人と希望を伝えて転生したのに竜人という最強種族だったんですが?〜世界はもう救われてるので美少女たちとのんびり旅をします〜

犬型大

文字の大きさ
332 / 550
第五章

浅き欲望の果て4

しおりを挟む
「た、助け、ぐわっ!」

「今のは……」

 意外と人と会わないなと考えていると悲鳴が聞こえてきた。
 リュードは警戒しつつも声の方に向かう。

 時折大きな音も聞こえてきていて、何かがいるのは間違いない。
 だいぶ音が近く聞こえてきたところまで来て気づいた。

 なんとなく周りの気温が高くなっている。
 鍾乳洞の中はヒンヤリとしていて涼しかったのに、上半身裸でも少し暑いくらいに今は感じられていた。

「ひ、ひいぃぃ! 誰か助けて!」

 これまでの鍾乳洞もそれなりに広かったがパッと視界が開けた。
 十分なぐらいの大きさがある空間に出てきたのだ。

 綺麗な角があるかと思えば天然っぽいところもある。
 広めの空間だったところを広げて大きな部屋にしているところであった。

 思いの外無防備に飛び込んでしまいかけたので急ブレーキをかける。
 体を屈めて隠れるようにしながらより詳細な状況を確認しようと部屋の中を見回すとまず視界に飛び込んできたのはネズミであった。

 巨大なネズミの背中がリュードには見えていた。

「見たことのない魔物だな」

 背中一面が煌々と燃え上がっていて、熱を感じる原因はこのネズミであった。
 何かをバリボリと食べている燃えるネズミはリュードには気づいていない。

 さらに気づいたのは口周りが赤いのは燃えているせいではなかった。

「リュードさん!」

「……トーイ?」

「た、助けてください!」

 一瞬気づかなかった。
 いや、声をかけられなかったら一生気づかないだろう。

 部屋の中にはネズミの他にトーイがいた。
 なぜなのかトーイは部屋の上の方にある出っ張りの上にいて、かなり高いところからリュードに手を振っていた。

 出っ張りのところに繋がる道もなさそうでどうやってあんなところに登ったのか、また登った理由も謎である。
 ネズミはトーイが上にいると分かっているらしく、いきなり声を上げたトーイの視線の先を追った。
 
 叫んだせいでリュードはバッチリネズミに見つかってしまった。
 ひとまず手の届きそうにないトーイは置いておいてネズミはリュードの方にロックオンした。

「早速出番だな!」

 逃げるという選択もあるが、今のところこの部屋が1番大きな場所であり最も戦いやすい場所でもある。
 槍を使う以上狭い場所に逃げ込んでしまってはリスクが大きくなるだけだ。

 リュードは槍を構えてネズミと対峙する。
 どうやらネズミの背中は燃やされているのではなく、自分で発火しているようでダメージもなく、戦闘態勢に入ると火の勢いが増していた。

 燃え盛る火が相手では素手で戦うのは無理なのでここは距離をとって戦える槍の出番であった。
 ネズミらリュードに向かって一直線に駆ける。
 
 槍を突き出して頭を狙うがネズミはサッとサイドステップで槍をかわすと飛び上がる。
 空中で体をクルリと反転させると燃え盛る背中を下にしてリュードを燃やし潰そうと落下する。
 
 リュードは前に走って部屋の中に完全に入ってネズミのプレスを回避する。

「危ないな」
 
 ドスンと重たい音がして地面に激突するネズミだがそれでネズミがダメージを受けた様子はない。
 背中の炎も脅威だけど攻撃力もそれなりに高そうで、潰されれば熱さを感じる前に死んでしまうだろう。

 水や氷といった対抗する魔法が使えれば楽なのに奴隷の首輪のせいで今は魔法が使えない。
 リュードは時々反撃を繰り出しながらも基本はネズミの攻撃をしっかりとかわしていく。

 攻撃や攻撃パターンは多くなく、動きもシンプル。
 突進、プレス、引っ掻き。

 よく見れば回避はできるが小回りが効いて動きが素早い。
 その上何回か槍は当たっているのだけれどネズミの肉質はは思ったよりも硬かった。

 槍先が刺さりきらずにネズミの表面を滑ってしまう。
 これではろくなダメージが与えられていない。

「せめて少しでも魔力があれば……」

 魔力を通していない槍ではネズミに対して力不足なのであった。
 あまり力を込めすぎても反応が遅れてしまうし、力を入れてみても浅く切り裂ける程度にしかならない。

 せめて魔力を通せるか、名品ならなとは思うが今の相棒はこの槍しかないのでリュードは隙をみては槍を突き出す。

 魔力という大きな力に慣れてしまって忘れていた。
 いかに魔力というパワーが自分や自分の周りを強化していてくれていたかを。

 体内に魔力はあるので全身にみなぎらせてはいるが表面に魔力がまとえないだけで効果は半減。
 槍はネズミを切り裂けず、反撃の目がない。

 高い身体能力でなんとか戦いを続けているが身体能力だけで太刀打ちできる相手とは思えなかった。
 魔物を倒せば次に進めるなど楽な条件ではなかったのである。

「くっ……!」

 思っているよりも体力の消費が激しい。
 空気の流れが悪い地下空間でネズミの背中は激しく燃え盛っている。

 動き回ってもいるし、火に当たらないように大きく回避しなくてはいけない。
 リュードはあっという間に汗だくになっていた。

 暑さが体力の消耗を後押しし、希望が見えない状況に精神的にも追い詰められる。
 このまま体力を奪われ続けるといかに単純な攻撃とはいえ、かわすこともできなくなってしまう。
 
 リュードの方も慣れてきたのでネズミの顔周りはリュードの反撃で浅い傷が増えてきたが、最初につけた方の傷はもう治ってきている。
 こうなると多少のリスクは覚悟の上で短期決戦を目指すしかない。
 
 ネズミの方も攻撃が決まらず、チクチクと無駄に反撃を繰り返してくるリュードに苛立っていた。
 リュードが大胆にもネズミに背中を向けて走り出す。
 
 ここまで戦ってきて逃げるのかとネズミの怒りが頂点に達する。
 そのままリュードを倒すつもりでトップスピードに乗ってネズミが突進する。
 
 ネズミの方が早くてリュードは逃げ切れない。
 しかしリュードが走った先は壁。
 
 当然そこに逃げ道などない。
 けれどもリュードは逃げるために走り出したのではなかった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

S級冒険者の子どもが進む道

干支猫
ファンタジー
【12/26完結】 とある小さな村、元冒険者の両親の下に生まれた子、ヨハン。 父親譲りの剣の才能に母親譲りの魔法の才能は両親の想定の遥か上をいく。 そうして王都の冒険者学校に入学を決め、出会った仲間と様々な学生生活を送っていった。 その中で魔族の存在にエルフの歴史を知る。そして魔王の復活を聞いた。 魔王とはいったい? ※感想に盛大なネタバレがあるので閲覧の際はご注意ください。

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

攻撃魔法を使えないヒーラーの俺が、回復魔法で最強でした。 -俺は何度でも救うとそう決めた-【[完]】

水無月いい人(minazuki)
ファンタジー
【HOTランキング一位獲得作品】 【一次選考通過作品】 ---  とある剣と魔法の世界で、  ある男女の間に赤ん坊が生まれた。  名をアスフィ・シーネット。  才能が無ければ魔法が使えない、そんな世界で彼は運良く魔法の才能を持って産まれた。  だが、使用できるのは攻撃魔法ではなく回復魔法のみだった。  攻撃魔法を一切使えない彼は、冒険者達からも距離を置かれていた。 彼は誓う、俺は回復魔法で最強になると。  --------- もし気に入っていただけたら、ブクマや評価、感想をいただけると大変励みになります! #ヒラ俺 この度ついに完結しました。 1年以上書き続けた作品です。 途中迷走してました……。 今までありがとうございました! --- 追記:2025/09/20 再編、あるいは続編を書くか迷ってます。 もし気になる方は、 コメント頂けるとするかもしれないです。

ダンジョン冒険者にラブコメはいらない(多分)~正体を隠して普通の生活を送る男子高生、実は最近注目の高ランク冒険者だった~

エース皇命
ファンタジー
 学校では正体を隠し、普通の男子高校生を演じている黒瀬才斗。実は仕事でダンジョンに潜っている、最近話題のAランク冒険者だった。  そんな黒瀬の通う高校に突如転校してきた白桃楓香。初対面なのにも関わらず、なぜかいきなり黒瀬に抱きつくという奇行に出る。 「才斗くん、これからよろしくお願いしますねっ」  なんと白桃は黒瀬の直属の部下として派遣された冒険者であり、以後、同じ家で生活を共にし、ダンジョンでの仕事も一緒にすることになるという。  これは、上級冒険者の黒瀬と、美少女転校生の純愛ラブコメディ――ではなく、ちゃんとしたダンジョン・ファンタジー(多分)。 ※小説家になろう、カクヨムでも連載しています。

ハズレ職業の料理人で始まった俺のVR冒険記、気づけば最強アタッカーに!ついでに、女の子とVチューバー始めました

グミ食べたい
ファンタジー
現実に疲れた俺が辿り着いたのは、自由度抜群のVRMMORPG『アナザーワールド・オンライン』。 選んだ職業は“料理人”。 だがそれは、戦闘とは無縁の完全な負け組職業だった。 地味な日々の中、レベル上げ中にネームドモンスター「猛き猪」が出現。 勝てないと判断したアタッカーはログアウトし、残されたのは三人だけ。 熊型獣人のタンク、ヒーラー、そして非戦闘職の俺。 絶体絶命の状況で包丁を構えた瞬間――料理スキルが覚醒し、常識外のダメージを叩き出す! そこから始まる、料理人の大逆転。 ギルド設立、仲間との出会い、意外な秘密、そしてVチューバーとしての活動。 リアルでは無職、ゲームでは負け組。 そんな男が奇跡を起こしていくVRMMO物語。

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編

処理中です...