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第258話 えっ?周りを巻き込むなって?それは俺に加害行為を働いた人に言ってください②
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「――良かったね、お前等……お家に帰れるよ――と、その前に……おい……」
「え、あ……な、何を……」
新田は部下である暴力団組員に顎で指示を出すと、活動家の面々の荷物を漁り、免許証や保険証等、身分を証明する為の書類を押収していく。
「新田さん。こちらを――」
「ああ、ご苦労さん」
新田は部下から活動家達の身分証明書を受け取ると、片手にナイフを持ったまましゃがみ込んだ。
「――これは、こちらで預かっておくが……文句はないよな?」
正直、悪用されると怖いので返して欲しい所ではあるが、相手が暴力団であると分かった以上、選択肢は他にない。
「は、はい……もちろんです」
泣きそうな表情を浮かべそう言うと、新田は鼻で笑う。
「そうか、それじゃあ、遠慮なく預からせて貰うぜ。まあ、なんだ。お前を含む、お前ん所の雇い主が馬鹿な真似をしなけりゃあ、特段これで何かをする様な事はしねえよ。例えば、この事を警察に届けるとかなぁ……」
そう言って、活動家の男の前にナイフをチラつかせると、男は慌てふためき冷や汗を流す。
「――ひっ!? け、警察になんて相談しません! 本当です!」
「ああ、わかってるよ……どの道、お前等は今後一切、俺達の事を裏切る事ができなくなったんだ。当然だろ……」
意味深にあざ笑うと、新田はポケットにナイフをしまい立ち上がる。
「よし。契約が済み次第、こいつ等を家にまで送って差し上げろ。玄関前まで丁重にな……」
「「「へい」」」
その言葉を聞き、活動家達は震え上がる。
身分証明証を取られた時点である程度想定していたが、暴力団に自宅を知られ恐怖心を感じぬ者などいる筈がない。
しばらくすると、電話が掛かってきたのか新田はスマホを耳に当てる。
「――おう。俺だ……契約は済んだか? ちゃんと、金は受け取ったんだろうな? よし。それならいいんだ」
新田は電話を切ると、活動家達に笑みを浮かべる。
「良かったな。お家に帰れるよ。それと、お前等に一つだけ……二度と舐めた真似をするんじゃねぇぞ? 次はねぇからなっ!」
「「は、はいっ――!!」」
泣きそうな表情を浮かべる活動家達の顔。
新田がハイエースを降りると、活動家達を乗せたハイエースが公道を走り街に向かって消えていく。その後、その活動家達は家に引きこもり、暴力団に対する恐れから一歩も外に出る事はなかった。
◇◆◇
「――どいつもこいつも……どいつもこいつもっ……」
環境活動団体『環境問題をみんなで考え地球の未来を支える会』代表の白石美穂子は、不条理な契約を結ばされた事に不満を爆発させ、虚な瞳を天井に向ける。
どいつもこいつも……どいつもこいつもっ……どいつもこいつも……どいつもこいつもっ……どいつもこいつも……どいつもこいつもっ……どいつもこいつも……どいつもこいつもっ……どいつもこいつも……どいつもこいつもっ……どいつもこいつも……どいつもこいつもっ……どいつもこいつも……どいつもこいつもっ……どいつもこいつも……どいつもこいつもっ……どいつもこいつも……どいつもこいつもっ……どいつもこいつも……どいつもこいつもっ……どいつもこいつも……!
環境活動団体『環境問題をみんなで考え地球の未来を支える会』は、大学卒業と同時に本格的に活動できるようにと一年生の頃、設立した団体。特定非営利活動法人の場合、法人格の取得に一年かかり、助成金の多くは設立から三年経過しないと応募する事ができない。その事を知っていた為、まだ余裕がある内に設立した団体だ。
大学を卒業し、団体としての活動を本格化させ、地球温暖化やレアメタルなど環境や人権に関する様々な活動が認められたことで、公益財団法人地球環境創造財団の代表理事、億泰智浩氏の目に留まりようやくここまで大きくなった。それを……!
「――どいつもこいつも、どいつもこいつも、どいつもこいつも私の邪魔ばかりっ……!!」
活動家達の命を守る為とはいえ、暴力団のフロント企業から物を仕入れなければならなくなった事は明らかな失態だ。
これまでの地道な活動成果もあって数年前から環境省から毎年一億円の助成金を受け取り、環境保全支援事業を委託されている。
来年からは環境保全支援活動が全国規模で展開され、助成金も倍増する予定だ。
予算も権力も組織も拡大し、ようやく明るい未来が開ける筈だった。
なのに……なのにっ!
白石は歯ぐきから血が出るほど、歯を噛みしめ憤る。
「――やってくれたわね……!!」
活動家達は、私が行っている活動の要。絶対に失う訳にはいかない存在だ。
数多くの活動家が声を上げ、扇動し、問題が表層に上がって法整備される時、初めて私達の活動は実を結ぶ。
この活動だってそうだ。レアメタルの採掘と製錬が環境汚染に繋がっていると考えていた人がこの世界にどれだけいただろうか?
数年前に一度、国家間の貿易問題で話題に上がったが、民衆は皆、某国とのレアアース紛争に勝ったとか負けたとか、そんな下らない事しか興味を示さなかった。
レアメタルは環境問題だけではなく、人権問題にも関わってくる大問題にも関わらずだ。
皆が興味を示さなかった。だから、私達は声を上げた。紛争鉱物を取り扱う企業の監視。その必要性について……なのに……それがようやく実が結びそうになった今になって邪魔が入るなんて……
しかも、ただの邪魔ではない。暴力団という反社会的勢力による邪魔だ。
このままでは、私の法人が滅茶苦茶となってしまう。非営利活動法人であることをいい事に会計を誤魔化し、溜め込んできた裏金まで奪い取られてしまう!
溜め込んだ裏金で土地を買いビルを建て、ようやく、助成金や補助金に頼る生活から抜け出せると思ったのに……あと、もう少しだったのにっ……!!
突然失踪した厚生労働省の村井元事務次官の手により、そのスキームは完成しつつあった、後は資金を集めるだけ。その段階にあったのだ。
講演会で知り合い懇意の中となった村井元事務次官。そのお方が推し進めていたスキームは、不動産投資に失敗した土地を安く買い取り、国からの補助金で家を建て、そこに生活困窮者を生活保護で住まわせることで、その賃料を保護費から回収する夢の街プロジェクト。
私が今、行っている活動とは毛並みが異なるが、これは活動家にとっても、支援を受ける生活困窮者にとっても夢のあるプロジェクトだ。
活動家の仕事に終わりはない。人々の不平不満がある所に活動家は存在する。
しかし、社会への不満や怒りを原動力に活動家として一生を過ごすのは流石に無理がある。
活動家にもサラリーマンの昇給・昇格と同じ様に上るべきステージがあるのだ。
欧米諸国で市民セクタのプロフェッショナルである特定非営利活動法人幹部は、社会のエリート層として受け止められている。
自らの主義主張と合致する政権が成立すれば、政府の上級官僚として迎え入れられ、政策立案や政策提言を行う政府スタッフやシンクタンクとして活動する事ができるのだ。
現に、今、私自身も有識者の一人として有識者会議に参加している。
つまり、それはその道の……レアメタルに関するプロフェッショナルとして国に認めれた事に他ならない。
そして、その道のプロフェッショナルとなれば、国家資格や民間資格など得ていなくても、専門家を名乗る事ができ、講演会やセミナー等でお金を稼ぐことができるようになる。
国会議員になんてならなくても、政策参与として専門的な立場から助言や提言を行う事ができるし、テレビにだって取り上げられる。
知名度が上がれば書籍は売れ、講演会には引っ張りだこ。活動実績を積めば、公益財団法人の理事の道も開ける。
「なのに……なのに……!」
暴力団と取引がある事がバレたら私はお終いだ。助成金や補助金を申請する際、書かされる暴力団排除に関する誓約書。
もし、暴力団と取引がある事がバレたら助成金や補助金の対象から外されるだけではなく、補助金の返還を求められる可能性がある。
それだけではない。
今後一切、補助金や助成金を受け取る事ができなくなってしまうかもしれない。
当然、有識者会議からも外され、暴力団と付き合いのあった危険人物として烙印を押されてしまう。
冗談じゃない……冗談じゃない!
新田とかいう暴力団員もそこまで考えて提案してきたのだろう。簡単に暴力団との関係を断ち切る事ができないようにと……忌々しい。まるで死肉をあさるハイエナやハゲタカの様な存在だ。
こうなっては仕方がない。
すべてを食い散らかされる前に資金を隠す。それ以外に方法はない。
幸いな事に裏金の存在はまだ知られていない。
暴力団に裏金の存在がバレる前に、表立ってホームページに掲載している偽りの活動報告書と貸借対照表。それに合わせて、裏金すべてを私の家に移す。
そして再起してやる。私はただでは終わらない。
ただでは終わらないわっ!
デスクの一番上の引き出しを開け、隠し底にしまった鍵を取り出すと、本棚をずらし隠し金庫の置いてある地下室へと向かう。
ここは私とこの建物を建てた管理人以外誰も知らない地下室。
私はそこに裏金を積んである。
地下室の隅に置いてあるキャリーバッグに視線を向けると、それを手に持ち、金庫の鍵を回した。
そして、金庫の中に入ってすぐ、私は過呼吸に陥る。
「――は、かはっ……あ、ああああっ……ああああああああああああああああああああっ!?」
全身から力が抜け脱力すると、膝から崩れ落ちる呆然とした表情を浮かべた。
「あ、あああああああっ……な、なんで……なんで、なんで、なんでっ?? 私の金は……? 私のお金はどこに行ったのっ……?」
金庫の中には何もない。私の金がどこにもない。
「私の……私のお金ぇぇええええええええええええええええええええええええええ!」
そう叫びながら頭を掻き毟る。
この金庫にあった金は裏金。つまり、表に出す事のできない金だ。
当然、警察に相談する訳にも行かないし、表立って探す事もできない。
この場所に金庫がある事を知っている者は誰もいないし、誰かに教えた覚えもない。
「あ、ああああああああああああああああああああああああああああああああああっ????」
その日、とある非営利活動法人の事務所の一室で女性の絶叫が響き渡った。
周辺のコンビニやスーパーの募金箱。そこに、その裏金が突っ込まれているとも知らずに……
---------------------------------------------------------------
次回は2023年6月13日AM7時更新となります。
「え、あ……な、何を……」
新田は部下である暴力団組員に顎で指示を出すと、活動家の面々の荷物を漁り、免許証や保険証等、身分を証明する為の書類を押収していく。
「新田さん。こちらを――」
「ああ、ご苦労さん」
新田は部下から活動家達の身分証明書を受け取ると、片手にナイフを持ったまましゃがみ込んだ。
「――これは、こちらで預かっておくが……文句はないよな?」
正直、悪用されると怖いので返して欲しい所ではあるが、相手が暴力団であると分かった以上、選択肢は他にない。
「は、はい……もちろんです」
泣きそうな表情を浮かべそう言うと、新田は鼻で笑う。
「そうか、それじゃあ、遠慮なく預からせて貰うぜ。まあ、なんだ。お前を含む、お前ん所の雇い主が馬鹿な真似をしなけりゃあ、特段これで何かをする様な事はしねえよ。例えば、この事を警察に届けるとかなぁ……」
そう言って、活動家の男の前にナイフをチラつかせると、男は慌てふためき冷や汗を流す。
「――ひっ!? け、警察になんて相談しません! 本当です!」
「ああ、わかってるよ……どの道、お前等は今後一切、俺達の事を裏切る事ができなくなったんだ。当然だろ……」
意味深にあざ笑うと、新田はポケットにナイフをしまい立ち上がる。
「よし。契約が済み次第、こいつ等を家にまで送って差し上げろ。玄関前まで丁重にな……」
「「「へい」」」
その言葉を聞き、活動家達は震え上がる。
身分証明証を取られた時点である程度想定していたが、暴力団に自宅を知られ恐怖心を感じぬ者などいる筈がない。
しばらくすると、電話が掛かってきたのか新田はスマホを耳に当てる。
「――おう。俺だ……契約は済んだか? ちゃんと、金は受け取ったんだろうな? よし。それならいいんだ」
新田は電話を切ると、活動家達に笑みを浮かべる。
「良かったな。お家に帰れるよ。それと、お前等に一つだけ……二度と舐めた真似をするんじゃねぇぞ? 次はねぇからなっ!」
「「は、はいっ――!!」」
泣きそうな表情を浮かべる活動家達の顔。
新田がハイエースを降りると、活動家達を乗せたハイエースが公道を走り街に向かって消えていく。その後、その活動家達は家に引きこもり、暴力団に対する恐れから一歩も外に出る事はなかった。
◇◆◇
「――どいつもこいつも……どいつもこいつもっ……」
環境活動団体『環境問題をみんなで考え地球の未来を支える会』代表の白石美穂子は、不条理な契約を結ばされた事に不満を爆発させ、虚な瞳を天井に向ける。
どいつもこいつも……どいつもこいつもっ……どいつもこいつも……どいつもこいつもっ……どいつもこいつも……どいつもこいつもっ……どいつもこいつも……どいつもこいつもっ……どいつもこいつも……どいつもこいつもっ……どいつもこいつも……どいつもこいつもっ……どいつもこいつも……どいつもこいつもっ……どいつもこいつも……どいつもこいつもっ……どいつもこいつも……どいつもこいつもっ……どいつもこいつも……どいつもこいつもっ……どいつもこいつも……!
環境活動団体『環境問題をみんなで考え地球の未来を支える会』は、大学卒業と同時に本格的に活動できるようにと一年生の頃、設立した団体。特定非営利活動法人の場合、法人格の取得に一年かかり、助成金の多くは設立から三年経過しないと応募する事ができない。その事を知っていた為、まだ余裕がある内に設立した団体だ。
大学を卒業し、団体としての活動を本格化させ、地球温暖化やレアメタルなど環境や人権に関する様々な活動が認められたことで、公益財団法人地球環境創造財団の代表理事、億泰智浩氏の目に留まりようやくここまで大きくなった。それを……!
「――どいつもこいつも、どいつもこいつも、どいつもこいつも私の邪魔ばかりっ……!!」
活動家達の命を守る為とはいえ、暴力団のフロント企業から物を仕入れなければならなくなった事は明らかな失態だ。
これまでの地道な活動成果もあって数年前から環境省から毎年一億円の助成金を受け取り、環境保全支援事業を委託されている。
来年からは環境保全支援活動が全国規模で展開され、助成金も倍増する予定だ。
予算も権力も組織も拡大し、ようやく明るい未来が開ける筈だった。
なのに……なのにっ!
白石は歯ぐきから血が出るほど、歯を噛みしめ憤る。
「――やってくれたわね……!!」
活動家達は、私が行っている活動の要。絶対に失う訳にはいかない存在だ。
数多くの活動家が声を上げ、扇動し、問題が表層に上がって法整備される時、初めて私達の活動は実を結ぶ。
この活動だってそうだ。レアメタルの採掘と製錬が環境汚染に繋がっていると考えていた人がこの世界にどれだけいただろうか?
数年前に一度、国家間の貿易問題で話題に上がったが、民衆は皆、某国とのレアアース紛争に勝ったとか負けたとか、そんな下らない事しか興味を示さなかった。
レアメタルは環境問題だけではなく、人権問題にも関わってくる大問題にも関わらずだ。
皆が興味を示さなかった。だから、私達は声を上げた。紛争鉱物を取り扱う企業の監視。その必要性について……なのに……それがようやく実が結びそうになった今になって邪魔が入るなんて……
しかも、ただの邪魔ではない。暴力団という反社会的勢力による邪魔だ。
このままでは、私の法人が滅茶苦茶となってしまう。非営利活動法人であることをいい事に会計を誤魔化し、溜め込んできた裏金まで奪い取られてしまう!
溜め込んだ裏金で土地を買いビルを建て、ようやく、助成金や補助金に頼る生活から抜け出せると思ったのに……あと、もう少しだったのにっ……!!
突然失踪した厚生労働省の村井元事務次官の手により、そのスキームは完成しつつあった、後は資金を集めるだけ。その段階にあったのだ。
講演会で知り合い懇意の中となった村井元事務次官。そのお方が推し進めていたスキームは、不動産投資に失敗した土地を安く買い取り、国からの補助金で家を建て、そこに生活困窮者を生活保護で住まわせることで、その賃料を保護費から回収する夢の街プロジェクト。
私が今、行っている活動とは毛並みが異なるが、これは活動家にとっても、支援を受ける生活困窮者にとっても夢のあるプロジェクトだ。
活動家の仕事に終わりはない。人々の不平不満がある所に活動家は存在する。
しかし、社会への不満や怒りを原動力に活動家として一生を過ごすのは流石に無理がある。
活動家にもサラリーマンの昇給・昇格と同じ様に上るべきステージがあるのだ。
欧米諸国で市民セクタのプロフェッショナルである特定非営利活動法人幹部は、社会のエリート層として受け止められている。
自らの主義主張と合致する政権が成立すれば、政府の上級官僚として迎え入れられ、政策立案や政策提言を行う政府スタッフやシンクタンクとして活動する事ができるのだ。
現に、今、私自身も有識者の一人として有識者会議に参加している。
つまり、それはその道の……レアメタルに関するプロフェッショナルとして国に認めれた事に他ならない。
そして、その道のプロフェッショナルとなれば、国家資格や民間資格など得ていなくても、専門家を名乗る事ができ、講演会やセミナー等でお金を稼ぐことができるようになる。
国会議員になんてならなくても、政策参与として専門的な立場から助言や提言を行う事ができるし、テレビにだって取り上げられる。
知名度が上がれば書籍は売れ、講演会には引っ張りだこ。活動実績を積めば、公益財団法人の理事の道も開ける。
「なのに……なのに……!」
暴力団と取引がある事がバレたら私はお終いだ。助成金や補助金を申請する際、書かされる暴力団排除に関する誓約書。
もし、暴力団と取引がある事がバレたら助成金や補助金の対象から外されるだけではなく、補助金の返還を求められる可能性がある。
それだけではない。
今後一切、補助金や助成金を受け取る事ができなくなってしまうかもしれない。
当然、有識者会議からも外され、暴力団と付き合いのあった危険人物として烙印を押されてしまう。
冗談じゃない……冗談じゃない!
新田とかいう暴力団員もそこまで考えて提案してきたのだろう。簡単に暴力団との関係を断ち切る事ができないようにと……忌々しい。まるで死肉をあさるハイエナやハゲタカの様な存在だ。
こうなっては仕方がない。
すべてを食い散らかされる前に資金を隠す。それ以外に方法はない。
幸いな事に裏金の存在はまだ知られていない。
暴力団に裏金の存在がバレる前に、表立ってホームページに掲載している偽りの活動報告書と貸借対照表。それに合わせて、裏金すべてを私の家に移す。
そして再起してやる。私はただでは終わらない。
ただでは終わらないわっ!
デスクの一番上の引き出しを開け、隠し底にしまった鍵を取り出すと、本棚をずらし隠し金庫の置いてある地下室へと向かう。
ここは私とこの建物を建てた管理人以外誰も知らない地下室。
私はそこに裏金を積んである。
地下室の隅に置いてあるキャリーバッグに視線を向けると、それを手に持ち、金庫の鍵を回した。
そして、金庫の中に入ってすぐ、私は過呼吸に陥る。
「――は、かはっ……あ、ああああっ……ああああああああああああああああああああっ!?」
全身から力が抜け脱力すると、膝から崩れ落ちる呆然とした表情を浮かべた。
「あ、あああああああっ……な、なんで……なんで、なんで、なんでっ?? 私の金は……? 私のお金はどこに行ったのっ……?」
金庫の中には何もない。私の金がどこにもない。
「私の……私のお金ぇぇええええええええええええええええええええええええええ!」
そう叫びながら頭を掻き毟る。
この金庫にあった金は裏金。つまり、表に出す事のできない金だ。
当然、警察に相談する訳にも行かないし、表立って探す事もできない。
この場所に金庫がある事を知っている者は誰もいないし、誰かに教えた覚えもない。
「あ、ああああああああああああああああああああああああああああああああああっ????」
その日、とある非営利活動法人の事務所の一室で女性の絶叫が響き渡った。
周辺のコンビニやスーパーの募金箱。そこに、その裏金が突っ込まれているとも知らずに……
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次回は2023年6月13日AM7時更新となります。
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