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10 4日目
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「シャーリー様専属の私が、2階をうろうろ歩き回ると不審がられるので、デライラの部屋に入った後は、私が迎えに行く迄1人?1匹?で行動して下さい。1時間後に迎えに来ます」
そう言って、ミシェルは俺をデライラの部屋に放り込んだ後、すぐに部屋から出て行った。
本当に、文字通り俺を部屋に放り込んだ。俺がブロンディオ公爵家の子息だと知った上で、尻尾を掴んで放り投げた。なんとも素晴らしい侍女だ。
ただ、尻尾を掴むのは止めて欲しい。ビックリして千切れるかと思った。
『………』
ぐるりと部屋を見渡して、あまりの違いに驚きすら失せる程だった。南に面した大きな窓から太陽の光が差し込み、部屋が暖かくて明るい。部屋にある家具は白色を基調として金色の模様が施されている。
ベッドにはレースが垂れ下がっている天蓋付きで、ベッドカバーはピンク色。部屋の奥にはクローゼットがあり、勿論、その中には沢山のドレスやアクセサリーボックスがある。普段着専用のクローゼットもある。
侯爵令嬢ともなればこれが普通で、おかしいのは、シャーリーの部屋の方だ。
ー侯爵は、この状況を把握しているんだろうか?ー
そして、クローゼットの奥に掛けられているワンピースに目が止まった。それは、淡い青色のシンプルなワンピース。スカートと袖の裾に黒色の刺繍がある。俺がシャーリーに贈った物だ。他にも、見覚えのあるドレスもある。
ーシャーリーには、何一つ届いていなかったのかー
『お前はもっと、他人に関心を持つべきだ』
シャーリーに関心が無かった訳じゃない。会う事はなくても、手紙を送ったり贈り物をしておけば問題無いと思っていた。それらに対して返事が無いのであれば、それはシャーリー側の問題だからと、それ以上確認する事も調べる事もしなかったのは……無関心と同じ事だ。もし、ミシェルの雇い主が侯爵ではなかったら?料理長と3人の料理人も、雇い主が侯爵だったようで、食事も三食しっかり食べれていたのも良かった。
カシリスト家所属の騎士は50人。その騎士達の対応は様々だった。
もともと俺にとってのデライラは“ナターシャとシャーリーの妹”でしかなかったが、一般的には“心優しい可憐な令嬢”と言われていていつも笑顔で周りからの好感度も高い。
シャーリーはおとなしい控え目な性格で、(公にはしていないが)婚約者が居る事もあるのか、学園での異性との交流は殆ど無かった(と報告が上がっていた)。
デライラは男性受けが良い。それに、デライラが現侯爵夫人の実子となれば、シャーリーを蔑ろにする事はないが、デライラを優先する騎士が居るのは確かだ。
シャーリーが次期侯爵だと知らないのか?
それとも──
ー侯爵夫人が何か企んでいるのか?ー
色々思案しているうちに1時間が過ぎてしまったようで、ミシェルが俺を迎えに来て、一作業してから俺の尻尾を掴み上げてデライラの部屋を後にした。
『ギュウッ(尻尾を掴むのは止めて欲しい)……』
「………」
どうやら、俺の願いは聞いてくれないようだ。
******
「本当に、デライラと執事は最低のクズですね。シャーリー様宛の物を全て奪っていたなんて!」
指示を出したのはデライラか夫人だろうけど、邸宛の手紙や贈り物を管理するのは執事だ。その執事の雇い主が夫人であれば、夫人やデライラに従うしかないし、執事もここで雇われる前から、夫人側の人間なんだろう。
「もういっその事、ヤりましょうか?」
『まだ証拠集めが必要だろう……』
「ちっ」
ーミシェルは、ただの侍女ではないのかも?ー
『デライラがシャーリーを貶めようとしている事はハッキリしたが……ナターシャは?ナターシャは寧ろ…』
「ナターシャ様は、デライラよりシャーリー様を溺愛してますから」
『溺愛!?』
それはないだろう!?嫌ってはいないようだけど、好きな様にも見えなかった。異母姉妹と言う事で、壁があると言うか……
「シャーリー様が可愛い過ぎて、ご自身の気持ちが爆発しないように必死で抑えられているんですよ」
『え?』
『デライラは顔だけの我儘女で、自分の思い通りに行かないと周りに当たり散らして。でも、シャーリーは見た目通り可愛くて優しい性格で努力家で、あの琥珀色の目で「お義姉様」なんて呼ばれてみなさい?力の限り抱きしめてしまう自信しかないわ!そんな事をすれば、驚かれてしまうし、避けられるかもしれないでしょう!?だから、必死で耐えているのよ!』
「──と、仰っていました」
それからナターシャは、実の母親と妹が、シャーリーを良く思っていない事に気付き、何気に気を配っていたそうだ。そうして、ナターシャが王太子妃として王城に上がる前に、シャーリーを護る為に俺との婚約を決めて、専属の侍女としてミシェルを付けた。
「まぁ…ブロンディオ様は護ってくれませんでしたけど……」
『ゔっ────』
ー本当に、ミシェルはどこまでもミシェルだー
❋“置き場”に、王太子妃ナターシャ視点のお話を投稿しました。覗いていただければ幸いです❋
(,,ᴗ ̫ᴗ,,)ꕤ*.゚
そう言って、ミシェルは俺をデライラの部屋に放り込んだ後、すぐに部屋から出て行った。
本当に、文字通り俺を部屋に放り込んだ。俺がブロンディオ公爵家の子息だと知った上で、尻尾を掴んで放り投げた。なんとも素晴らしい侍女だ。
ただ、尻尾を掴むのは止めて欲しい。ビックリして千切れるかと思った。
『………』
ぐるりと部屋を見渡して、あまりの違いに驚きすら失せる程だった。南に面した大きな窓から太陽の光が差し込み、部屋が暖かくて明るい。部屋にある家具は白色を基調として金色の模様が施されている。
ベッドにはレースが垂れ下がっている天蓋付きで、ベッドカバーはピンク色。部屋の奥にはクローゼットがあり、勿論、その中には沢山のドレスやアクセサリーボックスがある。普段着専用のクローゼットもある。
侯爵令嬢ともなればこれが普通で、おかしいのは、シャーリーの部屋の方だ。
ー侯爵は、この状況を把握しているんだろうか?ー
そして、クローゼットの奥に掛けられているワンピースに目が止まった。それは、淡い青色のシンプルなワンピース。スカートと袖の裾に黒色の刺繍がある。俺がシャーリーに贈った物だ。他にも、見覚えのあるドレスもある。
ーシャーリーには、何一つ届いていなかったのかー
『お前はもっと、他人に関心を持つべきだ』
シャーリーに関心が無かった訳じゃない。会う事はなくても、手紙を送ったり贈り物をしておけば問題無いと思っていた。それらに対して返事が無いのであれば、それはシャーリー側の問題だからと、それ以上確認する事も調べる事もしなかったのは……無関心と同じ事だ。もし、ミシェルの雇い主が侯爵ではなかったら?料理長と3人の料理人も、雇い主が侯爵だったようで、食事も三食しっかり食べれていたのも良かった。
カシリスト家所属の騎士は50人。その騎士達の対応は様々だった。
もともと俺にとってのデライラは“ナターシャとシャーリーの妹”でしかなかったが、一般的には“心優しい可憐な令嬢”と言われていていつも笑顔で周りからの好感度も高い。
シャーリーはおとなしい控え目な性格で、(公にはしていないが)婚約者が居る事もあるのか、学園での異性との交流は殆ど無かった(と報告が上がっていた)。
デライラは男性受けが良い。それに、デライラが現侯爵夫人の実子となれば、シャーリーを蔑ろにする事はないが、デライラを優先する騎士が居るのは確かだ。
シャーリーが次期侯爵だと知らないのか?
それとも──
ー侯爵夫人が何か企んでいるのか?ー
色々思案しているうちに1時間が過ぎてしまったようで、ミシェルが俺を迎えに来て、一作業してから俺の尻尾を掴み上げてデライラの部屋を後にした。
『ギュウッ(尻尾を掴むのは止めて欲しい)……』
「………」
どうやら、俺の願いは聞いてくれないようだ。
******
「本当に、デライラと執事は最低のクズですね。シャーリー様宛の物を全て奪っていたなんて!」
指示を出したのはデライラか夫人だろうけど、邸宛の手紙や贈り物を管理するのは執事だ。その執事の雇い主が夫人であれば、夫人やデライラに従うしかないし、執事もここで雇われる前から、夫人側の人間なんだろう。
「もういっその事、ヤりましょうか?」
『まだ証拠集めが必要だろう……』
「ちっ」
ーミシェルは、ただの侍女ではないのかも?ー
『デライラがシャーリーを貶めようとしている事はハッキリしたが……ナターシャは?ナターシャは寧ろ…』
「ナターシャ様は、デライラよりシャーリー様を溺愛してますから」
『溺愛!?』
それはないだろう!?嫌ってはいないようだけど、好きな様にも見えなかった。異母姉妹と言う事で、壁があると言うか……
「シャーリー様が可愛い過ぎて、ご自身の気持ちが爆発しないように必死で抑えられているんですよ」
『え?』
『デライラは顔だけの我儘女で、自分の思い通りに行かないと周りに当たり散らして。でも、シャーリーは見た目通り可愛くて優しい性格で努力家で、あの琥珀色の目で「お義姉様」なんて呼ばれてみなさい?力の限り抱きしめてしまう自信しかないわ!そんな事をすれば、驚かれてしまうし、避けられるかもしれないでしょう!?だから、必死で耐えているのよ!』
「──と、仰っていました」
それからナターシャは、実の母親と妹が、シャーリーを良く思っていない事に気付き、何気に気を配っていたそうだ。そうして、ナターシャが王太子妃として王城に上がる前に、シャーリーを護る為に俺との婚約を決めて、専属の侍女としてミシェルを付けた。
「まぁ…ブロンディオ様は護ってくれませんでしたけど……」
『ゔっ────』
ー本当に、ミシェルはどこまでもミシェルだー
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