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第三章
ヤツが来た1
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国外に出られない以上ヘランド王国の中でどうにか過ごすしかない。
ドランダラスなんかにお願いすれば出られそうな気がしなくもないがそこまでして出たいわけでもない。
頼まれたお願いはちゃんと果たしたし今のところやらなきゃいけないようなこともない。
のんびりしながらもいい機会なので冒険者ランクを上げるための実績稼ぎだと思ってヘランドで冒険者としての依頼をこなしていくことにした。
「ふう……」
すっかり砂浜で朝走ることが日課になってしまった。
バーナードに負けた悔しさもあるけれど、旅をしているとこんなふうに基礎的な鍛錬なんかやっている暇もない。
しばらくやっていなかった走り込みをすると案外気持ちも良く体の調子も良い。
潮風で肌がベタついたり砂まみれになってしまうことは欠点だが砂の上を走るのは中々面白かった。
「やあ、久しぶりだね、シューナリュード君!」
そうして一通り砂浜の上を走ったリュードが宿の部屋に戻ってくるとそこに王様がいた。
ヘランド王国の現在の王のドランダラスである。
「ああ、どうも」
手を振るドランダラスはなんとなく雰囲気が軽い。
最初にあった時は半ば公式的な感じだったし話の内容が内容だったのでドランダラスも王様としての態度を取っていた。
けれど今は私的な場だし他に小うるさくする臣下もいない。
本来のドランダラスは気さくで親しみやすい性格をしている人であった。
白い歯を見せてニカっと笑うドランダラスはハツラツとしていて、なぜなのか一瞬だけゼムトが重なって見えた気がした。
若くして死んでスケルトンになった兄と王位について久しい老年の弟。
どこに重なる要素があるというのか分からないけれど、きっとゼムトが生きていたらこのような感じだったのだとリュードに思わせた。
あまり似ていないなと最初は思ったけれどそんなことなかった。
肝心のドランダラスはなぜなのかルフォンが作った朝食をパクパクと食べていた。
舌の肥えている王様が美味い美味いと言って食べてくれるのだからルフォンも悪い気がせず嬉しそうである。
対してエミナやヤノチ、ダカンも同じ部屋にいた。
ピッチリと椅子に座って背筋を伸ばしたまま動かない。
蛇に睨まれた蛙だってもっとみじろぎぐらいするだろう。
ただなんてったって目の前にいるのは一国の王様。
失礼な態度は取れないと3人ともガチガチに固まってしまっていた。
夢なんじゃないかと頬を引っ張るような古典的なマネをしてしまいそうな理解に苦しむ光景である。
「そう怪訝そうな顔をするな。しっかし君のお嫁さんは料理がうまいな! 私の妻はそう言ったことが一切出来なくてだな……」
ガハハとドランダラスが笑う。
「あっ、おかえり。リューちゃんの分も朝食出来てるよ」
「おっ、もらうよ」
変に動揺しても仕方ない。
あたかもこれが日常かのようにリュードはドランダラスの横に座った。
エミナたちがマジか、という視線をリュードに向けるけれどこの部屋に限っていえばリュードの方が主のようなものである。
ヘランドの住民でもないし一定の敬意は払いながらもへこへことはしない。
「はい、リューちゃん」
ドランダラスの隣に座って待っているとルフォンがリュードの前に朝食を置いた。
ワンプレートになった朝食からは独特の香りが漂ってきた。
朝食というにはやや刺激の強い香り。
スナハマバトルでもらった香辛料を使った料理であった。
流石に部屋の中で香辛料を使った料理をするのはダメだろうとなった。
なので宿の裏のスペースを利用料を支払って使用させてもらい、コンロを置いて料理をしていた。
ルフォンが作る料理だしドランダラスも食べていたので大丈夫だろうと一口料理を口に含む。
エスニックな香りに反して味は優しい。
香りが強めなだけであっさりと食べ進められる料理で朝食にも悪くない。
香りも食べ進めると慣れてくるし、朝なら目が覚めてむしろ良いぐらいかもしれない。
「食べながらでいいから聞いてほしい」
先に食べ始めていたドランダラスの方が食べ終わるのが早いのは当然。
優雅に口を拭いたドランダラスはようやくこの訪問の目的を話し出した。
「先日、海から魔物が上がってくる騒ぎがあった」
リュードもそれは知っている。
それはまさしくスナハマバトルの時に起きたことで、リュードたちも魔物と戦った当事者である。
「こうした事態の裏には何か異常があるものだと調査を進めた」
魔物が岸にまで上がってくるのはあまり起こりうることではない。
そんなことが起こるということは何かの原因があるはずでヘランドでは調査を進めていた。
「この国、というかこの海には何十年かに1度の頻度で大干潮と呼ばれる自然現象が起こるんだ。魔物の異常行動はこよ大干潮に起因するものだと見ている」
海に異常が起これば海に住む魔物にも異常行動が起こる。
関係性としては理解できる話である。
「そしてだ、大干潮に関してはもう1つ大きな問題があるんだ」
エミナたちはあくまでも聞いていますという態度を崩さない。
リュードは聞いてはいるけど優先はルフォンの料理が冷める前に食べることなので遠慮なく料理をパクつく。
「大干潮そのものが何十年という期間が空くものなのだが、大干潮の数回に1度、大干潮の時に出てくる魔物がいるんだ。普段は海深くにいるのに大干潮の時だけ浅いところに上がってくる……」
リュードの食べ進める手が止まる。
話の内容の先がリュードには分かってしまった。
ドランダラスなんかにお願いすれば出られそうな気がしなくもないがそこまでして出たいわけでもない。
頼まれたお願いはちゃんと果たしたし今のところやらなきゃいけないようなこともない。
のんびりしながらもいい機会なので冒険者ランクを上げるための実績稼ぎだと思ってヘランドで冒険者としての依頼をこなしていくことにした。
「ふう……」
すっかり砂浜で朝走ることが日課になってしまった。
バーナードに負けた悔しさもあるけれど、旅をしているとこんなふうに基礎的な鍛錬なんかやっている暇もない。
しばらくやっていなかった走り込みをすると案外気持ちも良く体の調子も良い。
潮風で肌がベタついたり砂まみれになってしまうことは欠点だが砂の上を走るのは中々面白かった。
「やあ、久しぶりだね、シューナリュード君!」
そうして一通り砂浜の上を走ったリュードが宿の部屋に戻ってくるとそこに王様がいた。
ヘランド王国の現在の王のドランダラスである。
「ああ、どうも」
手を振るドランダラスはなんとなく雰囲気が軽い。
最初にあった時は半ば公式的な感じだったし話の内容が内容だったのでドランダラスも王様としての態度を取っていた。
けれど今は私的な場だし他に小うるさくする臣下もいない。
本来のドランダラスは気さくで親しみやすい性格をしている人であった。
白い歯を見せてニカっと笑うドランダラスはハツラツとしていて、なぜなのか一瞬だけゼムトが重なって見えた気がした。
若くして死んでスケルトンになった兄と王位について久しい老年の弟。
どこに重なる要素があるというのか分からないけれど、きっとゼムトが生きていたらこのような感じだったのだとリュードに思わせた。
あまり似ていないなと最初は思ったけれどそんなことなかった。
肝心のドランダラスはなぜなのかルフォンが作った朝食をパクパクと食べていた。
舌の肥えている王様が美味い美味いと言って食べてくれるのだからルフォンも悪い気がせず嬉しそうである。
対してエミナやヤノチ、ダカンも同じ部屋にいた。
ピッチリと椅子に座って背筋を伸ばしたまま動かない。
蛇に睨まれた蛙だってもっとみじろぎぐらいするだろう。
ただなんてったって目の前にいるのは一国の王様。
失礼な態度は取れないと3人ともガチガチに固まってしまっていた。
夢なんじゃないかと頬を引っ張るような古典的なマネをしてしまいそうな理解に苦しむ光景である。
「そう怪訝そうな顔をするな。しっかし君のお嫁さんは料理がうまいな! 私の妻はそう言ったことが一切出来なくてだな……」
ガハハとドランダラスが笑う。
「あっ、おかえり。リューちゃんの分も朝食出来てるよ」
「おっ、もらうよ」
変に動揺しても仕方ない。
あたかもこれが日常かのようにリュードはドランダラスの横に座った。
エミナたちがマジか、という視線をリュードに向けるけれどこの部屋に限っていえばリュードの方が主のようなものである。
ヘランドの住民でもないし一定の敬意は払いながらもへこへことはしない。
「はい、リューちゃん」
ドランダラスの隣に座って待っているとルフォンがリュードの前に朝食を置いた。
ワンプレートになった朝食からは独特の香りが漂ってきた。
朝食というにはやや刺激の強い香り。
スナハマバトルでもらった香辛料を使った料理であった。
流石に部屋の中で香辛料を使った料理をするのはダメだろうとなった。
なので宿の裏のスペースを利用料を支払って使用させてもらい、コンロを置いて料理をしていた。
ルフォンが作る料理だしドランダラスも食べていたので大丈夫だろうと一口料理を口に含む。
エスニックな香りに反して味は優しい。
香りが強めなだけであっさりと食べ進められる料理で朝食にも悪くない。
香りも食べ進めると慣れてくるし、朝なら目が覚めてむしろ良いぐらいかもしれない。
「食べながらでいいから聞いてほしい」
先に食べ始めていたドランダラスの方が食べ終わるのが早いのは当然。
優雅に口を拭いたドランダラスはようやくこの訪問の目的を話し出した。
「先日、海から魔物が上がってくる騒ぎがあった」
リュードもそれは知っている。
それはまさしくスナハマバトルの時に起きたことで、リュードたちも魔物と戦った当事者である。
「こうした事態の裏には何か異常があるものだと調査を進めた」
魔物が岸にまで上がってくるのはあまり起こりうることではない。
そんなことが起こるということは何かの原因があるはずでヘランドでは調査を進めていた。
「この国、というかこの海には何十年かに1度の頻度で大干潮と呼ばれる自然現象が起こるんだ。魔物の異常行動はこよ大干潮に起因するものだと見ている」
海に異常が起これば海に住む魔物にも異常行動が起こる。
関係性としては理解できる話である。
「そしてだ、大干潮に関してはもう1つ大きな問題があるんだ」
エミナたちはあくまでも聞いていますという態度を崩さない。
リュードは聞いてはいるけど優先はルフォンの料理が冷める前に食べることなので遠慮なく料理をパクつく。
「大干潮そのものが何十年という期間が空くものなのだが、大干潮の数回に1度、大干潮の時に出てくる魔物がいるんだ。普段は海深くにいるのに大干潮の時だけ浅いところに上がってくる……」
リュードの食べ進める手が止まる。
話の内容の先がリュードには分かってしまった。
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