人と希望を伝えて転生したのに竜人という最強種族だったんですが?〜世界はもう救われてるので美少女たちとのんびり旅をします〜

犬型大

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第八章

人を呪わば穴二つ

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 話によるとカイーダはただの引きこもりで特に戦いの心得はない男である。
 だがホルドは元冒険者のギルド職員だった。
 
 冒険者ギルドで働く人で元冒険者という人は少なくない。
 冒険者であるということは戦えるということになる。

 子供の体格しかない今では危険な相手である。

「ただまあ、ホルドはうだつの上がらない冒険者で強くない冒険者だったからな。今もどれだけ戦えるのかは知らない」
 
 冒険者でまだ若いのにギルドで働いているのには理由がある。
 冒険者としては弱かったけれど、ある程度数字に強くて書類仕事が出来たのでギルドに就職できたような人だったのだ。

「それなら勝てるかな?」

 子供サイズにまで戻ったので、それなりに力は出る。
 どれぐらいになるのかはちょっと分からないけど、子供部門の力比べで優勝して大人部門に出たこともあるリュードはちょっとやそっとの相手じゃ負けない自信はある。

 子供サイズなので元領主の館の塀のツタはもう登れない。
 襲撃するのだしこの際バレバレの正面突破で行ったって構いやしない。

「正面突破だな」

 正面玄関から突撃することにした。
 表向きには主人のいない家。

 元領主がいた時には門前に見張りの私兵を置いていたけれど、今は誰もいない。
 ここに至るまでの町中もこれまで通り、無気力で同じことを繰り返す偽物がいつものように生活を続けていた。

「よし、行きますよ!」

 リュードたちは元領主の館の前まで来た。
 鉄の門は固く閉ざされ開かない。
 
 けれどそんなもので防げると思うなかれ。
 リュードは剣を抜く。

 不思議なことに剣もリュードと同じくちょっとずつサイズが戻っていったので、子供サイズのリュードでも扱える大きさのままであった。

「はあっ!」

 剣に魔力を込めて鉄の門を切り裂くリュード。
 鉄の門は倒れて派手に音を立てるけれど、中から誰かが出てくる様子もない。

 それなら遠慮なく入らせていただく。

「リューちゃん……あの、この声って……」

「アレ……だよね?」

 静かな元領主の館の中。
 女性の嬌声が聞こえていた。
 
 前回は一階ではあまり聞こえなかったのに、今回は割とちゃんと聞こえてきてリュードは思わず頭を抱える。
 前の様子を思い出すにほとんどドアが閉まっていたために聞こえなかったのだが、今回はもしかしたら全開なのかもしれない。

 ルフォンやラストも無知な少女でもない。
 その声が何なのか分かっていて顔を赤くする。

 前は来なかった警備隊の若い奴なんかも顔を赤くしている奴がいた。

「欲望の果ての声……だけど今はこれで都合がいいな」

 ちょっと嫌だけど、お楽しみで何にも気づかないなら別にそれで構わない。
 そちらの方にも行くけれどまず行くべきところがある。

「今のうちにニャロを助け出そう」

「先生!」

「そうだ。全く気づかれてなきゃ堂々と助けられるだろ」

 それはニャロのところである。

「ニャロ、助けに来たぞ!」

「にゃー! リュード! 待ってたにゃー!」

「ドアから少し離れててくれ」

「分かったにゃ」

 前回は小さすぎて助けられなかったけれど、今回は違う。
 鉄の門だって切り裂くことができたのに、木のドアごときないにも等しい。

 そんなに魔力を込めなくても大丈夫だと思うけど、格子を嵌められていたほどの部屋なのでしっかりと魔力を込めてドアを切り裂く。

「助けに来たぜ」

 切って分かったのは、ただの木のドアでなく中に鉄が入っていて頑丈に補強されていたということである
 なんの部屋なのかと渋い思いはあるが、切り裂くのには大きな影響はなかった。

 ドアが切り裂かれて崩れ落ちてリュードとニャロの目が合う。
 
「えっ、ちっさい……」

 ニャロは助けに来たからてっきりリュードたちも大きくなっているかと思っていた。
 大きくはなっているのだけど、まだまだ小さい。

 一緒に残ってくれた子からそんな予感はしていた。
 ただ、元より小さい子供と大人では戻った大きさも差があって、ニャロもどれほど大きくなったのか見誤っていた。
 
 でも小さくてもリュードはリュードだ。

「リュ、リュードォ!」

「……よく頑張ったな」

 ブワッと涙が流れ出してニャロがリュードを持ち上げるようにして抱きつく。

「怖かった……怖かったにゃー! お腹もすいたし、部屋の隅でおトイレするの嫌だったにゃーん!」

 足もつかないぐらいに持ち上げられたリュードは、抵抗もしないで優しくニャロの頭を撫でる。
 小人化していた人の中にあって唯一無事であったニャロが、不安そうにしては他の人も不安になる。

 だからニャロは弱音も吐かずリュードたちが助けてくれると人々を鼓舞して治療していた。
 今も側にいてくれる子のためにニャロは内心の恐怖を押し殺しながら笑ってあとちょっと、もうちょっとと耐えていた。

 助けられて押し殺してきた不安や恐怖から解放されてどうしても涙が止まらなかった。
 リュードが戻ってこないのではないか、いつか殺されるのではないか、このまま空腹で死んでいくのではないか。

 そんな重たくて胸を締め付ける考えが全て消えていく。
 ニャロの気持ちはみんな分かっている。

 だからニャロがリュードを抱きしめて泣いていてもルフォンやラストは許してあげる。

「先生……」

「コユキ……無事でよかったにゃー!」

 前に来た時にはコユキはいなかった。
 何も言われなかったけどリュードの態度を見れば無事なのは分かっていたので何も言わなかった。

 けれどコユキのことも心配だった。
 リュードを下ろしてコユキも抱きしめる。
 
 痛いほどに抱きしめられるけどコユキは優しく微笑んでニャロを抱きしめ返していた。
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