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第五章
浅き欲望の果て4
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「た、助け、ぐわっ!」
「今のは……」
意外と人と会わないなと考えていると悲鳴が聞こえてきた。
リュードは警戒しつつも声の方に向かう。
時折大きな音も聞こえてきていて、何かがいるのは間違いない。
だいぶ音が近く聞こえてきたところまで来て気づいた。
なんとなく周りの気温が高くなっている。
鍾乳洞の中はヒンヤリとしていて涼しかったのに、上半身裸でも少し暑いくらいに今は感じられていた。
「ひ、ひいぃぃ! 誰か助けて!」
これまでの鍾乳洞もそれなりに広かったがパッと視界が開けた。
十分なぐらいの大きさがある空間に出てきたのだ。
綺麗な角があるかと思えば天然っぽいところもある。
広めの空間だったところを広げて大きな部屋にしているところであった。
思いの外無防備に飛び込んでしまいかけたので急ブレーキをかける。
体を屈めて隠れるようにしながらより詳細な状況を確認しようと部屋の中を見回すとまず視界に飛び込んできたのはネズミであった。
巨大なネズミの背中がリュードには見えていた。
「見たことのない魔物だな」
背中一面が煌々と燃え上がっていて、熱を感じる原因はこのネズミであった。
何かをバリボリと食べている燃えるネズミはリュードには気づいていない。
さらに気づいたのは口周りが赤いのは燃えているせいではなかった。
「リュードさん!」
「……トーイ?」
「た、助けてください!」
一瞬気づかなかった。
いや、声をかけられなかったら一生気づかないだろう。
部屋の中にはネズミの他にトーイがいた。
なぜなのかトーイは部屋の上の方にある出っ張りの上にいて、かなり高いところからリュードに手を振っていた。
出っ張りのところに繋がる道もなさそうでどうやってあんなところに登ったのか、また登った理由も謎である。
ネズミはトーイが上にいると分かっているらしく、いきなり声を上げたトーイの視線の先を追った。
叫んだせいでリュードはバッチリネズミに見つかってしまった。
ひとまず手の届きそうにないトーイは置いておいてネズミはリュードの方にロックオンした。
「早速出番だな!」
逃げるという選択もあるが、今のところこの部屋が1番大きな場所であり最も戦いやすい場所でもある。
槍を使う以上狭い場所に逃げ込んでしまってはリスクが大きくなるだけだ。
リュードは槍を構えてネズミと対峙する。
どうやらネズミの背中は燃やされているのではなく、自分で発火しているようでダメージもなく、戦闘態勢に入ると火の勢いが増していた。
燃え盛る火が相手では素手で戦うのは無理なのでここは距離をとって戦える槍の出番であった。
ネズミらリュードに向かって一直線に駆ける。
槍を突き出して頭を狙うがネズミはサッとサイドステップで槍をかわすと飛び上がる。
空中で体をクルリと反転させると燃え盛る背中を下にしてリュードを燃やし潰そうと落下する。
リュードは前に走って部屋の中に完全に入ってネズミのプレスを回避する。
「危ないな」
ドスンと重たい音がして地面に激突するネズミだがそれでネズミがダメージを受けた様子はない。
背中の炎も脅威だけど攻撃力もそれなりに高そうで、潰されれば熱さを感じる前に死んでしまうだろう。
水や氷といった対抗する魔法が使えれば楽なのに奴隷の首輪のせいで今は魔法が使えない。
リュードは時々反撃を繰り出しながらも基本はネズミの攻撃をしっかりとかわしていく。
攻撃や攻撃パターンは多くなく、動きもシンプル。
突進、プレス、引っ掻き。
よく見れば回避はできるが小回りが効いて動きが素早い。
その上何回か槍は当たっているのだけれどネズミの肉質はは思ったよりも硬かった。
槍先が刺さりきらずにネズミの表面を滑ってしまう。
これではろくなダメージが与えられていない。
「せめて少しでも魔力があれば……」
魔力を通していない槍ではネズミに対して力不足なのであった。
あまり力を込めすぎても反応が遅れてしまうし、力を入れてみても浅く切り裂ける程度にしかならない。
せめて魔力を通せるか、名品ならなとは思うが今の相棒はこの槍しかないのでリュードは隙をみては槍を突き出す。
魔力という大きな力に慣れてしまって忘れていた。
いかに魔力というパワーが自分や自分の周りを強化していてくれていたかを。
体内に魔力はあるので全身にみなぎらせてはいるが表面に魔力がまとえないだけで効果は半減。
槍はネズミを切り裂けず、反撃の目がない。
高い身体能力でなんとか戦いを続けているが身体能力だけで太刀打ちできる相手とは思えなかった。
魔物を倒せば次に進めるなど楽な条件ではなかったのである。
「くっ……!」
思っているよりも体力の消費が激しい。
空気の流れが悪い地下空間でネズミの背中は激しく燃え盛っている。
動き回ってもいるし、火に当たらないように大きく回避しなくてはいけない。
リュードはあっという間に汗だくになっていた。
暑さが体力の消耗を後押しし、希望が見えない状況に精神的にも追い詰められる。
このまま体力を奪われ続けるといかに単純な攻撃とはいえ、かわすこともできなくなってしまう。
リュードの方も慣れてきたのでネズミの顔周りはリュードの反撃で浅い傷が増えてきたが、最初につけた方の傷はもう治ってきている。
こうなると多少のリスクは覚悟の上で短期決戦を目指すしかない。
ネズミの方も攻撃が決まらず、チクチクと無駄に反撃を繰り返してくるリュードに苛立っていた。
リュードが大胆にもネズミに背中を向けて走り出す。
ここまで戦ってきて逃げるのかとネズミの怒りが頂点に達する。
そのままリュードを倒すつもりでトップスピードに乗ってネズミが突進する。
ネズミの方が早くてリュードは逃げ切れない。
しかしリュードが走った先は壁。
当然そこに逃げ道などない。
けれどもリュードは逃げるために走り出したのではなかった。
「今のは……」
意外と人と会わないなと考えていると悲鳴が聞こえてきた。
リュードは警戒しつつも声の方に向かう。
時折大きな音も聞こえてきていて、何かがいるのは間違いない。
だいぶ音が近く聞こえてきたところまで来て気づいた。
なんとなく周りの気温が高くなっている。
鍾乳洞の中はヒンヤリとしていて涼しかったのに、上半身裸でも少し暑いくらいに今は感じられていた。
「ひ、ひいぃぃ! 誰か助けて!」
これまでの鍾乳洞もそれなりに広かったがパッと視界が開けた。
十分なぐらいの大きさがある空間に出てきたのだ。
綺麗な角があるかと思えば天然っぽいところもある。
広めの空間だったところを広げて大きな部屋にしているところであった。
思いの外無防備に飛び込んでしまいかけたので急ブレーキをかける。
体を屈めて隠れるようにしながらより詳細な状況を確認しようと部屋の中を見回すとまず視界に飛び込んできたのはネズミであった。
巨大なネズミの背中がリュードには見えていた。
「見たことのない魔物だな」
背中一面が煌々と燃え上がっていて、熱を感じる原因はこのネズミであった。
何かをバリボリと食べている燃えるネズミはリュードには気づいていない。
さらに気づいたのは口周りが赤いのは燃えているせいではなかった。
「リュードさん!」
「……トーイ?」
「た、助けてください!」
一瞬気づかなかった。
いや、声をかけられなかったら一生気づかないだろう。
部屋の中にはネズミの他にトーイがいた。
なぜなのかトーイは部屋の上の方にある出っ張りの上にいて、かなり高いところからリュードに手を振っていた。
出っ張りのところに繋がる道もなさそうでどうやってあんなところに登ったのか、また登った理由も謎である。
ネズミはトーイが上にいると分かっているらしく、いきなり声を上げたトーイの視線の先を追った。
叫んだせいでリュードはバッチリネズミに見つかってしまった。
ひとまず手の届きそうにないトーイは置いておいてネズミはリュードの方にロックオンした。
「早速出番だな!」
逃げるという選択もあるが、今のところこの部屋が1番大きな場所であり最も戦いやすい場所でもある。
槍を使う以上狭い場所に逃げ込んでしまってはリスクが大きくなるだけだ。
リュードは槍を構えてネズミと対峙する。
どうやらネズミの背中は燃やされているのではなく、自分で発火しているようでダメージもなく、戦闘態勢に入ると火の勢いが増していた。
燃え盛る火が相手では素手で戦うのは無理なのでここは距離をとって戦える槍の出番であった。
ネズミらリュードに向かって一直線に駆ける。
槍を突き出して頭を狙うがネズミはサッとサイドステップで槍をかわすと飛び上がる。
空中で体をクルリと反転させると燃え盛る背中を下にしてリュードを燃やし潰そうと落下する。
リュードは前に走って部屋の中に完全に入ってネズミのプレスを回避する。
「危ないな」
ドスンと重たい音がして地面に激突するネズミだがそれでネズミがダメージを受けた様子はない。
背中の炎も脅威だけど攻撃力もそれなりに高そうで、潰されれば熱さを感じる前に死んでしまうだろう。
水や氷といった対抗する魔法が使えれば楽なのに奴隷の首輪のせいで今は魔法が使えない。
リュードは時々反撃を繰り出しながらも基本はネズミの攻撃をしっかりとかわしていく。
攻撃や攻撃パターンは多くなく、動きもシンプル。
突進、プレス、引っ掻き。
よく見れば回避はできるが小回りが効いて動きが素早い。
その上何回か槍は当たっているのだけれどネズミの肉質はは思ったよりも硬かった。
槍先が刺さりきらずにネズミの表面を滑ってしまう。
これではろくなダメージが与えられていない。
「せめて少しでも魔力があれば……」
魔力を通していない槍ではネズミに対して力不足なのであった。
あまり力を込めすぎても反応が遅れてしまうし、力を入れてみても浅く切り裂ける程度にしかならない。
せめて魔力を通せるか、名品ならなとは思うが今の相棒はこの槍しかないのでリュードは隙をみては槍を突き出す。
魔力という大きな力に慣れてしまって忘れていた。
いかに魔力というパワーが自分や自分の周りを強化していてくれていたかを。
体内に魔力はあるので全身にみなぎらせてはいるが表面に魔力がまとえないだけで効果は半減。
槍はネズミを切り裂けず、反撃の目がない。
高い身体能力でなんとか戦いを続けているが身体能力だけで太刀打ちできる相手とは思えなかった。
魔物を倒せば次に進めるなど楽な条件ではなかったのである。
「くっ……!」
思っているよりも体力の消費が激しい。
空気の流れが悪い地下空間でネズミの背中は激しく燃え盛っている。
動き回ってもいるし、火に当たらないように大きく回避しなくてはいけない。
リュードはあっという間に汗だくになっていた。
暑さが体力の消耗を後押しし、希望が見えない状況に精神的にも追い詰められる。
このまま体力を奪われ続けるといかに単純な攻撃とはいえ、かわすこともできなくなってしまう。
リュードの方も慣れてきたのでネズミの顔周りはリュードの反撃で浅い傷が増えてきたが、最初につけた方の傷はもう治ってきている。
こうなると多少のリスクは覚悟の上で短期決戦を目指すしかない。
ネズミの方も攻撃が決まらず、チクチクと無駄に反撃を繰り返してくるリュードに苛立っていた。
リュードが大胆にもネズミに背中を向けて走り出す。
ここまで戦ってきて逃げるのかとネズミの怒りが頂点に達する。
そのままリュードを倒すつもりでトップスピードに乗ってネズミが突進する。
ネズミの方が早くてリュードは逃げ切れない。
しかしリュードが走った先は壁。
当然そこに逃げ道などない。
けれどもリュードは逃げるために走り出したのではなかった。
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