18 / 46
17 巻き込まれ
しおりを挟む
保護している女性が書いた文字──
カイルスさんの腕の中で寝ていた女性が、目を覚ました。彼女の瞳もやっぱり黒色だ。
「貴方は───」
「────っ!!!!」
私が声を掛けようとすると、彼女はカイルスさんから離れて、私の方へと走り寄って来た。
「「マシロ!!」」
「大丈夫だから、何もしないで!」
カイルスさんとレナルドさんからすると、彼女が私を攻撃するように見えるのかもしれないけど、その可能性は───0だ。
「ふぐぅ────っ」
彼女は走り寄って来た勢いのまま、私に飛び掛かるように抱きついてきた。ある意味では攻撃だった。それでも、後ろに倒れるのをなんとか踏ん張って彼女を抱き留めた。そのまま、よしよし─と、彼女の背中を撫でる。
「もう大丈夫だから。ここには、貴方を害そうとする人は居ないから」
「うっ………にほ………ご………わたっし……」
「うんうん。分かってるから。大丈夫大丈夫」
「う……うわー」
と、彼女は声を上げて泣き出した。
「マシロ、彼女は知り合いなのか?」
「知り合いじゃないけど、彼女がどこの国の人なのかは知ってる」
「え?」
黒色の髪と瞳
何処の国の物か分からない文字
「この人も、私と同じ国から来た人です」
日本人だ───
声を上げて沢山泣いた女性は、今度は私に抱きついたまま眠ってしまった。これで安心するのなら─と、私も離そうとはしなかった。私も、ライオン姿のリオナさんの側に居る事に安心した記憶があったから。私の側が安心すると言うのなら、喜んで側に居るだけだ。
「この世界の人達って、色んな意味でカラフルでしょう?それが怖かったりもして、同じ黒色を見ると安心するみたいな感じがあって。だから、この人も黒色のカイルスさんに安心したのかも」
「なるほど………」
アルマンさんは青色の髪で、マイラさんは金髪でイネスは水色。キースは黒髪だけど瞳が黄色だから、慣れない日本人からすればホラーに近い。カイルスさんと私は黒色の髪と瞳。レナルドさんとお母さんも黒色だから、この4人はこの人にとっては安全地帯と言えるかもしれない。
「これからの事は、目を覚ましてからだね」
レナルドさんとお母さんが居れば、直ぐには無理かもしれないけど、日本に還せるかもしれない。お母さんが帰って来たら、レナルドさんと3人で話をする時間を作らないとね。
******
そろそろ夕食の時間──と言う頃に、お母さんが帰って来た。
「茉白、大丈夫?」
「お母さん、お疲れ様。私は大丈夫」
女性は、まだ私にしがみついて寝たままだ。
「まさか、日本人だとは思わなかったわ」
誰も思わないだろう。そんなしょっちゅう召喚されたら、たまったもんじゃない。
「取り敢えず、キースにこの事をバージルさん達に報せて、色々調べてもらうようにお願いしてもらってるの。詳しい事は、この人が目を覚まして話を聞いてからになるけど」
この世界のどの国に渡って来たのか
この世界に渡って来てからどれ位経っているのか
今迄、どんな生活を送っていたのか
「茉白と同じぐらいかしら?」
「同じか、年下かな?」
顔の半分が、私の胸元で隠れているからきっちりと顔の確認はできないけど、お母さんがその顔を覗き見る。
「え?この子………」
「お母さん……知ってるの?」
「知ってるも何も………この子、あの時、私と同じバスに乗ってた子よ」
“あの時のバス”
5年前、転落事故を起こした、お母さんが乗っていたバスだ。そう言えば、行方不明者はお母さんを含めて2人居ると言っていた。
「それじゃあ、この人は5年もの間どこかに居たと言う事?」
「でも……ハッキリとは覚えていないけど、5年前とあまり変わってないわ。茉白は3年で大人っぽくなってて驚いたけど」
分からない事だらけだけど、この人が本当にその時の人なら、この人もまた自分勝手なフィンの被害者と言える。
ーフィンも、あれからどうなったのか?ー
どうなっていようとも私には関係無いし、すっかり忘れていたけど。
「あの魔法陣は不完全な物だったから、同じタイミングで巻き込まれたとしても、同じ場所に転移するとは限らなかったのかもしれないな。ある意味、生きて五体満足で辿り着けた事は奇跡に近い」
完全な魔法陣でも、その魔法陣から外れると無事に転移できるかどうか分からないと言われている。
お母さんと同じ場所に転移できていたら、この人はこんな目に遭う事もなかったのに。
「やっぱり、あの魔法陣は完璧に破壊するべきだな」
“聖女召喚”
正式なものは女神やら何やらが絡んでいて、お母さんみたいに力を付与されて保護されるから問題無いのかもしれないけど、結局それは、この世界だけの都合の良い話で、召喚された側からすれば、迷惑以外の何ものでも無い。
「時間は掛かるだろうけど、あの魔法陣は必ず破壊する」
レナルドさんの言葉に、お母さんも私も反対するとは言わなかった。
カイルスさんの腕の中で寝ていた女性が、目を覚ました。彼女の瞳もやっぱり黒色だ。
「貴方は───」
「────っ!!!!」
私が声を掛けようとすると、彼女はカイルスさんから離れて、私の方へと走り寄って来た。
「「マシロ!!」」
「大丈夫だから、何もしないで!」
カイルスさんとレナルドさんからすると、彼女が私を攻撃するように見えるのかもしれないけど、その可能性は───0だ。
「ふぐぅ────っ」
彼女は走り寄って来た勢いのまま、私に飛び掛かるように抱きついてきた。ある意味では攻撃だった。それでも、後ろに倒れるのをなんとか踏ん張って彼女を抱き留めた。そのまま、よしよし─と、彼女の背中を撫でる。
「もう大丈夫だから。ここには、貴方を害そうとする人は居ないから」
「うっ………にほ………ご………わたっし……」
「うんうん。分かってるから。大丈夫大丈夫」
「う……うわー」
と、彼女は声を上げて泣き出した。
「マシロ、彼女は知り合いなのか?」
「知り合いじゃないけど、彼女がどこの国の人なのかは知ってる」
「え?」
黒色の髪と瞳
何処の国の物か分からない文字
「この人も、私と同じ国から来た人です」
日本人だ───
声を上げて沢山泣いた女性は、今度は私に抱きついたまま眠ってしまった。これで安心するのなら─と、私も離そうとはしなかった。私も、ライオン姿のリオナさんの側に居る事に安心した記憶があったから。私の側が安心すると言うのなら、喜んで側に居るだけだ。
「この世界の人達って、色んな意味でカラフルでしょう?それが怖かったりもして、同じ黒色を見ると安心するみたいな感じがあって。だから、この人も黒色のカイルスさんに安心したのかも」
「なるほど………」
アルマンさんは青色の髪で、マイラさんは金髪でイネスは水色。キースは黒髪だけど瞳が黄色だから、慣れない日本人からすればホラーに近い。カイルスさんと私は黒色の髪と瞳。レナルドさんとお母さんも黒色だから、この4人はこの人にとっては安全地帯と言えるかもしれない。
「これからの事は、目を覚ましてからだね」
レナルドさんとお母さんが居れば、直ぐには無理かもしれないけど、日本に還せるかもしれない。お母さんが帰って来たら、レナルドさんと3人で話をする時間を作らないとね。
******
そろそろ夕食の時間──と言う頃に、お母さんが帰って来た。
「茉白、大丈夫?」
「お母さん、お疲れ様。私は大丈夫」
女性は、まだ私にしがみついて寝たままだ。
「まさか、日本人だとは思わなかったわ」
誰も思わないだろう。そんなしょっちゅう召喚されたら、たまったもんじゃない。
「取り敢えず、キースにこの事をバージルさん達に報せて、色々調べてもらうようにお願いしてもらってるの。詳しい事は、この人が目を覚まして話を聞いてからになるけど」
この世界のどの国に渡って来たのか
この世界に渡って来てからどれ位経っているのか
今迄、どんな生活を送っていたのか
「茉白と同じぐらいかしら?」
「同じか、年下かな?」
顔の半分が、私の胸元で隠れているからきっちりと顔の確認はできないけど、お母さんがその顔を覗き見る。
「え?この子………」
「お母さん……知ってるの?」
「知ってるも何も………この子、あの時、私と同じバスに乗ってた子よ」
“あの時のバス”
5年前、転落事故を起こした、お母さんが乗っていたバスだ。そう言えば、行方不明者はお母さんを含めて2人居ると言っていた。
「それじゃあ、この人は5年もの間どこかに居たと言う事?」
「でも……ハッキリとは覚えていないけど、5年前とあまり変わってないわ。茉白は3年で大人っぽくなってて驚いたけど」
分からない事だらけだけど、この人が本当にその時の人なら、この人もまた自分勝手なフィンの被害者と言える。
ーフィンも、あれからどうなったのか?ー
どうなっていようとも私には関係無いし、すっかり忘れていたけど。
「あの魔法陣は不完全な物だったから、同じタイミングで巻き込まれたとしても、同じ場所に転移するとは限らなかったのかもしれないな。ある意味、生きて五体満足で辿り着けた事は奇跡に近い」
完全な魔法陣でも、その魔法陣から外れると無事に転移できるかどうか分からないと言われている。
お母さんと同じ場所に転移できていたら、この人はこんな目に遭う事もなかったのに。
「やっぱり、あの魔法陣は完璧に破壊するべきだな」
“聖女召喚”
正式なものは女神やら何やらが絡んでいて、お母さんみたいに力を付与されて保護されるから問題無いのかもしれないけど、結局それは、この世界だけの都合の良い話で、召喚された側からすれば、迷惑以外の何ものでも無い。
「時間は掛かるだろうけど、あの魔法陣は必ず破壊する」
レナルドさんの言葉に、お母さんも私も反対するとは言わなかった。
221
あなたにおすすめの小説
報われなかった姫君に、弔いの白い薔薇の花束を
さくたろう
恋愛
その国の王妃を決める舞踏会に招かれたロザリー・ベルトレードは、自分が当時の王子、そうして現王アルフォンスの婚約者であり、不遇の死を遂げた姫オフィーリアであったという前世を思い出す。
少しずつ蘇るオフィーリアの記憶に翻弄されながらも、17年前から今世まで続く因縁に、ロザリーは絡め取られていく。一方でアルフォンスもロザリーの存在から目が離せなくなり、やがて二人は再び惹かれ合うようになるが――。
20話です。小説家になろう様でも公開中です。
〖完結〗あんなに旦那様に愛されたかったはずなのに…
藍川みいな
恋愛
借金を肩代わりする事を条件に、スチュワート・デブリン侯爵と契約結婚をしたマリアンヌだったが、契約結婚を受け入れた本当の理由はスチュワートを愛していたからだった。
契約結婚の最後の日、スチュワートに「俺には愛する人がいる。」と告げられ、ショックを受ける。
そして契約期間が終わり、離婚するが…数ヶ月後、何故かスチュワートはマリアンヌを愛してるからやり直したいと言ってきた。
設定はゆるゆるの、架空の世界のお話です。
全9話で完結になります。
どうしてこうなった
棗
恋愛
親友の魔女が死ぬ直前、来世でも会いたいと願った魔女メデイアは親友に転生魔法を掛けた。が、実は親友の渾身のドッキリだったらしく、急に元気になった親友に驚いた際にうっかり転生魔法を自分に掛けてしまった。
人間に転生したメデイアはレインリリー=クリスティ伯爵令嬢となり、政略結婚相手の前妻の娘という事で後妻や異母妹、父から疎まれ使用人達からも冷遇されてきた。結婚相手のクレオン=ノーバート公爵は後妻や異母妹が流した悪女の噂を信じ、白い結婚を強制。三年後には離縁とすると宣言。魔女の鏡を見つけて親友と連絡を取り、さっさと故郷に帰りたいレインリリーからすれば好都合。
レインリリーはクレオンの愛する人が前世の自分と知っていて告げる気はないが、後に幼少期自分を助けてくれた魔女がレインリリーと知ったクレオンは今までの事を後悔し愛を囁くようになる。
※タイトルとあらすじを一部変更しました。
※なろうにも公開しています。
悪役だから仕方がないなんて言わせない!
音無砂月
恋愛
マリア・フォン・オレスト
オレスト国の第一王女として生まれた。
王女として政略結婚の為嫁いだのは隣国、シスタミナ帝国
政略結婚でも多少の期待をして嫁いだが夫には既に思い合う人が居た。
見下され、邪険にされ続けるマリアの運命は・・・・・。
えっ私人間だったんです?
ハートリオ
恋愛
生まれた時から王女アルデアの【魔力】として生き、16年。
魔力持ちとして帝国から呼ばれたアルデアと共に帝国を訪れ、気が進まないまま歓迎パーティーへ付いて行く【魔力】。
頭からスッポリと灰色ベールを被っている【魔力】は皇太子ファルコに疑惑の目を向けられて…
私が嫌いなら婚約破棄したらどうなんですか?
きららののん
恋愛
優しきおっとりでマイペースな令嬢は、太陽のように熱い王太子の側にいることを幸せに思っていた。
しかし、悪役令嬢に刃のような言葉を浴びせられ、自信の無くした令嬢は……
わたくし、悪女呼ばわりされているのですが……全力で反省しておりますの。
月白ヤトヒコ
恋愛
本日、なんの集まりかはわかりませんが、王城へ召集されておりますの。
まあ、わたくしこれでも現王太子の婚約者なので、その関連だと思うのですが……
「父上! 僕は、こんな傲慢で鼻持ちならない冷酷非道な悪女と結婚なんかしたくありません! この女は、こともあろうに権力を使って彼女を脅し、相思相愛な僕と彼女を引き離そうとしたんですよっ!? 王妃になるなら、側妃や愛妾くらいで煩く言うのは間違っているでしょうっ!?」
と、王太子が宣いました。
「どうやら、わたくし悪女にされているようですわね。でも、わたくしも反省しておりますわ」
「ハッ! やっぱりな! お前は僕のことを愛してるからな!」
「ああ、人語を解するからと人並の知性と理性を豚に求めたわたくしが悪かったのです。ごめんなさいね? もっと早く、わたくしが決断を下していれば……豚は豚同士で娶うことができたというのに」
設定はふわっと。
蔑ろにされた王妃と見限られた国王
奏千歌
恋愛
※最初に公開したプロット版はカクヨムで公開しています
国王陛下には愛する女性がいた。
彼女は陛下の初恋の相手で、陛下はずっと彼女を想い続けて、そして大切にしていた。
私は、そんな陛下と結婚した。
国と王家のために、私達は結婚しなければならなかったから、結婚すれば陛下も少しは変わるのではと期待していた。
でも結果は……私の理想を打ち砕くものだった。
そしてもう一つ。
私も陛下も知らないことがあった。
彼女のことを。彼女の正体を。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる