葉を失った。
それなりに経験をしてきているはずなのに山の上の光景に何と言ったらいいのか分からなかった。
ツキベアグリーの状態に慌ててルフォンの視界を塞いだ大人もいたがルフォンはしっかりとグロテスクな状態になったツキベアグリーと倒れたリュードを見てしまった。
こうして、ルフォンが探していたつぼみのディグラ草は見つかったのであった。
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