8 / 46
7 収穫祭①
しおりを挟む
収穫祭当日の朝は早かった。
まだ暗いうちに起きて朝からお風呂に入らされ、竜化してからもう一度お風呂に入らされて、鱗がピカピカになるまで磨き上げられた。それはそれはあまりの気持ち良さに子竜のまま寝てしまっていた。竜化すると、どうしても眠気に負けやすくなるのは、子竜だからなんだそうだ。
そして、ピカピカに磨き上げられた後、体に聖水を掛けて清められ、1本の麦を手渡され、その麦を持ったまま最終目的地である神殿へと飛行する。これは雨天決行で、雨の中の飛行はまだ自信が無くて心配していたけど、晴天に恵まれた。眼下では沢山の領民が手を降って応援してくれていて緊張したけど、信頼する側衛のキースと一緒の飛行だからか、何の不安も無く楽しく飛行できた。
1時間程飛行して辿り着いた神殿で、私とキースを出迎えてくれたのは、数多くの人達と、大神官様と聖女由茉だった。大神官様は勿論だけど、聖女由茉として立っているお母さんは、いつもとは雰囲気がガラリと一変していて、凛とした姿は神々しいとさえ思う程だ。
「奉納の儀を執り行いに参りました」
「「お待ちしておりました」」
私が挨拶をすると、大神官様とお母さんが返事をした後、私を案内するように神殿の奥へと進んで行った。
そして、進んだ先の祭壇で持って来た1本の麦を奉納して、その麦に大神官様とお母さんが祝福を掛けて奉納の儀は終了となった。
ちなみに、祝福を授ける事ができるのは、大神官様とお母さんだけなんだそうだ。
ーやっぱり、お母さんはチートだー
今日1日は、私は竜化したままで過ごす事になっている。西領の上空を飛行しまくるのだ。守護竜が健在だとアピールする為で、見回りも兼ねている。私の飛行速度に合わせる為に、飛行に同行するのはキースとカイルスさんの2人で、アルマンさんとマイラさんは、今日は地上での見回りと言う名の元に祭りを楽しんでもらう事にした。
「「ありがとうございます!」」
竜騎士ともなれば、国を上げての祭りの際は警備や護衛としての任務に駆り出されるから、祭りに参加する事が殆ど無いそうで、今日の事は本当に嬉しそうだった。竜騎士になると、デートもなかなかままならないと聞いた事もある。
『そう言えば、アルマンさんとマイラさんって、恋人とか婚約者とか居るのかなぁ?』
『アルマンには婚約者が居る。相手は幼馴染みで仲も良い』
カイルスさんは、その婚約者ともアルマンさんを通して交流があるそうだ。
『マイラ様には婚約者は居ません。恋人も居るとは聞いてません』
それでも、あの明るさと可愛らしい容姿で気さくな性格だから、密かに人気があるそうだ。
『カイルスさんも、今は恋人は居ないんですよね?』
取り敢えず、サラッと再確認をする。
『居ない。マシロの事だけでいっぱいだからね』
『ふおっ!?』
『…………』
ーそれは一体どう言う意味ですか!?ー
いやいや、落ち着こう。自分都合に解釈してはいけない。自惚れたりなんてしたら、後で自分が惨めになるだけだ。きっと、自分が仕える主が新人の守護竜で、尚且つ竜人に成り立ての子竜。おまけに、この世界の事も疎いと来たら、心配でたまらない──と言ったところだろう。
ーあれ?私、ある意味問題児では?ー
主の私を放ってはおけない!とかで、アルマンさんの結婚が遅れたりなんてしたら───
『いたたまれない!頑張る!』
『何を思ったのか分かるが……マシロは相変わらず考え過ぎるところがあるな。素直に受け取ると言う事を知って欲しいところだな』
『そこがまた、マシロ様の可愛らしいところですけどね。まぁ…頑張って下さい』
苦笑しているカイルスさんとキースには気付かず、私は改めて気合を入れ直して飛行し続けた。
******
「あ!あれ、守護竜様じゃない?」
「パタパタ飛ぶ姿は可愛いわね」
「本当に白の子竜なのね」
「………」
空を見上げれば、白の子竜のサイドに鷲と隼が寄り添うように飛行していた。
ーカイルス様が守護竜様付きになったと言うのは、本当のようねー
竜騎士カイルス=サリアス
鷲獣人でありながら竜騎士になり、騎士爵を与えられた。あの頃は、まさか本当に竜騎士になれるとは思っていなかった。竜騎士になったと知った時には、私は既に“公爵夫人”となっていたから、その事すら忘れてしまっていたけど、もし、公爵夫人になる前だったら、何かが変わっていたのかしら?と思うのは、私が夫を亡くして“女公爵”になったからだろうか?
ーカイルス様に直接会えば、分かるかしら?ー
気が利くような人ではなかったけど、私を大切にしてくれていたから、好かれていたのだと思う。竜騎士で守護竜付きとなったのなら、騎士爵であっても何の問題も無い。私が女公爵なら、守護竜様と直接会える確率も高いから、その時に声を掛ける事ができる筈。
ー会うのが楽しみだわー
まだ暗いうちに起きて朝からお風呂に入らされ、竜化してからもう一度お風呂に入らされて、鱗がピカピカになるまで磨き上げられた。それはそれはあまりの気持ち良さに子竜のまま寝てしまっていた。竜化すると、どうしても眠気に負けやすくなるのは、子竜だからなんだそうだ。
そして、ピカピカに磨き上げられた後、体に聖水を掛けて清められ、1本の麦を手渡され、その麦を持ったまま最終目的地である神殿へと飛行する。これは雨天決行で、雨の中の飛行はまだ自信が無くて心配していたけど、晴天に恵まれた。眼下では沢山の領民が手を降って応援してくれていて緊張したけど、信頼する側衛のキースと一緒の飛行だからか、何の不安も無く楽しく飛行できた。
1時間程飛行して辿り着いた神殿で、私とキースを出迎えてくれたのは、数多くの人達と、大神官様と聖女由茉だった。大神官様は勿論だけど、聖女由茉として立っているお母さんは、いつもとは雰囲気がガラリと一変していて、凛とした姿は神々しいとさえ思う程だ。
「奉納の儀を執り行いに参りました」
「「お待ちしておりました」」
私が挨拶をすると、大神官様とお母さんが返事をした後、私を案内するように神殿の奥へと進んで行った。
そして、進んだ先の祭壇で持って来た1本の麦を奉納して、その麦に大神官様とお母さんが祝福を掛けて奉納の儀は終了となった。
ちなみに、祝福を授ける事ができるのは、大神官様とお母さんだけなんだそうだ。
ーやっぱり、お母さんはチートだー
今日1日は、私は竜化したままで過ごす事になっている。西領の上空を飛行しまくるのだ。守護竜が健在だとアピールする為で、見回りも兼ねている。私の飛行速度に合わせる為に、飛行に同行するのはキースとカイルスさんの2人で、アルマンさんとマイラさんは、今日は地上での見回りと言う名の元に祭りを楽しんでもらう事にした。
「「ありがとうございます!」」
竜騎士ともなれば、国を上げての祭りの際は警備や護衛としての任務に駆り出されるから、祭りに参加する事が殆ど無いそうで、今日の事は本当に嬉しそうだった。竜騎士になると、デートもなかなかままならないと聞いた事もある。
『そう言えば、アルマンさんとマイラさんって、恋人とか婚約者とか居るのかなぁ?』
『アルマンには婚約者が居る。相手は幼馴染みで仲も良い』
カイルスさんは、その婚約者ともアルマンさんを通して交流があるそうだ。
『マイラ様には婚約者は居ません。恋人も居るとは聞いてません』
それでも、あの明るさと可愛らしい容姿で気さくな性格だから、密かに人気があるそうだ。
『カイルスさんも、今は恋人は居ないんですよね?』
取り敢えず、サラッと再確認をする。
『居ない。マシロの事だけでいっぱいだからね』
『ふおっ!?』
『…………』
ーそれは一体どう言う意味ですか!?ー
いやいや、落ち着こう。自分都合に解釈してはいけない。自惚れたりなんてしたら、後で自分が惨めになるだけだ。きっと、自分が仕える主が新人の守護竜で、尚且つ竜人に成り立ての子竜。おまけに、この世界の事も疎いと来たら、心配でたまらない──と言ったところだろう。
ーあれ?私、ある意味問題児では?ー
主の私を放ってはおけない!とかで、アルマンさんの結婚が遅れたりなんてしたら───
『いたたまれない!頑張る!』
『何を思ったのか分かるが……マシロは相変わらず考え過ぎるところがあるな。素直に受け取ると言う事を知って欲しいところだな』
『そこがまた、マシロ様の可愛らしいところですけどね。まぁ…頑張って下さい』
苦笑しているカイルスさんとキースには気付かず、私は改めて気合を入れ直して飛行し続けた。
******
「あ!あれ、守護竜様じゃない?」
「パタパタ飛ぶ姿は可愛いわね」
「本当に白の子竜なのね」
「………」
空を見上げれば、白の子竜のサイドに鷲と隼が寄り添うように飛行していた。
ーカイルス様が守護竜様付きになったと言うのは、本当のようねー
竜騎士カイルス=サリアス
鷲獣人でありながら竜騎士になり、騎士爵を与えられた。あの頃は、まさか本当に竜騎士になれるとは思っていなかった。竜騎士になったと知った時には、私は既に“公爵夫人”となっていたから、その事すら忘れてしまっていたけど、もし、公爵夫人になる前だったら、何かが変わっていたのかしら?と思うのは、私が夫を亡くして“女公爵”になったからだろうか?
ーカイルス様に直接会えば、分かるかしら?ー
気が利くような人ではなかったけど、私を大切にしてくれていたから、好かれていたのだと思う。竜騎士で守護竜付きとなったのなら、騎士爵であっても何の問題も無い。私が女公爵なら、守護竜様と直接会える確率も高いから、その時に声を掛ける事ができる筈。
ー会うのが楽しみだわー
231
あなたにおすすめの小説
報われなかった姫君に、弔いの白い薔薇の花束を
さくたろう
恋愛
その国の王妃を決める舞踏会に招かれたロザリー・ベルトレードは、自分が当時の王子、そうして現王アルフォンスの婚約者であり、不遇の死を遂げた姫オフィーリアであったという前世を思い出す。
少しずつ蘇るオフィーリアの記憶に翻弄されながらも、17年前から今世まで続く因縁に、ロザリーは絡め取られていく。一方でアルフォンスもロザリーの存在から目が離せなくなり、やがて二人は再び惹かれ合うようになるが――。
20話です。小説家になろう様でも公開中です。
〖完結〗あんなに旦那様に愛されたかったはずなのに…
藍川みいな
恋愛
借金を肩代わりする事を条件に、スチュワート・デブリン侯爵と契約結婚をしたマリアンヌだったが、契約結婚を受け入れた本当の理由はスチュワートを愛していたからだった。
契約結婚の最後の日、スチュワートに「俺には愛する人がいる。」と告げられ、ショックを受ける。
そして契約期間が終わり、離婚するが…数ヶ月後、何故かスチュワートはマリアンヌを愛してるからやり直したいと言ってきた。
設定はゆるゆるの、架空の世界のお話です。
全9話で完結になります。
どうしてこうなった
棗
恋愛
親友の魔女が死ぬ直前、来世でも会いたいと願った魔女メデイアは親友に転生魔法を掛けた。が、実は親友の渾身のドッキリだったらしく、急に元気になった親友に驚いた際にうっかり転生魔法を自分に掛けてしまった。
人間に転生したメデイアはレインリリー=クリスティ伯爵令嬢となり、政略結婚相手の前妻の娘という事で後妻や異母妹、父から疎まれ使用人達からも冷遇されてきた。結婚相手のクレオン=ノーバート公爵は後妻や異母妹が流した悪女の噂を信じ、白い結婚を強制。三年後には離縁とすると宣言。魔女の鏡を見つけて親友と連絡を取り、さっさと故郷に帰りたいレインリリーからすれば好都合。
レインリリーはクレオンの愛する人が前世の自分と知っていて告げる気はないが、後に幼少期自分を助けてくれた魔女がレインリリーと知ったクレオンは今までの事を後悔し愛を囁くようになる。
※タイトルとあらすじを一部変更しました。
※なろうにも公開しています。
悪役だから仕方がないなんて言わせない!
音無砂月
恋愛
マリア・フォン・オレスト
オレスト国の第一王女として生まれた。
王女として政略結婚の為嫁いだのは隣国、シスタミナ帝国
政略結婚でも多少の期待をして嫁いだが夫には既に思い合う人が居た。
見下され、邪険にされ続けるマリアの運命は・・・・・。
えっ私人間だったんです?
ハートリオ
恋愛
生まれた時から王女アルデアの【魔力】として生き、16年。
魔力持ちとして帝国から呼ばれたアルデアと共に帝国を訪れ、気が進まないまま歓迎パーティーへ付いて行く【魔力】。
頭からスッポリと灰色ベールを被っている【魔力】は皇太子ファルコに疑惑の目を向けられて…
私が嫌いなら婚約破棄したらどうなんですか?
きららののん
恋愛
優しきおっとりでマイペースな令嬢は、太陽のように熱い王太子の側にいることを幸せに思っていた。
しかし、悪役令嬢に刃のような言葉を浴びせられ、自信の無くした令嬢は……
わたくし、悪女呼ばわりされているのですが……全力で反省しておりますの。
月白ヤトヒコ
恋愛
本日、なんの集まりかはわかりませんが、王城へ召集されておりますの。
まあ、わたくしこれでも現王太子の婚約者なので、その関連だと思うのですが……
「父上! 僕は、こんな傲慢で鼻持ちならない冷酷非道な悪女と結婚なんかしたくありません! この女は、こともあろうに権力を使って彼女を脅し、相思相愛な僕と彼女を引き離そうとしたんですよっ!? 王妃になるなら、側妃や愛妾くらいで煩く言うのは間違っているでしょうっ!?」
と、王太子が宣いました。
「どうやら、わたくし悪女にされているようですわね。でも、わたくしも反省しておりますわ」
「ハッ! やっぱりな! お前は僕のことを愛してるからな!」
「ああ、人語を解するからと人並の知性と理性を豚に求めたわたくしが悪かったのです。ごめんなさいね? もっと早く、わたくしが決断を下していれば……豚は豚同士で娶うことができたというのに」
設定はふわっと。
蔑ろにされた王妃と見限られた国王
奏千歌
恋愛
※最初に公開したプロット版はカクヨムで公開しています
国王陛下には愛する女性がいた。
彼女は陛下の初恋の相手で、陛下はずっと彼女を想い続けて、そして大切にしていた。
私は、そんな陛下と結婚した。
国と王家のために、私達は結婚しなければならなかったから、結婚すれば陛下も少しは変わるのではと期待していた。
でも結果は……私の理想を打ち砕くものだった。
そしてもう一つ。
私も陛下も知らないことがあった。
彼女のことを。彼女の正体を。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる