人と希望を伝えて転生したのに竜人という最強種族だったんですが?〜世界はもう救われてるので美少女たちとのんびり旅をします〜

犬型大

文字の大きさ
121 / 550
第二章

それぞれの結末1

しおりを挟む
 ステナン村。
 名目上はカシタコウになるが、トキュネスの勢力圏との境に位置していて非常に曖昧な立場を強いられている村である。

 そんなステナン村のみんなが集まる会館が今回の交渉の場となっていた。
 護衛をそれぞれ2人連れたキンミッコとウカチル・ミエバシオが多めのテーブルを挟んで対面して座る。

(若い……これは上手くいけば丸め込めるのではないか……)

 口を手で隠してキンミッコがニヤリと笑う。
 童顔のウカチルは若く見られがちだがれっきとした成人であり、もう20代の後半である。

 確かにキンミッコから見れば若いとは言えるだろうが若造と侮れる年齢ではない。
 しかし焦りに焦っていたキンミッコはウカチルの情報など頭から抜け落ちている。

「それでは交渉を始めましょうか」

 連れて行かれた花嫁も見つからず、監禁していたウカチルの妹もどこかに行ってしまった。
 交渉のカードは結局2枚とも失ってしまったキンミッコは笑顔を浮かべているが内心焦りを感じている。

 どうにか相手をうまく乗せて有利な状況を作り出して良い条件を引き出したい。
 場の主導権を握ろうとキンミッコが先に口を開く。

「和平がもはや両国の同意事項であることは分かっております。その上で我が国が引き渡すことになるのは今私が治めておりますヒダルダの土地であることも分かっています。ですがヒダルダの土地もトキュネスになってから時間が経ち、また所属する国が変わることになれば領民も混乱することとなるでしょう」

「確かにその可能性はありますね」

「両国の希望は和平を結ぶことです。何も無理矢理領地を返還することもないとは思いませんか? しかし何も引き渡さずにカシタコウだけが我々に支援をして和平を結ぶことは出来ません。
 そこでどうでしょうか。今トキュネスとカシタコウの間にあって曖昧になっている領地の線引きを我々が譲歩しましょう。このステナン村のように不安に思っているところも多いでしょうからそこから我々は手を引きます」

 まずは領地を持って行かれない事の方が大事。

 あたかも領地の一部を明け渡すかのように言っているけれど現在国境線が曖昧になっているところはカシタコウの領地だ。
 武力衝突を避けているためにあたかもトキュネス、というかキンミッコが実質的に支配しているような顔をしているだけだ。

 要するに土地は一切返還しないで交渉しようとしているのである。

「私の希望はヒダルダ一切の返還です」

 すべての領地を取り戻す。
 そうした強い意志を持ってこの交渉に臨むウカチルの心をそんな薄っぺらい言葉で動かすことなんて出来ない。

「ヒダルダを返還してくださればトキュネスには十分な支援をしましょう。望むなら領地を失うことになるキンミッコさんにも支援をします」

「……支援はどれくらいをお考えで?」

 流石にこれでは納得しないか。
 舌打ちしたい気持ちを抑えて笑顔で交渉を続ける。

「こちらをご覧ください」

 ウカチルが一枚の紙をテーブルを滑らせてキンミッコに差し出す。
 見てみるとそれには補償の金額や支援物資の内容が細かに記入してあった。

 何か少しでも変なところがあれば難癖を付けてやろうと読み込むが内容は完璧だった。
 トキュネスの欲しいものを残さず網羅し、物量も少なすぎることがない。

 補償金として提示されている金額も事前にキンミッコ側で算定していた金額の範囲内でありながらその中でも多めの金額。
 突き崩せる穴のない提示にキンミッコは唇をかんだ。

「……仮にこの金額や内容で納得できない場合、ミエバシオ殿には裁量がおありで?」

「もちろんです。過大すぎる要求には答えられませんがある程度の内容の変更は私に一任されています」

「では、この金額では話はお受けできません」

 ただしこの条件で承諾してしまえば後々損をするのはキンミッコだけである。
 最初から高めの条件を提示してきたのだ、よほど領地を取り戻したいと見える。

 キンミッコは納得いっていないような顔をしてため息をつく。
 正当な金額なのだが、相手の算定した金額が足りないような態度を装う。

「ならばどれほどをお望みで?」

「……ミエバシオ殿にそこまでの裁量があるかは分かりませんが金額はこの2倍、物資は2割増は欲しいところです」

 完全にぼったくりな物言い。
 ふっかけにもほどがある。

 自分がこんなことを言われた怒り狂って剣を抜くかもしれない。
 ウカチルの護衛は顔をしかめている。

 しかしここで引くわけにもいかないのだ。
 キンミッコはあたかも引き受けるような態度を取りながらもウカチルの方から交渉を決裂してもらいたいと思っていた。

「それは流石に……」

「戦争で荒れた土地を再び平穏に暮らせるまで回復させたのですよ。私は本当はヒダルダを手放したくないんです」

 困った顔をするウカチルにキンミッコが畳み掛ける。

「愛着を持ち始めた領民たちと離れることになるのがどれほどお辛いことかお分かりになられないでしょう。3倍の金額を払ってもらっても引き渡したくはないのですが国同士で決まってしまっていることを覆すこともできません。
 ですので2倍ほど払ってもらうことでどうにか私の気持ちにも折り合いをつけようと私自身も努力しているのです」

 ハンカチを取り出し涙を拭うような仕草を見せるキンミッコ。
 白々しいと護衛たちは思っているがこれぐらい平気でやる男がキンミッコである。

「1.5倍。物資は記載の通り。これが最大です」

「それでは……まだ」

 簡単に値が吊り上がった。
 まだまだ上げられるかもしれないとキンミッコはほくそ笑む。

 大きな利益を出せば全て返還してもキンミッコに利益が残る。
 早くも頭の中でキンミッコは金勘定を始めていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

辺境伯家次男は転生チートライフを楽しみたい

ベルピー
ファンタジー
☆8月23日単行本販売☆ 気づいたら異世界に転生していたミツヤ。ファンタジーの世界は小説でよく読んでいたのでお手のもの。 チートを使って楽しみつくすミツヤあらためクリフ・ボールド。ざまぁあり、ハーレムありの王道異世界冒険記です。 第一章 テンプレの異世界転生 第二章 高等学校入学編 チート&ハーレムの準備はできた!? 第三章 高等学校編 さあチート&ハーレムのはじまりだ! 第四章 魔族襲来!?王国を守れ 第五章 勇者の称号とは~勇者は不幸の塊!? 第六章 聖国へ ~ 聖女をたすけよ ~ 第七章 帝国へ~ 史上最恐のダンジョンを攻略せよ~ 第八章 クリフ一家と領地改革!? 第九章 魔国へ〜魔族大決戦!? 第十章 自分探しと家族サービス

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

異世界転生、防御特化能力で彼女たちを英雄にしようと思ったが、そんな彼女たちには俺が英雄のようだ。

Mです。
ファンタジー
異世界学園バトル。 現世で惨めなサラリーマンをしていた…… そんな会社からの帰り道、「転生屋」という見慣れない怪しげな店を見つける。 その転生屋で新たな世界で生きる為の能力を受け取る。 それを自由イメージして良いと言われた為、せめて、新しい世界では苦しまないようにと防御に突出した能力をイメージする。 目を覚ますと見知らぬ世界に居て……学生くらいの年齢に若返っていて…… 現実か夢かわからなくて……そんな世界で出会うヒロイン達に…… 特殊な能力が当然のように存在するその世界で…… 自分の存在も、手に入れた能力も……異世界に来たって俺の人生はそんなもん。 俺は俺の出来ること…… 彼女たちを守り……そして俺はその能力を駆使して彼女たちを英雄にする。 だけど、そんな彼女たちにとっては俺が英雄のようだ……。 ※※多少意識はしていますが、主人公最強で無双はなく、普通に苦戦します……流行ではないのは承知ですが、登場人物の個性を持たせるためそのキャラの物語(エピソード)や回想のような場面が多いです……後一応理由はありますが、主人公の年上に対する態度がなってません……、後、私(さくしゃ)の変な癖で「……」が凄く多いです。その変ご了承の上で楽しんで頂けると……Mです。の本望です(どうでもいいですよね…)※※ ※※楽しかった……続きが気になると思って頂けた場合、お気に入り登録……このエピソード好みだなとか思ったらコメントを貰えたりすると軽い絶頂を覚えるくらいには喜びます……メンタル弱めなので、誹謗中傷てきなものには怯えていますが、気軽に頂けると嬉しいです。※※

辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します

潮ノ海月@2025/11月新刊発売予定!
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる! トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。 領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。 アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。 だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう 完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。 果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!? これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。 《作者からのお知らせ!》 ※2025/11月中旬、  辺境領主の3巻が刊行となります。 今回は3巻はほぼ全編を書き下ろしとなっています。 【貧乏貴族の領地の話や魔導車オーディションなど、】連載にはないストーリーが盛りだくさん! ※また加筆によって新しい展開になったことに伴い、今まで投稿サイトに連載していた続話は、全て取り下げさせていただきます。何卒よろしくお願いいたします。

風魔法を誤解していませんか? 〜混ぜるな危険!見向きもされない風魔法は、無限の可能性を秘めていました〜

大沢ピヨ氏
ファンタジー
地味で不遇な風魔法──でも、使い方しだいで!? どこにでもいる男子高校生が、意識高い系お嬢様に巻き込まれ、毎日ダンジョン通いで魔法検証&お小遣い稼ぎ! 目指せ収入UP。 検証と実験で、風と火が火花を散らす!? 青春と魔法と通帳残高、ぜんぶ大事。 風魔法、実は“混ぜるな危険…

異世界は流されるままに

椎井瑛弥
ファンタジー
 貴族の三男として生まれたレイは、成人を迎えた当日に意識を失い、目が覚めてみると剣と魔法のファンタジーの世界に生まれ変わっていたことに気づきます。ベタです。  日本で堅実な人生を送っていた彼は、無理をせずに一歩ずつ着実に歩みを進むつもりでしたが、なぜか思ってもみなかった方向に進むことばかり。ベタです。  しっかりと自分を持っているにも関わらず、なぜか思うようにならないレイの冒険譚、ここに開幕。  これを書いている人は縦書き派ですので、縦書きで読むことを推奨します。

転生先は上位貴族で土属性のスキルを手に入れ雑魚扱いだったものの職業は最強だった英雄異世界転生譚

熊虎屋
ファンタジー
現世で一度死んでしまったバスケットボール最強中学生の主人公「神崎 凪」は異世界転生をして上位貴族となったが魔法が土属性というハズレ属性に。 しかし職業は最強!? 自分なりの生活を楽しもうとするがいつの間にか世界の英雄に!? ハズレ属性と最強の職業で英雄となった異世界転生譚。

欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します

ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!! カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。

処理中です...