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第51話 回復薬は正当な対価で買い取って貰います。え? でもでもだって? 駄々を捏ねないで下さいよ。普通の事ですよね?
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「回復薬の流通は冒険者の活動根幹に係る。君が回復薬を定期的に卸してくれるというのであればそうする事も考えない訳ではないが……」
「回復薬をあんなクソみたいな値段で定期的に? ご冗談でしょう?」
そう言うと、副協会長はムッとした表情を浮かべる。
「それはどういう意味かね?」
「あれ、おかしい。言葉が通じなかったのかな? あんな安い値段じゃ回復薬は卸せないと言ってるんですよ」
「……確かにそうかも知れないが、一本百万コルや一千万コルする回復薬なんて誰も飲もうと思わないだろう? だったら、少しでも値段を下げて皆に飲んで貰った方がいいじゃないか。それともなんだ? ミズガルズ聖国にでも売りに行く気か?」
「それもいいかもしれませんね……」
腕に嵌めている課金アイテム『ムーブ・ユグドラシル』を見せると、副協会長は苦虫を噛み締めたかの様な表情を浮かべた。
「自信の源はそれか……。まさか、その腕輪を持っているとは……。なるほど、それがあれば、確かにミズガルズ聖国に売りに行く事ができるかもしれない。しかし、それは国益に反する。君は国を裏切るのかね?」
「……正当な金額で購入して頂けるのであれば、そうする必要性もなくなるんですけどね」
「…………」
俺の一言を聞き、副協会長は黙り込む。
「……とはいえ、このままでは平行線。折角の話し合いを無為にしたくはありません。副協会長としての立場もあるでしょう。妥協案として、初級回復薬のみ、安価な金額で卸します。しかし、中級以上の回復薬については正当な金額での買い取って頂きます」
「……正当な金額とは?」
「決まっているでしょう? 最低でもミズガルズ聖国と同じ金額で買い取って貰うと言ってるんですよ」
「……いいだろう。しかし、それを飲むには条件がある」
「条件?」
「ああ、毎月最低一千本『初級回復薬』を納入して貰う。それが条件だ……」
毎月最低一千本の初級回復薬の納入か……。
楽勝だな。一日初級ダンジョンに籠れば簡単に用意する事ができる。
しかし、それを卸すのも条件次第。
少しばかり考え事をしていると、何を勘違いしたのか副協会長は笑みを浮かべる。
「ふふふっ、それだけ大口を叩くんだ。最低一千本納入して貰わない事には話にもならないぞ? もし納入できないというのであれば……」
「わかりました。毎月一千本ですね。それだけの本数を納入するのは構いませんが、納入金額によります。確か、ミズガルズ聖国では、一本当たり十万コルで流通していた筈……。ここは副協会長の顔を立てて、一本当たり一万コルで納入させて頂きますよ」
すると、副協会長は唖然とした表情を浮かべる。
「な、なにっ!?」
「いや、『なにっ!?』と言われても……」
あれ、もしかして、結構無茶な条件を突きつけたつもりだったのだろうか?
「ああ、それと、そちらが条件を付けるなら、こちらも条件を付けさせて貰いますね。一本一万コルで毎月一千本の初級回復薬を納入します。その代わり俺が納入する中級以上の回復薬は必ず買い取って下さい。ああ、安心して下さい。回復薬は全て最高品質です。損はさせませんよ」
「い、いや、だがしかし……」
目論見が外れ慌てふためく副協会長。
どんな目論見があったか知らないけど、俺の事を舐め過ぎだ。
大方、一個人に一千本の回復薬なんて納入する事はできないだろうと高を括っていたんだろうけど、残念でした。回復薬なんて初級ダンジョンでモンスターを倒しまくれば、簡単にドロップするんだよ!
「初級回復薬は一万コルで卸しますが、中級回復薬は百万コル。上級回復薬は一千万コルで買い取って貰います。この金額はミズガルズ聖国と同等です。これ以上は、びた一文まけません。また買取を拒否した場合、特別価格での販売は無効とさせて頂きます。まあ買い取って貰えない場合、ミズガルズ聖国に売りに行けばいいだけですしね」
以前、うちで働くレイネルさんは『上級回復薬を作る事のできる調合師なんて、国中探してもどこにもおらぬかもしれぬ』と言っていた。『ミズガルズ聖国なら上級回復薬を作る事のできる調合師がいるかもしれぬがの』とも……。
この世界がまだゲームだった頃、『調合師』なんて資格はなかった。
今は回復薬が貴重なものとなった世界。
副協会長が掲げる回復薬を安価で冒険者に流通させたいという崇高な理念も回復薬を安く売ってくれる調合師あってのもの。
とはいえ、理念だけ立派でも仕方がない。
受付嬢から受けた屈辱も、それを誘引した副協会長への恨みもある。
それなりにメリットは示した。選択肢がこちらにある以上、副協会長にできる事はただ一つ。
俺の条件を飲む事だけだ。
貴重な回復薬をミズガルズ聖国に売られたくなかったらね。
「うぐぐぐぐぐっ……。わかった。その条件を飲もう」
「えっ? なんですか?? その条件を飲もう??」
耳が悪いのかな。すげー偉そうに聞こえる。
「……その条件で契約させて下さい」
「ええ、構いませんよ。それじゃあ、早速、契約を結びましょうか」
アイテムストレージから課金アイテム『契約書』を取り出すと、条件を書き記し副協会長の目の前に置く。これは、プレイヤー間のアイテムトレード時、条件の履行を確実にさせるアイテム。
冒険者協会が契約を履行しない場合に備えておかなきゃいけないからね!
「……さあ、契約書の内容をよく読んでサインをお願いします」
「ううっ、こんなものまで持ち出すとは……。冒険者協会を信用しとらんのか……」
まったく以ってその通り。
この世界がゲームだった頃は信頼できたが、現実となった今は違う。
「はい。全然、信用してません。だって、一時の感情で冤罪を突き付け衛兵に突き出すような受付嬢や、回復薬を買い叩こうとする副協会長のいる冒険者協会ですよ? いつ反故にされるかわからないじゃないですか」
「うぐっ!? 言いにくい事を遠慮なくズケズケと……。わかった。契約書にサインすればいいんだろ。当然、こちらの条件も書き込んで構わないだろうな?」
「ええ、勿論です」
副協会長は契約書の条項を読み込むと、苦々しい表情を浮かべながら筆を走らせる。契約書を受け取り、副本を渡すと副協会長が苦々しい表情を浮かべた。
「……これで満足か?」
「ええ、とても満足です。契約書通り、冒険者ギルドが約束を守っている間は、ちゃんと納品しますよ。だから副協会長もちゃんと契約書の条項を守って下さいね? 特にここの条項を……」
「なにっ?」
副本の条文を指さすと、副協会長は安堵のため息を吐く。
「なんだ。そんな事か……。契約書の条項は守る。決して、そんな事にはならないから安心してくれ」
「そうですか。それは良かった」
「それで、初級回復薬の納品はいつ位になる? 本当に一千本も納品できるんだろうな?」
「はい。それはもう。なんなら、今からでも納品させて頂きますよ」
「なにっ?」
そう言うと、アイテムストレージから『初級回復薬』を取り出し、テーブルに並べていく。
「こ、これは……」
大量の初級回復薬を前に副協会長が唖然とした表情を浮かべた。
「テーブルが小さいので百本位しか出せませんでしたが、いつでも一千本納品可能です」
「そ、そうか、それは素晴らしい。この調子で頼むよ。すぐに支払いの準備をしよう。残りの回復薬は受付に提出する様にしてくれ。もう下がってもいいぞ」
「はい。わかりました……」
副協会長室を後にし、階段を降りるとそのまま個室へ通される。
「それではカケル様。こちらに買取希望の回復薬を並べて下さい」
「はい。買取希望の回復薬を並べればいいんですね」
受付嬢に笑顔を向けて呟くと、アイテムストレージから残り九百本の『初級回復薬』を並べる。
「ありがとうございます。それでは、買取手続きに入らせ……。てえっ?」
追加で『中級回復薬』を一千本と、『上級回復薬』を一千本並べると受付嬢は素っ頓狂な声を上げた。
俺は満面の笑顔を浮かべながら受付嬢に告げる。
「初級回復薬と中級回復薬、上級回復薬を一千本づつ。計三千本になります。初級回復薬が一本一万コル、中級回復薬が一本百万コル、上級回復薬が一本一千万コルなので締めて百十億一千万コルですね。全部買い取って下さい」
「し、少々、お待ち下さいっ!」
そう言うと、受付嬢は額に汗を浮かべ部屋から出ていった。
おそらく副協会長の下に行ったのだろう。
ソファにもたれ掛かりながら、出された煎茶を飲んでいると、『バンッ!』と音を立て、扉が開いた。
扉に視線を向けると、そこには汗をだらだらと垂らし狼狽する副協会長の姿がある。
「こ、こここここっ、これはどういう事だっ!? 初級回復薬一千本の納入だけでなく中級や上級回復薬まで……。ひ、百十億一千万コルなんて大金、一度に払える訳が……」
「どうしたんですか。副協会長……。そんなに慌てて……」
茶器をテーブルに置くと、ゆっくり立ち上がり笑顔を浮かべる。
「あ、慌ててって、そんなの決まっているだろっ!」
「いやいや、慌てる理由がわかんないですって、ほら、さっき副協会長に条項を指さした時、言ってたじゃないですか。『なんだ。そんな事か……。契約書の条項は守る。決して、そんな事にはならないから安心してくれ』って」
「あ、あれは……」
「条項にはなんて書いてありましたか? 契約書にはちゃんと『プレイヤー名、カケルが納品した初級・中級・上級回復薬は冒険者協会が必ず買い取らなければならない』とありましたよね?」
「うぐっ……。だがしかし、それは……」
「もし、買い取れない場合、特別価格での提供はしない旨も書き添えておきました。協会長が書いた契約を破った際の罰則も悪い方向に働いちゃいましたね。『契約を一方的に破棄した場合、プレイヤー名、カケルは初級回復薬を一千本、中級・上級回復薬を各十本を十年間毎月無償で提供しなければならない。冒険者協会が契約を一方的に破棄した場合、初級回復薬を一千本、中級・上級回復薬を各十本を十年間毎月定価で買い取らなければならない』。まあ、最後の一文は俺が書き記したものですがね」
欲張った罰則を書くからそういう事になるんだ。
まあ冒険者協会には最初から定価で購入してもらう予定だった。
もし契約を破棄されても十年間は冒険者協会からお金を毟る事ができる。
割のいい契約だったよ。
「そ、そんな馬鹿なぁぁぁぁ!」
この日、冒険者協会の一室で副協会長の野太い叫び声が響き渡った。
「回復薬をあんなクソみたいな値段で定期的に? ご冗談でしょう?」
そう言うと、副協会長はムッとした表情を浮かべる。
「それはどういう意味かね?」
「あれ、おかしい。言葉が通じなかったのかな? あんな安い値段じゃ回復薬は卸せないと言ってるんですよ」
「……確かにそうかも知れないが、一本百万コルや一千万コルする回復薬なんて誰も飲もうと思わないだろう? だったら、少しでも値段を下げて皆に飲んで貰った方がいいじゃないか。それともなんだ? ミズガルズ聖国にでも売りに行く気か?」
「それもいいかもしれませんね……」
腕に嵌めている課金アイテム『ムーブ・ユグドラシル』を見せると、副協会長は苦虫を噛み締めたかの様な表情を浮かべた。
「自信の源はそれか……。まさか、その腕輪を持っているとは……。なるほど、それがあれば、確かにミズガルズ聖国に売りに行く事ができるかもしれない。しかし、それは国益に反する。君は国を裏切るのかね?」
「……正当な金額で購入して頂けるのであれば、そうする必要性もなくなるんですけどね」
「…………」
俺の一言を聞き、副協会長は黙り込む。
「……とはいえ、このままでは平行線。折角の話し合いを無為にしたくはありません。副協会長としての立場もあるでしょう。妥協案として、初級回復薬のみ、安価な金額で卸します。しかし、中級以上の回復薬については正当な金額での買い取って頂きます」
「……正当な金額とは?」
「決まっているでしょう? 最低でもミズガルズ聖国と同じ金額で買い取って貰うと言ってるんですよ」
「……いいだろう。しかし、それを飲むには条件がある」
「条件?」
「ああ、毎月最低一千本『初級回復薬』を納入して貰う。それが条件だ……」
毎月最低一千本の初級回復薬の納入か……。
楽勝だな。一日初級ダンジョンに籠れば簡単に用意する事ができる。
しかし、それを卸すのも条件次第。
少しばかり考え事をしていると、何を勘違いしたのか副協会長は笑みを浮かべる。
「ふふふっ、それだけ大口を叩くんだ。最低一千本納入して貰わない事には話にもならないぞ? もし納入できないというのであれば……」
「わかりました。毎月一千本ですね。それだけの本数を納入するのは構いませんが、納入金額によります。確か、ミズガルズ聖国では、一本当たり十万コルで流通していた筈……。ここは副協会長の顔を立てて、一本当たり一万コルで納入させて頂きますよ」
すると、副協会長は唖然とした表情を浮かべる。
「な、なにっ!?」
「いや、『なにっ!?』と言われても……」
あれ、もしかして、結構無茶な条件を突きつけたつもりだったのだろうか?
「ああ、それと、そちらが条件を付けるなら、こちらも条件を付けさせて貰いますね。一本一万コルで毎月一千本の初級回復薬を納入します。その代わり俺が納入する中級以上の回復薬は必ず買い取って下さい。ああ、安心して下さい。回復薬は全て最高品質です。損はさせませんよ」
「い、いや、だがしかし……」
目論見が外れ慌てふためく副協会長。
どんな目論見があったか知らないけど、俺の事を舐め過ぎだ。
大方、一個人に一千本の回復薬なんて納入する事はできないだろうと高を括っていたんだろうけど、残念でした。回復薬なんて初級ダンジョンでモンスターを倒しまくれば、簡単にドロップするんだよ!
「初級回復薬は一万コルで卸しますが、中級回復薬は百万コル。上級回復薬は一千万コルで買い取って貰います。この金額はミズガルズ聖国と同等です。これ以上は、びた一文まけません。また買取を拒否した場合、特別価格での販売は無効とさせて頂きます。まあ買い取って貰えない場合、ミズガルズ聖国に売りに行けばいいだけですしね」
以前、うちで働くレイネルさんは『上級回復薬を作る事のできる調合師なんて、国中探してもどこにもおらぬかもしれぬ』と言っていた。『ミズガルズ聖国なら上級回復薬を作る事のできる調合師がいるかもしれぬがの』とも……。
この世界がまだゲームだった頃、『調合師』なんて資格はなかった。
今は回復薬が貴重なものとなった世界。
副協会長が掲げる回復薬を安価で冒険者に流通させたいという崇高な理念も回復薬を安く売ってくれる調合師あってのもの。
とはいえ、理念だけ立派でも仕方がない。
受付嬢から受けた屈辱も、それを誘引した副協会長への恨みもある。
それなりにメリットは示した。選択肢がこちらにある以上、副協会長にできる事はただ一つ。
俺の条件を飲む事だけだ。
貴重な回復薬をミズガルズ聖国に売られたくなかったらね。
「うぐぐぐぐぐっ……。わかった。その条件を飲もう」
「えっ? なんですか?? その条件を飲もう??」
耳が悪いのかな。すげー偉そうに聞こえる。
「……その条件で契約させて下さい」
「ええ、構いませんよ。それじゃあ、早速、契約を結びましょうか」
アイテムストレージから課金アイテム『契約書』を取り出すと、条件を書き記し副協会長の目の前に置く。これは、プレイヤー間のアイテムトレード時、条件の履行を確実にさせるアイテム。
冒険者協会が契約を履行しない場合に備えておかなきゃいけないからね!
「……さあ、契約書の内容をよく読んでサインをお願いします」
「ううっ、こんなものまで持ち出すとは……。冒険者協会を信用しとらんのか……」
まったく以ってその通り。
この世界がゲームだった頃は信頼できたが、現実となった今は違う。
「はい。全然、信用してません。だって、一時の感情で冤罪を突き付け衛兵に突き出すような受付嬢や、回復薬を買い叩こうとする副協会長のいる冒険者協会ですよ? いつ反故にされるかわからないじゃないですか」
「うぐっ!? 言いにくい事を遠慮なくズケズケと……。わかった。契約書にサインすればいいんだろ。当然、こちらの条件も書き込んで構わないだろうな?」
「ええ、勿論です」
副協会長は契約書の条項を読み込むと、苦々しい表情を浮かべながら筆を走らせる。契約書を受け取り、副本を渡すと副協会長が苦々しい表情を浮かべた。
「……これで満足か?」
「ええ、とても満足です。契約書通り、冒険者ギルドが約束を守っている間は、ちゃんと納品しますよ。だから副協会長もちゃんと契約書の条項を守って下さいね? 特にここの条項を……」
「なにっ?」
副本の条文を指さすと、副協会長は安堵のため息を吐く。
「なんだ。そんな事か……。契約書の条項は守る。決して、そんな事にはならないから安心してくれ」
「そうですか。それは良かった」
「それで、初級回復薬の納品はいつ位になる? 本当に一千本も納品できるんだろうな?」
「はい。それはもう。なんなら、今からでも納品させて頂きますよ」
「なにっ?」
そう言うと、アイテムストレージから『初級回復薬』を取り出し、テーブルに並べていく。
「こ、これは……」
大量の初級回復薬を前に副協会長が唖然とした表情を浮かべた。
「テーブルが小さいので百本位しか出せませんでしたが、いつでも一千本納品可能です」
「そ、そうか、それは素晴らしい。この調子で頼むよ。すぐに支払いの準備をしよう。残りの回復薬は受付に提出する様にしてくれ。もう下がってもいいぞ」
「はい。わかりました……」
副協会長室を後にし、階段を降りるとそのまま個室へ通される。
「それではカケル様。こちらに買取希望の回復薬を並べて下さい」
「はい。買取希望の回復薬を並べればいいんですね」
受付嬢に笑顔を向けて呟くと、アイテムストレージから残り九百本の『初級回復薬』を並べる。
「ありがとうございます。それでは、買取手続きに入らせ……。てえっ?」
追加で『中級回復薬』を一千本と、『上級回復薬』を一千本並べると受付嬢は素っ頓狂な声を上げた。
俺は満面の笑顔を浮かべながら受付嬢に告げる。
「初級回復薬と中級回復薬、上級回復薬を一千本づつ。計三千本になります。初級回復薬が一本一万コル、中級回復薬が一本百万コル、上級回復薬が一本一千万コルなので締めて百十億一千万コルですね。全部買い取って下さい」
「し、少々、お待ち下さいっ!」
そう言うと、受付嬢は額に汗を浮かべ部屋から出ていった。
おそらく副協会長の下に行ったのだろう。
ソファにもたれ掛かりながら、出された煎茶を飲んでいると、『バンッ!』と音を立て、扉が開いた。
扉に視線を向けると、そこには汗をだらだらと垂らし狼狽する副協会長の姿がある。
「こ、こここここっ、これはどういう事だっ!? 初級回復薬一千本の納入だけでなく中級や上級回復薬まで……。ひ、百十億一千万コルなんて大金、一度に払える訳が……」
「どうしたんですか。副協会長……。そんなに慌てて……」
茶器をテーブルに置くと、ゆっくり立ち上がり笑顔を浮かべる。
「あ、慌ててって、そんなの決まっているだろっ!」
「いやいや、慌てる理由がわかんないですって、ほら、さっき副協会長に条項を指さした時、言ってたじゃないですか。『なんだ。そんな事か……。契約書の条項は守る。決して、そんな事にはならないから安心してくれ』って」
「あ、あれは……」
「条項にはなんて書いてありましたか? 契約書にはちゃんと『プレイヤー名、カケルが納品した初級・中級・上級回復薬は冒険者協会が必ず買い取らなければならない』とありましたよね?」
「うぐっ……。だがしかし、それは……」
「もし、買い取れない場合、特別価格での提供はしない旨も書き添えておきました。協会長が書いた契約を破った際の罰則も悪い方向に働いちゃいましたね。『契約を一方的に破棄した場合、プレイヤー名、カケルは初級回復薬を一千本、中級・上級回復薬を各十本を十年間毎月無償で提供しなければならない。冒険者協会が契約を一方的に破棄した場合、初級回復薬を一千本、中級・上級回復薬を各十本を十年間毎月定価で買い取らなければならない』。まあ、最後の一文は俺が書き記したものですがね」
欲張った罰則を書くからそういう事になるんだ。
まあ冒険者協会には最初から定価で購入してもらう予定だった。
もし契約を破棄されても十年間は冒険者協会からお金を毟る事ができる。
割のいい契約だったよ。
「そ、そんな馬鹿なぁぁぁぁ!」
この日、冒険者協会の一室で副協会長の野太い叫び声が響き渡った。
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