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22 ネイサンとノクス
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ジャクリーヌは、実家と旦那の実家の両男爵家から縁切り、除籍処分をされ、少量のお金だけ持たされた上に、辺境にある町に追放された。
元男爵夫人が、侯爵夫人になりきり好き放題した上に、次期侯爵のシャーリーを陥れようとしたのだ。おまけに、自分勝手な理由でブロンディオ公爵家も巻き込んで。
そこまでくると、両男爵家ともブロンディオ公爵家とカシリスト侯爵家から睨まれたくない─となったのだろう。
ジャクリーヌは、王太子妃ナターシャの実の親ではあるが、戸籍上はカシリスト侯爵家の養女であり、ナターシャ本人が『アレはもう、私の親ではないわ』とハッキリと口にしたのも大きいだろう。
少量のお金と言っても、平民からすればそれなりの金額で、平民レベルの生活を送れば数年は働かなくても暮らせるし、その間に職を探す事ができる。ただ、プライドだけが高く、贅沢に慣れたジャクリーヌが、贅沢を止めて働くのか?それは「否」だろう。働くのが嫌なら、ジャクリーヌは性格云々は置いといて、容姿は年齢よりも若く見えて美人だ。うまくいけば、金持ちと結婚する事もできるだろうが、それもまた難しいだろう。
『私は侯爵夫人になるのよ!』
『エリック様が迎えに来てくれるわ』
と、最後迄そう叫んでいたから。となれば、ジャクリーヌはいつ迄もつのか………そう長くはもたないだろう。
正直、ジャクリーヌがどうなろうと、どうでも良い。ジャクリーヌが二度とシャーリーの視界に入らなければ、どうなろうとも知ったことではない。シャーリーが穏やかに過ごせるのなら──
「私、実は、ヤモリを飼っていたんですけど──」
「ゴフッ───」
「ネイサン様、大丈夫ですか!?」
思わぬ角度からのヤモリ発言に、紅茶を飲み込もうとしてむせると、シャーリーが焦って背中を擦ってくれた。
「だっ…大丈夫だ…あー……それで、ヤモリを飼っていて、どうしたんだ?」
「レオパ─ヒョウモントカゲモドキって言うヤモリで、色んな理由があって飼う事になって、マルクに手伝ってもらって飼ってたんですけど、1週間前のゴタゴタした時に脱走してしまったみたいで、居なくなっちゃったんです」
「そうか……」
ー人の姿に戻って、今ここに居るんだけどー
「もともと爬虫類は苦手だったけど、初めて目にした時から特に抵抗もなく触れて、その子は可愛く見えて、名前も付けてたんです。その子、レオパには珍しい黒色で……ネイサン様と同じ黒色だと思ったら、更に可愛く見えて、安心感もあって…ネイサン様にも見てもらいたかったんですけど……」
「え?」
「あ、ネイサン様は爬虫類は苦手でしたか?あ!もしかして、ヤモリと同じ色だと言った事に気を悪く──」
「違う!全く気を悪くなんてしていない!俺もヤモリは好きだから!」
「そ…それなら良かったです」
ーそのヤモリは俺だからな!とは言えないー
「無事だと良いけど」
シュンと寂しそうな顔をするシャーリー。まさか、ヤモリな俺を可愛いとか安心感があったとは思わなかった。俺と同じ黒色だからと言う理由だけで──
ー可愛いのはシャーリーだろう!ー
確かに、シャーリーは初めてヤモリな俺を見た時、嫌な顔もせず俺を掴み上げた。それに、よく『ブロンディオ様と同じ綺麗な黒色だ』とも言っていた。マトモに連絡すらとれていなかった俺の事を、呆れる事も怒る事もなく思ってくれていたのだ。
「本当にシャーリーは可愛いよね」
「はい?」
「ヤモリでも黒色と言うだけで俺を思ってくれたんだろう?可愛い過ぎるだろう」
「は…はい!?違っ……わなくもないですけど!?」
ボフッと音が出る勢いで、シャーリーの顔が真っ赤になった。
ーシャーリーは、こんなにも感情が豊かだったんだなー
「と…兎に角、そのヤモリ……ノクスって言うんですけど、ノクスには癒やされていたから、居なくなって寂しいなぁって。犬とかに食べられたりしてなかったら良いんですけど、もともと飼われてた感じもあったから、大丈夫かどうか心配で…」
ー犬なんかにヤられたりはしないし、元気に、今、ここに居る!とは言えないー
「運良くシャーリーに飼われる事になったぐらいだから、運良く元の飼い主の元に戻れているんじゃないかな?」
「だと良いんですけどね」
それでも寂しそうな顔するシャーリーに、“本物の俺が目の前に居るのに”と、ノクスに嫉妬する俺が居る。なんとも複雑な心境だ。
「ノクスの代わりと言ってはなんだけど、学校が休みの日に、街に美味しい物でも食べに行かないか?」
「街に?私と2人でお出掛けしても良いんですか?」
「勿論だ。婚約者と2人で出掛けても問題は無いだろう?」
「婚約者……はい!行きます!行きたいです!」
ー可愛いか!!ー
元男爵夫人が、侯爵夫人になりきり好き放題した上に、次期侯爵のシャーリーを陥れようとしたのだ。おまけに、自分勝手な理由でブロンディオ公爵家も巻き込んで。
そこまでくると、両男爵家ともブロンディオ公爵家とカシリスト侯爵家から睨まれたくない─となったのだろう。
ジャクリーヌは、王太子妃ナターシャの実の親ではあるが、戸籍上はカシリスト侯爵家の養女であり、ナターシャ本人が『アレはもう、私の親ではないわ』とハッキリと口にしたのも大きいだろう。
少量のお金と言っても、平民からすればそれなりの金額で、平民レベルの生活を送れば数年は働かなくても暮らせるし、その間に職を探す事ができる。ただ、プライドだけが高く、贅沢に慣れたジャクリーヌが、贅沢を止めて働くのか?それは「否」だろう。働くのが嫌なら、ジャクリーヌは性格云々は置いといて、容姿は年齢よりも若く見えて美人だ。うまくいけば、金持ちと結婚する事もできるだろうが、それもまた難しいだろう。
『私は侯爵夫人になるのよ!』
『エリック様が迎えに来てくれるわ』
と、最後迄そう叫んでいたから。となれば、ジャクリーヌはいつ迄もつのか………そう長くはもたないだろう。
正直、ジャクリーヌがどうなろうと、どうでも良い。ジャクリーヌが二度とシャーリーの視界に入らなければ、どうなろうとも知ったことではない。シャーリーが穏やかに過ごせるのなら──
「私、実は、ヤモリを飼っていたんですけど──」
「ゴフッ───」
「ネイサン様、大丈夫ですか!?」
思わぬ角度からのヤモリ発言に、紅茶を飲み込もうとしてむせると、シャーリーが焦って背中を擦ってくれた。
「だっ…大丈夫だ…あー……それで、ヤモリを飼っていて、どうしたんだ?」
「レオパ─ヒョウモントカゲモドキって言うヤモリで、色んな理由があって飼う事になって、マルクに手伝ってもらって飼ってたんですけど、1週間前のゴタゴタした時に脱走してしまったみたいで、居なくなっちゃったんです」
「そうか……」
ー人の姿に戻って、今ここに居るんだけどー
「もともと爬虫類は苦手だったけど、初めて目にした時から特に抵抗もなく触れて、その子は可愛く見えて、名前も付けてたんです。その子、レオパには珍しい黒色で……ネイサン様と同じ黒色だと思ったら、更に可愛く見えて、安心感もあって…ネイサン様にも見てもらいたかったんですけど……」
「え?」
「あ、ネイサン様は爬虫類は苦手でしたか?あ!もしかして、ヤモリと同じ色だと言った事に気を悪く──」
「違う!全く気を悪くなんてしていない!俺もヤモリは好きだから!」
「そ…それなら良かったです」
ーそのヤモリは俺だからな!とは言えないー
「無事だと良いけど」
シュンと寂しそうな顔をするシャーリー。まさか、ヤモリな俺を可愛いとか安心感があったとは思わなかった。俺と同じ黒色だからと言う理由だけで──
ー可愛いのはシャーリーだろう!ー
確かに、シャーリーは初めてヤモリな俺を見た時、嫌な顔もせず俺を掴み上げた。それに、よく『ブロンディオ様と同じ綺麗な黒色だ』とも言っていた。マトモに連絡すらとれていなかった俺の事を、呆れる事も怒る事もなく思ってくれていたのだ。
「本当にシャーリーは可愛いよね」
「はい?」
「ヤモリでも黒色と言うだけで俺を思ってくれたんだろう?可愛い過ぎるだろう」
「は…はい!?違っ……わなくもないですけど!?」
ボフッと音が出る勢いで、シャーリーの顔が真っ赤になった。
ーシャーリーは、こんなにも感情が豊かだったんだなー
「と…兎に角、そのヤモリ……ノクスって言うんですけど、ノクスには癒やされていたから、居なくなって寂しいなぁって。犬とかに食べられたりしてなかったら良いんですけど、もともと飼われてた感じもあったから、大丈夫かどうか心配で…」
ー犬なんかにヤられたりはしないし、元気に、今、ここに居る!とは言えないー
「運良くシャーリーに飼われる事になったぐらいだから、運良く元の飼い主の元に戻れているんじゃないかな?」
「だと良いんですけどね」
それでも寂しそうな顔するシャーリーに、“本物の俺が目の前に居るのに”と、ノクスに嫉妬する俺が居る。なんとも複雑な心境だ。
「ノクスの代わりと言ってはなんだけど、学校が休みの日に、街に美味しい物でも食べに行かないか?」
「街に?私と2人でお出掛けしても良いんですか?」
「勿論だ。婚約者と2人で出掛けても問題は無いだろう?」
「婚約者……はい!行きます!行きたいです!」
ー可愛いか!!ー
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