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ダンス
しおりを挟む「貴方達も、今迄ありがとう。これからの事を少し話をしたいから、8時少し前に遣いを立てるから、申し訳無いのだけど、私の執務室迄来てもらうわね。それ迄の間、貴方達は自由よ。」
第一王子とティアリーナ様がダンスを踊っている最中に、王妃様からそう言われた。
“自由”
ー本当に、自由なんだー
そう思ったタイミングで、第一王子とティアリーナ様のダンスも終わり、参加者が拍手を送る。
ダンスを踊っていた2人が軽くお礼をした後、ペアになりダンスを踊ろうとする人や、食事に向かう人、お喋りを始める人など、皆各々自由に動き出した。
視界の隅に、第一王子とティアリーナ様が入ったけど、私は気にする事なくホールに目を向けて──
「フェリ」
すぐ近く迄来て私の名を呼んだリオに、しっかりと視線を向けた。
「取り敢えずは…“おめでとう”かな?まだ……一波乱ありそうだけど。」
「あるでしょうね。ずっとこっちを見てるから。取り敢えずは……ありがとう。」
「はい、これ、受け取ってくれる?」
と、リオは自身のポケットに差し込んでいた、赤い1輪の薔薇を私に差し出す。
「えっと……もう既に…バイオレットローズをもらったわよ?」
「うん。あれは、フェリの色だけど、これは俺の色。今日のフェリは何の色でもないだろう?かと言って、アクセサリーは着けられないから、その代わりにね。俺の色を……着けていただけますか?」
いつもの自信満々なリオはどこへやら。少し眉毛を下げて不安そうに私を窺って来るリオ。いや、これも、リオの計算のうちかもしれないけど。
それでも、そんなリオに私の気持ちは…傾いてしまっているのだ。やっぱり、チョロいのかもしれない。
「はい、喜んで。」
自然と笑みが零れて、その薔薇を受け取った。
すると、リオが珍しく少し顔を赤くして、手で口元を覆った。
「フェリが可愛い─」
「ん?何て?」
リオの声が小さかった事と、丁度また演奏が始まった為によく聞こえなかった。
「──いや、何でもない。さぁ、俺達も踊ろう。」
いつもの腹黒な笑顔ではなく、爽やかな笑顔で手を差し出して来たリオは、いつもよりも格好良く見えてドキッとした。
ー恋をすると、同じ相手でも違うように見えるから不思議だなぁー
ただの幼馴染みだったリオの笑顔を見ても、何も感じなかったのに。意識してしまうと、同じ笑顔な筈なのにドキドキしてしまう。こんな感情は、第一王子に対しては…一度も持った事はなかった。確かに、幼い頃、一緒に走り回って遊んでいた時の第一王子の事は好きだった思う。でも───と、そろそろ曲が終わり掛け、私が体を離そうとすると、逆にグイッと腰を引き寄せられて、そのまま私の耳元に口を寄せて
「続けて踊っても?」
「──え?」
「フェリを、誰にも……渡したくないんだ……」
「────ゔっ……。」
あまりにも恥ずかしくて、私はそのまま顔を隠すようにリオの胸に顔を埋める。
「オッケーと言う事で…良いよな?」
頭上で嬉しそうに囁いたリオは、更に私の腰にあてている手にギュッと力を入れて───
結局は、そのまま3曲続けて踊ったのだった。
そんな私達の様子を、ずっと見ていた第一王子には、私は全く気付いていなかった。
それから、パーティーがお開きになる8時少し前。
王妃様が言っていた通りに、女官に声を掛けられてホールを後にした。
*王妃執務室*
「4人とも、長い間ご苦労様でした。貴方達は婚約者とはならなかったけれど、優秀な事には変わりないわ。自信を持って次に進んで欲しいと願っているわ。これからの事は、私が責任を持ってフォローさせてもらうわね。本当に、今迄ありがとう。」
王妃様は、王妃教育の間には見せる事がなかった、とても可愛らしい笑顔で私達を労ってくれた。
因みに、第一王子とティアリーナ様は、パーティーの最後迄ホールに居る為、執務室には、王妃様と候補者だった4人しか居ない。
「それと、気付いているとは思うけれど……第二王子であるジュリアスが立太子する事になったわ。その為、メルヴィルは、婚約者であるティアリーナ嬢のグレイソン公爵家に入る事が決まったわ。」
ーやっぱり、ジュリアス様が立太子するのねー
「それで──」
と、王妃様が更に言葉を続けようとした時、部屋の外が騒がしくなった。
すると、王妃様の側に控えていた侍女長が軽く頭を下げた後、扉の方へと向かい、扉を開けると
「母上!一体どう言う事ですか!?」
と、第一王子が大声を上げながら執務室に入って来た。
そして、その後ろには、困惑顔をしたティアリーナ様も居た。
ーやっぱり…来たわねー
私はそっとため息を吐く。そのまま視線だけ王妃様に向けると、王妃様はニッコリ微笑んで第一王子とティアリーナ様を見ていた。
「メルヴィル、ティアリーナ嬢、待っていたわ。私も、あなた達と話がしたかったのよ。テレッサ嬢、ノーラ嬢、ミンディ嬢は申し訳無いのだけれど、今日はこれで下がってくれるかしら?」
何が起こっているのか分からないが、王妃様に言われればそれに従うしかない為、3人は王妃様に挨拶をして退室し、残ったのは王妃様、第一王子、ティアリーナ様、私の4人。
「話は長くなると思うから、皆、座ってちょうだい。」
王妃様に声を掛けられ、私達4人はソファーに座った。
ーさあ、これから…どうなる?ー
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