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抜けた記憶
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『シルフィー!!』
ー✳✳✳げてー
『いやだ!』
ーいいからー
体中が熱くて痛くて─それが夢の中だと分かるのに、目を開ける事もできない。
ーたすけてー
助けを求めたくても声が出ない。
そんな苦しみがどれぐらい続いたのか──。
「あぁ!シルフィー様!」
目を開けると、そこには涙を沢山溜めた侍女のケイトが居た。
「…ケイ…ト?ケホッケホッ─?」
「シルフィー様、今すぐに飲み物をお持ちしますから、そのまま寝ていて下さいね。絶対に動いたりしないで下さいね!」
ケイトはそう私に念押しをした後、急ぎ足で部屋から出て行った。
ーそんな念押ししなくても…体中が怠くて動けないけどー
ケイトを待っている間、今の自分の状況を考える。
「??」
ここが、おじいさまとおばあさまの住んでいるキリクス領の邸にある、私に充てられた部屋だと言う事は分かる。でも…どうしてベッドに居るのか…それも、体が思うように動かないのか…。
「うーん…??」
と呻っていると
「「「シルフィー!!」」」
バンッ─と大きな音と共に扉が開いて、おじいさまとおばあさまとおとうさまがやって来た。
「え?」
「あぁ!良かった!」
「シルフィー、大丈夫なの?」
「シルフィー!」
3人共が、ケイトと同様に涙を流している。
「えっと…私…どうして…ここに?」
今の自分の状況が全く分からなかったから、素直に訊く事にした。
「魔力…ぼうそう…」
「あぁ。シルフィーは、森の中で魔力暴走を起こして…倒れていたんだ。」
“魔力暴走”
それは、その文字通り、体に流れている魔力が暴走して体から溢れ出す事。
その本人の魔力が強い程、魔力の暴走も激しくなり、酷い時には辺り一面被害が出たりもする。
森の方から強い魔力の波を感じとった、この邸の使用人の一人が急いでその場所へと駆け付けると、そこに私が倒れていたそうだ。周りに人は誰も居らず、半径2メートル程の木々が薙ぎ倒されていた。そして、その使用人が私を急ぎ抱き抱えて邸まで連れて帰り──
そこから私は、三日三晩高熱を出し眠り続けていたそうだ。
「それで…左肩を怪我していてね。その傷には毒があったようなんだが…何か覚えているかい?」
とおとうさまが訊いてくるけど
「…ごめんなさい。何も…覚えてないの…。」
怪我の理由どころか、何故森に一人で居たのかさえ…分からなかった。
「いや…いいんだよ。」
そう言って、おとうさまは私の頭を優しく撫でてくれた。
「それとね…医者が言うには、魔力暴走を起こして魔力が枯渇しかけたからだろう─と言う事なんだが…」
と、おとうさまから告げられた事には、私も驚いた。
そんな出来事があったのが、私が5歳の頃。未だにその辺りの記憶は抜けたままだ。もともと、私とお父様は王都にある邸で暮らしていたけど、私は療養を兼ねてそのまま暫くの間は、お祖父様とお祖母様の住んでいるキリクス領の邸で過ごす事になった。
体は元気になっても、魔力は殆ど回復しなかった。
「肩に受けた傷から入ったであろう毒が、その傷痕に影響を及ぼしているようで、ここで魔力の流れが途切れているようです。そのせいで、魔力が回復しないかと…。」
それから、色々な治療を試してはみたけど、魔力が回復する事は無かった。そして、左肩の傷痕も…消える事はなかった。
そのまま私は、キリクス領で過ごして8歳の誕生日を迎えた日。
「カルディアよ。宜しくね、シルフィー。」
ニコリと優しく笑う叔母がやって来た。
私の亡くなった母の妹─らしい。
“らしい”と言うのは、今迄一度も会った事はなかったし、叔母がいると言う事も知らなかったのだ。
どうやら、母方の祖父母の反対を押し切り、平民の男性と駆け落ち同然に結婚をしたそうで、それ以降、全くの音信不通状態だったらしい。
だが、その結婚相手が事故で亡くなってしまい、双子の子供が居て困った挙げ句に、戻って来たそうだ。
祖父母は、娘に対しては怒り?はあるものの、孫には責任は無いからと、3人の帰りを受け入れたそうだ。
「それで、その従弟妹達が丁度シルフィーと年も近いから、3人に、この邸に住んでもらおうかと思ってな。私がシルフィーと一緒に居られれば良いんだが…。すまないな。」
「お父様が謝る必要はないわ。私が王都の邸に戻らないのは…私の我儘だもの。私の方こそごめんなさい。」
魔力が戻らない事と傷が残った事で、私は王都に戻る事が少し怖くて帰れずに居た。
「シルフィー…。それも気にする事はないよ。ただ、ユリウスが寂しがっていたから、手紙を書いてやってくれ。」
「お兄様が?分かったわ。」
ユリウスは、私の二つ年上のお兄様。こんな私でも、可愛いと言ってくれる、とても優しい兄だ。少し…過保護が過ぎるけど。
兎に角、この日から、叔母と従弟妹と一緒に生活を送る日々が始まる。
「叔母さま、今日から宜しくお願いします。」
仲良く楽しくできたらいいな─
と、その時はワクワクした気持ちでいっぱいだった。
そんな気持ちは…直ぐに打ち砕かれる事になる事も知らずに─
ー✳✳✳げてー
『いやだ!』
ーいいからー
体中が熱くて痛くて─それが夢の中だと分かるのに、目を開ける事もできない。
ーたすけてー
助けを求めたくても声が出ない。
そんな苦しみがどれぐらい続いたのか──。
「あぁ!シルフィー様!」
目を開けると、そこには涙を沢山溜めた侍女のケイトが居た。
「…ケイ…ト?ケホッケホッ─?」
「シルフィー様、今すぐに飲み物をお持ちしますから、そのまま寝ていて下さいね。絶対に動いたりしないで下さいね!」
ケイトはそう私に念押しをした後、急ぎ足で部屋から出て行った。
ーそんな念押ししなくても…体中が怠くて動けないけどー
ケイトを待っている間、今の自分の状況を考える。
「??」
ここが、おじいさまとおばあさまの住んでいるキリクス領の邸にある、私に充てられた部屋だと言う事は分かる。でも…どうしてベッドに居るのか…それも、体が思うように動かないのか…。
「うーん…??」
と呻っていると
「「「シルフィー!!」」」
バンッ─と大きな音と共に扉が開いて、おじいさまとおばあさまとおとうさまがやって来た。
「え?」
「あぁ!良かった!」
「シルフィー、大丈夫なの?」
「シルフィー!」
3人共が、ケイトと同様に涙を流している。
「えっと…私…どうして…ここに?」
今の自分の状況が全く分からなかったから、素直に訊く事にした。
「魔力…ぼうそう…」
「あぁ。シルフィーは、森の中で魔力暴走を起こして…倒れていたんだ。」
“魔力暴走”
それは、その文字通り、体に流れている魔力が暴走して体から溢れ出す事。
その本人の魔力が強い程、魔力の暴走も激しくなり、酷い時には辺り一面被害が出たりもする。
森の方から強い魔力の波を感じとった、この邸の使用人の一人が急いでその場所へと駆け付けると、そこに私が倒れていたそうだ。周りに人は誰も居らず、半径2メートル程の木々が薙ぎ倒されていた。そして、その使用人が私を急ぎ抱き抱えて邸まで連れて帰り──
そこから私は、三日三晩高熱を出し眠り続けていたそうだ。
「それで…左肩を怪我していてね。その傷には毒があったようなんだが…何か覚えているかい?」
とおとうさまが訊いてくるけど
「…ごめんなさい。何も…覚えてないの…。」
怪我の理由どころか、何故森に一人で居たのかさえ…分からなかった。
「いや…いいんだよ。」
そう言って、おとうさまは私の頭を優しく撫でてくれた。
「それとね…医者が言うには、魔力暴走を起こして魔力が枯渇しかけたからだろう─と言う事なんだが…」
と、おとうさまから告げられた事には、私も驚いた。
そんな出来事があったのが、私が5歳の頃。未だにその辺りの記憶は抜けたままだ。もともと、私とお父様は王都にある邸で暮らしていたけど、私は療養を兼ねてそのまま暫くの間は、お祖父様とお祖母様の住んでいるキリクス領の邸で過ごす事になった。
体は元気になっても、魔力は殆ど回復しなかった。
「肩に受けた傷から入ったであろう毒が、その傷痕に影響を及ぼしているようで、ここで魔力の流れが途切れているようです。そのせいで、魔力が回復しないかと…。」
それから、色々な治療を試してはみたけど、魔力が回復する事は無かった。そして、左肩の傷痕も…消える事はなかった。
そのまま私は、キリクス領で過ごして8歳の誕生日を迎えた日。
「カルディアよ。宜しくね、シルフィー。」
ニコリと優しく笑う叔母がやって来た。
私の亡くなった母の妹─らしい。
“らしい”と言うのは、今迄一度も会った事はなかったし、叔母がいると言う事も知らなかったのだ。
どうやら、母方の祖父母の反対を押し切り、平民の男性と駆け落ち同然に結婚をしたそうで、それ以降、全くの音信不通状態だったらしい。
だが、その結婚相手が事故で亡くなってしまい、双子の子供が居て困った挙げ句に、戻って来たそうだ。
祖父母は、娘に対しては怒り?はあるものの、孫には責任は無いからと、3人の帰りを受け入れたそうだ。
「それで、その従弟妹達が丁度シルフィーと年も近いから、3人に、この邸に住んでもらおうかと思ってな。私がシルフィーと一緒に居られれば良いんだが…。すまないな。」
「お父様が謝る必要はないわ。私が王都の邸に戻らないのは…私の我儘だもの。私の方こそごめんなさい。」
魔力が戻らない事と傷が残った事で、私は王都に戻る事が少し怖くて帰れずに居た。
「シルフィー…。それも気にする事はないよ。ただ、ユリウスが寂しがっていたから、手紙を書いてやってくれ。」
「お兄様が?分かったわ。」
ユリウスは、私の二つ年上のお兄様。こんな私でも、可愛いと言ってくれる、とても優しい兄だ。少し…過保護が過ぎるけど。
兎に角、この日から、叔母と従弟妹と一緒に生活を送る日々が始まる。
「叔母さま、今日から宜しくお願いします。」
仲良く楽しくできたらいいな─
と、その時はワクワクした気持ちでいっぱいだった。
そんな気持ちは…直ぐに打ち砕かれる事になる事も知らずに─
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