見捨てられた(無自覚な)王女は、溺愛には気付かない

みん

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22 不穏な前日

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会議の2日後に、スネフェリングの使者が帰国すると言う事で、急遽、私とレオノールも一緒にスネフェリングに行く事になった。


その前日──

「どうせ、持って行く物なんてないから、準備が楽だし良かったわね」

離宮オニキスの私の部屋にやって来たのは、お姉様の第一王女ヘレンティナ。

『お別れの挨拶をしに来たの。2人だけにしてもらえる?』

そう言って付き添いの侍女や護衛の騎士を下がらせ、今は部屋に2人きり。マトモなお別れの挨拶ではないだろう。

「スネフェリング帝国の事は知ってる?」
「少しは………」
「スネフェリングは実力主義国家だから、能力や実力があれば幸せに暮らせるでしょうけど、カミリアは大変よね?魔力は無いし能力も無いし…王族とは名ばかりで、ルテリアルに混乱を招き入れた存在──汚点だから、スネフェリングではどんな扱いをされるのかしらね?5年は……大丈夫なのかもしれないけど。でも…カミリアも、これでようやく王族としての務めを果たせるのだから良かったわね」

ー何が“良かった”なのか?ー

「また会えるかは分からないけど、スネフェリングで元気に過ごしてね。それじゃあ、私は忙しいから帰るわ」

最後になるかもしれない─としても、いつもと同じ様にお姉様はお茶を飲む事すらなく帰って行った。
勿論、その後もいつもと変わらず、食事もいつも通りで独りで時間を過ごし、気が付けば夜になっていた。

ーせめて、オードリナ様にはお別れの挨拶がしたかったなぁー

少し寂しく思っているど、二つの光と蝶が私を慰めるようにくっついてくれた。

「いつもありがとう。お前達は…私と一緒に来てくれる?」

何となく声を掛けると、二つの光と蝶は更にキラキラと輝いて、クルクルと回るように飛び回った。

「ありがとう」

“一緒に行く”と言ってくれているようで、嬉しい。
あくまでも、オードリナ様は、お兄様とお姉様を見守る為にルテリアルに居るだけで、私にはついでに会いに来てくれているだけ。それでも、優しさをたくさんもらった。だから、お礼も言いたかったけど──

「カミリア、入って良いかしら?」
「お母様!勿論よ!」

夜も少し遅い時間、お母様が私に会いに来てくれた。




「カミリア、ごめんなさい……貴方をスネフェリングに送る事になるなんて……」

椅子に座ってすぐにお母様は涙を流し、私に頭を下げて謝ってくれた。

「カミリアの母親でもあり、王妃でもあるのに、陛下を止められなくて…本当にごめんなさい」
「お母様……」

それは仕方無い。例え王妃であろうとも、国王がそう言えば誰も否とは言えない。それに、お兄様もお姉様も立派な王族の一員で、私は汚点でしかないから、私がスネフェリングに行く事が一番良い人選だ。

『─これでようやく王族としての務めを果たせるのだから良かったわね』

ー本当に、お姉様の言う通りかもしれないー

私がルテリアルから居なくなれば、お母様に迷惑をかける事もなくなるから。

「明日は早朝の出発だと聞いたから、今日はカミリアと一緒にお茶でもしたくて…私が淹れるから、一緒に飲んでくれるかしら?」
「勿論、喜んで!」

そう言うと、お母様は立ち上がり、自らお茶の準備を始めた。

ーこれが、お母様との最後のお茶になるかもー

ふわりと花のような香りが漂う。

「良い香り…」
「そうでしょう?私も好きで、よく飲むフレーバーティーなの。はい」

と、お母様が私の目の前にティーカップを置く。
フレーバーティーと言えば、オードリナ様がくれたアップルティーも美味しかった。これは、どんな味がするんだろう?そう思いながら、ティーカップに手を伸ばそうとすると、二つの光が私の手を止めるように動きを止めた。

「カミリア、どうかしたの?」
「あ…何でもないよ……」

更に手を伸ばそうとしても、二つの光が私の手を押しとどめる。

「カミリア、私の淹れたお茶が飲めないの?」
「え?あ、ちが───」
「あら、カティエ、ここに居たのね」

どうしようか?と思っていると、そこへオードリナ様がやって来た。さっき迄居なかった蝶と一緒に。

「オ…オードリナ様が、どうしてここに?」
「カミリアに挨拶をしに来たのよ。カティエも…挨拶に?私も一緒にお茶をしても良いかしら?」
「あ、私、時間がないから…カミリア、本当に、何もできなくてごめんなさいね」

そう言って、お母様は私を優しく抱きしめた後、部屋から出て行った。

「お茶…一緒に飲めなかった……」

未だに、二つの光がティーカップの周りを飛んでいて、私が飲まないようにしている。

「この香りは……本当に、お茶を用意したのね。もらって良いかしら?」
「ど…どうぞ…」
「これは、夜に飲むと寝れなくなるから、カミリアは飲まない方が良いわ。明日は早いから、もう寝たほうが良いわ」
「はい………」

二つの光が私を止めて、オードリナ様も……

ーお母様……ー

私は、それ以上は何も考えたくなくて、お茶は飲まずに寝る事にした。



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