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第一章ー婚約ー
リュウ①
しおりを挟む††ハルとミヤ不在の王都パルヴァン邸††
『なぁ、あんた、本当に…二股してたのか?』
悠介の見張り役として一緒に居たリュウが、悠介に尋ねる。
『……どう言う意味?』
『いや…だってさぁ…普通さ、下着って忘れるか?明白過ぎないか?』
『……それは…』
悠介は、眉間に皺を寄せて黙り込む。
『何?嵌められたの?』
『──いや…何度か…ヤったのは確かだから…。まぁ…その忘れ物は…わざとだろうけどね。』
『あのさ、聖女様2人は別として、あんたがミヤ様を覚えてたってのはさ、何か…意味があるのかもしれないな─と俺は思う。でなければ、あんたがここに来る事も無かったと思うんだよね。ちゃんと…話し合った方が良いと思うよ?まぁ─ミヤ様に拒否られたら無理だろうけど…。』
と、リュウは何とも言えない様な顔をする。
『俺は…人の為に頑張るミヤを好きになったんだ。そのまま夢を叶えて警察官になって、更に人の為に働くミヤの事を、もっと好きになったんだ。なのに…それと反比例するように、ミヤとの時間が無くなって…寂しくなって…それで…』
悠介は、ギュッと唇を噛んで黙る。
『あぁ…寂しくて浮気をした─って事か。よくある話だけどさ─そんな奴はクズだと俺は思うけどね。相手が仕事頑張ってるから寂しいって…それじゃあ、人の為に働く彼女が好きと言いながら、自分が寂しくならない為に、その彼女は仕事を辞めなきゃいけないの?それに、寂しい思いをしてるのは、自分だけだと思った?浮気で、自分の寂しさを埋められたんなら、その程度の思いしかなかったんじゃないの?』
『そんな事……』
『あぁ、俺に言い訳をする必要はないよ。そんな事俺は求めてないし、俺には関係無い事だからね。ただ、真剣にミヤ様との事を考えているなら、そのクズな考えも改めた方が良いよ?ミヤ様は、この世界では、ある意味─唯一無二の聖女様だから。誰か1人だけのモノになれる存在ではないから。』
いつもは、どことなく飄々としているリュウが、珍しく真剣な顔付きで悠介に言い詰める。
『ひょっとして…リュウもミヤの事─』
『勘違い…するなよ?そう言う感情はない。ハルには勿論の事、ミヤ様にも大きな恩があるんだ。あの2人には…どれだけ返しても返し切れない恩があるんだ。だから、俺は、あの2人にはこの世界で幸せになってもらいたいんだ。それを邪魔する奴は…例え…ハルがあんたを“悠兄さん”と慕っていたとしても……俺は許さないから─それだけは覚えておいてくれるか?』
ヒュッと息を呑む悠介を、冷たい目でリュウが一瞥する──のも、ほんの一瞬で、次の瞬間にはいつもの様に軽い感じのリュウに戻り
『ま、兎に角、折角異世界に飛ばされて来たんだ。楽しみながら…頑張れ。』
と、リュウは最後はニッコリと笑った。
ーま、俺も偉そうに言える立場の人間じゃないけどー
眞島悠介が来てから一ヶ月─
パルヴァン辺境地に居るハルの元を訪れた。
「あ、そっか!トラブルが無いんだ!だから、ちょっと怖くなってるんだ!」
「何言ってるの?」
「ひゃいっ!?」
「“ひゃいっ”って…本当に口に出る奴、初めて見たなぁ。」
ーハルの口から聞くと、可愛いと思えるのが不思議だよなー
「リュウ…ちょっとおかしくない?部屋に入る前に、ちゃんとノックして─」
「何回もノックしたけど反応が無いから入って来た。」
「いやいや、それ、アウトだからね?」
むぅ─っとした顔をしながら、ジッと俺を見てくるハル。
「何?そんなに見つめられると…俺、そのうちエディオルに殺されるかもな」
「はいー!?」
今度はギョッとして目を見開らいて、顔を少し赤くする。
ー本当に、よくクルクル表情が変わるなぁ。エディオルが蕩けるのも、よく解るなー
そう思いながら、俺はハルの頭をワシャワシャと撫で回した。
「で?トラブルが無くて怖い─って何?」
「あー…あのね?早いもので、3日後に王都に引っ越しするんだけどね…。何だかすごく順調過ぎて…平和過ぎて何だか怖いな─って。リュウも知ってると思うけど、私、本当にこの5年の間に色々あったから…トラブルが無い事に…ちょっと驚いてたり…してるかも…。」
と言って、ハルはまたむぅ─っと言う顔をする。
「あー…俺が言うのも何だけど…その5年の出来事が異常過ぎただけだろう。今の状態が普通だと思うけど。」
本当に、ハルは色々あったよな…俺もかなり…関わってるけど。普通、あんな事があったりされたりしたら…もっと擦れたりしたっておかしくない。だけど、ハルは…あんな事をした俺を赦して─助けてくれた。十歳程年下の女の子に。本当に、これからは…エディオルと共に幸せになって欲しい。
「普通…じゃなくて…えっと…幸せレベルだけどね?」
と、ハルがはにかんで笑う。
「なら良いんじゃないか?ハル、お前が幸せにならないと、パルヴァン連中が…恐ろしい事になるからな。」
「“恐ろしい事”?」
ハルは、本気で、パルヴァン連中に愛されてる事を知らないからなぁ…いや、寧ろ気付いて無い方が良いのかも…知れないな。
「と言うか、引っ越しの件、よくゼンさんが許したな?俺は…それが一番の謎だよ。」
「…確かに…誰の反対も無く決まったから、私も驚いたけど…。」
俺とハルは2人で首を傾げた。
2人は知らない─
シルヴィアとゼンの密談があった事を─
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