ゲーム内転移ー俺だけログアウト可能!?ゲームと現実がごちゃ混ぜになった世界で成り上がる!ー

びーぜろ

文字の大きさ
222 / 411

第222話 激昂②

しおりを挟む
「――ち、ちょっと待てっ!」
「……ああ、川島さんですか。待つって、何を待てばいいんですか? 警察への通報ですか? それとも、部外者であるあなたが、被害者である俺に対し、加害者であるこの暴力団体に対する訴訟を待てとでも言うつもりですか?」
「う、ううっ……!?」

 俺がそう尋ねると、川島は言い淀む。
 まさか、市民団体がこうも短絡的に暴行に及ぶとは思っていなかったのだろう。
 もしかしたら、俺が真っ向から対立してくると考えていなかったのかも知れない。

 この市民団体の役割は、声を上げ社会運動を起こす事。
 拡声器を使ったパフォーマンスに、中傷ビラは撒くが暴力を振るうつもりはなかった筈だ。むしろ、その逆。暴力を振るわれるのを待ち実際に暴行を振るわれたら騒ぎ立てるつもりだった。しかし、水の上位精霊・クラーケンに海水をぶっ掛けられ、それを見た俺がニヤリとほくそ笑んだ事で頭に血が上ってしまった。
 結果として、国民としても市民団体としてもやってはいけない犯罪行為。暴行・傷害を行ってしまい、その行為を止める所か、むしろ扇動した事により現場助勢罪が成立。市民団体とは名ばかりの暴力団体となってしまった訳である。

 しかし、川島の立場からしてみれば、この市民団体を庇わない訳にはいかない。
 何せ、この市民団体は川島が懇意にしている村井元事務次官が呼びかけ立ち上げた一般社団法人の傘下団体なのだから……。

「……ま、まあ、まずは落ち着きなさい。市民団体を訴えるだなんて、そんなスラップ訴訟紛いな事をしなくても」
「――はあっ? スラップ訴訟?? 誰が市民団体を訴えるなんて言いました? 市民団体かどうかなんて関係ありません。俺は、暴行を加えたそこの男と、それを扇動したここにいる全員を個別に訴えると言ったんです」

 そう。市民団体を訴えるだなんて一言も言っていない。

「……それにしても、何故、川島さんはこの方々を庇うのです? スラップ訴訟紛いと仰いましたが、暴行された。だから訴えた。それの何が悪いんですか? 何か問題でもあるんですかねぇ?」

 そもそもスラップ訴訟の定義は、個人・市民団体・ジャーナリストによる批判や反対運動を封じ込める為に、企業・政府・自治体が起こす訴訟の事。
 俺が起こす裁判は、そういう類のものではない。ただの刑事事件裁判だ。

「……そう言えば、さっき、あの人が『俺達は、頼まれてやっただけ』とか口走ってまましたが……もしかして、川島さん。この人達と共謀していたんですか?」

 俺に暴行を働いた男を指差しそう言うと、川島はポケットからハンカチを取り出し冷や汗を拭きながら弁解する。

「――ち、違っ……私はそういう意味で言った訳ではなく、ただ常識的な私見を述べただけで……それに私は、こんな団体の事は知らん。全然知らんぞ!」

 あくまで私は関係ありません。私見を述べただけですって事にしたい訳ね。
 つまり、この市民団体を切り捨てて延焼を防ごうと、そういう訳だ。
 でもいいのかな?
 この市民団体は村井元事務次官がが呼びかけ立ち上げた一般社団法人の傘下団体なんでしょ?
 しかも、工作する為に借り受けた団体だ。お前の判断で切り捨てて本当にいいの?
 影の精霊・シャドーがお前の影の中に潜んでいる以上、すべての情報が筒抜けなんだよ?

 まあ全然知らない団体だと言い張るならそれでもいい。

「……じゃあ、尚更、部外者が口を挟まないで貰えますかね? 余計なお世話です」
「ち、ちょっと待てっ……まだ話は終わってないぞ」

 口を挟むなと言った傍から口を挟んでくるとは、この男、耳が付いていないのだろうか?
 それとも、自分にとって都合のいい事しか聞こえなくなるステキイヤーの持ち主なのだろうか?

「部外者である川島さんが一体、何の用です? 余計な口を挟むなと言ったばかりだと思いますが……」

 敢えて辛辣にそう言うと、川島はぐっと言葉を詰まらせる。

「――し、しかしだな。証拠はあるのか? 彼等が君に暴力を振るったという明確な証拠がっ! 証拠がなければ訴えた所で……」
「証拠ですか?」

 あるに決まってんだろ。何なら、今、この場で見物している人達全員が証人だ。当然、動かぬ証拠として動画も撮影している。
 うん? そうだ……。

 俺が鞄からカメラを取り出すと、敢えて、川島に見える様に提示する。

「これが証拠です。実は先ほどからカメラで撮影していたんですよ。この証拠を下に裁判を起こすつもりです。これでいいですか?」

 すると、川島が俺の背後で沈黙していた市民団体の男に視線を向けた。
 その瞬間、男がカメラに向かって手を伸ばす。

「――そ、そいつを寄こせぇぇぇぇ!」

 証拠を破壊し、なかった事にするつもりなのだろう。『さぁ、皆さんご一緒に! イッツ、オールフィクション』したい訳だ。
 しかし、それは甘い考えだ。角砂糖にはちみつシロップをかける位、甘い。
 現実は辛いのだよ。

「う、うわぁぁぁぁ!?」

 迫り来る男に驚いたふりをしつつ、カメラを手放すと市民団体の男が思い切りカメラを踏み付ける。

「はあっ、はあっ、はあっ……やった。やってやった! これで証拠はなくなっ……」

 男は粗い息を吐き、そう呟くともう一台カメラを持つ俺に対し唖然とした表情を浮かべた。

「――はい。罪状に器物破損と証拠隠滅が加わりましたと、無駄な努力、ご苦労様です。ああ、器物破損といえば、川島さんも俺のスマホをぶっ壊してくれましたっけ……しっかり、訴えさせて頂きますので首を洗って待っていて下さい。あなたにも数日以内に訴状が届く予定です」

 まあ川島の場合、それだけでは済まさないけどな。
 川島は俺の大切にしていたスマホゲームのデータをぶっ壊した張本人。これはまだまだ序の口だ。

 すると、川島は震えた声で呟く。

「――なっ、き、君は総務省から現役出向してきたこの私まで訴えるつもりなのか……」
「当然でしょう?」

 そんなに意外な事だろうか?
 器物損壊等罪は、三年以下の懲役、三十万円以下の罰金又は科料に処せられるほどの重罪。それに、裁判を起こすのに出自はまったく関係ない話だ。
 総務省からの現役出向だろうが、市民団体だろうがそんなのは関係なく訴える。
 悪い事をやったのだから罪を償わせる。ただ、それだけの事だ。

「――く、狂ってる。スマートフォン一つ壊しただけで裁判だなんて、リ、リーガルハラスメントだっ!」

 リーガルハラスメント?
 これまた訳のわからない事を……。これのどこがリーガルハラスメントなんだ?
 もしかして、リーガルハラスメントの意味がわかっていないのか??

 リーガルハラスメントっていうのは、力を持った法人、弁護士等が負けるとわかっていながら弱者を訴えるなど法律的な嫌がらせ行為。つまり、勝つ事がわかっている裁判はリーガルハラスメントに当たらない。

「スマートフォン一つ壊しただけと仰るなら最初からやらなければ良かったじゃあありませんか。ああ、ちなみに示談は受け付けませんし、警察に相談するので、もしあなた方が裁判に負けた場合、確実に刑罰が降ります。少々、お高くつくかも知れませんが、腕の良い弁護士を雇った方がいいですよ? それでは俺はこれで……」

 そう言うと、俺は川島をこの場に残し事務所に向かう。

 流石に、これ以上、愚かな行動はしてこないだろう。

 そんな事を考えながら事務所のドアを開ける。すると、そこにはグチャグチャに散乱した事務所の姿があった。

 ◇◆◇

「……シャドー」

 影の精霊・シャドーにそう呼びかけると、カメラを持ったシャドーが現れる。
 そして、カメラの再生ボタンを押すと、そこには市民団体と共に事務所をぐちゃぐちゃにする川島の姿があった。

 バレないと思っていたのだろうか?
 ここまで来ると、清々しさすら感じてくる。

「た、高橋君。ちょっと、待ちたまえ。やはり私を訴えるのは止めておいた方が……」

 ――ニコリ(超笑顔)

 そう笑顔を向けると、川島は発言を止める。

 ――パリン。ぐちゃ……。

 そして、突如として事務所内に投げ込まれた石と卵が足元に転がる様子を見て大量の汗を流した。

「――これも、川島さんと深い関係のある市民団体の方の意思表明と見ていいですかねぇ?」
「こ、これは違う。私じゃあない。本当だっ!」
「ほう。『これは』ですか……。じゃあ、この事務所の惨状については、川島さんが関与していると見て問題ない訳ですね?」

 俺に関係するすべての事象は影の精霊・シャドーがカメラで撮影している。
 バレないと思ったら大間違いだ。
 そして、俺は法的な対処以外に直接的な報復も行う。やられたらやり返す……万倍返しだ。

 すると、川島は顔を引き攣らせ狼狽する。

「い、いや違う。これは……いや、これも違うっ! 私ではない!」
「もう喋らなくて結構です。あなたのお陰で事務所がステキ仕様になりました。そんなに職場にいたくなかったですか……。それなら、その願い叶えて上げますよ。今日から一週間、臨時休暇にしましょう。それじゃあ、俺はこれで……」

 俺が川島の隣りを通り過ぎると、川島は狼狽しながら話しかけてくる。

「こ、こんなつもりじゃあなかったんだ。私は、ただ宝くじ当選の秘密を知る為、仕方がなく……そもそもお前が秘密保持契約を結ぶとか言い出すから……」
「まあ、その辺りの事は裁判官に判断して頂きましょう。ああ、それと、俺はあなたの事をクビにする気はさらさらありませんから、その辺りの事は安心して下さい」

 手元に置いておかないと、憎悪の念が薄れそうだ。川島の発言や行動の一つ一つが俺にとっての起爆剤になってくれる。

「場外乱闘を含めた良いリーガルバトルをしましょう」

 そう言うと、俺はその場を後にした。

 ◇◆◇

 事務所に取り残された川島は混乱の渦中にあった。

「――な、何故、こうなった……」

 笑えないほどの大惨事だ。
 村井様のお力を借り、外部団体を総動員したまではよかったがこれは……。
 裁判沙汰にまでなると流石にシャレにならない。しかも、高橋の奴は警察に届けるとも言っていた。

「こ、このままでは拙い……流石に拙い」

 高橋翔は本気だ。
 本気で我々、団体を訴えようとしている。
 まさかここまで厄介な相手だとは思いもしなかった。

「くそっ……どうすればいいんだ」

 そう呟くと、私は床に落ちていた石を蹴り上げた。

 ---------------------------------------------------------------

 次回は2022年2月25日AM7時更新となります。
しおりを挟む
感想 558

あなたにおすすめの小説

異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します

桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる

【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました

いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。 子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。 「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」 冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。 しかし、マリエールには秘密があった。 ――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。 未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。 「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。 物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立! 数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。 さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。 一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて―― 「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」 これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、 ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー! ※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

平凡なサラリーマンが異世界に行ったら魔術師になりました~科学者に投資したら異世界への扉が開発されたので、スローライフを満喫しようと思います~

金色のクレヨン@釣りするWeb作家
ファンタジー
夏井カナタはどこにでもいるような平凡なサラリーマン。 そんな彼が資金援助した研究者が異世界に通じる装置=扉の開発に成功して、援助の見返りとして異世界に行けることになった。 カナタは準備のために会社を辞めて、異世界の言語を学んだりして準備を進める。 やがて、扉を通過して異世界に着いたカナタは魔術学校に興味をもって入学する。 魔術の適性があったカナタはエルフに弟子入りして、魔術師として成長を遂げる。 これは文化も風習も違う異世界で戦ったり、旅をしたりする男の物語。 エルフやドワーフが出てきたり、国同士の争いやモンスターとの戦いがあったりします。 第二章からシリアスな展開、やや残酷な描写が増えていきます。 旅と冒険、バトル、成長などの要素がメインです。 ノベルピア、カクヨム、小説家になろうにも掲載

没落した貴族家に拾われたので恩返しで復興させます

六山葵
ファンタジー
生まれて間も無く、山の中に捨てられていた赤子レオン・ハートフィリア。 彼を拾ったのは没落して平民になった貴族達だった。 優しい両親に育てられ、可愛い弟と共にすくすくと成長したレオンは不思議な夢を見るようになる。 それは過去の記憶なのか、あるいは前世の記憶か。 その夢のおかげで魔法を学んだレオンは愛する両親を再び貴族にするために魔法学院で魔法を学ぶことを決意した。 しかし、学院でレオンを待っていたのは酷い平民差別。そしてそこにレオンの夢の謎も交わって、彼の運命は大きく変わっていくことになるのだった。 ※2025/12/31に書籍五巻以降の話を非公開に変更する予定です。 詳細は近況ボードをご覧ください。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

【収納∞】スキルがゴミだと追放された俺、実は次元収納に加えて“経験値貯蓄”も可能でした~追放先で出会ったもふもふスライムと伝説の竜を育成〜

あーる
ファンタジー
「役立たずの荷物持ちはもういらない」 貢献してきた勇者パーティーから、スキル【収納∞】を「大した量も入らないゴミスキル」だと誤解されたまま追放されたレント。 しかし、彼のスキルは文字通り『無限』の容量を持つ次元収納に加え、得た経験値を貯蓄し、仲間へ『分配』できる超チート能力だった! 失意の中、追放先の森で出会ったのは、もふもふで可愛いスライムの「プル」と、古代の祭壇で孵化した伝説の竜の幼体「リンド」。レントは隠していたスキルを解放し、唯一無二の仲間たちを最強へと育成することを決意する! 辺境の村を拠点に、薬草採取から魔物討伐まで、スキルを駆使して依頼をこなし、着実に経験値と信頼を稼いでいくレントたち。プルは多彩なスキルを覚え、リンドは驚異的な速度で成長を遂げる。 これは、ゴミスキルだと蔑まれた少年が、最強の仲間たちと共にどん底から成り上がり、やがて自分を捨てたパーティーや国に「もう遅い」と告げることになる、追放から始まる育成&ざまぁファンタジー!

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる 

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ 25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。  目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。 ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。 しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。 ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。 そんな主人公のゆったり成長期!!

処理中です...