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7 3日目
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3日目の朝食は、味の無い蒸したチキンだった。
「生肉を食べないヤモリ……本当に珍しいな。やっぱり飼い主が居て、偏食に育てられたのか?」
俺にチキンを食べさせているマルクが、不思議そうな顔をして見ている。
『ギューギュー(中身が人間だから仕方無いだろう)』
「ノクスって、よく鳴くわね。私、ヤモリが鳴くって知らなかったわ」
「よく鳴くのも、珍しいと思いますよ?」
今日の朝食も、自室で食べているシャーリー。相変わらず、この部屋にはミシェルとマルク以外の使用人は来ていない。夫人やデライラの姿さえ、あれから見ていない。
「ミシェル、今日は書庫に行くわ」
「またですか?謹慎を言い渡しておいて…」
「私が“暇をしている”からだそうよ」
「どの口が………」
シャーリーとミシェルは、時々よく分からない会話をしては、ミシェルが怒ってシャーリーが苦笑いをしている。否、苦笑いと言うより諦めに近い笑顔か?兎に角、どう言う意味なのか?と、人間の姿であれば訊く事もできるが、今はヤモリでしかないから訊く事すらできない。少しモヤモヤとした気持ちで、俺は部屋を出て行くシャーリー達を見送った。
「相変わらず辛気臭い部屋ね」
シャーリー達が出て行って1時間程してから、部屋にやって来たのはデライラと1人の侍女だった。
部屋の主が不在の時に、使用人が掃除の為に部屋に入る事はよくあるが、姉妹が入ると言う事は滅多にない。特に、自分よりも上の立場ともなると、尚更有り得ない事だ。それなのに──と思いながら、デライラの様子を窺っていると、侍女は扉近くで立ち止まり、デライラは無遠慮のまま部屋の奥へと進んで行った。
「今日は何も無いわね」
「この数日はシャーリー様はお出掛けもしてませんし、贈り物などもありませんから」
「それもそうね。動きを制限させたし、シャーリーに贈り物をする人なんて居ないものね…あら、本当にここに居たのね」
汚いモノを見る様な目を俺に向けるデライラ。俺の姿がヤモリだから仕方無い──と、自分に言い聞かせる。
「黒いトカゲなんて不吉よね」
と言いながら、俺が入っているケースに近付いて来るデライラを見る。
ーん?ー
そこで、ふと見覚えのある物が目に入った。目の前のデライラが着けているブレスレット。青色と琥珀色の2粒のサファイアが付いた、シルバーチェーンのブレスレット。
ー何故、アレをデライラが?ー
見間違える筈はない。アレは既製品ではなく、シャーリーの学園入学祝いを兼ねて、俺が注文して贈った物だ。会って直接渡せずに遣いをやって贈ったけど、お礼の手紙すら無かったから、気に入らなかったのか?と思ったりもして──今迄手紙の返事すら無かった事もあって、「俺はシャーリーに嫌われているのか?」と思うようになって疎遠になってしまったのだが─
ーもし、手紙や贈り物が、シャーリー本人に届いていなかったとしたら?ー
「最近は、ネイサン様からの手紙すら来てないし、今回の謹慎もあるから、そろそろシャーリーも捨てられるかもしれないわね」
「そう言えば、ナターシャ様からシャーリー様に手紙が来ていましたけど、どうされますか?」
「お姉様から!?それも渡さなくて良いわ。お姉様は、何故実の妹の私よりシャーリーを優先するの!?義理の兄になったリュシアン様にも会わせてくれないし!酷いお姉様だわ!ここには何も無いから部屋に戻るわ」
『──っ!?』
ガツンッと、デライラは俺が入っているケースを殴ってから部屋から出て行った。
ー“デライラ=カシリストは、心優しい令嬢”ではなかったのか?ー
王太子妃ナターシャからの手紙さえ握り潰しているのなら、俺からの手紙がシャーリーに届いていなかった可能性が高い。しかも、シャーリーが入学してからはお茶どころか会う事も殆ど無かった。となれば、シャーリーからすれば「俺に嫌われている」と思っていてもおかしくない。
『ブロンディオ様』
久し振りに会ったシャーリーに、家名で呼ばれた。以前は『ネイサン様』と名前で呼ばれていたのに。
『キュウ………』
初めてシャーリーに会った時は、可愛い妹の様な感覚だった。王太子と王太子妃が勧めた婚約だから、断わる事ができないと言うのもあったけど、会って話をしていくうちに、シャーリーとなら信頼を築いて仲良く過ごしていけると思うようになった。だから、入学祝いを兼ねて特注で贈ったブレスレットは、無意識のうちに青色と琥珀色の宝石を選んでいたのだ。そのブレスレットを──今すぐ取り返したいが、ヤモリな姿では無理だ。
ー後4日か……ん?ー
ケースの天井を見ると、デライラがケースを殴ってくれたお陰で、フタがズレて隙間ができていた。
ー 少し、探ってみるか?ー
「生肉を食べないヤモリ……本当に珍しいな。やっぱり飼い主が居て、偏食に育てられたのか?」
俺にチキンを食べさせているマルクが、不思議そうな顔をして見ている。
『ギューギュー(中身が人間だから仕方無いだろう)』
「ノクスって、よく鳴くわね。私、ヤモリが鳴くって知らなかったわ」
「よく鳴くのも、珍しいと思いますよ?」
今日の朝食も、自室で食べているシャーリー。相変わらず、この部屋にはミシェルとマルク以外の使用人は来ていない。夫人やデライラの姿さえ、あれから見ていない。
「ミシェル、今日は書庫に行くわ」
「またですか?謹慎を言い渡しておいて…」
「私が“暇をしている”からだそうよ」
「どの口が………」
シャーリーとミシェルは、時々よく分からない会話をしては、ミシェルが怒ってシャーリーが苦笑いをしている。否、苦笑いと言うより諦めに近い笑顔か?兎に角、どう言う意味なのか?と、人間の姿であれば訊く事もできるが、今はヤモリでしかないから訊く事すらできない。少しモヤモヤとした気持ちで、俺は部屋を出て行くシャーリー達を見送った。
「相変わらず辛気臭い部屋ね」
シャーリー達が出て行って1時間程してから、部屋にやって来たのはデライラと1人の侍女だった。
部屋の主が不在の時に、使用人が掃除の為に部屋に入る事はよくあるが、姉妹が入ると言う事は滅多にない。特に、自分よりも上の立場ともなると、尚更有り得ない事だ。それなのに──と思いながら、デライラの様子を窺っていると、侍女は扉近くで立ち止まり、デライラは無遠慮のまま部屋の奥へと進んで行った。
「今日は何も無いわね」
「この数日はシャーリー様はお出掛けもしてませんし、贈り物などもありませんから」
「それもそうね。動きを制限させたし、シャーリーに贈り物をする人なんて居ないものね…あら、本当にここに居たのね」
汚いモノを見る様な目を俺に向けるデライラ。俺の姿がヤモリだから仕方無い──と、自分に言い聞かせる。
「黒いトカゲなんて不吉よね」
と言いながら、俺が入っているケースに近付いて来るデライラを見る。
ーん?ー
そこで、ふと見覚えのある物が目に入った。目の前のデライラが着けているブレスレット。青色と琥珀色の2粒のサファイアが付いた、シルバーチェーンのブレスレット。
ー何故、アレをデライラが?ー
見間違える筈はない。アレは既製品ではなく、シャーリーの学園入学祝いを兼ねて、俺が注文して贈った物だ。会って直接渡せずに遣いをやって贈ったけど、お礼の手紙すら無かったから、気に入らなかったのか?と思ったりもして──今迄手紙の返事すら無かった事もあって、「俺はシャーリーに嫌われているのか?」と思うようになって疎遠になってしまったのだが─
ーもし、手紙や贈り物が、シャーリー本人に届いていなかったとしたら?ー
「最近は、ネイサン様からの手紙すら来てないし、今回の謹慎もあるから、そろそろシャーリーも捨てられるかもしれないわね」
「そう言えば、ナターシャ様からシャーリー様に手紙が来ていましたけど、どうされますか?」
「お姉様から!?それも渡さなくて良いわ。お姉様は、何故実の妹の私よりシャーリーを優先するの!?義理の兄になったリュシアン様にも会わせてくれないし!酷いお姉様だわ!ここには何も無いから部屋に戻るわ」
『──っ!?』
ガツンッと、デライラは俺が入っているケースを殴ってから部屋から出て行った。
ー“デライラ=カシリストは、心優しい令嬢”ではなかったのか?ー
王太子妃ナターシャからの手紙さえ握り潰しているのなら、俺からの手紙がシャーリーに届いていなかった可能性が高い。しかも、シャーリーが入学してからはお茶どころか会う事も殆ど無かった。となれば、シャーリーからすれば「俺に嫌われている」と思っていてもおかしくない。
『ブロンディオ様』
久し振りに会ったシャーリーに、家名で呼ばれた。以前は『ネイサン様』と名前で呼ばれていたのに。
『キュウ………』
初めてシャーリーに会った時は、可愛い妹の様な感覚だった。王太子と王太子妃が勧めた婚約だから、断わる事ができないと言うのもあったけど、会って話をしていくうちに、シャーリーとなら信頼を築いて仲良く過ごしていけると思うようになった。だから、入学祝いを兼ねて特注で贈ったブレスレットは、無意識のうちに青色と琥珀色の宝石を選んでいたのだ。そのブレスレットを──今すぐ取り返したいが、ヤモリな姿では無理だ。
ー後4日か……ん?ー
ケースの天井を見ると、デライラがケースを殴ってくれたお陰で、フタがズレて隙間ができていた。
ー 少し、探ってみるか?ー
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