異世界で守護竜になりました

みん

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45 東西南北の側衛

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南の側衛カーミン


私は、南の守護竜ローゼ様の側衛で狐獣人。

ローゼ様を初めて目にした時、涙が溢れ出した。空虚だった心が満たされ、歓喜で体が震えた。

『我、“南の側衛”カーミンが、我の唯一である“南の主”赤竜ローゼ様を、謹んでお迎え申し上げます』

あの時の事は一生忘れる事は無い。

側衛として守護竜を選び迎えると、私のオレンジ色だった毛並みは、主となったローゼ様と同じ赤色になった。そして、ローゼ様が火を扱う竜人だからか、私が火に触れても火傷をする事がなくなった。

ローゼ様は、守護竜になってからは更に竜力が強くなった。そして───

「アーロン卿から手紙が来てます」
「後で読むから、そこに置いといて」
「ビラン卿から、贈り物が届いています」
「“贈り物は不要だ”と、送り返してちょうだい」
「レイズ卿から───」

恋愛自由主義者となった。

『恋人や番や結婚相手に縛られないなんて、素敵過ぎるじゃない!!』

ローゼ様は、守護竜に選ばれた事よりも、男性に縛られなくなった事を喜んでいた。それも当たり前と言えば当たり前の事だった。

ローゼ様には兄が居て、その兄が嫡子となったが、どちらかと言えば妹のローゼ様の方が有能だった。それを妬んだ兄から、とんでもない縁談を持ちかけられていたのだ。

ーとは言え、弾け過ぎだけどー

それでも、ローゼ様は侍らせている男達から贈り物を受け取った事は一度も無い。自由な人でありながら、線引きはしっかりしているローゼ様。それでも、いつかは心から信頼し合って、安らぎとなる伴侶が現れれば良いな──と願っている。






東の側衛アヌル


私は、東の守護竜ニーロン様の側衛で狼獣人。

今居る4人の守護竜の最年長者であり、守護竜となる前から妻子持ちだった為、東の離宮には奥様も住んでいる。息子は結婚して住まいは別で、ニーロン様の孫も既に生まれている。
親子共に竜心を交わして夫婦となった恋愛結婚で、夫婦仲はとても良い────



普段生真面目なニーロン様だが、奥様を目にすれば側を離れようともせず、常に側に置き甘え倒す。構ってもらえない時はこの世の終わりか?と思う程項垂れ、奥様が頭を撫でるだけでご機嫌復活。こんなニーロン様を、他の守護竜様達が知れば驚くだろう。


『私も、マシロ様とお茶がしたかったわ』

マシロ様が浄化巡りで東の離宮に来た時、奥様は挨拶しただけで、それ以降はマシロ様とは会う事すらできなかった。何故なら、ニーロン様が、カイルス様とアルマン様とキースに、奥様を会わせたくなかったから。奥様の視界に自分以外の男を映したくなかったからだ。しかも、奥様はマシロ様とお茶をするのを楽しみにしていたのに、ニーロン様は奥様がようにしてしまったのだ。おまけに、見送りもできなかったから、奥様から2日間無視されて、抜け殻になっていた。

“体調、大丈夫ですか?お大事になさって下さい”

と、浄化巡りの最中にも関わらず、マシロ様から花とポーションが届けられ、そのお陰で奥様の機嫌が良くなり、ニーロン様も赦された。

『必ずマシロには、この恩を返さないと』

本当に、年長者なんだろうか?マシロ様の方がよくできている。キースが褒めちぎるのも分かる。20代で成竜になったマシロ様。色んな意味で、これからが楽しみだ。






北の側衛ネグロ


私は、北の守護竜バージル様の側衛でジャガー獣人。

私の主は竜王でもある。黒竜ともなれば、必ず王となる。
先代の竜王は青竜で、竜王となってから番と出会い、番が王妃となった。恋愛に溺れる事無く賢王と言われていたが、黒竜バージル様が頭角を現すと

『もう俺が王でなくても大丈夫だろう。黒竜が王になれば竜王国は安泰だ!』

と言って、先代竜王はバージル様に王の座を押し付け───譲位した。

『番と余生を過ごしたかっただけだろう』

と、バージル様は言っていた。
それから、バージル様は守護竜となり、番との繋がりは無くなった。



『トリイ=ユマです』

異世界から召喚されてやって来た少女。その少女は、バージル様にも引けを取らない程の綺麗な黒色を持っていた。その黒色に目を奪われたと同時に、心がざわめいた。それは、私ではなく、主のものだ。

ー彼女は、バージル様の番だったのか?ー

バージル様は気付いていないようで、勿論、人間の彼女が気付く事は無い。異種族の番とは厄介なところもあるから、繋がりが切れていて良かったと言うべきだろうか?


それからのユマ様は、本当に大変だった。元の世界に戻って、平穏に過ごせていれば良いけど──

バージル様は、ユマ様が番だったと言う事には気付いていないようだけど、ユマ様が居なくなってからは違和感を感じているようだった。それも、月日が経つにつれ無くなっていたが、再びユマ様と再会した事で、ユマ様が番だったと気付いたようだった。

ー大丈夫だろうか?ー

と心配したが、バージル様は気付いた事によって、気持ちがスッキリしたようで、ユマ様とレナルド様との仲を穏やかな目で見守っているようだった。
マシロ様に対しては、孫を見るような目をしている。更に、マシロ様が生んだ双子の鷲に対しては、もう目がデレデレしているお祖父ちゃんでしかない。近い将来、“白色と黒色の鷲を背負った黒竜”を目にするかもしれない。






西の側衛キース


俺は、西の守護竜マシロ様の側衛で隼獣人。

俺の主は、“救国の聖女”ユマ様の娘だ。
守護竜として迎え入れた時は、可愛い子竜だった。それが、まだ20代にも関わらず成竜になった。成竜になったマシロ様の白色の鱗はより一層輝いて見えた。そんな威厳たっぷりな白竜マシロ様の野望が───可愛過ぎた。

『成竜になって、カイルス様と側衛オレを背負って飛びたかった』

勿論、自分の命は惜しいから、“初めて”は婚約者のカイルス様に譲った。そして、俺も有難くマシロ様の背中に乗せてもらうと、マシロ様は本当に楽しそうに嬉しそうに飛行していた。そんなマシロ様を見ていると、感動してしまい………泣いた。カイルス様には気付かれていたけど、気付かないふりをしてくれた。




それからは、あっと言う間に月日は流れて、マシロ様に白色と黒色の双子の鷲が生まれた。

「可愛いが過ぎる!!」

因みに、黒色が女の子で白色が男の子だ。
ユマ様とレナルド様は、週末になると泊まり掛けで離宮に来ては孫を可愛がり、何故か、月に一度は竜王陛下も双子に会いにやって来る。まぁ、双子が可愛いから仕方無い。何よりも、マシロ様が毎日幸せそうに笑っている事が嬉しい。

ーこの幸せが、いつまでも続きますようにー






❋❋❋❋❋❋❋❋❋❋


これにて、完結となります。最後迄読んでいただき、ありがとうございました!
(,,ᴗ  ̫ᴗ,,)ꕤ*.゚

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感想 9

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みんなの感想(9件)

たまこ
2025.08.01 たまこ
ネタバレ含む
2025.08.02 みん

たまこ様

ありがとうございます。

誤字報告も、ありがとうございます!
(;๑> <)⁾꜆꜄꜆

カイルス……過去一で、一番名前を間違えたヒーローかもしれません……
=͟͟͞͞( ꒪⌓꒪)

解除
実豆乃 ねこ
ネタバレ含む
2025.07.17 みん

実豆乃 ねこ様

ありがとうございます。

双子の話ができたら、ここか置き場に投稿します。
気長に待っていただければ!!
_φ(゚▽゚*)♪

解除
みきざと瀬璃
ネタバレ含む
2025.07.17 みん

みきざと瀬璃様

ありがとうございます。

カイルスも重かった……w
(((*≧艸≦)

あの魔法使いの旦那様並みかもしれません。
( *¯ ꒳¯*)

解除

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