ゲーム内転移ー俺だけログアウト可能!?ゲームと現実がごちゃ混ぜになった世界で成り上がる!ー

びーぜろ

文字の大きさ
79 / 411

第79話 転移組の教育係を任されました①

しおりを挟む
「さて、『ああああ』君……。君が気絶している間に態々、本来しなくてもいいレベリングして上げた訳だけど……何か言わなきゃいけない事があるんじゃないかな?」

『ああああ』が気絶している間にレベリングを済ませた俺は、再度、冒険者協会に戻って来ていた。
 目の前には、綺麗なフォームで土下座を極める『ああああ』の姿がある。

「は、はい。調子に乗ってご迷惑をお掛けし、大変……大変申し訳ございませんでした!」
「次、調子に乗って同様の事を起こしたらどうなるか……」
「は、はい。次、同様の愚かな行為を起こしたら死刑、又は奴隷に堕とすつもりですよね……」

 ――いや、ステータス初期化して放置するだけで、流石の俺もそんな事しないよっ!?
 普段から俺の事をどんな風に見てるのっ!?
『ちょっと逆らったから死刑』『ちょっと逆らったから奴隷堕ち』って、それこそ鬼畜の所業だろうがよ!

「……まあ、そんな所だ。肝に銘じておけよ」

 しかし、俺はあえて否定しない。
 また手のひら返しで裏切られても面倒臭いからだ。
 それに、なんだかんだで、『ああああ』の装備する命名神シリーズ強い。
 使える駒はできる限り手元に置いておきたい。

「そ、そういえば、あの後どうなったんですか? 気絶していてその辺りの事が全然、よくわからないんですけど……」
「ああ、金魚の糞共の事か……あいつらは……」

 俺達との戦いに敗れた金魚の糞共は、あの後、賭けに負けた野次馬達にボコボコにされたらしい。
 勝手に賭けの対象にされ、負けたからといって暴力を振るうとは野蛮な奴らのいたものだ。金魚の糞共がボコボコにされたと聞いた時、つい『ざまぁ』と叫んでしまった。
 そして、ボロボロにされた後は、『ああああ』を上級ダンジョン『デザートクレードル』に置き去りにした件について取り調べ。
 金魚の糞共は、冒険者協会の協会長相手に嘘の供述をした結果、冒険者協会から除籍。強制退会する事となった。
 なんでも、『戦略的撤退だった』とか『戻るつもりだった』とかそんな供述をしたらしい。最終的には、俺が提出しておいた映像に『俺達の命には代えられない』と言って逃げ出す金魚の糞共の姿が映っているのが決め手となり御用となった。
 もちろん、俺が『ああああ』の事をカッコよく助け出したシーンはカットしてある。

 今頃、冒険者協会に併設されている監獄で楽しい楽しいスローライフを送っている頃だろう。金魚の糞共が送るゲーム世界監獄ライフか。
 ゲーム世界で監獄生活を送る事ができるなんてまったく。羨ましい限りだぜ。
 HAHAHAHA!

「……それはそうと、なんでお前がここにいるんだ?」

 そう尋ねると、転移組の副リーダー、ルートが顔を引き攣らせる。

「い、嫌だなぁ~そんな事、言わないで下さいよ……そんな事よりカケル君? 君は確か、転移組と『ああああ』君との仲裁をしてくれるんじゃなかったのかな?」
「ああ、そう言ったな。だからちゃんと仲裁してやったじゃないか。磔にされ逃げる事もできないまま置き去りにされた『ああああ』と、言葉巧みに『ああああ』をやる気にさせ、磔にして肉壁にした転移組の連中。第三者的な視点から見てどう考えてもギルティだっただろ? だから第三者的な視点で判断してやったまでだ」
「……そこまでハッキリ言われると、耳が痛いね」

 顔を引き攣らせたまま、そう言うルートに俺は微笑みかける。

「……まあでも安心しろ。そっちがむやみやたらに絡んでこない限り、こちらから何かを仕掛けるつもりはまったくない。ギルティな連中は監獄ライフを満喫中だろうし、『ああああ』もお前自身に忌諱感を覚えている訳でもなさそうだしな……ルートも『ああああ』に話があるからここにいるんだろ?」

 意地悪な事を言ったが、わかってるよ。
 ぶっちゃけ、『ああああ』を仲間に引き入れたいんだろ?
 金魚の糞共を倒したのは、実質、『ああああ』だもんね。
 俺は金魚の糞共に『ああああ』を投げ付けただけだし、『命名神シリーズ』の装備を持ち、装備している奴は珍しい。
 ちなみに、俺ならアイテムストレージに大量に格納されている『命名神の施し』を使い、ふざけた名前のプレイヤーを量産し、『命名神シリーズ』を与える事ができる。
 第二、第三の『ああああ』を量産できる訳だ。
 まあ、好んでやろうとは思わないけどね。

「いや、もちろん、『ああああ』君にも、転移組に入ってほしいと、そう思っているさ……しかし、一番は君だ……」

 そう言うと、ルートは俺の前に手を差し伸べてくる。

「Cランク冒険者を軽くいなし、まるで道端に落ちたゴミを軽く払い除けるかの様に敵対者を徹底的に排除する思考……。今、転移組は……いや、俺は君の事を必要としている! 全てのプレイヤー達の為、一緒に上級ダンジョンを攻略し、人間の世界ミズガルズを護る為の柵を壊そう!」

 全てのプレイヤー達の為に?

 なんて、偽善的な奴なんだ……そんな事を言われたら、俺もこう返してやらなきゃいけないなと思っちゃうじゃないか……。

「ふふっ……そうだな。だが断る!」
「ええっ、どうしてだい!? 組織に属する事でお金では得られない出会いや発見、感動が得られるかもしれないんだよ!?」
「いや、そういうのは望んでないから……」

 そもそも、なんでそんなボランティアみたいな事をしなきゃいけないんだよ。お金では得られない出会いや発見、感動が得られる?
 そんなもんどうでもいいんだよっ。生きてりゃそんなもん勝手に沸いてくるわっ!

 ボランティアとは、体のいい労働搾取……遣り甲斐搾取だろうがよっ!
 ボランティア活動をしていた事を意気揚揚に、就活で語って見ろっ!
 俺の元、働いていたアメイジング・コーポレーション㈱の様に、ボランティア活動を盾に、サービス残業を強要されるぞ?

 奴等は『困った時はお互い様』とか、『苦労は買ってでもしろ』とかいう謎理論を前面に押しかけ、平気な顔でサービス残業という名のボランティア活動を強いてくるんだぞ?

 それってただの『賃金不払残業』だろうがよ!
 宗教かなんかか、それっ?
 それってだた、労働搾取を耳触りのいい言葉で正当化しているだけだろうが!

 そう表情でルートに語ると、ルートは苦笑いを浮かべる。

「……もちろん、特別報酬をお支払い致します」
「そうか、話を聞こう」

 そういう事は早く言ってよね。
 つい経験談からボランティアをディスっちゃったじゃない。
 いや、ボランティア精神で誰かの為に働こうと思うって尊い事だよね。

 その精神が本物なら有償ボランティアなんて存在しない筈なんだけど……。
 まあ自発的に支援したいという想いが本来のボランティアの目的であり、有償・無償は本質的な問題ではないからね!

 実の所、俺も転移組の連中を何とかしないといけないなと思っていたんだよ。
 モラルのカケラもなく交戦的で、権力を傘にやりたい放題。丁度、目障りになってきた所だ。

 有償で自発的に私怨してやろうじゃないか。内側からバリバリ貪り食ってやろうじゃないか。ボランティア精神に則ってね!

「実は組織が大きくなるにつれて、横暴に振舞うプレイヤー達が増えてきてしまったんだ。組織の大まかな意思決定はリーダーと副リーダーの俺達が行うようにしているんだけど、中々、管理しきれなくてね」
「ふーん」

 なんだか大変そうだな。
 聞いているだけで眠くなってくる。

「転移組には、今、約五百人の構成員を抱えている。君にはその内、五十人を預けたいと考えているんだけど、どうかな? 『ああああ』君を立派なプレイヤーに育て上げた様に、彼等も一緒に導いてくれないだろうか?」

『ああああ』が立派なプレイヤー?
 こいつ、目が腐っているんじゃないだろうか?

『ああああ』は俺に反旗を翻してきた大罪人である。つまり使い捨ての駒だ。
 何なら反旗を翻してこない分、まだ使い捨てカイロやティッシュペーパーの方が万倍使える。

 俺は、ルートに立派と言われほくそ笑みながら意気揚々と土下座する『ああああ』の頭に拳骨を落とすと、指と指で丸を作った。

「……いいだろう。まあ、それも特別報酬次第だ。それで、幾ら位くれるんだ?」

 そう尋ねると、ルートは、指を一本立てる。

 なんだろう。へし折って欲しいのだろうか?

 そんな事を想いながらルートが口を開くのを辛抱強く待つ。

「……君が育て上げたプレイヤー達がダンジョン内で手に入れたアイテムや素材、それを換金した金額の一割。これでどうだろう?」
「俺が育てたプレイヤー達がダンジョン内で手に入れた報酬の一割か……」

 本当は十割欲しい所だが、贅沢は言うまい。
 俺は少し考える振りをしながら呟く。

「……いいだろう。ただし、条件を付け加えてもらう」
「条件?」
「ああ、俺の言う事には絶対服従。それと問題を起こした奴を処分する権限。そして最後に、俺のやる事に口出し無用。この三つを条件に付け加えさせてくれ」

 まあ、ポッとでの俺が『お前達を最強にしてやる』とか言っても、誰も聞いてくれなさそうだしね。誰かを育てるにしても権限が無くては話にならない。

「わかったよ。俺の方から周知しておく。それでいいかい?」
「ああ、もちろん……」

 これで条件はクリアだ。
 転移組を内部からボロボロにする為の準備は整った。

「……一週間だ。一週間で、俺の下に就く五十人のプレイヤーを『ああああ』の様にしてやるよ」
「へえ、それは頼もしいね。それじゃあ、早速、明日。君の下に就く五十人のプレイヤーを紹介するよ。場所はそうだな……冒険者協会の闘技場なんてどうかな?」
「ああ、もちろん、それでいい」

 ふふふっ、まずは五十人の奴隷をゲッツ!
 転移組に属する低脳プレイヤー共め、まずは上下関係を叩き込み、皆、『ああああ』の様にしてやる。

「それじゃあ、また明日。午前九時に冒険者協会の闘技場で落ち合おう」
「ああ……楽しみにしているよ」

 ◇◆◇

 翌日、午前九時に闘技場に向かうと、既に五十人の冒険者……いや、プレイヤー達が、俺が到着するのを待っていた。

「おはようございます。カケル君」
「ああ、おはよう。それで、昨日言っていた五十人というのは、ここにいる人達でいいのかな?」

 皆、ニコニコしている。
 なんだか胡散臭い笑顔だ。
 そう尋ねると、『転移組』の副リーダー、ルートが頷く。

「ああ、そうだよ。癖のある奴ばかりだけど、皆、根はいい奴だからさ。それじゃあ、後の事はよろしくね」

 それだけ言うと、ルートは闘技場を後にする。その瞬間、闘技場内の空気が一変した。
しおりを挟む
感想 558

あなたにおすすめの小説

アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~

明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!! 『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。  無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。  破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。 「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」 【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

わけありな教え子達が巣立ったので、一人で冒険者やってみた

名無しの夜
ファンタジー
教え子達から突然別れを切り出されたグロウは一人で冒険者として活動してみることに。移動の最中、賊に襲われている令嬢を助けてみれば、令嬢は別れたばかりの教え子にそっくりだった。一方、グロウと別れた教え子三人はとある事情から母国に帰ることに。しかし故郷では恐るべき悪魔が三人を待ち構えていた。

【書籍化】パーティー追放から始まる収納無双!~姪っ子パーティといく最強ハーレム成り上がり~

くーねるでぶる(戒め)
ファンタジー
【24年11月5日発売】 その攻撃、収納する――――ッ!  【収納】のギフトを賜り、冒険者として活躍していたアベルは、ある日、一方的にパーティから追放されてしまう。  理由は、マジックバッグを手に入れたから。  マジックバッグの性能は、全てにおいてアベルの【収納】のギフトを上回っていたのだ。  これは、3度にも及ぶパーティ追放で、すっかり自信を見失った男の再生譚である。

無能と言われた召喚士は実家から追放されたが、別の属性があるのでどうでもいいです

竹桜
ファンタジー
 無能と呼ばれた召喚士は王立学園を卒業と同時に実家を追放され、絶縁された。  だが、その無能と呼ばれた召喚士は別の力を持っていたのだ。  その力を使用し、無能と呼ばれた召喚士は歌姫と魔物研究者を守っていく。

うっかり『野良犬』を手懐けてしまった底辺男の逆転人生

野良 乃人
ファンタジー
辺境の田舎街に住むエリオは落ちこぼれの底辺冒険者。 普段から無能だの底辺だのと馬鹿にされ、薬草拾いと揶揄されている。 そんなエリオだが、ふとした事がきっかけで『野良犬』を手懐けてしまう。 そこから始まる底辺落ちこぼれエリオの成り上がりストーリー。 そしてこの世界に存在する宝玉がエリオに力を与えてくれる。 うっかり野良犬を手懐けた底辺男。冒険者という枠を超え乱世での逆転人生が始まります。 いずれは王となるのも夢ではないかも!? ◇世界観的に命の価値は軽いです◇ カクヨムでも同タイトルで掲載しています。

【完結】モンスターに好かれるテイマーの僕は、チュトラリーになる!

すみ 小桜(sumitan)
ファンタジー
 15歳になった男子は、冒険者になる。それが当たり前の世界。だがクテュールは、冒険者になるつもりはなかった。男だけど裁縫が好きで、道具屋とかに勤めたいと思っていた。 クテュールは、15歳になる前日に、幼馴染のエジンに稽古すると連れ出され殺されかけた!いや、偶然魔物の上に落ち助かったのだ!それが『レッドアイの森』のボス、キュイだった!

おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう

お餅ミトコンドリア
ファンタジー
 パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。  だが、全くの無名。  彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。  若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。  弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。  独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。  が、ある日。 「お久しぶりです、師匠!」  絶世の美少女が家を訪れた。  彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。 「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」  精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。 「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」  これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。 (※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。 もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです! 何卒宜しくお願いいたします!)

処理中です...