異世界で守護竜になりました

みん

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12 プラータ王子のお気に入り

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時間が遅かったから、3人からは軽く報告を受けた後、明日またゆっくり話を聴く事にして、今日は休むようにと下がらせた。

「キース、明日の最終日もよろしくね」
「こちらこそ、宜しくお願いします。それでは、おやすみなさいませ」

最終日の豊穣祭は日没と共に終了し、夕食は家族でゆっくり食べるのが慣例で、ホテルや宿屋以外は静かな夜を迎える事になる。

「後1日、頑張ろう!」

と、改めて気合いを入れ直してから眠りに就いた。





*竜王国王城*


「お久し振りですね。キーラン=ベルナンド侯爵……いや、今はキーランでしたか?」
「プラータ王子!」

私─魔王国第一王子プラータ─は、竜王バージル様からの連絡を受けて竜王国へとやって来た。竜王国の王城の地下牢には、魔族の元侯爵のキーラン=ベルナンドが捕らえられていた。

「たったの2年でまた動き出すとは、流石に予想外でした」

コイツは、叔父のダミアンの側近だった。あのオークションや竜王国に魔物を送り込んだ件に関わっていた──否、主犯格だ。王位に執着するだけで頭は空っぽのダミアンが、証拠を残さず悪事を働き大金を稼げていたのは、このキーランのお陰だった。ただ、2年前にキーランの関与を証明できる物が無く、完全に仕留める事ができず、暫く泳がせる事にした。魔族もまた寿命は長く、ダミアン派は一掃された為、再び動き出すのは何十年も先の話かも──と思っていたのだが。

「金欠……ですか?」

それでも、この2年掛けて何とか探り出して殆どの隠し金を回収する事ができた。だからだろう。何をするにもお金が無ければ動けない。持っていたお金も底を尽きかけた時、運良く黒色を見付けて動き出した──と言ったところだろう。

「こんなにも早く動いていただいて、ありがとうございます。愚かな最後で、貴方には似合っていますよ」
「プラータ!!くっそ────っ!!お前さえ居なければ、ダミアンを王位に就かせて私が──っ!」
「煩い口だね」

魔法でキーランの口を閉じる。

「2年前、お前達が二度もマシロに手を出した事も気に食わなかったのに、お前は今回もまた、マシロの領で悪さをしたんだ……取り引き先の情報も綺麗に吐いてもらうし、吐いたところで少しの温情も期待しない方が良いよ」
「──っ!」

私のお気に入りに手を出したのだから、手加減をするつもりもない。コイツが迎えるのは、“苦痛”と“死”のみだ。“戒めの拘束”は、本当に素晴らしいモノだった。


ーあの魔法使いを敵に回してはいけないー


竜王国ここで事情聴取をした後、お前を魔王国に連れ帰り、魔王国で私の元で裁きを受けてもらうから、今のうちに生きている事を楽しむと良いよ」
「──っ!」

ガシャガシャと鉄格子を握り締めて私を睨みつけるキーラン。何か言いたげな顔をしているが、その口が開く事は無い。マシロも、あの時は助けを求めたくても求められなかったのだ。同じ苦痛──それ以上の苦痛を味わえば良い。

「それじゃあ、また迎えに来る時まで………お元気で」

私はにっこり微笑んでから、地下牢から出た。






「事情聴取さえ済めば、直ぐに魔王国に送り届ける。それで良いか?」
「ご配慮、ありがとうございます」
「今回は、本当に運が良かった」

100年ぶりの西の守護竜の出現で、盛り上がっている西領。ただ、不思議な事に、今の竜王国にはマシロを合わせて3人の白竜が居る。その中で側衛が選んだのは異世界生まれのマシロだった。それを良く思わない者が居るらしい。

「側衛が主を違える事など、万に一つも無いのに、何も知らぬ者が口煩い事を言うのだ。この豊穣祭で問題が起これば、そこを突いて来ただろうな」

『真の守護竜ではないから、問題が起きた』と

「そんな事を言うのは、無能な馬鹿だけでしょう。実際、マシロを近くにすると、何とも言えない威圧感がありますからね。本人は無自覚ですけど、アレで守護竜じゃなければ、一体何者なのか?と訊きたいところです」

無自覚でアレだから、成竜おとなになったらどうなるのか──

「本当に、マシロは女性ですね」
「そんな理由で、ユマを怒らせる事だけはしないようにな」
「勿論、そんな馬鹿な事はしません。マシロは、私のお気に入りですから、大切に扱わせていただきます」

あのオークションで初めて会った時、か弱く脆い人間で、直ぐ死ぬのだろうと思っていたのに、私を護ろうとしてくれた、あの温もりを忘れる事は無い。マシロを嫁にするには───

が多過ぎるー

から、早々に諦めた。流石に、竜王竜人カイルス獣人レナルド魔道士由茉聖女を敵に回すような事はしたくない。

「マシロは、私の恩人ですから。私はこれで失礼しますが、アレの用が終われば、送って下さい。宜しくお願いします」
「承知した」

スッと頭を下げて挨拶をした後、私は魔王国へと転移した。







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