44 / 46
43 増える幸せ
しおりを挟む
「竜人だから体力があるって、誰が言ったの?」
「それは本当の事だからな。竜人は、成竜になると病気になる事も滅多に無い」
「獣人は?」
「俺は鳥獣人だけど、竜人の血も引き継いでいるから、普通の獣人より体力はある」
ーそれは、身をって知りましたー
「マシロは、人間として育った時間の方が長いから、体力もあまり無いのかもしれないな」
「…………」
ーカイルスさんのせいでは?ー
なんて、口が裂けても言わない。そんな事を言おうものなら、また『煽ってる』と言われて攻められるだけだから。カイルスさんの目には、私が何をしても可愛く見えて煽ってるように見えるらしい。優しいけど優しく無いカイルスさんからの攻めは、一度で終わる事がなかった。ベッドから出る事ができない日もあった。今なら、芽依さんに蜜月の事を訊いた時、遠い目をした理由がよく分かる。しかも、芽依さんは普通の人間でリシャールは純血の竜人だから、私よりももっと大変だったと思う。
「お風呂に入る?入るなら、連れて行くから」
「ひっ……1人で入れるから!2人で行ったら……入るだけで済まないから!!」
「それは残念」
ー『残念』じゃない!ー
何故カイルスさんは元気なのか分からない。
『俺がどれだけマシロが好きなのか、この1ヶ月でしっかり分かってもらわないとな』
と言われて始まった蜜月。しっかりハッキリ分かりました。何があっても疑いません。隙あらば熱を注がれて、熱の篭った瞳を向けられてしまえば、疑う余地すら無いし、そもそもカイルスさんからの想いを疑った事も無い。
「本当に……子供ができててもおかしくない…よね……」
「それなら嬉しいけどね」
「──っ!?」
と、バックハグ状態でベッドの上に座っている私達。カイルスさんの手が、私のお腹から胸を撫で上げる。
「もっ…もう無理だからね!?あ…明日で蜜月明けだからね!?」
明日で蜜月が終わり、明後日から仕事復帰予定の私達。今日はもう体がグッタリ状態な私なのに、カイルスさんは楽しそうに微笑んでいる。この笑顔はヤバいと知っている。
「明けは明日だから、大丈夫」
「大丈夫じゃないから!」
「マシロ、愛してる」
「っ!!!!!」
そんな声で言われて、そんな瞳を向けられると、私も抗えなくなってしまうのだから、どうしようもない。
「カイルスさんの……バカ!」
ささやかな抵抗ではない抵抗を口にすると、カイルスさんは嬉しそうに笑ってから、また私を絡めとって行った。
********
「お姉さん、お疲れ様でした」
「ありがとう、芽依さん」
「今日はゆっくりしなさい」
「ありがとう……お母さん………」
ー居た堪れないー
蜜月が明けた翌日。カイルスさんは復帰の報告を兼ねて王城に行ったけど、私はベッドから出る事ができず、今日はお母さんと芽依さんが私を心配して来てくれた。病気ではなく、理由が理由だから、何とも恥ずかしい気持ちでいっぱいだ。
「ある意味、ポーションが無かった方が良かったのかしら?」
「お母さん……」
いや、回復のポーションが無かったところで、手加減されたとは思えない──なんて、恥ずかしくて言えないけど。
「回復ポーションは、本当にありがたかったですよ」
と、またまた遠い目をしながら言うのは芽依さん。詳しくは訊かないし、言いたい事はよく分かる。ただ、あのリシャールも………普通の竜人の男性だったんだなぁ……と感慨深い気持ちになった。
「なら良かったけど……本当に、竜人や獣人との結婚は大変なのね……。レナルドがまた泣いてたわ」
父性本能爆発中のレナルドさん。レナルドさんの話をする時のお母さんは、とても幸せそうな顔をしている。それが、私にとっては何よりも嬉しい。
「仕事復帰したら、暫くはバタバタすると思うから、落ち着いたらお母さんとレナルドさん会いに行っても良い?」
「あ、それなら、私とリシャールも合わせて一緒に行っても良いですか?」
「勿論よ。レナルドも喜ぶわ」
3人で笑い合う。家族が増えると言うのは、嬉しくて幸せな事だなと思う。この幸せが、いつまでも続きますように───
*その頃の王城にて*
「やっぱり、マシロは来なかった……来れなかったんだな」
「はい」
そう言って笑っているのは竜王陛下だ。
「後で、レナルドに小言を言われるだろうけど、素直に受けてやってくれ」
「勿論です」
それぐらい、いくらでも受け入れられる。
「改めて、おめでとう、カイルス。これからも、マシロと仲睦まじく過ごしてくれ。そして、護ってやってくれ」
「ありがとうございます」
それから少し話をした後、謁見の間を出て歩いていると、レナルドに捕まり、小言を食らった。
******
離宮に帰って来たのは、夕食の時間の少し前で、ユマ様とメイが帰った後で、マシロはベッドで寝ていた。そろそろ夕食だから起こした方が良いか?と思っていると、丁度マシロが目を覚ました。
「カイルスさん、おかえりなさい」
「ただいま。大丈夫?夕食はどうする?」
「ここで食べる……」
むうっ─と、口を尖らせるマシロ。『大丈夫じゃない!誰のせいだと!』と、言いたいのを我慢しているんだろう。
「一緒に食べよう。持って来るから待ってて」
「ありがとう」
頬に軽くキスをすると、マシロがふわりと微笑んだ。
それから5年後。西の守護竜に、白色と黒色の鷲の双子が生まれ、西領は祝賀ムードに包まれた。
「それは本当の事だからな。竜人は、成竜になると病気になる事も滅多に無い」
「獣人は?」
「俺は鳥獣人だけど、竜人の血も引き継いでいるから、普通の獣人より体力はある」
ーそれは、身をって知りましたー
「マシロは、人間として育った時間の方が長いから、体力もあまり無いのかもしれないな」
「…………」
ーカイルスさんのせいでは?ー
なんて、口が裂けても言わない。そんな事を言おうものなら、また『煽ってる』と言われて攻められるだけだから。カイルスさんの目には、私が何をしても可愛く見えて煽ってるように見えるらしい。優しいけど優しく無いカイルスさんからの攻めは、一度で終わる事がなかった。ベッドから出る事ができない日もあった。今なら、芽依さんに蜜月の事を訊いた時、遠い目をした理由がよく分かる。しかも、芽依さんは普通の人間でリシャールは純血の竜人だから、私よりももっと大変だったと思う。
「お風呂に入る?入るなら、連れて行くから」
「ひっ……1人で入れるから!2人で行ったら……入るだけで済まないから!!」
「それは残念」
ー『残念』じゃない!ー
何故カイルスさんは元気なのか分からない。
『俺がどれだけマシロが好きなのか、この1ヶ月でしっかり分かってもらわないとな』
と言われて始まった蜜月。しっかりハッキリ分かりました。何があっても疑いません。隙あらば熱を注がれて、熱の篭った瞳を向けられてしまえば、疑う余地すら無いし、そもそもカイルスさんからの想いを疑った事も無い。
「本当に……子供ができててもおかしくない…よね……」
「それなら嬉しいけどね」
「──っ!?」
と、バックハグ状態でベッドの上に座っている私達。カイルスさんの手が、私のお腹から胸を撫で上げる。
「もっ…もう無理だからね!?あ…明日で蜜月明けだからね!?」
明日で蜜月が終わり、明後日から仕事復帰予定の私達。今日はもう体がグッタリ状態な私なのに、カイルスさんは楽しそうに微笑んでいる。この笑顔はヤバいと知っている。
「明けは明日だから、大丈夫」
「大丈夫じゃないから!」
「マシロ、愛してる」
「っ!!!!!」
そんな声で言われて、そんな瞳を向けられると、私も抗えなくなってしまうのだから、どうしようもない。
「カイルスさんの……バカ!」
ささやかな抵抗ではない抵抗を口にすると、カイルスさんは嬉しそうに笑ってから、また私を絡めとって行った。
********
「お姉さん、お疲れ様でした」
「ありがとう、芽依さん」
「今日はゆっくりしなさい」
「ありがとう……お母さん………」
ー居た堪れないー
蜜月が明けた翌日。カイルスさんは復帰の報告を兼ねて王城に行ったけど、私はベッドから出る事ができず、今日はお母さんと芽依さんが私を心配して来てくれた。病気ではなく、理由が理由だから、何とも恥ずかしい気持ちでいっぱいだ。
「ある意味、ポーションが無かった方が良かったのかしら?」
「お母さん……」
いや、回復のポーションが無かったところで、手加減されたとは思えない──なんて、恥ずかしくて言えないけど。
「回復ポーションは、本当にありがたかったですよ」
と、またまた遠い目をしながら言うのは芽依さん。詳しくは訊かないし、言いたい事はよく分かる。ただ、あのリシャールも………普通の竜人の男性だったんだなぁ……と感慨深い気持ちになった。
「なら良かったけど……本当に、竜人や獣人との結婚は大変なのね……。レナルドがまた泣いてたわ」
父性本能爆発中のレナルドさん。レナルドさんの話をする時のお母さんは、とても幸せそうな顔をしている。それが、私にとっては何よりも嬉しい。
「仕事復帰したら、暫くはバタバタすると思うから、落ち着いたらお母さんとレナルドさん会いに行っても良い?」
「あ、それなら、私とリシャールも合わせて一緒に行っても良いですか?」
「勿論よ。レナルドも喜ぶわ」
3人で笑い合う。家族が増えると言うのは、嬉しくて幸せな事だなと思う。この幸せが、いつまでも続きますように───
*その頃の王城にて*
「やっぱり、マシロは来なかった……来れなかったんだな」
「はい」
そう言って笑っているのは竜王陛下だ。
「後で、レナルドに小言を言われるだろうけど、素直に受けてやってくれ」
「勿論です」
それぐらい、いくらでも受け入れられる。
「改めて、おめでとう、カイルス。これからも、マシロと仲睦まじく過ごしてくれ。そして、護ってやってくれ」
「ありがとうございます」
それから少し話をした後、謁見の間を出て歩いていると、レナルドに捕まり、小言を食らった。
******
離宮に帰って来たのは、夕食の時間の少し前で、ユマ様とメイが帰った後で、マシロはベッドで寝ていた。そろそろ夕食だから起こした方が良いか?と思っていると、丁度マシロが目を覚ました。
「カイルスさん、おかえりなさい」
「ただいま。大丈夫?夕食はどうする?」
「ここで食べる……」
むうっ─と、口を尖らせるマシロ。『大丈夫じゃない!誰のせいだと!』と、言いたいのを我慢しているんだろう。
「一緒に食べよう。持って来るから待ってて」
「ありがとう」
頬に軽くキスをすると、マシロがふわりと微笑んだ。
それから5年後。西の守護竜に、白色と黒色の鷲の双子が生まれ、西領は祝賀ムードに包まれた。
268
あなたにおすすめの小説
報われなかった姫君に、弔いの白い薔薇の花束を
さくたろう
恋愛
その国の王妃を決める舞踏会に招かれたロザリー・ベルトレードは、自分が当時の王子、そうして現王アルフォンスの婚約者であり、不遇の死を遂げた姫オフィーリアであったという前世を思い出す。
少しずつ蘇るオフィーリアの記憶に翻弄されながらも、17年前から今世まで続く因縁に、ロザリーは絡め取られていく。一方でアルフォンスもロザリーの存在から目が離せなくなり、やがて二人は再び惹かれ合うようになるが――。
20話です。小説家になろう様でも公開中です。
〖完結〗あんなに旦那様に愛されたかったはずなのに…
藍川みいな
恋愛
借金を肩代わりする事を条件に、スチュワート・デブリン侯爵と契約結婚をしたマリアンヌだったが、契約結婚を受け入れた本当の理由はスチュワートを愛していたからだった。
契約結婚の最後の日、スチュワートに「俺には愛する人がいる。」と告げられ、ショックを受ける。
そして契約期間が終わり、離婚するが…数ヶ月後、何故かスチュワートはマリアンヌを愛してるからやり直したいと言ってきた。
設定はゆるゆるの、架空の世界のお話です。
全9話で完結になります。
どうしてこうなった
棗
恋愛
親友の魔女が死ぬ直前、来世でも会いたいと願った魔女メデイアは親友に転生魔法を掛けた。が、実は親友の渾身のドッキリだったらしく、急に元気になった親友に驚いた際にうっかり転生魔法を自分に掛けてしまった。
人間に転生したメデイアはレインリリー=クリスティ伯爵令嬢となり、政略結婚相手の前妻の娘という事で後妻や異母妹、父から疎まれ使用人達からも冷遇されてきた。結婚相手のクレオン=ノーバート公爵は後妻や異母妹が流した悪女の噂を信じ、白い結婚を強制。三年後には離縁とすると宣言。魔女の鏡を見つけて親友と連絡を取り、さっさと故郷に帰りたいレインリリーからすれば好都合。
レインリリーはクレオンの愛する人が前世の自分と知っていて告げる気はないが、後に幼少期自分を助けてくれた魔女がレインリリーと知ったクレオンは今までの事を後悔し愛を囁くようになる。
※タイトルとあらすじを一部変更しました。
※なろうにも公開しています。
悪役だから仕方がないなんて言わせない!
音無砂月
恋愛
マリア・フォン・オレスト
オレスト国の第一王女として生まれた。
王女として政略結婚の為嫁いだのは隣国、シスタミナ帝国
政略結婚でも多少の期待をして嫁いだが夫には既に思い合う人が居た。
見下され、邪険にされ続けるマリアの運命は・・・・・。
えっ私人間だったんです?
ハートリオ
恋愛
生まれた時から王女アルデアの【魔力】として生き、16年。
魔力持ちとして帝国から呼ばれたアルデアと共に帝国を訪れ、気が進まないまま歓迎パーティーへ付いて行く【魔力】。
頭からスッポリと灰色ベールを被っている【魔力】は皇太子ファルコに疑惑の目を向けられて…
私が嫌いなら婚約破棄したらどうなんですか?
きららののん
恋愛
優しきおっとりでマイペースな令嬢は、太陽のように熱い王太子の側にいることを幸せに思っていた。
しかし、悪役令嬢に刃のような言葉を浴びせられ、自信の無くした令嬢は……
わたくし、悪女呼ばわりされているのですが……全力で反省しておりますの。
月白ヤトヒコ
恋愛
本日、なんの集まりかはわかりませんが、王城へ召集されておりますの。
まあ、わたくしこれでも現王太子の婚約者なので、その関連だと思うのですが……
「父上! 僕は、こんな傲慢で鼻持ちならない冷酷非道な悪女と結婚なんかしたくありません! この女は、こともあろうに権力を使って彼女を脅し、相思相愛な僕と彼女を引き離そうとしたんですよっ!? 王妃になるなら、側妃や愛妾くらいで煩く言うのは間違っているでしょうっ!?」
と、王太子が宣いました。
「どうやら、わたくし悪女にされているようですわね。でも、わたくしも反省しておりますわ」
「ハッ! やっぱりな! お前は僕のことを愛してるからな!」
「ああ、人語を解するからと人並の知性と理性を豚に求めたわたくしが悪かったのです。ごめんなさいね? もっと早く、わたくしが決断を下していれば……豚は豚同士で娶うことができたというのに」
設定はふわっと。
蔑ろにされた王妃と見限られた国王
奏千歌
恋愛
※最初に公開したプロット版はカクヨムで公開しています
国王陛下には愛する女性がいた。
彼女は陛下の初恋の相手で、陛下はずっと彼女を想い続けて、そして大切にしていた。
私は、そんな陛下と結婚した。
国と王家のために、私達は結婚しなければならなかったから、結婚すれば陛下も少しは変わるのではと期待していた。
でも結果は……私の理想を打ち砕くものだった。
そしてもう一つ。
私も陛下も知らないことがあった。
彼女のことを。彼女の正体を。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる