186 / 411
第186話 質の悪い貴族の居場所はゴミ捨て場②
しおりを挟む
「ぐぅふっ!? おうえっ……!!」
まるで、鼻に直接、世界一臭い缶詰・シュールストレミングを注入されたかの様な激臭。そして、目には、レモン汁でも直接かけられたかの様な激痛。
城門に足を踏み入れただけでこれだ。
正に人外魔境。流石は王国中のゴミが一挙に集まる集積場。
その大半が未処理のまま放置されているとなれば、この激臭も納得できる。
俺はアイテムストレージから上級回復薬を取り出すと、それをすぐさま口に含み、一緒に取り出した防毒マスクをモブフェンリルスーツの上から被る。
「はあっ、はあっ、はあっつ……恐ろしい所だな、ここは……」
防塵マスクじゃこれを防げない。せめて防毒マスクじゃないと……。
何より人が住んでいい場所ではない。
ゴミ山に視線を向けると、上から降り注ぐ日光が生ゴミと化学反応を起こし、絶え間なく煙が上がっている。
まるで、スモーキー・マウンテンの様だ。
こんな所に居たらすぐに病気になってしまう。
凄いな、王様は……よくこんな場所で生活できるものだ。
俺だったら逃げ出すね。
――あ、逃げ出す事ができないのか。
周りを強固な城壁に囲まれ、暴動を起こした王国民と自警団に見張られているから……。
まあ、自業自得という事で、とりあえず、すべての武器を押収するか……。
「シャドー、城内にある武器になりそうなものすべてを影の世界に集めてくれるかな?」
俺がそう言うと、影の精霊・シャドーは俺の影に身を移し、その影を広げ城内すべてを一瞬にして包み込んだ。
……うん。何て言うか、アレだ。
ゲーム内でモンスターを倒す為だけに実装されたサポートキャラが現実世界に解き放たれたらこんな感じになるよね……。
ファイナルファンタジーの召喚獣がバトルだけではなく町中で自由に召喚できる様になった様なものだ。
この世界において、その存在に当たるのがエレメンタル。
もはや天災と同じ存在。常人に何とかできる様な相手ではない。
そして、影に覆われた世界に景色が戻る頃、目の前には武器が山の様に積み上げられていた。
「……ありがとう。シャドー」
影の精霊・シャドーにお礼を言うと、アイテムストレージに積み上がった武器を収めていく。中には、木刀や包丁、鍋や根菜まで積み上がっていた。
……うん。まあ、そうだよね。
鍋や根菜も立派な武器だ。
もはやマトモな料理すらできなくなってしまったであろう王城の料理人には憐憫の情を禁じ得ない。
王城内にある武器になりそうなものすべてを押収した俺は、そのまま城門を抜けると『隠密マント』をアイテムストレージにしまい息を吐いた。
「これれならすぐに拉致できるな……」
影の精霊・シャドーがいれば、証拠も残さず貴族連中を王城内に拉致できそうだ。
そう確信を持った俺は、『確定エレメンタル獲得チケット』により影の精霊・シャドーを獲得した配下五十人に貴族をすべて王城に送るようメールを送り、自警団には城門の警備を厳重に行うよう要請しておく事にした。
ついでに、これから一時間、一切抵抗をしない事を条件に王城で働く使用人、武器を持たない兵士の投降を認めるよう進言しておいた。
◇◆◇
その頃、王城内は大混乱に陥っていた。
当然だ。突然、視界が闇に染まったかと思えば、身に付けていた筈の武器や貴金属すべてが剥ぎ取られていたのだから。
武器や貴金属を奪われたのは兵士達だけではない。
それは料理人も同じであった。
「わ、私の包丁が……調理器具がすべて無くなっている!?」
「た、大変ですっ! 皿も、籠も、フォークやスプーンまでっ! 食器がすべて無くなっていますっ!」
「おい! ここに置いてあったカボチャはどこにいった!? 大根や玉ねぎ、さつま芋……ジャガイモまでないぞっ!」
武器になりそうな根菜も容赦なく押収した影の精霊・シャドー。
「……こ、これでは、まともな料理が出せないではないか」
「ただでさえ、食材が足りていないのにこれでは……」
「調理器具が無くては……なあ……」
保存が効く根菜の消滅に頭を抱える料理人。
「も、もう駄目だ……こんな生活限界だっ!」
「私もだ。こんな状況に陥ったのも陛下があんな御布令を出すから……」
「――料理人全員で申し出ましょう。ここに居ては、我々の食べる物も……」
「しかし、どうする。外から聞こえてくる砲撃音……情報がまったく降りてこないが攻撃を受けているのではないか?」
「に、逃げ場はないと? な、何という事だ……」
保存の効く食材を失い途方に暮れる料理人達。そんな料理人達の耳に朗報が届く。
「お、おいっ! 城門の前に張っている自警団が呼びかけをしているぞっ! 今から一時間に限り王城で働く使用人や武器を持たない兵士の投降を認めるってよっ!」
「ほ、本当かっ!?」
「ああ、本当だっ! 抵抗しなければ、当分の間、衣食住の保証もしてくれるらしい! 今、他の使用人達も城門に集まってる!」
「それでは、私達も向かいましょう!」
「「はい!!」」
突然、降りてきた朗報に料理人達は全員揃って城門へと向かった。
◇◆◇
同刻。王城にある王の間では、この国の国王であるガルズ・セントラルが頭を抱えていた。
天井から消えたシャンデリア、脚だけ無くなった椅子とテーブル、絵だけを残して消えた額縁、そして、手に持っていた筈の羽ペン。
ガルズ王は、目の前にいるカティ宰相に視線を向ける。
「い、一体、何が起こっているのだっ……」
砲弾が撃ち込まれたかの様な音が聞こえたかと思えば、カティ宰相が王の間に飛び込んできて今、置かれた状況を説明し始め、急に辺りが真っ暗となったかと思えば、部屋が滅茶苦茶になっていた。
「わ、わかりません……」
カティ宰相はカティ宰相で困惑していた。
貴族が私兵を連れ攻めてきた事を知らせに来たら、急に辺りが真っ暗になり、次の瞬間には王の間が滅茶苦茶になっていたのだから当然である。
唖然とした表情を浮かべながら、窓を開け外の様子を伺うと『これから一時間に限り、一切抵抗をしない事を条件に、王城で働く使用人、武器を持たない兵士の投降を認める』といった旨の放送が流れてきた。
「――な、なにっ!?」
そんな勝手な事をされては……!
ただでさえ、城内には人がいないのだ。
ゴミ処理を行う兵士がいなくなるのも、料理人を初めとした使用人がいなくなるのも非常に困る。
「カ、カティ宰相。どうしたら……私はどうしたらいい? 今、兵士と使用人が王城から出て行ってしまったら、私は……私達は……」
しかも、肝心要の国王陛下がこのザマだ。
貴族に協力を求めた筈が反旗を翻され、時間を追う毎に王城から兵士が脱走していく。色々な事が起こり過ぎて既にキャパオーバー。
泣きそうな表情を浮かべる国王を見ていると、こっちまで泣きたくなってくる。
「すぐに兵士と使用人達を止めましょう。これ以上、ここから出て行かれては……」
「こ、これ以上、出て行かれたらどうなるというのだっ!?」
王国民が暴動を引き起こし、貴族に反意を持たれた今……更にこれ以上、兵士と使用人が王城から出て行く様ならもうこの国は……王政はもうお終いだ。
仮にも国王本人の目の前でそんな事、言える訳がない。
「とにかく、止めてまいります。陛下はここでお待ちを……」
ガルズ王にそう告げると、カティ宰相は走り出した。
「……冗談じゃない。冗談じゃないぞ!」
全国多発的に発生したゴミ・汚物処理場の爆発事故。
我々は、それを建て直そうとしただけだ……!
確かに、王国民から税金を徴収しようとしたのは申し訳なく思う。
しかし、仕方がないではないか……。
見てみろ、貴族に税金をかけたらどうなったかを……。
貴族は揃って反意を翻した。
私の計算では、王国民から税金を徴収する事ができていれば、貴族は反意を翻す事無くギリギリ留まった筈だった。
貴族より重い徴収に国民が耐えているのに、貴族がそれに文句をいう訳にはいかないからだ。
貴族からも税金を徴収する事で、国民もある程度溜飲を下げる筈だった。
――カティ宰相は階段を飛び下り、王城の扉を開け外に出る。
考えて、考えて、考え抜いた末の御布令だったのだ。
それをっ……!
たったそれだけの事で王政が廃止されてなるものかっ!
――城門に並ぶ兵士と使用人を視界に収めると、カティ宰相は大声を出し牽制した。
「お前達っ! ちょっと待てっ! お前達まで国を……国王に反意を翻すつもりかっ!」
しかし、城門までの距離が遠く兵士と使用人達にカティ宰相の声が届かない。
「お、お前達っ! 待てっ!」
それでも、カティ宰相は叫び続ける。
今、兵士と使用人が王城からいなくなったら王政は……現王政は……!
「ま、待てぇぇぇぇ!」
そう叫び声を上げると共に、兵士と使用人達は城門の外に出され門が閉められる。
走るのを止め絶望的な表情を浮かべるカティ宰相。
立ち止まり四つん這いになると、地面に拳を打ち付けた。
「ぐっ……ぐうっ……」
カティ宰相は悔しさ、やるせなさから苦悶の表情を浮かべ嗚咽を漏らした。
立ち上がり、トボトボと王城へ戻ろうとすると、背後から人の気配を感じる。
「……」
まだ王城に残った兵士と使用人が居たのかと振り向くとそこには、兵士や使用人達ではなく数十人を超える貴族の当主達が立っていた。
目の前に現れた貴族の当主達の姿を見て、カティ宰相は驚きの声を上げる。
「な、ななななっ……何故、ここに……っ!?」
影の精霊・シャドーにより突然、王城に連れて来られた貴族の当主達は困惑した表情を浮かべた。
「うん? ここはどこ……臭っ!?」
「な、何だここはっ! 目がっ!? 目が染みるっ!?」
しかし、そこは腐っても貴族当主達。
王城を見上げると状況をおぼろげながら把握し、鼻と口元にハンカチを当てながらカティ宰相に視線を向けた。
「おや、これはこれは……」
「カティ宰相ではありませんか。国王陛下は御健在ですかな?」
「相談もなく税金を徴収しようとするとは、我々も舐められたものだ……」
「それで? 国王陛下はどちらに? 是非とも今後の国家運営について話し合いを持ちたい所ですなぁ……」
そう言いながら、カティ宰相を取り囲む貴族の当主達。
そんな危機的な状況の中、王城内に軽めの放送が流れた。
---------------------------------------------------------------
2022年12月1日AM7時更新となります。
まるで、鼻に直接、世界一臭い缶詰・シュールストレミングを注入されたかの様な激臭。そして、目には、レモン汁でも直接かけられたかの様な激痛。
城門に足を踏み入れただけでこれだ。
正に人外魔境。流石は王国中のゴミが一挙に集まる集積場。
その大半が未処理のまま放置されているとなれば、この激臭も納得できる。
俺はアイテムストレージから上級回復薬を取り出すと、それをすぐさま口に含み、一緒に取り出した防毒マスクをモブフェンリルスーツの上から被る。
「はあっ、はあっ、はあっつ……恐ろしい所だな、ここは……」
防塵マスクじゃこれを防げない。せめて防毒マスクじゃないと……。
何より人が住んでいい場所ではない。
ゴミ山に視線を向けると、上から降り注ぐ日光が生ゴミと化学反応を起こし、絶え間なく煙が上がっている。
まるで、スモーキー・マウンテンの様だ。
こんな所に居たらすぐに病気になってしまう。
凄いな、王様は……よくこんな場所で生活できるものだ。
俺だったら逃げ出すね。
――あ、逃げ出す事ができないのか。
周りを強固な城壁に囲まれ、暴動を起こした王国民と自警団に見張られているから……。
まあ、自業自得という事で、とりあえず、すべての武器を押収するか……。
「シャドー、城内にある武器になりそうなものすべてを影の世界に集めてくれるかな?」
俺がそう言うと、影の精霊・シャドーは俺の影に身を移し、その影を広げ城内すべてを一瞬にして包み込んだ。
……うん。何て言うか、アレだ。
ゲーム内でモンスターを倒す為だけに実装されたサポートキャラが現実世界に解き放たれたらこんな感じになるよね……。
ファイナルファンタジーの召喚獣がバトルだけではなく町中で自由に召喚できる様になった様なものだ。
この世界において、その存在に当たるのがエレメンタル。
もはや天災と同じ存在。常人に何とかできる様な相手ではない。
そして、影に覆われた世界に景色が戻る頃、目の前には武器が山の様に積み上げられていた。
「……ありがとう。シャドー」
影の精霊・シャドーにお礼を言うと、アイテムストレージに積み上がった武器を収めていく。中には、木刀や包丁、鍋や根菜まで積み上がっていた。
……うん。まあ、そうだよね。
鍋や根菜も立派な武器だ。
もはやマトモな料理すらできなくなってしまったであろう王城の料理人には憐憫の情を禁じ得ない。
王城内にある武器になりそうなものすべてを押収した俺は、そのまま城門を抜けると『隠密マント』をアイテムストレージにしまい息を吐いた。
「これれならすぐに拉致できるな……」
影の精霊・シャドーがいれば、証拠も残さず貴族連中を王城内に拉致できそうだ。
そう確信を持った俺は、『確定エレメンタル獲得チケット』により影の精霊・シャドーを獲得した配下五十人に貴族をすべて王城に送るようメールを送り、自警団には城門の警備を厳重に行うよう要請しておく事にした。
ついでに、これから一時間、一切抵抗をしない事を条件に王城で働く使用人、武器を持たない兵士の投降を認めるよう進言しておいた。
◇◆◇
その頃、王城内は大混乱に陥っていた。
当然だ。突然、視界が闇に染まったかと思えば、身に付けていた筈の武器や貴金属すべてが剥ぎ取られていたのだから。
武器や貴金属を奪われたのは兵士達だけではない。
それは料理人も同じであった。
「わ、私の包丁が……調理器具がすべて無くなっている!?」
「た、大変ですっ! 皿も、籠も、フォークやスプーンまでっ! 食器がすべて無くなっていますっ!」
「おい! ここに置いてあったカボチャはどこにいった!? 大根や玉ねぎ、さつま芋……ジャガイモまでないぞっ!」
武器になりそうな根菜も容赦なく押収した影の精霊・シャドー。
「……こ、これでは、まともな料理が出せないではないか」
「ただでさえ、食材が足りていないのにこれでは……」
「調理器具が無くては……なあ……」
保存が効く根菜の消滅に頭を抱える料理人。
「も、もう駄目だ……こんな生活限界だっ!」
「私もだ。こんな状況に陥ったのも陛下があんな御布令を出すから……」
「――料理人全員で申し出ましょう。ここに居ては、我々の食べる物も……」
「しかし、どうする。外から聞こえてくる砲撃音……情報がまったく降りてこないが攻撃を受けているのではないか?」
「に、逃げ場はないと? な、何という事だ……」
保存の効く食材を失い途方に暮れる料理人達。そんな料理人達の耳に朗報が届く。
「お、おいっ! 城門の前に張っている自警団が呼びかけをしているぞっ! 今から一時間に限り王城で働く使用人や武器を持たない兵士の投降を認めるってよっ!」
「ほ、本当かっ!?」
「ああ、本当だっ! 抵抗しなければ、当分の間、衣食住の保証もしてくれるらしい! 今、他の使用人達も城門に集まってる!」
「それでは、私達も向かいましょう!」
「「はい!!」」
突然、降りてきた朗報に料理人達は全員揃って城門へと向かった。
◇◆◇
同刻。王城にある王の間では、この国の国王であるガルズ・セントラルが頭を抱えていた。
天井から消えたシャンデリア、脚だけ無くなった椅子とテーブル、絵だけを残して消えた額縁、そして、手に持っていた筈の羽ペン。
ガルズ王は、目の前にいるカティ宰相に視線を向ける。
「い、一体、何が起こっているのだっ……」
砲弾が撃ち込まれたかの様な音が聞こえたかと思えば、カティ宰相が王の間に飛び込んできて今、置かれた状況を説明し始め、急に辺りが真っ暗となったかと思えば、部屋が滅茶苦茶になっていた。
「わ、わかりません……」
カティ宰相はカティ宰相で困惑していた。
貴族が私兵を連れ攻めてきた事を知らせに来たら、急に辺りが真っ暗になり、次の瞬間には王の間が滅茶苦茶になっていたのだから当然である。
唖然とした表情を浮かべながら、窓を開け外の様子を伺うと『これから一時間に限り、一切抵抗をしない事を条件に、王城で働く使用人、武器を持たない兵士の投降を認める』といった旨の放送が流れてきた。
「――な、なにっ!?」
そんな勝手な事をされては……!
ただでさえ、城内には人がいないのだ。
ゴミ処理を行う兵士がいなくなるのも、料理人を初めとした使用人がいなくなるのも非常に困る。
「カ、カティ宰相。どうしたら……私はどうしたらいい? 今、兵士と使用人が王城から出て行ってしまったら、私は……私達は……」
しかも、肝心要の国王陛下がこのザマだ。
貴族に協力を求めた筈が反旗を翻され、時間を追う毎に王城から兵士が脱走していく。色々な事が起こり過ぎて既にキャパオーバー。
泣きそうな表情を浮かべる国王を見ていると、こっちまで泣きたくなってくる。
「すぐに兵士と使用人達を止めましょう。これ以上、ここから出て行かれては……」
「こ、これ以上、出て行かれたらどうなるというのだっ!?」
王国民が暴動を引き起こし、貴族に反意を持たれた今……更にこれ以上、兵士と使用人が王城から出て行く様ならもうこの国は……王政はもうお終いだ。
仮にも国王本人の目の前でそんな事、言える訳がない。
「とにかく、止めてまいります。陛下はここでお待ちを……」
ガルズ王にそう告げると、カティ宰相は走り出した。
「……冗談じゃない。冗談じゃないぞ!」
全国多発的に発生したゴミ・汚物処理場の爆発事故。
我々は、それを建て直そうとしただけだ……!
確かに、王国民から税金を徴収しようとしたのは申し訳なく思う。
しかし、仕方がないではないか……。
見てみろ、貴族に税金をかけたらどうなったかを……。
貴族は揃って反意を翻した。
私の計算では、王国民から税金を徴収する事ができていれば、貴族は反意を翻す事無くギリギリ留まった筈だった。
貴族より重い徴収に国民が耐えているのに、貴族がそれに文句をいう訳にはいかないからだ。
貴族からも税金を徴収する事で、国民もある程度溜飲を下げる筈だった。
――カティ宰相は階段を飛び下り、王城の扉を開け外に出る。
考えて、考えて、考え抜いた末の御布令だったのだ。
それをっ……!
たったそれだけの事で王政が廃止されてなるものかっ!
――城門に並ぶ兵士と使用人を視界に収めると、カティ宰相は大声を出し牽制した。
「お前達っ! ちょっと待てっ! お前達まで国を……国王に反意を翻すつもりかっ!」
しかし、城門までの距離が遠く兵士と使用人達にカティ宰相の声が届かない。
「お、お前達っ! 待てっ!」
それでも、カティ宰相は叫び続ける。
今、兵士と使用人が王城からいなくなったら王政は……現王政は……!
「ま、待てぇぇぇぇ!」
そう叫び声を上げると共に、兵士と使用人達は城門の外に出され門が閉められる。
走るのを止め絶望的な表情を浮かべるカティ宰相。
立ち止まり四つん這いになると、地面に拳を打ち付けた。
「ぐっ……ぐうっ……」
カティ宰相は悔しさ、やるせなさから苦悶の表情を浮かべ嗚咽を漏らした。
立ち上がり、トボトボと王城へ戻ろうとすると、背後から人の気配を感じる。
「……」
まだ王城に残った兵士と使用人が居たのかと振り向くとそこには、兵士や使用人達ではなく数十人を超える貴族の当主達が立っていた。
目の前に現れた貴族の当主達の姿を見て、カティ宰相は驚きの声を上げる。
「な、ななななっ……何故、ここに……っ!?」
影の精霊・シャドーにより突然、王城に連れて来られた貴族の当主達は困惑した表情を浮かべた。
「うん? ここはどこ……臭っ!?」
「な、何だここはっ! 目がっ!? 目が染みるっ!?」
しかし、そこは腐っても貴族当主達。
王城を見上げると状況をおぼろげながら把握し、鼻と口元にハンカチを当てながらカティ宰相に視線を向けた。
「おや、これはこれは……」
「カティ宰相ではありませんか。国王陛下は御健在ですかな?」
「相談もなく税金を徴収しようとするとは、我々も舐められたものだ……」
「それで? 国王陛下はどちらに? 是非とも今後の国家運営について話し合いを持ちたい所ですなぁ……」
そう言いながら、カティ宰相を取り囲む貴族の当主達。
そんな危機的な状況の中、王城内に軽めの放送が流れた。
---------------------------------------------------------------
2022年12月1日AM7時更新となります。
65
あなたにおすすめの小説
異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します
桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる
【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました
いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。
子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。
「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」
冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。
しかし、マリエールには秘密があった。
――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。
未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。
「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。
物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立!
数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。
さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。
一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて――
「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」
これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、
ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー!
※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。
平凡なサラリーマンが異世界に行ったら魔術師になりました~科学者に投資したら異世界への扉が開発されたので、スローライフを満喫しようと思います~
金色のクレヨン@釣りするWeb作家
ファンタジー
夏井カナタはどこにでもいるような平凡なサラリーマン。
そんな彼が資金援助した研究者が異世界に通じる装置=扉の開発に成功して、援助の見返りとして異世界に行けることになった。
カナタは準備のために会社を辞めて、異世界の言語を学んだりして準備を進める。
やがて、扉を通過して異世界に着いたカナタは魔術学校に興味をもって入学する。
魔術の適性があったカナタはエルフに弟子入りして、魔術師として成長を遂げる。
これは文化も風習も違う異世界で戦ったり、旅をしたりする男の物語。
エルフやドワーフが出てきたり、国同士の争いやモンスターとの戦いがあったりします。
第二章からシリアスな展開、やや残酷な描写が増えていきます。
旅と冒険、バトル、成長などの要素がメインです。
ノベルピア、カクヨム、小説家になろうにも掲載
没落した貴族家に拾われたので恩返しで復興させます
六山葵
ファンタジー
生まれて間も無く、山の中に捨てられていた赤子レオン・ハートフィリア。
彼を拾ったのは没落して平民になった貴族達だった。
優しい両親に育てられ、可愛い弟と共にすくすくと成長したレオンは不思議な夢を見るようになる。
それは過去の記憶なのか、あるいは前世の記憶か。
その夢のおかげで魔法を学んだレオンは愛する両親を再び貴族にするために魔法学院で魔法を学ぶことを決意した。
しかし、学院でレオンを待っていたのは酷い平民差別。そしてそこにレオンの夢の謎も交わって、彼の運命は大きく変わっていくことになるのだった。
※2025/12/31に書籍五巻以降の話を非公開に変更する予定です。
詳細は近況ボードをご覧ください。
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
【収納∞】スキルがゴミだと追放された俺、実は次元収納に加えて“経験値貯蓄”も可能でした~追放先で出会ったもふもふスライムと伝説の竜を育成〜
あーる
ファンタジー
「役立たずの荷物持ちはもういらない」
貢献してきた勇者パーティーから、スキル【収納∞】を「大した量も入らないゴミスキル」だと誤解されたまま追放されたレント。
しかし、彼のスキルは文字通り『無限』の容量を持つ次元収納に加え、得た経験値を貯蓄し、仲間へ『分配』できる超チート能力だった!
失意の中、追放先の森で出会ったのは、もふもふで可愛いスライムの「プル」と、古代の祭壇で孵化した伝説の竜の幼体「リンド」。レントは隠していたスキルを解放し、唯一無二の仲間たちを最強へと育成することを決意する!
辺境の村を拠点に、薬草採取から魔物討伐まで、スキルを駆使して依頼をこなし、着実に経験値と信頼を稼いでいくレントたち。プルは多彩なスキルを覚え、リンドは驚異的な速度で成長を遂げる。
これは、ゴミスキルだと蔑まれた少年が、最強の仲間たちと共にどん底から成り上がり、やがて自分を捨てたパーティーや国に「もう遅い」と告げることになる、追放から始まる育成&ざまぁファンタジー!
フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ
25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。
目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。
ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。
しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。
ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。
そんな主人公のゆったり成長期!!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる