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4 下された処分
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部屋で着替えをしてから廊下に出ると、まだ使用人達がバタバタと走り回っていた。
「まだ捕まっていないみたいね」
「小さいトカゲだと、どこかの隙間にでも潜られたら気付けないでしょうから」
見つからなかったら見つからなかったらで『トカゲを逃した!』と言って、使用人達に罰を与えそうだし、使用人達もそれを分かっていて必死に探していると言う感じだ。今の私には関係無い。
「さて、何を言われるのかしら……」
軽くため息を吐いた後、お義母様の部屋の扉をノックしようと──
「いやーっ!ここに居るわ!誰か!」
「デライラ!?」
部屋の中からデライラの叫び声がして、ノックをする前にドアを開けると、部屋の隅で抱き合って立っているお義母様とデライラが居た。
「一体、誰が居──」
「そこに!シャーリーの足元に居るソイツを捕まえて!」
「足元?」
お義母様が指差した所を目で追うと、そこには
「……トカゲ?」
全体的に黒色で、尻尾の部分に白色の縞々が3本入っている。トカゲにしては珍しい色なのでは?兎に角、そのトカゲが私を見上げたまま固まっている。
「黒色………」
「お嬢様!?」
その時、どうしてそのトカゲに手を伸ばしたのかは分からないけど、私は何の躊躇いもなくそのトカゲをそっと捕まえて持ち上げて、手の平に乗せると、そのトカゲも威嚇する事も逃げる事もせず、私の手の平の上におとなしく乗ったままで私をじっと見ている。
ーえ?可愛くない?ー
全身黒色に、尻尾だけに白色の縞々模様があって、目はキリッとしていながらも大きい。
「何をしているの!?さっさとそのトカゲを処分しなさい!」
お義母様が大声を上げると、そのトカゲの体がビクッと反応した。
ーうっ……可愛い!ー
この可愛いトカゲを処分しろと?嫌です。無理です。それに、邸に紛れ込んでしまっただけで、悪さをしたわけでも危険な生き物でもないのだから、処分する必要なんてない。
「処分だなんて可哀想です。外に逃がせば、この子自ら出て行きますよ」
「戻って来たらどうするの?トカゲなんて気持ち悪いわ!」
「でも……」
「そんな事を言うのなら、シャーリーがそのトカゲの面倒をみなさい。使用人に任せたりせずにね。それと、二度と私達の視界に入れないように。それなら、そのトカゲの処分は見逃してあげるわ」
にっこり微笑んで、そう告げたのはお義母様で、その話を愉しそうに聞いているのはデライラ。私への嫌がらせなんだろう。貴族の令嬢が自身の手だけで生き物─しかも爬虫類を飼うなんて事は有り得ない事だ。
「分かりました。私が……面倒をみます。ミシェル、マルクを呼んで来てくれる?」
「承知しました」
マルクはカシリスト侯爵家の騎士の1人で、お義姉様がこの家に住んでいた時に護衛として付いていた1人だ。今でも私には好意的な人で、私が街に出掛ける時は護衛として付いて来てくれし、動物好きでもある。
「お義母様とのお話の間、このトカゲをマルクに見てもらっても良いですよね?」
「そうね。トカゲなんて視界に入れて話をするなんて有り得ないわ」
そうして、暫くしてからミシェルが連れて来たマルクにトカゲを渡してから、私はお義母様が座っている対面の椅子に腰を下ろした。
その時、トカゲを持ったマルクの顔が嬉しそうに見えたのは気のせいではない。
ーマルクに任せて正解だったわー
そうして、私は気持ちを切り替えてから義母へと視線を向けた。
******
お義母様との話が終わり、自分の部屋に戻って来てから、部屋で待機していたミシェルに話の内容を伝えた。
「1週間の謹慎ですか!?」
「そうみたい」
「そんな他人事みたいに……」
お義母様から言い渡されたのは、1週間の謹慎処分だった。
『貴方の行いは、王太子妃であるナターシャの顔に泥を塗ったも同然よ。もっと重い処罰でも良かったのだけれど、王太子様が恩赦を与えて下さったのよ。ナターシャと王太子様に感謝しなさい。ただし──』
やっぱり、お義母様からは、噂が真実かどうか?とは訊かれる事はなかった。私が聖女のポルトール嬢を苛めていた事は事実だと決めつけていた。弁解の余地すら与えられる事はなかった。実の娘であるデライラが言うのだから、それを疑う事はないと分かっていた。分かっていたけど、血は繋がっていないとは言え家族なのだから、私の話も聞いてくれるかも?と、淡い期待があったのも確かだ。そんな淡い期待も一瞬で消え失せた。それに、お義母様がそうなら、お父様もそう思っている─と言う事なんだろう。
「何故こんな嘘が……ちゃんと調べれば分かる事なのに!」
「ミシェル……ありがとう」
ミシェルはいつもどんな時も私を信じてくれる侍女で、私にとっては……姉の様な存在だ。私の為に怒ってくれているのが嬉しい。
「シャーリー様、マルクです。入っでも良いでしょうか?」
「ええ、良いわよ」
そこにやって来たのはマルク。そのマルクの手には籠があり、その籠の中にはトカゲが眠っていた。
「まだ捕まっていないみたいね」
「小さいトカゲだと、どこかの隙間にでも潜られたら気付けないでしょうから」
見つからなかったら見つからなかったらで『トカゲを逃した!』と言って、使用人達に罰を与えそうだし、使用人達もそれを分かっていて必死に探していると言う感じだ。今の私には関係無い。
「さて、何を言われるのかしら……」
軽くため息を吐いた後、お義母様の部屋の扉をノックしようと──
「いやーっ!ここに居るわ!誰か!」
「デライラ!?」
部屋の中からデライラの叫び声がして、ノックをする前にドアを開けると、部屋の隅で抱き合って立っているお義母様とデライラが居た。
「一体、誰が居──」
「そこに!シャーリーの足元に居るソイツを捕まえて!」
「足元?」
お義母様が指差した所を目で追うと、そこには
「……トカゲ?」
全体的に黒色で、尻尾の部分に白色の縞々が3本入っている。トカゲにしては珍しい色なのでは?兎に角、そのトカゲが私を見上げたまま固まっている。
「黒色………」
「お嬢様!?」
その時、どうしてそのトカゲに手を伸ばしたのかは分からないけど、私は何の躊躇いもなくそのトカゲをそっと捕まえて持ち上げて、手の平に乗せると、そのトカゲも威嚇する事も逃げる事もせず、私の手の平の上におとなしく乗ったままで私をじっと見ている。
ーえ?可愛くない?ー
全身黒色に、尻尾だけに白色の縞々模様があって、目はキリッとしていながらも大きい。
「何をしているの!?さっさとそのトカゲを処分しなさい!」
お義母様が大声を上げると、そのトカゲの体がビクッと反応した。
ーうっ……可愛い!ー
この可愛いトカゲを処分しろと?嫌です。無理です。それに、邸に紛れ込んでしまっただけで、悪さをしたわけでも危険な生き物でもないのだから、処分する必要なんてない。
「処分だなんて可哀想です。外に逃がせば、この子自ら出て行きますよ」
「戻って来たらどうするの?トカゲなんて気持ち悪いわ!」
「でも……」
「そんな事を言うのなら、シャーリーがそのトカゲの面倒をみなさい。使用人に任せたりせずにね。それと、二度と私達の視界に入れないように。それなら、そのトカゲの処分は見逃してあげるわ」
にっこり微笑んで、そう告げたのはお義母様で、その話を愉しそうに聞いているのはデライラ。私への嫌がらせなんだろう。貴族の令嬢が自身の手だけで生き物─しかも爬虫類を飼うなんて事は有り得ない事だ。
「分かりました。私が……面倒をみます。ミシェル、マルクを呼んで来てくれる?」
「承知しました」
マルクはカシリスト侯爵家の騎士の1人で、お義姉様がこの家に住んでいた時に護衛として付いていた1人だ。今でも私には好意的な人で、私が街に出掛ける時は護衛として付いて来てくれし、動物好きでもある。
「お義母様とのお話の間、このトカゲをマルクに見てもらっても良いですよね?」
「そうね。トカゲなんて視界に入れて話をするなんて有り得ないわ」
そうして、暫くしてからミシェルが連れて来たマルクにトカゲを渡してから、私はお義母様が座っている対面の椅子に腰を下ろした。
その時、トカゲを持ったマルクの顔が嬉しそうに見えたのは気のせいではない。
ーマルクに任せて正解だったわー
そうして、私は気持ちを切り替えてから義母へと視線を向けた。
******
お義母様との話が終わり、自分の部屋に戻って来てから、部屋で待機していたミシェルに話の内容を伝えた。
「1週間の謹慎ですか!?」
「そうみたい」
「そんな他人事みたいに……」
お義母様から言い渡されたのは、1週間の謹慎処分だった。
『貴方の行いは、王太子妃であるナターシャの顔に泥を塗ったも同然よ。もっと重い処罰でも良かったのだけれど、王太子様が恩赦を与えて下さったのよ。ナターシャと王太子様に感謝しなさい。ただし──』
やっぱり、お義母様からは、噂が真実かどうか?とは訊かれる事はなかった。私が聖女のポルトール嬢を苛めていた事は事実だと決めつけていた。弁解の余地すら与えられる事はなかった。実の娘であるデライラが言うのだから、それを疑う事はないと分かっていた。分かっていたけど、血は繋がっていないとは言え家族なのだから、私の話も聞いてくれるかも?と、淡い期待があったのも確かだ。そんな淡い期待も一瞬で消え失せた。それに、お義母様がそうなら、お父様もそう思っている─と言う事なんだろう。
「何故こんな嘘が……ちゃんと調べれば分かる事なのに!」
「ミシェル……ありがとう」
ミシェルはいつもどんな時も私を信じてくれる侍女で、私にとっては……姉の様な存在だ。私の為に怒ってくれているのが嬉しい。
「シャーリー様、マルクです。入っでも良いでしょうか?」
「ええ、良いわよ」
そこにやって来たのはマルク。そのマルクの手には籠があり、その籠の中にはトカゲが眠っていた。
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