異世界で守護竜になりました

みん

文字の大きさ
21 / 46

20 白竜

しおりを挟む
「ジェナ、何処か行きたい店はあるか?」
「最近、髪が長くてバサバサになるから、髪留めとか見てみたいかな?」
「なら、雑貨屋とアクセサリー店を覗いてみるか…」


今日の私は“ジェナ”で、カイルスさんと2人で街に降りて来た。以前、一緒にケーキを食べに行こうと約束をしてから4ヶ月が経ち、ようやく実現できたのだ。その4ヶ月の間に、色々と変わった事もあった。
先ずは、芽依さんがレナルドさんの養子になった事。あれからバージルさんに相談すると、やっぱり由茉聖女の養子になるのは難しいとの事だった。レナルドさんは、竜王国に住んではいるけど、国籍はオールステニアの元魔道士。今は一介の子爵でしかないから、芽依さんをすんなり養子に迎える事ができた。

『養子になったから、元の世界に還れない訳じゃない。還れる方法が見付かって、君が望むなら還れば良いから』

と言うレナルドさんの言葉に、芽依さんは泣きながら頷いた。レナルドさんも芽依さんも黒色の髪と瞳だから、傍から見れば父娘に見える。丁度良い縁組みだったのかもしれない。ただ、レナルドさんは結婚願望は無かったのか?血の繋がらない子持ちなんて、結婚相手としてはマイナスになる。

ーまぁ、お母さんが居るから良いけどー


そして、そんな芽依さんとリシャールは、どうやら良い仲な関係になっているそうだ。時々、2人で街に降りてデートをしているらしい。リシャールも芽依さんも笑顔が増えて来て、私も嬉しい限りだ。

ーそのうち、2人から「お姉さん」とか呼ばれたいー

リシャールと芽依さん、レナルドさんとお母さんが結婚したら、それが夢ではなくなって現実となる。

「ふへっ………」
「俺と2人で居て、他の考え事でもしてる?」
「はい!?」
「それなら、もっと俺を意識してもらうようにしないとな?」
「ふぁ?」

軽く繋いでいただけの手が、指を絡ませた“恋人繋ぎ”になって、その手を持ち上げて、私の手の甲にキスをするカイルスさん。

ー色気が半端無いけど!?ー

「本当に、ジェナには大袈裟にしないと伝わらないみたいだな」
「はい!?」
「手加減不要と言う事だ」
「何が!?」

と訊いたところで、カイルスさんは微笑むだけで何も言う事はなかった。



それから、雑貨屋とアクセサリー店で買い物をした後、ランチをする為に、アルマンさんお勧めのお店にやって来た。しかも、アルマンさんが予約してくれていたようで、待ち時間無く入る事ができた。ここでのお勧めも魚料理だった。このお店にもデザートはあったけど、今日は約束していたお店でケーキを食べる予定だから、デザートは注文せず、食事を終えると直ぐに店を出た。

「今のお店のデザートも気になる…」
「なら、次はデザート迄食べよう」

サラリと次の約束を口にするカイルスさん。女性慣れしている──のかな?それなりの良い年齢だから、過去に恋人の1人や2人居てもおかしくはない。

「ジェナは、もう直ぐにケーキが食べたい?それとも──」

バサッ

カイルスさんの話の途中で、私達の近くの上空で羽ばたきの音がして見上げると───

「白竜?」
「…………」

その白竜はゆっくりと下りて来て、着地する前にスルスルと人の姿になった。

竜王国には、私を含めて3人の白竜が居る。1人は“お婆さん”と呼ばれる程の年齢で、南領の辺境地で余生を過ごしているそうで、後の1人はこの西領に居ると言っていた。この人がそうなんだろう。白竜の姿も綺麗だったけど、人の姿になっても綺麗な人だ。髪は白に近い銀髪で、瞳は琥珀色。誰もが見惚れるような美女だ。

「カイルス様、お久し振りです」
「お久し振りです」

どうやら、2人は知り合いのようだ。

「遅くなったけど、守護竜様の近衛になられたそうで……おめでとうございます」
「ありがとうございます」
「久し振りに、一緒にお茶でもどうかしら?」
「折角のお誘いですが、予定がありますから」

そう言ってお誘いを断ると、カイルスさんはまた、私の腰に手を回して引き寄せた。

ー何で!?ー

と、内心焦っているけど、何とか表情だけは崩さないように微笑んだ。

「あら、お連れが居たのね。気付かなくてごめんなさい。私は、ジャスミーヌ=ハイエットよ」
「私は、ジェナです」

ジャスミーヌ=ハイエット

竜王国の公爵だ。亡くなった公爵だった夫君の跡を継いで、夫人が公爵になった筈。

「家名は?まさか……平民?」

鳥井家名はあるけど、お忍び中だから伏せておく。

「平民だとしても、何の問題もありませんから。それでは、これで失礼します」
「そんな改まった口調じゃなくて良いわ。それに、挨拶をしただけで直ぐに去ってしまうなんて、少し寂しいわ。一度は婚約していた仲なのだから、もう少し話をしましょう?」
「………それは過去の話で、もう私と貴方の縁は切れてますから」

元婚約者──

カイスルさんの元婚約者は、私と同じ白竜だった。


しおりを挟む
感想 9

あなたにおすすめの小説

〖完結〗あんなに旦那様に愛されたかったはずなのに…

藍川みいな
恋愛
借金を肩代わりする事を条件に、スチュワート・デブリン侯爵と契約結婚をしたマリアンヌだったが、契約結婚を受け入れた本当の理由はスチュワートを愛していたからだった。 契約結婚の最後の日、スチュワートに「俺には愛する人がいる。」と告げられ、ショックを受ける。 そして契約期間が終わり、離婚するが…数ヶ月後、何故かスチュワートはマリアンヌを愛してるからやり直したいと言ってきた。 設定はゆるゆるの、架空の世界のお話です。 全9話で完結になります。

報われなかった姫君に、弔いの白い薔薇の花束を

さくたろう
恋愛
 その国の王妃を決める舞踏会に招かれたロザリー・ベルトレードは、自分が当時の王子、そうして現王アルフォンスの婚約者であり、不遇の死を遂げた姫オフィーリアであったという前世を思い出す。  少しずつ蘇るオフィーリアの記憶に翻弄されながらも、17年前から今世まで続く因縁に、ロザリーは絡め取られていく。一方でアルフォンスもロザリーの存在から目が離せなくなり、やがて二人は再び惹かれ合うようになるが――。 20話です。小説家になろう様でも公開中です。

どうしてこうなった

恋愛
親友の魔女が死ぬ直前、来世でも会いたいと願った魔女メデイアは親友に転生魔法を掛けた。が、実は親友の渾身のドッキリだったらしく、急に元気になった親友に驚いた際にうっかり転生魔法を自分に掛けてしまった。 人間に転生したメデイアはレインリリー=クリスティ伯爵令嬢となり、政略結婚相手の前妻の娘という事で後妻や異母妹、父から疎まれ使用人達からも冷遇されてきた。結婚相手のクレオン=ノーバート公爵は後妻や異母妹が流した悪女の噂を信じ、白い結婚を強制。三年後には離縁とすると宣言。魔女の鏡を見つけて親友と連絡を取り、さっさと故郷に帰りたいレインリリーからすれば好都合。 レインリリーはクレオンの愛する人が前世の自分と知っていて告げる気はないが、後に幼少期自分を助けてくれた魔女がレインリリーと知ったクレオンは今までの事を後悔し愛を囁くようになる。 ※タイトルとあらすじを一部変更しました。 ※なろうにも公開しています。

悪役だから仕方がないなんて言わせない!

音無砂月
恋愛
マリア・フォン・オレスト オレスト国の第一王女として生まれた。 王女として政略結婚の為嫁いだのは隣国、シスタミナ帝国 政略結婚でも多少の期待をして嫁いだが夫には既に思い合う人が居た。 見下され、邪険にされ続けるマリアの運命は・・・・・。

えっ私人間だったんです?

ハートリオ
恋愛
生まれた時から王女アルデアの【魔力】として生き、16年。 魔力持ちとして帝国から呼ばれたアルデアと共に帝国を訪れ、気が進まないまま歓迎パーティーへ付いて行く【魔力】。 頭からスッポリと灰色ベールを被っている【魔力】は皇太子ファルコに疑惑の目を向けられて…

私が嫌いなら婚約破棄したらどうなんですか?

きららののん
恋愛
優しきおっとりでマイペースな令嬢は、太陽のように熱い王太子の側にいることを幸せに思っていた。 しかし、悪役令嬢に刃のような言葉を浴びせられ、自信の無くした令嬢は……

蔑ろにされた王妃と見限られた国王

奏千歌
恋愛
※最初に公開したプロット版はカクヨムで公開しています 国王陛下には愛する女性がいた。 彼女は陛下の初恋の相手で、陛下はずっと彼女を想い続けて、そして大切にしていた。 私は、そんな陛下と結婚した。 国と王家のために、私達は結婚しなければならなかったから、結婚すれば陛下も少しは変わるのではと期待していた。 でも結果は……私の理想を打ち砕くものだった。 そしてもう一つ。 私も陛下も知らないことがあった。 彼女のことを。彼女の正体を。

わたくし、悪女呼ばわりされているのですが……全力で反省しておりますの。

月白ヤトヒコ
恋愛
本日、なんの集まりかはわかりませんが、王城へ召集されておりますの。 まあ、わたくしこれでも現王太子の婚約者なので、その関連だと思うのですが…… 「父上! 僕は、こんな傲慢で鼻持ちならない冷酷非道な悪女と結婚なんかしたくありません! この女は、こともあろうに権力を使って彼女を脅し、相思相愛な僕と彼女を引き離そうとしたんですよっ!? 王妃になるなら、側妃や愛妾くらいで煩く言うのは間違っているでしょうっ!?」 と、王太子が宣いました。 「どうやら、わたくし悪女にされているようですわね。でも、わたくしも反省しておりますわ」 「ハッ! やっぱりな! お前は僕のことを愛してるからな!」 「ああ、人語を解するからと人並の知性と理性を豚に求めたわたくしが悪かったのです。ごめんなさいね? もっと早く、わたくしが決断を下していれば……豚は豚同士で娶うことができたというのに」 設定はふわっと。

処理中です...