人と希望を伝えて転生したのに竜人という最強種族だったんですが?〜世界はもう救われてるので美少女たちとのんびり旅をします〜

犬型大

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第一章

閑話・異世界へ3

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「いや、お主は何もしなくてよい。お主の心の準備ができたらお主を送る。それだけじゃ」

「なるほど……」

「それでどうじゃ?引き受けてくれるか? 何にしてもまあ好きに選ぶとよい。どう選んでもお主の考えを尊重する」

 魔法のある世界に行ってみたい思いもある。
 さらには渡り人の魂は魔力に対する適応性が高いので魔法のある世界に行けば魔法で活躍する可能性も高いらしい。

「1つ、いいですか?」

「もちろん、なんでも聞くとよい」

「まさかそんなことはないと思いますけど……その、世界を渡れる魂が欲しいから俺を、えっと、殺したなんてことは……」

 自分で言っていて苦しい。
 言葉の終りかけはかなり弱々しかった。

 ふと浮かんできた疑念だった。
 危機的状況に現れた渡り人の魂なんて都合が良すぎるのではないか。

 もしかしたらあの事故は仕組まれたものだったのではないかと疑いが頭をよぎった。

「ふぉっふぉっふぉっ、なるほどなるほど」

 驚いたように目を大きく見開き神様は笑い始めた。
 申し訳なくなる疑念だが真剣な疑問で笑い事ではない。

「ワシが渡り人の魂欲しさにお主を殺したのか聞きたいなら、それはないからそんな怖い顔するでない。いかに神といえど人の子を勝手な都合で殺すことなぞできはせん。確かに出来すぎてはおるがこれは偶然の賜物。ワシとて驚いたぐらいじゃ」

「そうですか……疑ってすいませんでした」

「よいよい、確かに出来すぎておる。これも運命の言うやつかもしれないのう。ワシも焦って話を進めすぎたのかもしれん」

 神様が運命などと言っても大丈夫なのだろうか。
 謝罪のつもりでまた饅頭を渡してきたので受け取っておく。
 
 さっきからもう勝手に食べていて何ならもうそこそこお腹いっぱいなのだけど皿の中にある饅頭は減ったような感じもない。

「お主がいなければ他に頼んでおった。すまなんだ、ワシの言葉足らずで不安にさせて」

「いえ、そんな」

「だが実はあまり時間もないのは確かなんじゃ。せかすようで悪いのじゃができれば、できればじゃが……」

「……分かった、俺でよければ異世界に行かせてもらいます」

 神様が捨てられた子犬のような目で見てくる。
 白い豊かなヒゲも相まって若干犬っぽく見えないこともない。

 元より異世界に行けることを悪くないと思っていた。
 急かされたことも多少はあるけれど行ってみたい思いが強く、神様の願いを引き受けることを決めた。

「良かった良かった。感謝しよう。向こうの神様も同じ気持ちだろう」

「いつでも、いや、少しだけ待ってください。 これだけ食べたらいきます」

 渡された饅頭に目を落とす。
 きっと饅頭なんか食べることは本当に最後になる。
 
 もう涙こそ出はしないけれど異世界に饅頭があるとは到底思えないので別れを惜しむようにして饅頭を少しずつ食べる。
 少しずつだとしてもいつかは無くなるもので、大きくもない饅頭はあっという間になくなってしまった。

「もう大丈夫です」

「本当に、よいのか?」

「はい」

 実際よくはない。
 今の世界に未練はタラタラだし、自分の死後どうなっているのかとか気になることもたくさんある。

 しかし今自分の死後にどうなっているのか聞いてしまうと決意が揺るぎそうで、のどまで出かかった言葉をお茶で無理やり胸の奥に流し込む。
 まっすぐ神様を見据えて、ゆっくりとうなずく。

「そうか。感謝するぞ。何も心配することはない。後は詳しい話は向こうの神に聞くとよい」

 神様が大きく手を叩いた。
 段々と神様や世界が歪んでいき、聞こうと思ったことはすでに言葉になっていなかった。

「早速で悪いが、出発じゃ」

 一瞬、無音の中、振り返ると地球が見えた。
 離れていく地球。

 最後に見た地球は本当に青かった。

 ーーーーー

「んっ……」

 長く眠っていたようにも、少しだけうたた寝していたようにも思える。
 最後に青い美しい星を見てから何が起きたのか分からなかった。

「おはよう、英雄君」

「おはようございます……」

 半ば無意識に挨拶を返した。
 先ほどまで側にいたお爺さんの神様の声ではない。

 若い声だったがぼんやりとした意識はそれを気に留めなかった。
 見えるのは青い空。
 
 ところどころにフワフワとした雲があり穏やかに流れている。
 チカチカとしていた視界が落ち着いてきた。
 
 太陽が見えないのに空は明るくてなんだか温かさを感じる。

「ははっ、まだ寝ぼけているね。寝ぼけている……世界渡りボケしているとでも言った方が正しいのかな?」

 いきなり視界が暗くなって上から誰かにのぞき込まれた。
 逆光で逆さに覗き込む顔は少し見えにくいがなんとなく若いというか幼いぐらいの顔が見える。

 少年、おそらく男の子。
 少年はニカッと歯を見せて笑った。

「どうだい? 頭ははっきりとしてきたかい?」

「えっと……まだ少しガンガンする」

「そう、もうちょっとゆっくり息でも吸って落ち着くといいよ」

 少年が覗き込むのを止めて離れていく。
 言われた通りにゆっくりと空気を肺に取り込んで、長めに吐き出す。
 
 頭のモヤがだいぶ晴れてきて体のダルさも抜けてきたので上半身を起こそうと地面に手を突く。
 ただ寝転がっていると気づかなかったが、手にあたる感触に地面を見てみると草が生い茂っている。

 周り一面草原だった。
 先ほどまで畳敷きの日本家屋にいたのに、気づいたら広い草原のただなかに寝ころんでいた。

 老人の姿をした神様はもうそこにはいない。
 代わりにいたのは見知らぬ少年。
 
 しかし少年の容姿も特異である。
 瞳は真っ黒で普通なのだが髪が対照的に真っ白なのである。

 明らかに違う世界だと感じた。
 比喩でもなんでもなく今までの世界とは別の世界に来ていたのだと感覚的に分かった。

 少年は草原にポツンと置かれた白い丸テーブル横の椅子に座る。

「いつまでも地面にいたら大変でしょ? 君の席もあるからおいでよ」

 頭の中の最後のモヤを振るい払うように頭を振って立ち上がる。
 立ち上がってみると少し立ち眩むけれど問題はない。

 テーブルに席は3つ。
 1つは少年。もう1つは堅物そうで少し苦労していそうな中年男性が座っている。

 残りの空いている席に座ると少年がコップを差し出してきた。
 ガラスでできているコップには氷が入っていてシュワシュワと炭酸はじける透明な液体が注がれている。

「これは向こうの神様についでに送ってもらったんだ。美味しいしすっきりするよ」

「……ありがとうございます」

 一口飲んでみると慣れ親しんだ味。
 ペットボトルで売っているあのソーダの味がした。

 確かにすっきりする。

「いや~美味しいね~。僕の世界にはこんなものないからうらやましいよ。それじゃあ、まずは自己紹介だね。僕はケーフィス。この世界の創造神をやっているんだ」

「私はケブスです。魔力の流れを管理しています」

 少年がケーフィス、中年男性がケブスと名乗った。

「えっと、俺は……」

「いいっていいって、君のことは向こうの神様から聞いてるから。君はこの世界を救ってくれた英雄なんだから話し方ももっと砕けてていいよぅ」

「あっ、はい」

「むう、ダメダメ、そんな堅苦しくなくていいって。ため口でいいし、もっと体の力抜いてよ」

 創造神であるケーフィスが拗ねたような顔をする。
 神様の序列を知りはしないが創造神が気軽に接していい神様なのかと困惑する。

 創造神というからには前の世界にいたおじいさんの様な見た目、中身を想像するものだけれどケーフィスは見た目もさることながら中身も子供っぽい。
 本当にこんな神様で大丈夫なのだろうかと少し心配になってしまう。

「感謝しているのは本当だから遠慮しなくていいって。君が持ってきてくれた魔力は凄いんだ。魔力が流れちゃった時と同じ、それ以上ぐらいの魔力が今世界に満ちてる」

「本当に助かりました。創造神様はこんなですしどうしようかと頭を悩ませておりました」

「こんなとは何だい、ケブス」

「こんなとはこんなです」

 部下が上司にこんななんて言ったら普通はとんでもないことのように思えるけど当のケーフィスは特に気にした様子もない。
 ケブスとのこのようなやり取りはいつものことなのがうかがえる。

 確かに少し、というかかなりケーフィスは軽そうに見える。
 見た目も相まって偉い神様には見えない。

「まあいいや。まずは君のこれからの話。本来なら魂をある程度リセットして何かに転生させるところなんだけど、君の魂は2度の世界渡りでとてもじゃないけどリセット出来る代物じゃないんだ。
 魂が頑丈すぎるんだ。本来なら年をとっていくと魂も弱くなるんだけど君は2回とも若くして死んだからね」
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