傷物令嬢は騎士に夢をみるのを諦めました

みん

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伯母③

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『2人だけの時は、“アヤメ”と呼んで欲しい。様もいらない。』

と言われて、2人だけの時は─さん─と呼ぶことになった(そう呼ばないと、おば…アヤメさんが半泣きになるからだけど)。

そして、昨日に引き続き、私はおば─アヤメさんの部屋へ来ている。


「改めて、私─アヤメは、前世?では50歳迄の記憶があるから、きっとその辺りで死んだのだと思うわ。子供も2人居てね。その2人も結婚して私も自由時間が増えたから、色んな小説や漫画を読んだりするようなったの。そこで、この世界の漫画にはまっちゃってね。最終回迄後数回!ってところで記憶が途切れてるから、最後がどうなったかは分からないけど…。」

「それじゃあ、おば─アヤメさんは、これから私や他の皆の未来を…知っていると言う事ですか?」

ーもしそうなら…これから先、こんな私の未来がどうなるのか…知りたいような…知りたくないようなー

「知っていると言えば知っているけど…。でも、それはあくまで漫画の世界の未来であって、この世界の未来では無いと思うわ。」

「?」

「だって、私が読んでいた漫画では、カルディアが居なくなって、替わりにアヤメが入り込むなんて事はなかったしね。だから、もう既に、漫画の世界とは少し違う事が起こってる。それに、知っているとしても、シルフィーちゃんには…教えてあげないわよ?」

「え?」

「だって、決められた未来なんて…面白くないじゃない?それに、知ってしまったら、“そうだ”と思い込んでしまうでしょう?そうじゃなくて、ちゃんと自分で考えたり感じたりして生きていかないとね。あぁ、でも!シルフィーちゃんに危険な事が起こるかもしれない時は、私が守るから安心してちょうだい!」

どやぁ─みたいな顔をするアヤメさん。その顔が何だか可笑しいやら…可愛いやらで

「───ふっ…」

と、思わず笑ってしまった。

「!?何!?笑ったの!?可愛い!!やっぱり、シルフィーちゃんには笑顔が似合うわ!!」

ーそんなに笑顔にはなっていないだろうけど…でも、久し振りに…笑ったような気がするなぁー

「いや…その笑顔を奪ったのが…カルディアなんだけど……カルディアめ……」

アヤメさんが険しい顔で何やら呟いてはいたけど、声が小さ過ぎて、私にはよく聞こえなかった。




******


「ところで…最近…エレーナについて…どう思う?」

“エレーナ”とは、カルディア伯母様の双子のうちの、姉の方の名前だ。弟は“アーロン”。私よりも一つ年下になる。2人は伯母とは違い、私の事を慕ってくれているようで、叔母から色々されていた時も、「おねえさま」と呼んでは私の元へとやって来ていた。

のだけど─

「どう…とは…。」

答えるのに、少し戸惑ってしまう。

「ふふっ。何も気にしなくて良いのよ。私も気になっている事だから。」

と、アヤメさんは困った様な顔をする。

そう。エレーナも流行り病で高熱を出して寝込んでいた。そして、アヤメさん同様?エレーナも、回復した後、それ迄のエレーナとは少し…雰囲気が変わったような気がしていた。

「おねえさま」と呼ばれていたけど、「シルフィー」と名前呼びをされるようになった。別に、従妹だし、名前呼びされても何とも思わない。気になるとしたら

「少し…気が強くなった─かな?」

以前は、アーロンの後ろに隠れている様な、儚い感じだったけど、最近のエレーナは…良い意味では自信?があるような感じがある。

「そう…よね…。」

アヤメさんはそう呟くと、頬に手を当てて何かを考えるようにして口を噤む。

「シルフィーちゃん。少し気になる事もあるから、我が子の事なんだけど…エレーナには気を付けてね。」

ー何が?ー

とは訊けなかった。その時のアヤメさんの顔が、少し苦しそうだったから。




******

「ねぇ、シルフィーには…傷があるって本当なの?」




アヤメさんに「エレーナには気を付けて」と言われてから、少し経ったある日、アヤメさんの部屋で本を読んでいる時に、ふいにエレーナが私に訊いて来た。

「傷、あるの?」

答えずにいると、更にまた訊いて来る。

「エレーナ、何故、そんな事をシルフィーに訊くの?一体、誰からそんな事を?」

確かに、私には左肩に傷痕がある。でも、これは祖父母とお父様とお兄様とケイトと執事とアヤメさんしか知らない。令嬢に傷があるなんて事は、醜聞にしかならないからだ。

「誰からだっていいじゃない。ただ、本当なのかどうか…気になっただけよ。だから、お母様も怒らないでよ。」

「「……」」

ーやっぱり、以前のエレーナとは…何かが違うよねー

チラリとアヤメさんに視線を向けると、ふるふると、小さく首を横に振っていた。




それからも、何かと私に絡んで来るエレーナを、アヤメさんが窘めると言うような事を繰り返してながら、私が11歳になった時。お祖父様からビックリするような話しが飛び出した。



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