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第七章
ケーフィス教の悲願1
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「ようこそいらっしゃいました。わざわざご足労いただきましてありがとうございます」
人が良さそうに柔らかく笑う中年の男性オルタンタスは立ち上がって深々と礼をした。
お城の裏手近くにあるレストランにリュードたちは来ていた。
貸し切りの札がかけられていて、限られた客しかいないので店の中は広く感じられる。
貸し切ったのはケーフィス教だ。
そしてリュードたちはレストランにご招待いただいたので来ていたのである。
「……この格好で大丈夫かな?」
「俺たちしかいないし大丈夫だろ」
くれぐれもラフな格好でお願いしますなんて言うから普通の格好できたのに、思い切りドレスコードのありそうなお店でリュードもラストもちょっとビビっている。
貸し切りだからいいんだろうけど事前にそんなお店だと伝えてほしかったと思うものだ。
恐る恐る中に入るとダリルを始めとした数人の人がリュードたちを待っていた。
その中で始めに挨拶をしたのがオルタンタスであった。
枢機卿ヒョルド、大司教オルタンタス、使徒ダリルと一般信者がここにいたら気を失ってしまうのではないかという人たちが集まっていた。
今この国にいるケーフィス教のトップの方々である。
「お招きいただいて光栄です。……なんでそんなガチガチになってんだよ?」
「いやいや! 枢機卿とか普通にすごい人だかんね!」
旅に関してはリュードたちよりも疎いが、ラストはこれまで政治的にトップの立場にいた。
周りの人の補助が大きくお飾り的なところもあったけれど、仕事は真面目にこなしていた。
政治と切っても切り離せないものとして宗教がある。
血人族の国なので血人族の神もたたえているものの、他の種族も多く、かつ真人族も排他しているわけではないので色々な宗教があるのは当然のことだった。
特別宗教にへりくだることはなくても余計な火種を抱えて良いことなどない。
失礼のないように宗教についてはよく学ばされた。
普段職責が上の人は来ないのだけど、領地に視察などの理由で職責が上の人が来ることになるとラストたちも気を使ったものだ。
今はイチ個人でありケーフィス教でもなんでもないので対等な立場なはずだけど、そういった過去があるから偉い人だと理解しているし緊張はしてしまう。
「ふーん、そうなのか」
対してリュードは何も思わない。
勉強不足なのではなくリュードはケーフィス教の信者でもなくもちろん別宗教にも入信していない。
目の前にいる人たちが宗教の上の人たちなのはわかるけれども、ただそれだけなのである。
あくまで対等な個人。
年長者や知り合って日の浅い関係であるという敬意は払うけれど、ラストのように緊張する相手ではないと思っている。
ルフォンは特に宗教上の偉い人だとかは気にしない。
無礼を働くつもりはないけれど、いつも通りリュードの様子を見ながら適度に距離を取って対応するつもりだ。
「お座りください。是非とも楽に話しましょう」
オルタンタスもリュードの態度を不快には思わない。
むしろ堂々として良い青年だと思った。
座って軽く自己紹介をする。
職責はヒョルドの方が上だが、今回はオルタンタスがメインで話を進めるようだ。
偉いとはいうもののヒョルドの方もニコニコとしていていいおじいちゃんな感じである。
ケーフィス教は全体的に雰囲気が明るくていい。
ケーフィスって感じがする。
「あなたがダリルの言う天啓のお方ですね? お会いできて光栄です」
自己紹介も済んで料理を頼みオルタンタスが改めて深く頭を下げ、ヒョルドとダリルも同様にリュードに礼をする。
「い、いえ、そんな……」
丁寧すぎるぐらいの態度にリュードがあわてる。
楽にと言うのに楽じゃないのはオルタンタスたちの方だ。
「今回気兼ねなくお話できますように多少無理を言ってこの店を押さえましたので。教会に呼び出すよりは重たくないと思いました」
「お気遣いに感謝します」
リュードも丁寧に返す。
対等であるのだ、相手が丁寧に接するならリュードも丁寧に接する。
「それでは早速ですが本題に入りましょう。……本当にテレサさんを何とか治すことができるのでしょうか?」
楽にとか気兼ねなくとか言うが、内容が内容だけにどうしても緊張感のある空気になってしまう。
「このようにお聞きしますと疑ってしまっているように聞こえてしまうかもしれません。しかしこちらも手を尽くしてテレサさんを助けようとしているのですが何の手かがりもなく、改善の兆しもみられない。他の神を信仰する宗教も協力して方法を探しているのですが……」
オルタンタスがゆっくりと首を横に振る。
努力虚しくここまでこれといって成果はない。
そもそもここまで重たくなったのも謎なのだ。
降臨は強力な代わりに代償がつきまとう。
しかしそれは命を奪うものではない。
乱用までされなくとも過去に使われることは度々ある降臨であるが代償も様々だ。
長期的に神聖力が弱くなったり使えなくなったりすることもあれば、体の倦怠感や筋肉痛のような痛みを伴ったりすることもある。
過去の事例では一月ほど眠り続けた例もあったが、それもある時にパッと目を覚ました。
こうしてみると重たいものもあったけれど、過去の例ではどれも症状は快方に向かっていった傾向にある。
しかしテレサの場合は逆である。
段々と代償が重くなっている。
寝る時間が伸び、起きる時間が短くなっている。
このままでは永遠に眠ってしまうのではないかと思えるほどにだ。
こうした代償の症状は過去の記録にもない。
ある程度までいけば治るだろうという意見もあるけれど、テレサの姿を見た人たちはそんな楽観視はできなかった。
神聖力でも治療はできず何も分からない八方塞がり。
ただ様子を見ることしかできないと困り果てていたらダリルに神託が下った。
ダリルがウソをつく男ではないので神託が下ったというなら本当だろうが、リュードが本当に神託で言われた相手なのか疑いは残る。
人が良さそうに柔らかく笑う中年の男性オルタンタスは立ち上がって深々と礼をした。
お城の裏手近くにあるレストランにリュードたちは来ていた。
貸し切りの札がかけられていて、限られた客しかいないので店の中は広く感じられる。
貸し切ったのはケーフィス教だ。
そしてリュードたちはレストランにご招待いただいたので来ていたのである。
「……この格好で大丈夫かな?」
「俺たちしかいないし大丈夫だろ」
くれぐれもラフな格好でお願いしますなんて言うから普通の格好できたのに、思い切りドレスコードのありそうなお店でリュードもラストもちょっとビビっている。
貸し切りだからいいんだろうけど事前にそんなお店だと伝えてほしかったと思うものだ。
恐る恐る中に入るとダリルを始めとした数人の人がリュードたちを待っていた。
その中で始めに挨拶をしたのがオルタンタスであった。
枢機卿ヒョルド、大司教オルタンタス、使徒ダリルと一般信者がここにいたら気を失ってしまうのではないかという人たちが集まっていた。
今この国にいるケーフィス教のトップの方々である。
「お招きいただいて光栄です。……なんでそんなガチガチになってんだよ?」
「いやいや! 枢機卿とか普通にすごい人だかんね!」
旅に関してはリュードたちよりも疎いが、ラストはこれまで政治的にトップの立場にいた。
周りの人の補助が大きくお飾り的なところもあったけれど、仕事は真面目にこなしていた。
政治と切っても切り離せないものとして宗教がある。
血人族の国なので血人族の神もたたえているものの、他の種族も多く、かつ真人族も排他しているわけではないので色々な宗教があるのは当然のことだった。
特別宗教にへりくだることはなくても余計な火種を抱えて良いことなどない。
失礼のないように宗教についてはよく学ばされた。
普段職責が上の人は来ないのだけど、領地に視察などの理由で職責が上の人が来ることになるとラストたちも気を使ったものだ。
今はイチ個人でありケーフィス教でもなんでもないので対等な立場なはずだけど、そういった過去があるから偉い人だと理解しているし緊張はしてしまう。
「ふーん、そうなのか」
対してリュードは何も思わない。
勉強不足なのではなくリュードはケーフィス教の信者でもなくもちろん別宗教にも入信していない。
目の前にいる人たちが宗教の上の人たちなのはわかるけれども、ただそれだけなのである。
あくまで対等な個人。
年長者や知り合って日の浅い関係であるという敬意は払うけれど、ラストのように緊張する相手ではないと思っている。
ルフォンは特に宗教上の偉い人だとかは気にしない。
無礼を働くつもりはないけれど、いつも通りリュードの様子を見ながら適度に距離を取って対応するつもりだ。
「お座りください。是非とも楽に話しましょう」
オルタンタスもリュードの態度を不快には思わない。
むしろ堂々として良い青年だと思った。
座って軽く自己紹介をする。
職責はヒョルドの方が上だが、今回はオルタンタスがメインで話を進めるようだ。
偉いとはいうもののヒョルドの方もニコニコとしていていいおじいちゃんな感じである。
ケーフィス教は全体的に雰囲気が明るくていい。
ケーフィスって感じがする。
「あなたがダリルの言う天啓のお方ですね? お会いできて光栄です」
自己紹介も済んで料理を頼みオルタンタスが改めて深く頭を下げ、ヒョルドとダリルも同様にリュードに礼をする。
「い、いえ、そんな……」
丁寧すぎるぐらいの態度にリュードがあわてる。
楽にと言うのに楽じゃないのはオルタンタスたちの方だ。
「今回気兼ねなくお話できますように多少無理を言ってこの店を押さえましたので。教会に呼び出すよりは重たくないと思いました」
「お気遣いに感謝します」
リュードも丁寧に返す。
対等であるのだ、相手が丁寧に接するならリュードも丁寧に接する。
「それでは早速ですが本題に入りましょう。……本当にテレサさんを何とか治すことができるのでしょうか?」
楽にとか気兼ねなくとか言うが、内容が内容だけにどうしても緊張感のある空気になってしまう。
「このようにお聞きしますと疑ってしまっているように聞こえてしまうかもしれません。しかしこちらも手を尽くしてテレサさんを助けようとしているのですが何の手かがりもなく、改善の兆しもみられない。他の神を信仰する宗教も協力して方法を探しているのですが……」
オルタンタスがゆっくりと首を横に振る。
努力虚しくここまでこれといって成果はない。
そもそもここまで重たくなったのも謎なのだ。
降臨は強力な代わりに代償がつきまとう。
しかしそれは命を奪うものではない。
乱用までされなくとも過去に使われることは度々ある降臨であるが代償も様々だ。
長期的に神聖力が弱くなったり使えなくなったりすることもあれば、体の倦怠感や筋肉痛のような痛みを伴ったりすることもある。
過去の事例では一月ほど眠り続けた例もあったが、それもある時にパッと目を覚ました。
こうしてみると重たいものもあったけれど、過去の例ではどれも症状は快方に向かっていった傾向にある。
しかしテレサの場合は逆である。
段々と代償が重くなっている。
寝る時間が伸び、起きる時間が短くなっている。
このままでは永遠に眠ってしまうのではないかと思えるほどにだ。
こうした代償の症状は過去の記録にもない。
ある程度までいけば治るだろうという意見もあるけれど、テレサの姿を見た人たちはそんな楽観視はできなかった。
神聖力でも治療はできず何も分からない八方塞がり。
ただ様子を見ることしかできないと困り果てていたらダリルに神託が下った。
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