人と希望を伝えて転生したのに竜人という最強種族だったんですが?〜世界はもう救われてるので美少女たちとのんびり旅をします〜

犬型大

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第四章

灰色の汗と白い肌1

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 大人の試練は全て乗り越えた。
 ツィツィナが試練を問題なく乗り越えた報告を上げ、国の方で正式に攻略が認められた。

 ラストは正真正銘血人族の大人となったのである。
 長かったラストの旅も終わりを迎えるのだが、やるべきことはまだ残っている。

 最後のダンジョンを終えたラストたち一行は一度王城に戻ってヴァンに報告した。
 今度は謁見するための場所で多くの人に見られながらの報告となり、ヴァンもラストを抱き上げて喜びを伝えたいのを抑えて満足げにうなずくだけにした。

 そして一夜だけ休んで大きな馬車を借りて王城から出発した。
 向かうはクゼナのいるプジャンの領地である。

「早く行かなきゃ」

「そう焦るなここまでしっかりと準備してきたんだから」

 結局最後の最後までクゼナのことは後回しにしてしまったがなんの策もなかったのではない。
 ラストの大人の試練を進めたのにはちゃんとした理由があった。

 もちろんそれはクゼナを堂々と連れ出す口実のためである。
 クゼナをプジャンの反対なく連れ出すためには相応の理由が必要となった。
 クゼナと長時間接触してもプジャンに怪しまれない理由を作るためにラストの大人の試練を進め、成人のお祝いを利用しようと考えていたのだ。
 
 プジャンでも逆らえない相手は当然父親である国王になる。
 王様主催でラストの祝賀会を開き、クゼナを招待することとなればプジャンを止めるわけにはいかない。
 
 だからクゼナに接触する名目としては招待と送迎ということであった。
 ラストがヴァンにパーティーの開催とクゼナの招待をお願いをしたら二つ返事で祝賀会をやることが決定した。

 とりあえずラストがクゼナとレストの分の招待状を書き上げて足速にクゼナのところに向かったのであった。

「待っててね、クゼナ……」

 ラストとクゼナが仲がいいことは周りも知っているので祝賀会にクゼナを呼ぶことに周りは違和感を抱きはしない。
 自然とクゼナを連れ出すことができ、しかも安全な王城の方に連れて行ける。
 
 よくできたアイデアである。

「まずあいつの顔見ないといけないなんてな……」

 さっさとクゼナのところに行ってさっさと次に行きたいのだけど、まずはプジャンへの挨拶が先である。
 面倒なマナーだがここで焦ってはことを仕損じてしまう。

 大人の試練を乗り越えたこと、そして祝賀会をやることと招待状、さらにはクゼナも招待することを伝える。
 ラストの状況がどうなっているか知らなかったプジャンは驚き目を見開いて取り繕うこともできずに目元をひきつらせた。

「大人の試練……乗り越えたこと祝福する……」

 兄であるベギーオの領地で大事件が起きたことはその余波がプジャンの領地にも及んでいて仕事が増えたから知っている。
 嫌な予感はしていたが、まさかラストが無事に大人の試練を乗り越えてしまうことは予想外であった。

 しかもクゼナを連れ出すなんてと思ったが招待状には王様のサインが書いてある。
 クゼナが拒否することは難しい招待となっている。

 自分の方に送られた招待状はともかくクゼナの招待状をプジャンが口出しして止めるのは無理だった。

「お兄様はご出席なさいますか?」

 一応プジャンにも招待状は送ってある。
 敵対しているものの兄弟ではあるのでクゼナを誘ってプジャンを誘わないことはできなかった。
 
 ただプジャンがどうするかは目に見えて分かっている。
 なので無理に来ることはないとだけ最後に伝えて屋敷を後にした。

「チッ……」

 盛大に舌打ちしてプジャンは招待状を破り捨てた。
 クゼナを連れて行かれるのは癪だけど、どの道自分が用意する薬がなければ石化病でクゼナは死んでしまう。

 連れ出されたところでその期限は薬がなくなるまで。
 それほど長い期間でもなく、最終的に戻らねばならないのだから問題はない。

 招待状もプジャンは行かないのだから必要ない。
 王様のお誘いとなっているので断るのには正当な理由が必要だけど、まだベギーオの領地で起きたダンジョンブレイクの余波による仕事が多く残っている。

 領地維持のため仕事があると断りを入れてもウソではないし、それで何かを咎められはしない。
 浅はかなやり方だとプジャンはため息をついた。

 せいぜい楽しむがいいとプジャンは破り捨てた招待状を片付けるように部下に指示をした。

 ーーーーー

「あんな顔したプジャン初めて見た」

 プジャンの屋敷を離れたラストはクスクスと笑っていた。
 目があるのか分からないほど細目のプジャンの瞳を初めてみた気がした。
 
 面倒だと思った挨拶もあんな驚いた顔を見れるなら悪くないとラストは思った。
 大領主ともなると表情に感情を出さないものだけど、驚きを隠せないぐらいにラストのやり遂げたことはすごかったのだ。

 怒りの感情を見せなかったのでプジャンはまだ自分が上であるとでも思っているのだろう。
 しかしプジャンはモノランに狙われていることを知らず、そのために王城に捜査されていることも知らない。

 まな板の上の鯉とでもいうのか。
 知らないというのは幸せなことである。

「ラスト!」

「クゼナ!」

 ベッドの上のクゼナとラストが抱擁を交わす。
 病床に伏せるクゼナのところまでは外の話があまり入ってこない。

 プジャンの手の者も多いので無駄な話をクゼナの前ですることも少ない。
 大事件のダンジョンブレイクのことでさえもつい先日聞いたばかりだった。

 多分ラストのことと関係があると思いながらもダンジョンブレイクの顛末さえも知らなかったクゼナはラストのことを心配していた。

「体は大丈夫?」

 ペタペタとラストの体を触って無事を確かめる。
 ラストぐらい健康体でいて欲しいとクゼナは本気で思っている。

 元気そうなのは見て分かったけれど確かめずにはいられなかった。
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