15 / 100
1章 スキル覚醒、始まりの『退職』へ
第15話 話し合い
しおりを挟む
いつも通りに出勤して通常業務をこなしていると昼前にはギルマスが出勤してきた。そのまま2階の彼専用の部屋に入ると副ギルマスも後から入っていく。
それを見て俺も覚悟を決めて部屋のドアをノックする。
「すみません、タナカです。目を通してサインをいただきたい書類があります。よろしいでしょか。」
「君ィ、後にしたまえ!」
「まあ、いいよ。入りたまえ。」
副ギルマスの嫌な声に続いて、ギルマスの了承の声が聞こえたので入ることにする。
ここからが俺の本当の冒険の入口だ。
やや出たとこ勝負になってしまったのは残念だが、だからこそ勇気を出さなければいけない。
なに、手持ちの金貨は100枚弱。話が拗れて追放じみた形になったとしても、数年はフラフラできる額だ。人間お金があると強気に出られるというものです。
失礼しますっと、中に入り副ギルマスのマイヤーの嫌味な視線をくぐり、ブライアンと向き合う。
思えば20年前、この部屋でこの男との話し合いがすべての、否2度目の地獄の始まりだった。
清算のときだろう。
「こちらの2つになります、どうかよろしくお願いします。」
俺は辞表と冒険者登録手続申請書の2枚を重ねて渡す。ああ、はいはいと判子を用意してただ押すだけのような仕草をしたブライアンはそのまま動きが固まった。
「タナカ君、これはどういうことだい?話なら聞くがこんな不躾に君がくるとは思っていなかったよ。
僕達は上手くやってきたじゃないか。」
と、平静に努めながらもやや不機嫌感を出してくる。よう言うわ、上手く使ってきたの間違いだろ。
「お二人とも揃っていますし、ここは私の不退転の決意を始めにお伝えしておこうかと。」
そう俺が告げると、話についていけないマイヤーがブライアンの手元の書類を覗き込む。
「貴様、失礼にも程があるだろう!無作法に部屋に入ってきたかと思えば騙し討ちのように辞表を叩きつけるとは。
まずは直属の上司である私に相談からだろうが、何を思い違いしている!!」
「マイヤー、君がいないときに話を持っていくことも考えたがこれは私からの精一杯の誠意だ。少し黙ってそこにいてくれないか。」
と、俺も今日はやり合う姿勢を見せる。
「キッ、キサマその口の聞き方はなんだ!!上司に向かって!!ギルドマスター、構いません。こんな奴、切り刻んでスラムに放り投げましょう!」
と完全に怒髪天を突き、今にでも行動を起こしそうだ。流石に挑発しすぎたかとたじろぐが気持ちは負けていられない。
「二人とも落ち着き給え、前から君らの険悪は気づいていたがどうやら放置していた私の落ち度のようだな。
君たちには二人で私を、ひいてはこのギルドを支えてほしいと心から思っていたのだが。」
なんてズレたことをブライアンはのたまう。
別に俺は今回の行動をマイヤーとの口喧嘩の延長でやってるわけじゃないんだがな。
「取り敢えずタナカ君の話を聞こうじゃないか。
マイヤーも今は抑えて私に任せてくれ、無理なら退室してくれて構わない。
タナカ君も無闇に挑発はしないで話し合おう。」
「くっ、わかりました。」
「はい、お願いします。」
こちらとしても有耶無耶に誤魔化したりせず話し合いができるだけでも最初にカマしたのは正解だったなと心を落ち着かせる。
「それで辞めてどうすると言うんだい、いいアテの勤め先のオファーでもあったのかい?
どう言いくるめるられたのかは知らないが今から新しい職場はツライぞ。
待遇に不満があったのだろうがまあ、確かに君の頑張りに対して昇給はここ最近なかったね。少しはこちらも見直そう。考え直してはくれないか?」
結局はいつもの手口できたか、今さら多少の昇給を餌でこちらが揺らぐわけもない。
「それは勘違いです、ギルドマスター。2枚目の書類にも目を通してください。」
俺がそういうとブライアンは手元を、次いでマイヤーも書類を覗き込む。
「おい、これは何の冗談だい。冒険者登録って。
この申請書類にも書かれているが君は38歳だぞ、そして通常レベルは1のジョブは『書記』だ。
君はもっと大人だと思っていたよ。冗談ならこれくらいにして業務に戻ってくれないか。」
真面目に応対していたブライアンも呆れ顔で書類から手を離す。黙っていろと言われていたマイヤーも声を上げて笑い出すと
「傑作だな、今までの行動はこのジョークのための演出だったんだな。これは失礼、本気にしてしまったよ!!」
っと、乗ってくる。
熱くなるな、俺。
俺にはジョブレベル10の覚醒スキル「スキルブック作成」があるんだ。
どれだけ笑われようと夢を見る資格はあるさ。
―交渉はここからだ―
それを見て俺も覚悟を決めて部屋のドアをノックする。
「すみません、タナカです。目を通してサインをいただきたい書類があります。よろしいでしょか。」
「君ィ、後にしたまえ!」
「まあ、いいよ。入りたまえ。」
副ギルマスの嫌な声に続いて、ギルマスの了承の声が聞こえたので入ることにする。
ここからが俺の本当の冒険の入口だ。
やや出たとこ勝負になってしまったのは残念だが、だからこそ勇気を出さなければいけない。
なに、手持ちの金貨は100枚弱。話が拗れて追放じみた形になったとしても、数年はフラフラできる額だ。人間お金があると強気に出られるというものです。
失礼しますっと、中に入り副ギルマスのマイヤーの嫌味な視線をくぐり、ブライアンと向き合う。
思えば20年前、この部屋でこの男との話し合いがすべての、否2度目の地獄の始まりだった。
清算のときだろう。
「こちらの2つになります、どうかよろしくお願いします。」
俺は辞表と冒険者登録手続申請書の2枚を重ねて渡す。ああ、はいはいと判子を用意してただ押すだけのような仕草をしたブライアンはそのまま動きが固まった。
「タナカ君、これはどういうことだい?話なら聞くがこんな不躾に君がくるとは思っていなかったよ。
僕達は上手くやってきたじゃないか。」
と、平静に努めながらもやや不機嫌感を出してくる。よう言うわ、上手く使ってきたの間違いだろ。
「お二人とも揃っていますし、ここは私の不退転の決意を始めにお伝えしておこうかと。」
そう俺が告げると、話についていけないマイヤーがブライアンの手元の書類を覗き込む。
「貴様、失礼にも程があるだろう!無作法に部屋に入ってきたかと思えば騙し討ちのように辞表を叩きつけるとは。
まずは直属の上司である私に相談からだろうが、何を思い違いしている!!」
「マイヤー、君がいないときに話を持っていくことも考えたがこれは私からの精一杯の誠意だ。少し黙ってそこにいてくれないか。」
と、俺も今日はやり合う姿勢を見せる。
「キッ、キサマその口の聞き方はなんだ!!上司に向かって!!ギルドマスター、構いません。こんな奴、切り刻んでスラムに放り投げましょう!」
と完全に怒髪天を突き、今にでも行動を起こしそうだ。流石に挑発しすぎたかとたじろぐが気持ちは負けていられない。
「二人とも落ち着き給え、前から君らの険悪は気づいていたがどうやら放置していた私の落ち度のようだな。
君たちには二人で私を、ひいてはこのギルドを支えてほしいと心から思っていたのだが。」
なんてズレたことをブライアンはのたまう。
別に俺は今回の行動をマイヤーとの口喧嘩の延長でやってるわけじゃないんだがな。
「取り敢えずタナカ君の話を聞こうじゃないか。
マイヤーも今は抑えて私に任せてくれ、無理なら退室してくれて構わない。
タナカ君も無闇に挑発はしないで話し合おう。」
「くっ、わかりました。」
「はい、お願いします。」
こちらとしても有耶無耶に誤魔化したりせず話し合いができるだけでも最初にカマしたのは正解だったなと心を落ち着かせる。
「それで辞めてどうすると言うんだい、いいアテの勤め先のオファーでもあったのかい?
どう言いくるめるられたのかは知らないが今から新しい職場はツライぞ。
待遇に不満があったのだろうがまあ、確かに君の頑張りに対して昇給はここ最近なかったね。少しはこちらも見直そう。考え直してはくれないか?」
結局はいつもの手口できたか、今さら多少の昇給を餌でこちらが揺らぐわけもない。
「それは勘違いです、ギルドマスター。2枚目の書類にも目を通してください。」
俺がそういうとブライアンは手元を、次いでマイヤーも書類を覗き込む。
「おい、これは何の冗談だい。冒険者登録って。
この申請書類にも書かれているが君は38歳だぞ、そして通常レベルは1のジョブは『書記』だ。
君はもっと大人だと思っていたよ。冗談ならこれくらいにして業務に戻ってくれないか。」
真面目に応対していたブライアンも呆れ顔で書類から手を離す。黙っていろと言われていたマイヤーも声を上げて笑い出すと
「傑作だな、今までの行動はこのジョークのための演出だったんだな。これは失礼、本気にしてしまったよ!!」
っと、乗ってくる。
熱くなるな、俺。
俺にはジョブレベル10の覚醒スキル「スキルブック作成」があるんだ。
どれだけ笑われようと夢を見る資格はあるさ。
―交渉はここからだ―
64
あなたにおすすめの小説
伯爵家の三男に転生しました。風属性と回復属性で成り上がります
竹桜
ファンタジー
武田健人は、消防士として、風力発電所の事故に駆けつけ、救助活動をしている途中に、上から瓦礫が降ってきて、それに踏み潰されてしまった。次に、目が覚めると真っ白な空間にいた。そして、神と名乗る男が出てきて、ほとんど説明がないまま異世界転生をしてしまう。
転生してから、ステータスを見てみると、風属性と回復属性だけ適性が10もあった。この世界では、5が最大と言われていた。俺の異世界転生は、どうなってしまうんだ。
神の加護を受けて異世界に
モンド
ファンタジー
親に言われるまま学校や塾に通い、卒業後は親の進める親族の会社に入り、上司や親の進める相手と見合いし、結婚。
その後馬車馬のように働き、特別好きな事をした覚えもないまま定年を迎えようとしている主人公、あとわずか数日の会社員生活でふと、何かに誘われるように会社を無断で休み、海の見える高台にある、神社に立ち寄った。
そこで野良犬に噛み殺されそうになっていた狐を助けたがその際、野良犬に喉笛を噛み切られその命を終えてしまうがその時、神社から不思議な光が放たれ新たな世界に生まれ変わる、そこでは自分の意思で何もかもしなければ生きてはいけない厳しい世界しかし、生きているという実感に震える主人公が、力強く生きるながら信仰と奇跡にに導かれて神に至る物語。
男爵家の厄介者は賢者と呼ばれる
暇野無学
ファンタジー
魔法もスキルも授からなかったが、他人の魔法は俺のもの。な~んちゃって。
授けの儀で授かったのは魔法やスキルじゃなかった。神父様には読めなかったが、俺には馴染みの文字だが魔法とは違う。転移した世界は優しくない世界、殺される前に授かったものを利用して逃げ出す算段をする。魔法でないものを利用して魔法を使い熟し、やがては無敵の魔法使いになる。
知識スキルで異世界らいふ
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
他の異世界の神様のやらかしで死んだ俺は、その神様の紹介で別の異世界に転生する事になった。地球の神様からもらった知識スキルを駆使して、異世界ライフ
猫好きのぼっちおじさん、招かれた異世界で気ままに【亜空間倉庫】で移動販売を始める
遥風 かずら
ファンタジー
【HOTランキング1位作品(9月2週目)】
猫好きを公言する独身おじさん麦山湯治(49)は商売で使っているキッチンカーを車検に出し、常連カードの更新も兼ねていつもの猫カフェに来ていた。猫カフェの一番人気かつ美人トラ猫のコムギに特に好かれており、湯治が声をかけなくても、自発的に膝に乗ってきては抱っこを要求されるほどの猫好き上級者でもあった。
そんないつものもふもふタイム中、スタッフに信頼されている湯治は他の客がいないこともあって、数分ほど猫たちの見守りを頼まれる。二つ返事で猫たちに温かい眼差しを向ける湯治。そんな時、コムギに手招きをされた湯治は細長い廊下をついて歩く。おかしいと感じながら延々と続く長い廊下を進んだ湯治だったが、コムギが突然湯治の顔をめがけて引き返してくる。怒ることのない湯治がコムギを顔から離して目を開けると、そこは猫カフェではなくのどかな厩舎の中。
まるで招かれるように異世界に降り立った湯治は、好きな猫と一緒に生きることを目指して外に向かうのだった。
劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?
はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、
強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。
母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、
その少年に、突然の困難が立ちはだかる。
理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。
一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。
それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。
そんな少年の物語。
追放されたので田舎でスローライフするはずが、いつの間にか最強領主になっていた件
言諮 アイ
ファンタジー
「お前のような無能はいらない!」
──そう言われ、レオンは王都から盛大に追放された。
だが彼は思った。
「やった!最高のスローライフの始まりだ!!」
そして辺境の村に移住し、畑を耕し、温泉を掘り当て、牧場を開き、ついでに商売を始めたら……
気づけば村が巨大都市になっていた。
農業改革を進めたら周囲の貴族が土下座し、交易を始めたら王国経済をぶっ壊し、温泉を作ったら各国の王族が観光に押し寄せる。
「俺はただ、のんびり暮らしたいだけなんだが……?」
一方、レオンを追放した王国は、バカ王のせいで経済崩壊&敵国に占領寸前!
慌てて「レオン様、助けてください!!」と泣きついてくるが……
「ん? ちょっと待て。俺に無能って言ったの、どこのどいつだっけ?」
もはや世界最強の領主となったレオンは、
「好き勝手やった報い? しらんな」と華麗にスルーし、
今日ものんびり温泉につかるのだった。
ついでに「真の愛」まで手に入れて、レオンの楽園ライフは続く──!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる