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5 1日目
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「この子はレオパ─ヒョウモントカゲモドキと言って、正しくはトカゲではなくヤモリなんです」
「そうなの?うーん……違いが分からないけど分かったわ」
「しかも、黒色は珍しい色なんです。私も初めて見ました」
「そうなのね……綺麗な色ね……」
つんつん─と、籠の中で寝ていたオレの頭を優しく突くシャーリー。
ーどうしてこうなった!?ー
「あ、目を開けましたね。この子、どうしますか?」
「勿論、面倒を見るつもりだけど、飼育方法なんて全く分からないから、色々と教えてくれる?」
「勿論です!!」
「ありがとう」
「では早速、この子の住処や食事の用意を───」
オレの目の前で楽しそうに話をしているのは、シャーリーとマルクと言う名のカシリスト家の騎士。
『丁度公務も落ち着いていて時間があるから、ネイサンにも有意義な時間をプレゼントしよう』
そう言ってリュシアンが俺に魔法を掛けた。流石は大魔道士と肩を並べる程の実力を持つだけある。魔力の渦に巻き込まれた様な感覚に陥って、その感覚がなくなった後──
俺はトカゲ─ではなく、ヒョウモントカゲモドキとやらになっていた。そう。今、マルクの持っている籠の中に居る黒色のヤモリの正体は“ネイサン=ブロンディオ”なのだ。
『何が……どんなプレゼントだ!?リュシアン、早く元の姿に戻せ!』
『それはできないよ。この魔法は1週間は解けないから』
『1週間!?一体、何の冗だ───』
と、叫んでいると、リュシアンは更に魔法を唱え始めた。
『冗談ではないよ。ネイサン……お前はもっと、他人に関心を持つべきだ』
『え?えーっ!?』
『お前の目で、しっかり見て来ると良いよ』
『リュシア────』
名前を呼び終える前に視界がグラッと歪んだかと思えば、次の瞬間には何処かの邸の庭に飛ばされていた。転移魔法を展開されていたのだ。
何となく見覚えがある──と思っていると、邸の見回りをしている騎士を見掛けて、その騎士服でカシリスト侯爵家だと言う事が分かった。
ーカシリスト家なら、助けを求められるか?ー
と、安易に考えてチョロチョロと歩き始めると、丁度そこに令嬢が現れた。
『あ……デライラ!』
「ん?…………え?トカゲ??」
『デライラ、オレの言葉が分か──』
「いやーっ!トカゲ!気持ち悪いわ!誰か!!」
『え?ちょっ…デライラ!』
「お嬢様、どうされましたか!?」
「ここにトカゲが居るわ!気持ち悪いから、早く捕まえて処分して!」
ー処分!?ー
そこからは、ひたすら逃げて隠れて逃げた。
どうやら、俺の言葉は、俺に魔法を掛けたリュシアンにしか伝わらないようで、何度叫んでみても、自分の耳にも『キューッ』と言う鳴き声しか入って来ない。
兎に角、木の上に登って時間を過ごそうと思ったが、上手く気に登れず、根本に隠れておこうかと思えば猟犬が出動。たかが手の平サイズのヤモリに。そこまで大事にする必要があるのか!?と兎に角必死で逃げているうちに、気が付けば邸の中に入り込んでいて、デライラに見付かってしまい、逃げようとしたところに、シャーリーが目の前に現れた上に、何の躊躇いもなく俺を掴み上げた。
「何をしているの!?さっさとそのトカゲを処分しなさい!」
侯爵夫人の大声に、小さな俺の体がビクッと反応した。
ーもう、これまでか!?俺は、トカゲのまま死んでいくのか!?ー
諦めと絶望が一気に押し寄せ、体が固まって動けなくなった。
「処分だなんて可哀想です。外に逃がせば、この子自ら出て行きますよ」
ー女神か!?ー
シャーリーの手の平の上に乗せられたまま、シャーリーを見上げる。そのシャーリーの目に、トカゲな俺への侮蔑の色は一切無い。ついさっき王城で会った時には「少し疲れているのか?」としか思わなかったが…
最後に会った時の幼さは無くなっていて、琥珀色の瞳は更に綺麗になっていた。
『………』
それから、取り敢えず俺はシャーリーが面倒を見ると言う事になり、なんとか命を失わずに済んだ。
「黒色のレオパか!可愛いな……」
ー“レオパ”?ー
シャーリーから離れてマルクと2人きりになると、マルクは色んな話をしだした。
「尻尾が小さいな…栄養不足かな?後で餌を持って来てやらないとな。兎に角、シャーリー様に拾ってもらって良かったな。シャーリー様が居なかったら、お前は今頃猟犬の餌になってたぞ?」
『…………』
「まぁ、奥様にしたら、シャーリー様への嫌がらせだったんだろうけど…」
ー嫌がらせ?ー
「相変わらず陰険と言うか……ま、兎に角、命が惜しければ、シャーリー様の部屋から勝手に出たりしないようにしろよ?」
それは、部屋から出て見付かれば処分される─と言う事だろう。どうあがいても、1週間は元の姿には戻れない。リュシアンも戻す気は全くないだろう。なら、俺はおとなしくカシリスト邸で過ごすしかない。
ー疲れたー
そう思った途端、眠気に襲われるまま籠の中で眠りに落ちた。
「そうなの?うーん……違いが分からないけど分かったわ」
「しかも、黒色は珍しい色なんです。私も初めて見ました」
「そうなのね……綺麗な色ね……」
つんつん─と、籠の中で寝ていたオレの頭を優しく突くシャーリー。
ーどうしてこうなった!?ー
「あ、目を開けましたね。この子、どうしますか?」
「勿論、面倒を見るつもりだけど、飼育方法なんて全く分からないから、色々と教えてくれる?」
「勿論です!!」
「ありがとう」
「では早速、この子の住処や食事の用意を───」
オレの目の前で楽しそうに話をしているのは、シャーリーとマルクと言う名のカシリスト家の騎士。
『丁度公務も落ち着いていて時間があるから、ネイサンにも有意義な時間をプレゼントしよう』
そう言ってリュシアンが俺に魔法を掛けた。流石は大魔道士と肩を並べる程の実力を持つだけある。魔力の渦に巻き込まれた様な感覚に陥って、その感覚がなくなった後──
俺はトカゲ─ではなく、ヒョウモントカゲモドキとやらになっていた。そう。今、マルクの持っている籠の中に居る黒色のヤモリの正体は“ネイサン=ブロンディオ”なのだ。
『何が……どんなプレゼントだ!?リュシアン、早く元の姿に戻せ!』
『それはできないよ。この魔法は1週間は解けないから』
『1週間!?一体、何の冗だ───』
と、叫んでいると、リュシアンは更に魔法を唱え始めた。
『冗談ではないよ。ネイサン……お前はもっと、他人に関心を持つべきだ』
『え?えーっ!?』
『お前の目で、しっかり見て来ると良いよ』
『リュシア────』
名前を呼び終える前に視界がグラッと歪んだかと思えば、次の瞬間には何処かの邸の庭に飛ばされていた。転移魔法を展開されていたのだ。
何となく見覚えがある──と思っていると、邸の見回りをしている騎士を見掛けて、その騎士服でカシリスト侯爵家だと言う事が分かった。
ーカシリスト家なら、助けを求められるか?ー
と、安易に考えてチョロチョロと歩き始めると、丁度そこに令嬢が現れた。
『あ……デライラ!』
「ん?…………え?トカゲ??」
『デライラ、オレの言葉が分か──』
「いやーっ!トカゲ!気持ち悪いわ!誰か!!」
『え?ちょっ…デライラ!』
「お嬢様、どうされましたか!?」
「ここにトカゲが居るわ!気持ち悪いから、早く捕まえて処分して!」
ー処分!?ー
そこからは、ひたすら逃げて隠れて逃げた。
どうやら、俺の言葉は、俺に魔法を掛けたリュシアンにしか伝わらないようで、何度叫んでみても、自分の耳にも『キューッ』と言う鳴き声しか入って来ない。
兎に角、木の上に登って時間を過ごそうと思ったが、上手く気に登れず、根本に隠れておこうかと思えば猟犬が出動。たかが手の平サイズのヤモリに。そこまで大事にする必要があるのか!?と兎に角必死で逃げているうちに、気が付けば邸の中に入り込んでいて、デライラに見付かってしまい、逃げようとしたところに、シャーリーが目の前に現れた上に、何の躊躇いもなく俺を掴み上げた。
「何をしているの!?さっさとそのトカゲを処分しなさい!」
侯爵夫人の大声に、小さな俺の体がビクッと反応した。
ーもう、これまでか!?俺は、トカゲのまま死んでいくのか!?ー
諦めと絶望が一気に押し寄せ、体が固まって動けなくなった。
「処分だなんて可哀想です。外に逃がせば、この子自ら出て行きますよ」
ー女神か!?ー
シャーリーの手の平の上に乗せられたまま、シャーリーを見上げる。そのシャーリーの目に、トカゲな俺への侮蔑の色は一切無い。ついさっき王城で会った時には「少し疲れているのか?」としか思わなかったが…
最後に会った時の幼さは無くなっていて、琥珀色の瞳は更に綺麗になっていた。
『………』
それから、取り敢えず俺はシャーリーが面倒を見ると言う事になり、なんとか命を失わずに済んだ。
「黒色のレオパか!可愛いな……」
ー“レオパ”?ー
シャーリーから離れてマルクと2人きりになると、マルクは色んな話をしだした。
「尻尾が小さいな…栄養不足かな?後で餌を持って来てやらないとな。兎に角、シャーリー様に拾ってもらって良かったな。シャーリー様が居なかったら、お前は今頃猟犬の餌になってたぞ?」
『…………』
「まぁ、奥様にしたら、シャーリー様への嫌がらせだったんだろうけど…」
ー嫌がらせ?ー
「相変わらず陰険と言うか……ま、兎に角、命が惜しければ、シャーリー様の部屋から勝手に出たりしないようにしろよ?」
それは、部屋から出て見付かれば処分される─と言う事だろう。どうあがいても、1週間は元の姿には戻れない。リュシアンも戻す気は全くないだろう。なら、俺はおとなしくカシリスト邸で過ごすしかない。
ー疲れたー
そう思った途端、眠気に襲われるまま籠の中で眠りに落ちた。
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