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第一章
閑話・異世界へ2
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「その世界はその今大いなる危機に瀕しているのじゃ」
その異世界は現在未曽有の危機にあった。
というのもその世界には魔法というものが存在していた。
魔力は人の生活に欠かせないものであり、同時に生命のエネルギーでもあった。
しかし今異世界の魔力は枯渇寸前であった。
それは異世界でおよそ400年前の話が原因だった。
魔王率いる魔人族と真人族という種族の間で大きな戦争が起きた。
戦争は簡単に終わることがなく長引き大小様々な戦闘を繰り返しながら何十年にも及んだ。
そして戦争は激しい戦いの末に勝者のない結末を迎えた。
魔力とは本来循環するものである。
食物連鎖のように魔法によって放たれた魔力は物や植物に吸収されて、それを人や魔物が摂取する。
さらにまた人や魔物が魔力を使い……とよほどのことがない限りグルグルと魔力は循環して一定に保たれていて、世界全体の魔力の総量は変わらないのである。
しかしそのよほどのことである世界を巻き込んだ戦争が長く続いてしまった。
当然魔法が中心の世界なので戦いにおいても魔法、魔力が用いられた。
激しい戦争のために吸収されるよりも早く魔力が消費された。
魔力を吸収するはずの生命も多くが命を落とし、大地も荒れ果てた。
吸収されるよりも放たれる魔力の方が非常に多かったために歴史上類を見ないほど世界の魔力は非常に濃くなって戦争は末期を迎えた。
それだけならよかったのだが異世界に起きた事件はそれだけでなかった。
その異世界とまた別の異世界がたまたま接近してしまった。
最悪のタイミングと言っていい。
魔力は濃いところから薄いところに流れる性質がある。
基本的に世界を越えることはないのだが、戦争がもたらした魔力の濃さと何百年に一度あるかないかレベルで世界同士が近づいたことで魔力が他の世界に流れ出してしまったのである。
堤防が決壊したかのように一度流れ出した魔力は止まらない。
魔力はみるみると異世界に流れていった。
その結果還元されるはずの魔力が流れてなくなってしまったのである。
戦争が終わり世界が平和になったのに、魔力は大きく減衰してしまった。
平和になって人が増え、大地が再生した。
魔力は大地や植物に還り、吸収された。
その後は人に巡って戻ってくるはずの魔力だったのだが大地や植物に吸収されたもの全てが人に還ってくるのではない。
荒れた世界が再生するために使われた魔力は大きい。
そのために魔力はそのまま自然の中でしか回らず、人に還ってくる魔力は全体の中でわずかなものとなった。
魔力が減るということは生命のエネルギーも減るということである。
生命力が自然と落ちた状態になり、人々が持つ魔力は瞬く間に激減した。
魔物などに比べて生命的なサイクルの遅い人は弱体化が早かった。
生命力が落ちた上に魔物などが増えてきて、このままいけば世界が緩やかに衰えていき最悪の場合滅亡してしまう事態にまでなっていた。
「ということが起きておるのじゃ」
「それで俺はいったいどうしたら……」
異世界の人にとっては非常に重要な話をサラリと話して神様は饅頭を食べた。
異世界の事情は理解した。
しかしそこに自分がどう関われるというのだろう。
要するに異世界に魔力が足りないという内容なのだがそんな話をされたところで異世界を救うすべなんてない。
当然魔力なんて持っていないし、仮に魔力を持っていたとして世界を救えるほどの魔力がどれほどのものなのか想像もつかない。
「お主の言いたいことは分かっておる。心配せんでもよい。お主の役割は……そうじゃのう、トラックのようなものじゃ」
「トラック、ですか?」
一体どういう例えなのか。
轢かれたことを思い出すからあまり嬉しい表現に聞こえない。
「ふむ、表現が難しくてな。ホース……もまた違うし、道になってもらうというのもまた……小難しい表現はどうでもよいか。つまり何が言いたいかというとお主を介して向こうの世界に魔力を送りたいのじゃ」
「俺がですか?」
「そうじゃ。お主が魔力を持っていくというより向こうの世界に魔力を送るための道をお主を利用して作りたい。渡り人の強靭な魂を持つからのぅ」
今度は渡り人。
また知らない言葉が飛び出してくる。
「渡り人というのは何ですか?」
「おお、すまんすまん。ついうっかりと知らぬ言葉を使ってしまったな。納得してひきうけてもらいたいからのう、なんでも答えよう。渡り人というのはな……」
渡り人はザックリいえば異世界人である。
魔力が渡れる。
ならば時として彷徨った魂が異世界に渡ることもあるのだ。
そうした魂を渡り人というらしい。
本来渡れない異世界に渡った魂は他の魂よりも頑丈なものであるようだ。
「それが渡り人なのじゃ。だからお主の丈夫な魂に協力してもらって向こうの世界との道を作ろうというのだ」
「……とりあえず話は分かりました。けれどこの世界から魔力なんて送れるんですか?」
「うむ、魔法がない世界でも魔力がないわけではないのじゃ。この世界も魔力に満ち溢れておるのじゃ」
驚きの事実。
地球に魔法はない。
しかし魔力がないということではない。
むしろ地球のある世界は魔力に満ち溢れていると神様は言う。
たまたま科学が発展した。
それぐらいの違いによって魔法という文化は花開くことなく消えて行ってしまったのである。
有り余るほどの魔力があっても使っていないのなら持っていってしまっても問題はない。
向こうの神様に泣きつかれて悩んだ末に考え出した解決策。
とはいえ勝手に魔力が流れることもなく、神様であっても膨大な力の魔力を異世界に流すのは骨が折れる。
そこで渡り人の魂を使って世界を一時的に繋げて魔力をお届けしようというのである。
こちらの世界にはある程度の魔力が有れば循環して人が弱ることもない。
「もちろんタダとは言わん」
まだ理解ができないうちに神様がさらに続ける。
「とはいっても儂に出来るのはお主にこちらの魔力のいくらかを定着させてやるぐらいじゃから詳しくはあっちの神に聞くとよい」
それは人が悪いというよりも神が悪い。
タダではないと言いながら何をしてくれるのか結局詳細には言ってくれないなんて。
「例えばどんなことしてもらえるでしょうか?」
とりあえず聞いてみる。
「それはあやつ次第じゃが…………もう一度渡ってさらに魂が強化されてしまえば一からの転生は難しいじゃろう……だから、おそらく今の記憶を保ったまま好きなように転生させてくれるはずじゃ」
すこーしだけ遠い目をして答える神様。
多分予想は大きく外れないだろうが断定もできない。
「本当ですか!」
怪しい態度だが聞こえきた言葉に思わずテンションが上がる。
転生するという言葉に期待を寄せずにはいられない。
「まあ魂の存在であるお主に出来ることといえばそれぐらいじゃからのう。どうじゃ引き受けてくれるか?」
「引き受けたら俺はどうすればいいんですか?」
ファンタジーなお話は嫌いじゃない。
こっそりとではあるけれど世界を救う見返りなのだ、転生もそれなりにワガママが通るかもしれない。
正直魔力を送ってくれとか言われても遠い話であったが見返りに転生できるとなると俄然前のめりになる。
その異世界は現在未曽有の危機にあった。
というのもその世界には魔法というものが存在していた。
魔力は人の生活に欠かせないものであり、同時に生命のエネルギーでもあった。
しかし今異世界の魔力は枯渇寸前であった。
それは異世界でおよそ400年前の話が原因だった。
魔王率いる魔人族と真人族という種族の間で大きな戦争が起きた。
戦争は簡単に終わることがなく長引き大小様々な戦闘を繰り返しながら何十年にも及んだ。
そして戦争は激しい戦いの末に勝者のない結末を迎えた。
魔力とは本来循環するものである。
食物連鎖のように魔法によって放たれた魔力は物や植物に吸収されて、それを人や魔物が摂取する。
さらにまた人や魔物が魔力を使い……とよほどのことがない限りグルグルと魔力は循環して一定に保たれていて、世界全体の魔力の総量は変わらないのである。
しかしそのよほどのことである世界を巻き込んだ戦争が長く続いてしまった。
当然魔法が中心の世界なので戦いにおいても魔法、魔力が用いられた。
激しい戦争のために吸収されるよりも早く魔力が消費された。
魔力を吸収するはずの生命も多くが命を落とし、大地も荒れ果てた。
吸収されるよりも放たれる魔力の方が非常に多かったために歴史上類を見ないほど世界の魔力は非常に濃くなって戦争は末期を迎えた。
それだけならよかったのだが異世界に起きた事件はそれだけでなかった。
その異世界とまた別の異世界がたまたま接近してしまった。
最悪のタイミングと言っていい。
魔力は濃いところから薄いところに流れる性質がある。
基本的に世界を越えることはないのだが、戦争がもたらした魔力の濃さと何百年に一度あるかないかレベルで世界同士が近づいたことで魔力が他の世界に流れ出してしまったのである。
堤防が決壊したかのように一度流れ出した魔力は止まらない。
魔力はみるみると異世界に流れていった。
その結果還元されるはずの魔力が流れてなくなってしまったのである。
戦争が終わり世界が平和になったのに、魔力は大きく減衰してしまった。
平和になって人が増え、大地が再生した。
魔力は大地や植物に還り、吸収された。
その後は人に巡って戻ってくるはずの魔力だったのだが大地や植物に吸収されたもの全てが人に還ってくるのではない。
荒れた世界が再生するために使われた魔力は大きい。
そのために魔力はそのまま自然の中でしか回らず、人に還ってくる魔力は全体の中でわずかなものとなった。
魔力が減るということは生命のエネルギーも減るということである。
生命力が自然と落ちた状態になり、人々が持つ魔力は瞬く間に激減した。
魔物などに比べて生命的なサイクルの遅い人は弱体化が早かった。
生命力が落ちた上に魔物などが増えてきて、このままいけば世界が緩やかに衰えていき最悪の場合滅亡してしまう事態にまでなっていた。
「ということが起きておるのじゃ」
「それで俺はいったいどうしたら……」
異世界の人にとっては非常に重要な話をサラリと話して神様は饅頭を食べた。
異世界の事情は理解した。
しかしそこに自分がどう関われるというのだろう。
要するに異世界に魔力が足りないという内容なのだがそんな話をされたところで異世界を救うすべなんてない。
当然魔力なんて持っていないし、仮に魔力を持っていたとして世界を救えるほどの魔力がどれほどのものなのか想像もつかない。
「お主の言いたいことは分かっておる。心配せんでもよい。お主の役割は……そうじゃのう、トラックのようなものじゃ」
「トラック、ですか?」
一体どういう例えなのか。
轢かれたことを思い出すからあまり嬉しい表現に聞こえない。
「ふむ、表現が難しくてな。ホース……もまた違うし、道になってもらうというのもまた……小難しい表現はどうでもよいか。つまり何が言いたいかというとお主を介して向こうの世界に魔力を送りたいのじゃ」
「俺がですか?」
「そうじゃ。お主が魔力を持っていくというより向こうの世界に魔力を送るための道をお主を利用して作りたい。渡り人の強靭な魂を持つからのぅ」
今度は渡り人。
また知らない言葉が飛び出してくる。
「渡り人というのは何ですか?」
「おお、すまんすまん。ついうっかりと知らぬ言葉を使ってしまったな。納得してひきうけてもらいたいからのう、なんでも答えよう。渡り人というのはな……」
渡り人はザックリいえば異世界人である。
魔力が渡れる。
ならば時として彷徨った魂が異世界に渡ることもあるのだ。
そうした魂を渡り人というらしい。
本来渡れない異世界に渡った魂は他の魂よりも頑丈なものであるようだ。
「それが渡り人なのじゃ。だからお主の丈夫な魂に協力してもらって向こうの世界との道を作ろうというのだ」
「……とりあえず話は分かりました。けれどこの世界から魔力なんて送れるんですか?」
「うむ、魔法がない世界でも魔力がないわけではないのじゃ。この世界も魔力に満ち溢れておるのじゃ」
驚きの事実。
地球に魔法はない。
しかし魔力がないということではない。
むしろ地球のある世界は魔力に満ち溢れていると神様は言う。
たまたま科学が発展した。
それぐらいの違いによって魔法という文化は花開くことなく消えて行ってしまったのである。
有り余るほどの魔力があっても使っていないのなら持っていってしまっても問題はない。
向こうの神様に泣きつかれて悩んだ末に考え出した解決策。
とはいえ勝手に魔力が流れることもなく、神様であっても膨大な力の魔力を異世界に流すのは骨が折れる。
そこで渡り人の魂を使って世界を一時的に繋げて魔力をお届けしようというのである。
こちらの世界にはある程度の魔力が有れば循環して人が弱ることもない。
「もちろんタダとは言わん」
まだ理解ができないうちに神様がさらに続ける。
「とはいっても儂に出来るのはお主にこちらの魔力のいくらかを定着させてやるぐらいじゃから詳しくはあっちの神に聞くとよい」
それは人が悪いというよりも神が悪い。
タダではないと言いながら何をしてくれるのか結局詳細には言ってくれないなんて。
「例えばどんなことしてもらえるでしょうか?」
とりあえず聞いてみる。
「それはあやつ次第じゃが…………もう一度渡ってさらに魂が強化されてしまえば一からの転生は難しいじゃろう……だから、おそらく今の記憶を保ったまま好きなように転生させてくれるはずじゃ」
すこーしだけ遠い目をして答える神様。
多分予想は大きく外れないだろうが断定もできない。
「本当ですか!」
怪しい態度だが聞こえきた言葉に思わずテンションが上がる。
転生するという言葉に期待を寄せずにはいられない。
「まあ魂の存在であるお主に出来ることといえばそれぐらいじゃからのう。どうじゃ引き受けてくれるか?」
「引き受けたら俺はどうすればいいんですか?」
ファンタジーなお話は嫌いじゃない。
こっそりとではあるけれど世界を救う見返りなのだ、転生もそれなりにワガママが通るかもしれない。
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