2 / 55
プロローグ
しおりを挟む
「ニコリともしない。一体何を考えているのか分からない。」
「でも、エルダイン嬢が、婚約者候補の筆頭だろう?幼馴染みのようなものだし、昔は仲も良かっただろう?」
「─兄であるシリルの前で言うのもなんだけど、あれだけ表情が全く変わらないと…怖いくらいだよ。」
「メルヴィル様、それは言い過ぎでは?フェリシティ様は、才に優れた方で────」
ここは16歳から17歳の2年間通う事が義務化された、王都にある学園の中庭─の更に奥にある、普段はあまり人の来ない場所にあるガゼボ。
普段、私─フェリシティ=エルダイン─は、放課後はここで読書などをしたりしている。今日もいつもと同じように、そのガゼボの近くにあるベンチに座り本を読んでいた─のだけど。
そこへ、この国の第一王子であり、この学園の生徒会長であるメルヴィル=コルネリア様が、生徒会役員の生徒達と共にこのガゼボにやって来た。
そして、彼らは私の存在に気付く事なく他愛の無い話をし始め、そのまま第一王子の婚約者候補の話になり、冒頭の会話となった。
私の事をフォロー?したのは、私と同じ婚約者候補の1人─ティアリーナ=グレイソン様。第一王子とは同じ年であり公爵令嬢でもある為、身分的にはティアリーナ様が婚約者に一番相応しいのでは?と思うけど…。それに、私のフォローはしているけど…いつも第一王子の側に居て寄り添っているのはティアリーナ様だ。
そして、そんな会話が繰り広げられているメンバーの中には─私の兄であるシリルも居るが、兄が私をフォローする──事は無い。
「───はぁー…………」
「お嬢様、大丈夫ですか?」
「ココ……」
「すみません。聞くつもりはなかったのですが…聞こえてしまって。」
「良いのよ。気にしないで。まだ大丈夫よ。迎えに来てくれたのでしょう?彼等に気付かれる前に…帰りましょう。」
私はそう言って、いつものように迎えに来てくれた私の侍女─ココと一緒にその場から立ち去ろうと歩みを進めた。
「本当に、何故笑わない?何が気に入らないのか…。愛想もふりまけないのか?冷たい人形のようだなと思う。」
ーは?ー
その、第一王子の言葉に、思わず歩みが止まる。
「────あー……お嬢様………」
私の横でココが引き攣った顔で私を見ている。
「──ココ…大丈夫よ…」
と、私はニッコリ笑ってココを見てから、もう一度歩みを進めてその場を後にした。
******
「あら、もう帰って来たの?」
王都にある邸に帰って来ると、玄関ホールで一番会いたくない義母と会ってしまった。
「只今帰りました。」
挨拶をしながら軽く頭を下げて、そのまま歩みを進めて義母の横を通り過ぎようとすると
「本当に、あなたの何処が良いのかしらね?あなたなんかより、ベルの方がよっぽど殿下に相応しいのに。」
「─別に、私が婚約者と決まった訳ではありませんから。」
「ふん。そうね。あなたなんかが選ばれる事は無いわね。」
義母はニヤッと笑ってそう言うと、廊下の奥へと去って行った。
義母であり、現エルダイン辺境伯婦人─ブリジット。
私の実母─ソフィアは10年前に流行り病にかかり、そのまま儚くなってしまった。そして、その喪が明けて暫くすると、父がブリジットを後妻として迎え入れた─それも、兄妹を引き連れて。
父と母が政略結婚だと言う事は知っていた。確かに、2人の間に恋愛感情はなかったが、お互い夫婦としての信頼関係のようなモノはあったようには見えた。
でも─
どうやら、父は私達に隠れてブリジットとも関係を持っていた─と言うよりは、母との結婚前からの付き合いだったようで、私よりも一つ年上の兄を生んでいたのだ。そして、妹の方は私の一つ年下だった。
それから、家族5人でエルダインの辺境地で過ごして居たが、兄が王都の学園に通う年齢になった時に、義母と妹も一緒に王都の邸へ住まいを移した。それからの1年は和やかな生活を送れた。
ただ、その1年後、私も学園に通う為に王都の邸で暮らす事になった。
それまで、辺境地で過ごしていた時は、父が居たからだろう。必要以上に優しくされる事はなかったが、特に義母から何かされたりする事もなかった。
しかし─
王都の邸には、父は居ない。何故か、使用人達の顔ぶれも以前とガラリと変わっていた。ただ、ココだけは、私付きの侍女である為、辺境地から一緒に王都にも来てくれていた。
ー何故、使用人達が代わっているの?ー
当初不思議には思ったが、父も了承しているのだろう─と思うと、誰にも訊く事はしなかった。
でも、その理由はココによってすぐに判明した。
「以前ここで働いていた使用人達は、ソフィア様が選んだ者達だったのですが…。ブリジット様はそれが気に入らなかったようで、その者達を解雇して、新たに使用人を雇ったそうです。」
そう。既に、この王都の邸には─
私の味方は居なかったのだ──
❋久し振りに、新作の投稿を始めました。今日はもう一話投稿しますが、今回も、毎日一話更新で頑張っていこうと思っています。相変わらずのゆるふわ設定なので、優しい目で見ていただけると助かります。
*(๑´>人<`)✧*
宜しくお願いします!❋
☆*:.。. o(≧▽≦)o .。.:*☆
「でも、エルダイン嬢が、婚約者候補の筆頭だろう?幼馴染みのようなものだし、昔は仲も良かっただろう?」
「─兄であるシリルの前で言うのもなんだけど、あれだけ表情が全く変わらないと…怖いくらいだよ。」
「メルヴィル様、それは言い過ぎでは?フェリシティ様は、才に優れた方で────」
ここは16歳から17歳の2年間通う事が義務化された、王都にある学園の中庭─の更に奥にある、普段はあまり人の来ない場所にあるガゼボ。
普段、私─フェリシティ=エルダイン─は、放課後はここで読書などをしたりしている。今日もいつもと同じように、そのガゼボの近くにあるベンチに座り本を読んでいた─のだけど。
そこへ、この国の第一王子であり、この学園の生徒会長であるメルヴィル=コルネリア様が、生徒会役員の生徒達と共にこのガゼボにやって来た。
そして、彼らは私の存在に気付く事なく他愛の無い話をし始め、そのまま第一王子の婚約者候補の話になり、冒頭の会話となった。
私の事をフォロー?したのは、私と同じ婚約者候補の1人─ティアリーナ=グレイソン様。第一王子とは同じ年であり公爵令嬢でもある為、身分的にはティアリーナ様が婚約者に一番相応しいのでは?と思うけど…。それに、私のフォローはしているけど…いつも第一王子の側に居て寄り添っているのはティアリーナ様だ。
そして、そんな会話が繰り広げられているメンバーの中には─私の兄であるシリルも居るが、兄が私をフォローする──事は無い。
「───はぁー…………」
「お嬢様、大丈夫ですか?」
「ココ……」
「すみません。聞くつもりはなかったのですが…聞こえてしまって。」
「良いのよ。気にしないで。まだ大丈夫よ。迎えに来てくれたのでしょう?彼等に気付かれる前に…帰りましょう。」
私はそう言って、いつものように迎えに来てくれた私の侍女─ココと一緒にその場から立ち去ろうと歩みを進めた。
「本当に、何故笑わない?何が気に入らないのか…。愛想もふりまけないのか?冷たい人形のようだなと思う。」
ーは?ー
その、第一王子の言葉に、思わず歩みが止まる。
「────あー……お嬢様………」
私の横でココが引き攣った顔で私を見ている。
「──ココ…大丈夫よ…」
と、私はニッコリ笑ってココを見てから、もう一度歩みを進めてその場を後にした。
******
「あら、もう帰って来たの?」
王都にある邸に帰って来ると、玄関ホールで一番会いたくない義母と会ってしまった。
「只今帰りました。」
挨拶をしながら軽く頭を下げて、そのまま歩みを進めて義母の横を通り過ぎようとすると
「本当に、あなたの何処が良いのかしらね?あなたなんかより、ベルの方がよっぽど殿下に相応しいのに。」
「─別に、私が婚約者と決まった訳ではありませんから。」
「ふん。そうね。あなたなんかが選ばれる事は無いわね。」
義母はニヤッと笑ってそう言うと、廊下の奥へと去って行った。
義母であり、現エルダイン辺境伯婦人─ブリジット。
私の実母─ソフィアは10年前に流行り病にかかり、そのまま儚くなってしまった。そして、その喪が明けて暫くすると、父がブリジットを後妻として迎え入れた─それも、兄妹を引き連れて。
父と母が政略結婚だと言う事は知っていた。確かに、2人の間に恋愛感情はなかったが、お互い夫婦としての信頼関係のようなモノはあったようには見えた。
でも─
どうやら、父は私達に隠れてブリジットとも関係を持っていた─と言うよりは、母との結婚前からの付き合いだったようで、私よりも一つ年上の兄を生んでいたのだ。そして、妹の方は私の一つ年下だった。
それから、家族5人でエルダインの辺境地で過ごして居たが、兄が王都の学園に通う年齢になった時に、義母と妹も一緒に王都の邸へ住まいを移した。それからの1年は和やかな生活を送れた。
ただ、その1年後、私も学園に通う為に王都の邸で暮らす事になった。
それまで、辺境地で過ごしていた時は、父が居たからだろう。必要以上に優しくされる事はなかったが、特に義母から何かされたりする事もなかった。
しかし─
王都の邸には、父は居ない。何故か、使用人達の顔ぶれも以前とガラリと変わっていた。ただ、ココだけは、私付きの侍女である為、辺境地から一緒に王都にも来てくれていた。
ー何故、使用人達が代わっているの?ー
当初不思議には思ったが、父も了承しているのだろう─と思うと、誰にも訊く事はしなかった。
でも、その理由はココによってすぐに判明した。
「以前ここで働いていた使用人達は、ソフィア様が選んだ者達だったのですが…。ブリジット様はそれが気に入らなかったようで、その者達を解雇して、新たに使用人を雇ったそうです。」
そう。既に、この王都の邸には─
私の味方は居なかったのだ──
❋久し振りに、新作の投稿を始めました。今日はもう一話投稿しますが、今回も、毎日一話更新で頑張っていこうと思っています。相変わらずのゆるふわ設定なので、優しい目で見ていただけると助かります。
*(๑´>人<`)✧*
宜しくお願いします!❋
☆*:.。. o(≧▽≦)o .。.:*☆
235
あなたにおすすめの小説
皇太子夫妻の歪んだ結婚
夕鈴
恋愛
皇太子妃リーンは夫の秘密に気付いてしまった。
その秘密はリーンにとって許せないものだった。結婚1日目にして離縁を決意したリーンの夫婦生活の始まりだった。
本編完結してます。
番外編を更新中です。
アルバートの屈辱
プラネットプラント
恋愛
妻の姉に恋をして妻を蔑ろにするアルバートとそんな夫を愛するのを諦めてしまった妻の話。
『詰んでる不憫系悪役令嬢はチャラ男騎士として生活しています』の10年ほど前の話ですが、ほぼ無関係なので単体で読めます。
全てを捨てて、わたしらしく生きていきます。
彩華(あやはな)
恋愛
3年前にリゼッタお姉様が風邪で死んだ後、お姉様の婚約者であるバルト様と結婚したわたし、サリーナ。バルト様はお姉様の事を愛していたため、わたしに愛情を向けることはなかった。じっと耐えた3年間。でも、人との出会いはわたしを変えていく。自由になるために全てを捨てる覚悟を決め、わたしはわたしらしく生きる事を決意する。
王太子殿下から婚約破棄されたのは冷たい私のせいですか?
ねーさん
恋愛
公爵令嬢であるアリシアは王太子殿下と婚約してから十年、王太子妃教育に勤しんで来た。
なのに王太子殿下は男爵令嬢とイチャイチャ…諫めるアリシアを悪者扱い。「アリシア様は殿下に冷たい」なんて男爵令嬢に言われ、結果、婚約は破棄。
王太子妃になるため自由な時間もなく頑張って来たのに、私は駒じゃありません!
真実の愛を見つけた婚約者(殿下)を尊敬申し上げます、婚約破棄致しましょう
さこの
恋愛
「真実の愛を見つけた」
殿下にそう告げられる
「応援いたします」
だって真実の愛ですのよ?
見つける方が奇跡です!
婚約破棄の書類ご用意いたします。
わたくしはお先にサインをしました、殿下こちらにフルネームでお書き下さいね。
さぁ早く!わたくしは真実の愛の前では霞んでしまうような存在…身を引きます!
なぜ婚約破棄後の元婚約者殿が、こんなに美しく写るのか…
私の真実の愛とは誠の愛であったのか…
気の迷いであったのでは…
葛藤するが、すでに時遅し…
王命により、婚約破棄されました。
緋田鞠
恋愛
魔王誕生に対抗するため、異界から聖女が召喚された。アストリッドは結婚を翌月に控えていたが、婚約者のオリヴェルが、聖女の指名により独身男性のみが所属する魔王討伐隊の一員に選ばれてしまった。その結果、王命によって二人の婚約が破棄される。運命として受け入れ、世界の安寧を祈るため、修道院に身を寄せて二年。久しぶりに再会したオリヴェルは、以前と変わらず、アストリッドに微笑みかけた。「私は、長年の約束を違えるつもりはないよ」。
大好きなあなたを忘れる方法
山田ランチ
恋愛
あらすじ
王子と婚約関係にある侯爵令嬢のメリベルは、訳あってずっと秘密の婚約者のままにされていた。学園へ入学してすぐ、メリベルの魔廻が(魔術を使う為の魔素を貯めておく器官)が限界を向かえようとしている事に気が付いた大魔術師は、魔廻を小さくする事を提案する。その方法は、魔素が好むという悲しい記憶を失くしていくものだった。悲しい記憶を引っ張り出しては消していくという日々を過ごすうち、徐々に王子との記憶を失くしていくメリベル。そんな中、魔廻を奪う謎の者達に大魔術師とメリベルが襲われてしまう。
魔廻を奪おうとする者達は何者なのか。王子との婚約が隠されている訳と、重大な秘密を抱える大魔術師の正体が、メリベルの記憶に導かれ、やがて世界の始まりへと繋がっていく。
登場人物
・メリベル・アークトュラス 17歳、アークトゥラス侯爵の一人娘。ジャスパーの婚約者。
・ジャスパー・オリオン 17歳、第一王子。メリベルの婚約者。
・イーライ 学園の園芸員。
クレイシー・クレリック 17歳、クレリック侯爵の一人娘。
・リーヴァイ・ブルーマー 18歳、ブルーマー子爵家の嫡男でジャスパーの側近。
・アイザック・スチュアート 17歳、スチュアート侯爵の嫡男でジャスパーの側近。
・ノア・ワード 18歳、ワード騎士団長の息子でジャスパーの従騎士。
・シア・ガイザー 17歳、ガイザー男爵の娘でメリベルの友人。
・マイロ 17歳、メリベルの友人。
魔素→世界に漂っている物質。触れれば精神を侵され、生き物は主に凶暴化し魔獣となる。
魔廻→体内にある魔廻(まかい)と呼ばれる器官、魔素を取り込み貯める事が出来る。魔術師はこの器官がある事が必須。
ソル神とルナ神→太陽と月の男女神が魔素で満ちた混沌の大地に現れ、世界を二つに分けて浄化した。ソル神は昼間を、ルナ神は夜を受け持った。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる