人と希望を伝えて転生したのに竜人という最強種族だったんですが?〜世界はもう救われてるので美少女たちとのんびり旅をします〜

犬型大

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第四章

大人になるために8

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 けれど2人は互いに信頼し合い、互いに協力して大人の試練を見事に乗り越えてみせた。
 父親は自分の所業を深く反省し、2人の愛をたたえた。
 
 男性のことを認め、身分の差にも関わらず2人の仲を許し、最後には結ばれた。
 そんな話が巡り巡って大人の試練にはもう1つの側面が生まれた。
 
 愛の試練なんて呼ばれることもある婚約のような役割すらも持ち合わせることになったのである。
 身分差がある男女が困難な大人の試練に挑むことでその愛を認める。

「なるほどな」

 ロマンチックな話というのは誇張されて伝えられることも多くある。
 そうした逸話から特別な意味を持つようになった行いや儀式というものも各地に存在している。

 血人族にとっての大人になるための試練に若い男女で挑むことの意味がいつしか定着してしまったのだ。
 男女で挑んだからといって確実にそうした関係にならねばならないなんてことはない。

 しかし試練を乗り越える過程で男女の仲が深まることもあるだろうし、結果的に男女の仲になることもあり得る話だと思う。
 伝統を重んじる人も多くいるので若い男女で試練を乗り越えることで婚約に近い関係にさせられることもあるのだろうとリュードは話に理解を示す。
 
 大領主で王の娘であるサキュルラストは簡単に手を出せる相手ではない。
 そこで大人の試練を利用するようにして婚約を結ぼうと狙う人がいるのである。

「どこでも権力って奴は狙われるんだな……」
 
 サキュルラストの夫になれば大領主の権力を利用できるし、王族入りも果たすことができる。
 立候補した連中の中にはそうした結婚を前提とした協力を申し出する者もいた。

 婚約でなくとも利益の便宜を図ってくれればいいという人もいるが少数派である。
 全くなんの要求もない人もいるがそんな人はサキュルラストをよく思わない者、サキュルラストの兄姉たちの息がかかった者たちがほとんど。

 つまり試練を失敗に導いてサキュルラストを潰そうと目論んでいるのだ。
 今回は兄姉が関わってくるし、王族で先祖返りで力のあるサキュルラストの大人の試練となると高難度が予想される。
 
 力のある者でサキュルラストが声をかけるものは数が限られているのだが、そのような人たちはもう息がかけられているか、事前に脅しでもかけられたのかサキュルラストの話すら聞いてくれない。
 だから結婚を前提とした人か、息がかけられないほど弱い人か、それとも1人で行くか。
 
 サキュルラストに残された選択肢はあまりにも非情なものであった。
 兄姉の息がかかっているものにしても、結婚を前提に権力を狙うものにしても信頼はできない。

「そんな時にあなたが現れたのよ」

 血人族はいわゆる吸血鬼である。
 現代ではあまり血を吸わなくても生きていけるので吸血行為は国内で行われる献血によって賄われている。

 相手がどんなであれ血が吸えればいいのではない。
 やっぱり強い相手の血がいいのは本能的に感じる。

 そのために血人族はニオイで相手の強さがなんとなくわかる。
 獣人族の勘と似たようなものだが獣人族の勘よりも鋭いものがある。
 
 ルフォンのように嗅覚的に優れているのではなく相手の魔力の濃さというものが濃いなとわかるのである。
 先祖返りのサキュルラストはより詳細に相手の魔力の強さが分かる。
 リュードからはこれまでに感じたことのないほどの魔力の濃さというものを感じていた。

「あなたは強い……これまで私が会ったどんな人よりも濃い魔力を持っている」

 サキュルラストは潤んだ瞳でリュードを見つめる。
 誰でもいいから私を助けてほしいと最近毎日祈っていた。

 最悪結婚してもいいし、大領主の座を明け渡したっていい。
 全てを上手く乗り越えられ、自分のことを権力だとか、嫌らしい目で見ないならそれでいい。

 そんな時にいたのがレヴィアンだった。
 このようなタイミングでサキュルラストのところに来たのも何かの巡り合わせかもしれないと感じた。
 
 神に祈った助けてくれる人がレヴィアンなのではないかと思って、サキュルラストはドアを蹴破ってお願いをしに行こうと思っていた。
 ドアを蹴破ったのは周りから見てそんなお願いごとをしていないように見せるためであり、これで怒るぐらいなら諦めようと思っていた。
 
 しかしながらそこにいたのがリュードであったのだ。
 部屋に入った瞬間頭がクラリとするほどのニオイを感じた。
 
 サキュルラストは直感した。
 この人こそ神が遣わしたサキュルラストを救うための人なのではないかと。

 実際神様にリュードの行動をコントロールすることなんて出来ないので全部が全部偶然の産物。
 リュードがこの国に来たのも、レヴィアンが決闘をふっかけて部屋に連れてきたのも、その時にサキュルラストが来たのもたまたまタイミングが重なった奇跡である。

 けれども確かにリュードは血人族ではないので血縁関係にもなく、サキュルラストのことを客観的に美少女だと思ってもそういった対象として見ていない。
 大領主なんてめんどくさそうなものになるつもりもなければ能力もピカイチ。

 さらに、リュードを金や権力、脅しで動かすことはまず出来ない。
 仮にサキュルラストの兄たちがリュード接触しようとしてきてもリュードはなびかないのである。

 まさしく神かがり的な人材、探していた人物にピタリとハマるのがリュードであったのだ。
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