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第二章
不倶戴天4
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「えいっ」
ルフォンが体を反転させてナイフを突き出す。
狙いは馬車を守る男と対峙していた残る男である。
これまで動きとは違って緩慢でなんてことはないナイフさばきに簡単にナイフは防がれる。
「ふっ、しょせんは……がっ……」
しかしそれはルフォンの狙い通りだった。
相手を見ているようで実はルフォンの目は相手を見ていない。
ルフォンの視線の先には馬車を守る男がいた。
相手の肩越しに何かを伝えるような目を向けられて馬車を守る男は咄嗟にその意図を汲み取った。
馬車を守る男はルフォンのナイフを防いでいてガラ空きになった背中を切り付けた。
ちゃんと倒れたことを確認してルフォンは馬車を守る男にパチリとウインクしてみせる。
仮に意図が伝わらなくても、その時はそのまま押し切って倒すつもりだった。
「お疲れ様、ルフォン」
「リューちゃん!」
タイミング良く、ちょうどリュードもリーダーの男を倒していた。
袈裟斬りにリーダーの男を切り倒したリュードは煩わしそうに顔についた返り血を拭う。
相手の半分はルフォンが倒したようなもので、もはやお馴染みともなっている、撫でて!と頭を差し出して褒めを要求する。
左手は血を拭ったので汚れているから剣を納めて右手でルフォンの頭を撫でてやる。
耳を畳んで目を細めて気持ちよさそうにするルフォンはとても戦った後とは思えない。
撫でるたびにルフォンの尻尾も喜びに揺れる。
「ダカン! 大丈夫か!」
あっという間のことに呆然としていた馬車を守る男が反対側を守る青年のことを思い出す。
反対側にも敵がいた。
1人では勝てるわけもないと慌てて馬車の反対側に回り込むとすでに敵は倒れていた。
2人はルフォンエミナがたおしたのだが最後の1人は残された青年が倒していた。
ルフォンによって怪我もさせられていた上にいざとなればエミナの援護もあるので大丈夫だろうと思っていた。
「ヘヘッ、やってやったぞ、マザキシ。俺も1人倒してやったぞ!」
ダカンと呼ばれた青年は馬車を背もたれにして息を切らせて地面に座り込んでいた。
怪我はなく清々しい笑顔を浮かべている。
「リュードさん、ルフォンさん、大丈夫ですか!」
「ダカン、マザキシ、無事ですか!」
エミナがリュードたちに駆け寄るのと同時に馬車から女の子が飛び出してきた。
フワフワとした軽くウェーブした金髪の少女で年の頃はリュードたちと同じぐらいに見える。
「俺もやってやったぞ、ヤノチ!」
「もう! 無理はしないでください……」
ヤノチはダカンの体をペタペタと触って無事を確かめる。
「はははっ、いや、お見苦しいところをお見せしました。助けていただいたのにお礼も言わずに申し訳ありません。助けてくださいましてありがとうございました。私はマザキシ・ワユカリです。こちらがヤノチ・ミエバシオ、あれがダカン・ワユカリです」
マザキシと名乗る馬車を守っていた男性がリュードたちに礼を述べて頭を下げる。
「ミエバシオ……」
「知り合いか?」
「あ、いえ、ちょっと聞いたことがあったので」
「お恥ずかしながらミエバシオと言えばここらで少しだけ有名ですからね……」
マザキシが気まずそうに答える。
リュードもその態度を見て、良くない方面で有名であるのだろうと察する。
「お手伝いしますよ」
「ありがとうございます」
助けたのなら最後まで面倒は見るべきだ。
馬車の進行方向に木が倒れたままになっているのでリュードは手助けを申し出た。
倒れた木をよく見ると明らかに人の手で倒されたような痕跡が見られる。
わざと木を倒して邪魔したのだろうなと思いながらも変に首を突っ込んで事情を聞くこともない。
リュードが魔法で木をいくつかに分割して切り裂き、みんなで運んで脇によけた。
その後はヤノチのお誘いもあってリュードたちは馬車に一緒に乗せてもらうことになった。
女の子3人が馬車の中、マザキシとダカンが御者台で、リュードは馬車の上に乗っていた。
ぜひ席にと言われたけれど女の子3人の中に入るのはちょっと気が引けた。
御者台で知らないおっさんの隣でずっと揺られているのは抵抗があって結局馬車の上にお邪魔することになった。
どうせどこに乗っても馬車は揺れる。
天気も悪くはないので馬車の屋根の上でも問題はない。
「本当はもう1人いたんですよ」
おもむろにマザキシが口を開いた。
「この騒ぎの中でどっか行っちゃいましたがね。きっとあいつがこの移動のことを漏らしたに違いない……」
マザキシの顔は馬車の上にいるリュードから見えない。
けれども声に静かな怒りを感じる。
「だから言ったんだ、あいつは信用できないって」
吐き捨てるようにダカンが言う。
マザキシは前を見据えたまま何も答えない。
ダカンの言うことは自分でも分かっていたからである。
次に会うことがあればこの手で殺してやりたいと思うが、相手だってなんの準備もなく人を裏切るはずがない。
今ごろ裏切りの代償で受け取った金で国を脱出でもしようとしているだろう。
手綱を持つ手に力が入る。
マザキシは何もできない自分が悔しかった。
再び静かになる男性陣。
静かになってしまうとリュードには馬車の中の会話が聞こえてきてしまう。
決して盗み聞きしているのではない。
耳が良いので聞こえてしまうのだ。
「ルフォンさんはリュードさんと付き合ってるんですか?」
「うん、そうだよ」
「きゃー! 本当ですか! その、チュー……とかしたり?」
「そ、それは……まだ、かな?」
「くぁ~! リュードさん手慣れてそうなのに案外じゅんじょーなお付き合いしてますね!」
「ヤノチちゃんこそ、ダカンくんとそうなんでしょー!」
「はいっ!? べべ、別にダカンとはそんな関係じゃ……」
「ウソつき~」
馬車内ではガールズトークに花が咲いている。
仕方なく聞こえてきてしまったとはいっても恥ずかしさで聞かなきゃよかったと思うような内容だった。
ーーーーー
ルフォンが体を反転させてナイフを突き出す。
狙いは馬車を守る男と対峙していた残る男である。
これまで動きとは違って緩慢でなんてことはないナイフさばきに簡単にナイフは防がれる。
「ふっ、しょせんは……がっ……」
しかしそれはルフォンの狙い通りだった。
相手を見ているようで実はルフォンの目は相手を見ていない。
ルフォンの視線の先には馬車を守る男がいた。
相手の肩越しに何かを伝えるような目を向けられて馬車を守る男は咄嗟にその意図を汲み取った。
馬車を守る男はルフォンのナイフを防いでいてガラ空きになった背中を切り付けた。
ちゃんと倒れたことを確認してルフォンは馬車を守る男にパチリとウインクしてみせる。
仮に意図が伝わらなくても、その時はそのまま押し切って倒すつもりだった。
「お疲れ様、ルフォン」
「リューちゃん!」
タイミング良く、ちょうどリュードもリーダーの男を倒していた。
袈裟斬りにリーダーの男を切り倒したリュードは煩わしそうに顔についた返り血を拭う。
相手の半分はルフォンが倒したようなもので、もはやお馴染みともなっている、撫でて!と頭を差し出して褒めを要求する。
左手は血を拭ったので汚れているから剣を納めて右手でルフォンの頭を撫でてやる。
耳を畳んで目を細めて気持ちよさそうにするルフォンはとても戦った後とは思えない。
撫でるたびにルフォンの尻尾も喜びに揺れる。
「ダカン! 大丈夫か!」
あっという間のことに呆然としていた馬車を守る男が反対側を守る青年のことを思い出す。
反対側にも敵がいた。
1人では勝てるわけもないと慌てて馬車の反対側に回り込むとすでに敵は倒れていた。
2人はルフォンエミナがたおしたのだが最後の1人は残された青年が倒していた。
ルフォンによって怪我もさせられていた上にいざとなればエミナの援護もあるので大丈夫だろうと思っていた。
「ヘヘッ、やってやったぞ、マザキシ。俺も1人倒してやったぞ!」
ダカンと呼ばれた青年は馬車を背もたれにして息を切らせて地面に座り込んでいた。
怪我はなく清々しい笑顔を浮かべている。
「リュードさん、ルフォンさん、大丈夫ですか!」
「ダカン、マザキシ、無事ですか!」
エミナがリュードたちに駆け寄るのと同時に馬車から女の子が飛び出してきた。
フワフワとした軽くウェーブした金髪の少女で年の頃はリュードたちと同じぐらいに見える。
「俺もやってやったぞ、ヤノチ!」
「もう! 無理はしないでください……」
ヤノチはダカンの体をペタペタと触って無事を確かめる。
「はははっ、いや、お見苦しいところをお見せしました。助けていただいたのにお礼も言わずに申し訳ありません。助けてくださいましてありがとうございました。私はマザキシ・ワユカリです。こちらがヤノチ・ミエバシオ、あれがダカン・ワユカリです」
マザキシと名乗る馬車を守っていた男性がリュードたちに礼を述べて頭を下げる。
「ミエバシオ……」
「知り合いか?」
「あ、いえ、ちょっと聞いたことがあったので」
「お恥ずかしながらミエバシオと言えばここらで少しだけ有名ですからね……」
マザキシが気まずそうに答える。
リュードもその態度を見て、良くない方面で有名であるのだろうと察する。
「お手伝いしますよ」
「ありがとうございます」
助けたのなら最後まで面倒は見るべきだ。
馬車の進行方向に木が倒れたままになっているのでリュードは手助けを申し出た。
倒れた木をよく見ると明らかに人の手で倒されたような痕跡が見られる。
わざと木を倒して邪魔したのだろうなと思いながらも変に首を突っ込んで事情を聞くこともない。
リュードが魔法で木をいくつかに分割して切り裂き、みんなで運んで脇によけた。
その後はヤノチのお誘いもあってリュードたちは馬車に一緒に乗せてもらうことになった。
女の子3人が馬車の中、マザキシとダカンが御者台で、リュードは馬車の上に乗っていた。
ぜひ席にと言われたけれど女の子3人の中に入るのはちょっと気が引けた。
御者台で知らないおっさんの隣でずっと揺られているのは抵抗があって結局馬車の上にお邪魔することになった。
どうせどこに乗っても馬車は揺れる。
天気も悪くはないので馬車の屋根の上でも問題はない。
「本当はもう1人いたんですよ」
おもむろにマザキシが口を開いた。
「この騒ぎの中でどっか行っちゃいましたがね。きっとあいつがこの移動のことを漏らしたに違いない……」
マザキシの顔は馬車の上にいるリュードから見えない。
けれども声に静かな怒りを感じる。
「だから言ったんだ、あいつは信用できないって」
吐き捨てるようにダカンが言う。
マザキシは前を見据えたまま何も答えない。
ダカンの言うことは自分でも分かっていたからである。
次に会うことがあればこの手で殺してやりたいと思うが、相手だってなんの準備もなく人を裏切るはずがない。
今ごろ裏切りの代償で受け取った金で国を脱出でもしようとしているだろう。
手綱を持つ手に力が入る。
マザキシは何もできない自分が悔しかった。
再び静かになる男性陣。
静かになってしまうとリュードには馬車の中の会話が聞こえてきてしまう。
決して盗み聞きしているのではない。
耳が良いので聞こえてしまうのだ。
「ルフォンさんはリュードさんと付き合ってるんですか?」
「うん、そうだよ」
「きゃー! 本当ですか! その、チュー……とかしたり?」
「そ、それは……まだ、かな?」
「くぁ~! リュードさん手慣れてそうなのに案外じゅんじょーなお付き合いしてますね!」
「ヤノチちゃんこそ、ダカンくんとそうなんでしょー!」
「はいっ!? べべ、別にダカンとはそんな関係じゃ……」
「ウソつき~」
馬車内ではガールズトークに花が咲いている。
仕方なく聞こえてきてしまったとはいっても恥ずかしさで聞かなきゃよかったと思うような内容だった。
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