氷の騎士は、還れなかったモブのリスを何度でも手中に落とす

みん

文字の大きさ
27 / 62

久し振りの

しおりを挟む
*エディオル視点*



「ハルは…この6年の間の記憶の殆どを──失っています。」




その事実を知らされても、俺はあまりショックは受けなかった。何よりも、コトネが目を覚ました事が嬉しかった。今すぐにでも会いに行って、俺の腕の中に閉じ込めてしまいたかったが──それは我慢した。

今のコトネにとって、俺は…認知もされていない存在なのだ。

それでも、記憶を失っていたとしても、コトネがコトネである事には変わりはない。ならば、もう一度コトネを俺に落とすまでだ。どんな事があっても、俺は二度とコトネを手放すつもりも逃がすつもりも無い。



ーそう、もう一度…俺に落とすだけだー









*****


「エディオル様、少し…良いかしら?」

今日の勤めが終わり、ランバルトの執務室を出てノアの元へと向かっていると、ベラトリス殿下に呼び止められた。

「ベラトリス殿下。何でしょうか?」

頭を下げた後用件を訊くと、後ろに控えていたサエラ殿が前に出て来た。

「カルザイン様。良ければ、この花を貰っていただけますか?」

と、サエラ殿が俺に差し出したのは──

「水色のかすみ草……」

「2日程前に綺麗に咲いたのですが、この色が…ハル様の瞳の色とよく似ているなと思いまして。」

ハルの記憶が失くなった事は、ベラトリス殿下とサエラ殿にも伝えられた。「何故、ハル様ばかりが?」と、悲しんでいるベラが可愛くて─と言っていたのはイリスだったな。

サエラ殿が俺に気を使ってくれているんだろう。

「サエラ殿、有難く…頂戴する。」

かすみ草を受け取った後、ベラトリス殿下に礼をしてから再びノアの元へと向かった。





『主、ネロが…ネロが私を呼んでいるようなので、主を邸に送った後、パルヴァンへ向かっても良いでしょうか?明日の登城時間迄には戻って来ますので。』

と、珍しく少し焦ったノアが居た。

「それは勿論良いが…何かあったのか?」

『それが、よく分からないのです。“ぱぱ、きてなの!”と呼び掛けて来てからは…何の音沙汰も無いのです。』

「それは…気になるな。俺もミヤ様に話があったから、今から一緒に行こう。パルヴァン邸の魔法陣を借りに行こう。」


先触れ無く王都のパルヴァン邸に出向いたが、ロンは嫌な顔をする事も無く迎え入れてくれ、魔法陣を使わせてくれた。




そして、辺境地のパルヴァン邸では



「ハルは寝ているからな。いや、そもそも…まだ出会ってないから、会えないのか?」

と、相変わらずなゼン殿の口撃を受けたが、以前とは違い、目は少しだけ優しかった。

ノアは先にネロの居るであろう森の大樹へと行き、俺はまだ起きていると言うミヤ様と少し話をしてから、グレン様に許可をもらって俺も森へと向かった。






「ネージュ殿と…………コトネ?」

大樹の中で眠りに就いていた筈のネージュが、元の大きさで横たわっていて、そのお腹?横腹?にしがみつくようにしてコトネとネロが寝ていた。ノアは、嬉しそうにネージュ殿に寄り添っている。

『騎士か…今回はまた、主を助けてくれてありがとう。それと…また大変な事になったな?』

どうやら、ネージュ殿は全ての事を把握しているようだ。

「ネージュ殿も大変だったんだろう?目覚めて良かったが…身体は大丈夫なのか?」

『あぁ…我は大丈夫だ。ネロには…寂しい思いをさせたようだが…』

そう言うネージュ殿の目はとても優しくて、ネロの頭を鼻先で優しく撫でている。

「ノア、俺の事は気にしなくて良いから、お前も暫くはネージュ殿とネロの側に居てやれ。ネロを…たっぷりと甘やかしてやれ。」

『え?でも……いえ、ありがとうございます。でも、私が必要になったら、いつでもお呼び下さいね。』





「暖かい気候とは言え、コトネをこのまま置いて行くのもなぁ…」

と、未だすやすやと寝ているコトネに視線を向ける。

以前と何も変わらないコトネ。いつでもどこでも一緒に居る事が…コトネに触れる事が当たり前だったのに。

『騎士よ、主を部屋ヘ運んではくれぬか?おそらく…主は朝まで起きないと思う。少し…疲れていたようだった故な。』

ーそれなら…大丈夫か?ー

寝ているコトネの側でしゃがみ、コトネの様子を見る。
安心したような顔ですやすやと眠っている。それから、コトネを起こさないように気を付けながら抱き上げる。

「少し…痩せたな…軽いな……。」

以前も軽かったが、更に軽くなっている。でも、この温もりは変わっていない。

「コトネ……」

今は閉じられているその瞳に、今度俺が映る時は…一体どんな瞳をするのだろうか?

「──ん…」

と、腕の中のコトネが少し身じろぎをした後、俺の胸にスリッと顔を寄せて、寝たままだったが少し笑ったような気がした。

ー相変わらず、くっそ可愛いな!ー

グウ──ッと、思わずキスをしてしまいそうになるのを我慢する。寝ていても、コトネは俺を煽る天才らしい。

「本当に、そろそろコトネとの出会いの場を作ってもらおう。」

そう思いながら、俺はコトネの部屋へと急いだ。



しおりを挟む
感想 67

あなたにおすすめの小説

わたしを嫌う妹の企みで追放されそうになりました。だけど、保護してくれた公爵様から溺愛されて、すごく幸せです。

バナナマヨネーズ
恋愛
山田華火は、妹と共に異世界に召喚されたが、妹の浅はかな企みの所為で追放されそうになる。 そんな華火を救ったのは、若くしてシグルド公爵となったウェインだった。 ウェインに保護された華火だったが、この世界の言葉を一切理解できないでいた。 言葉が分からない華火と、華火に一目で心を奪われたウェインのじりじりするほどゆっくりと進む関係性に、二人の周囲の人間はやきもきするばかり。 この物語は、理不尽に異世界に召喚された少女とその少女を保護した青年の呆れるくらいゆっくりと進む恋の物語である。 3/4 タイトルを変更しました。 旧タイトル「どうして異世界に召喚されたのかがわかりません。だけど、わたしを保護してくれたイケメンが超過保護っぽいことはわかります。」 3/10 翻訳版を公開しました。本編では異世界語で進んでいた会話を日本語表記にしています。なお、翻訳箇所がない話数には、タイトルに 〃 をつけてますので、本編既読の場合は飛ばしてもらって大丈夫です ※小説家になろう様にも掲載しています。

男装獣師と妖獣ノエル ~騎士団で紅一点!? 幼馴染の副隊長が過保護です~

百門一新
恋愛
幼い頃に両親を失ったラビィは、男装の獣師だ。実は、動物と話せる能力を持っている。この能力と、他の人間には見えない『黒大狼のノエル』という友達がいることは秘密だ。 放っておかないしむしろ意識してもらいたいのに幼馴染枠、の彼女を守りたいし溺愛したい副団長のセドリックに頼まれて、彼の想いに気付かないまま、ラビは渋々「少年」として獣師の仕事で騎士団に協力することに。そうしたところ『依頼』は予想外な存在に結び付き――えっ、ノエルは妖獣と呼ばれるモノだった!? 大切にしたすぎてどう手を出していいか分からない幼馴染の副団長とチビ獣師のラブ。 ※「小説家になろう」「ベリーズカフェ」「ノベマ」「カクヨム」にも掲載しています。

氷狼陛下のお茶会と溺愛は比例しない!フェンリル様と会話できるようになったらオプションがついてました!

屋月 トム伽
恋愛
ディティーリア国の末王女のフィリ―ネは、社交なども出させてもらえず、王宮の離れで軟禁同様にひっそりと育っていた。そして、18歳になると大国フェンヴィルム国の陛下に嫁ぐことになった。 どこにいても変わらない。それどころかやっと外に出られるのだと思い、フェンヴィルム国の陛下フェリクスのもとへと行くと、彼はフィリ―ネを「よく来てくれた」と迎え入れてくれた。 そんなフィリ―ネに、フェリクスは毎日一緒にお茶をして欲しいと頼んでくる。 そんなある日フェリクスの幻獣フェンリルに出会う。話相手のいないフィリ―ネはフェンリルと話がしたくて「心を通わせたい」とフェンリルに願う。 望んだとおりフェンリルと言葉が通じるようになったが、フェンリルの幻獣士フェリクスにまで異変が起きてしまい……お互いの心の声が聞こえるようになってしまった。 心の声が聞こえるのは、フェンリル様だけで十分なのですが! ※あらすじは時々書き直します!

【完結】偽物聖女は冷血騎士団長様と白い結婚をしたはずでした。

雨宮羽那
恋愛
 聖女補佐官であるレティノアは、補佐官であるにも関わらず、祈りをささげる日々を送っていた。  というのも、本来聖女であるはずの妹が、役目を放棄して遊び歩いていたからだ。  そんなある日、妹が「真実の愛に気づいたの」と言って恋人と駆け落ちしてしまう。  残されたのは、聖女の役目と――王命によって決められた聖騎士団長様との婚姻!?  レティノアは、妹の代わりとして聖女の立場と聖騎士団長との結婚を押し付けられることに。  相手のクラウスは、「血も涙もない冷血な悪魔」と噂される聖騎士団長。クラウスから「俺はあなたに触れるつもりはない」と言い放たれたレティノアは、「これは白い結婚なのだ」と理解する。  しかし、クラウスの態度は噂とは異なり、レティノアを愛しているようにしか思えなくて……?  これは、今まで妹の代わりの「偽物」として扱われてきた令嬢が「本物」として幸せをつかむ物語。 ◇◇◇◇ お気に入り登録、♡、感想などいただければ、作者が大変喜びます! モチベになるので良ければ応援していただければ嬉しいです♪ ※いつも通りざまぁ要素は中盤以降。 ※完結まで執筆済み ※表紙はAIイラストです ※アルファポリス先行投稿(他投稿サイトにも掲載予定です)

喪女なのに狼さんたちに溺愛されています

和泉
恋愛
もふもふの狼がイケメンなんて反則です! 聖女召喚の儀で異世界に呼ばれたのはOL・大学生・高校生の3人。 ズボンを履いていた大学生のヒナは男だと勘違いされ、説明もないまま城を追い出された。 森で怪我をした子供の狼と出会ったヒナは狼族の国へ。私は喪女なのに狼族の王太子、No.1ホストのような武官、真面目な文官が近づいてくるのはなぜ? ヒナとつがいになりたい狼達の恋愛の行方は?聖女の力で国同士の争いは無くすことができるのか。

若い頃に婚約破棄されたけど、不惑の年になってようやく幸せになれそうです。

長岡更紗
恋愛
侯爵令嬢だったユリアーナは、第一王子のディートフリートと十歳で婚約した。 仲睦まじく過ごしていたある日、父親の死をきっかけにどん底まで落ちたユリアーナは婚約破棄されてしまう。 愛し合う二人は、離れ離れとなってしまったのだった。 ディートフリートを待ち続けるユリアーナ。 ユリアーナを迎えに行こうと奮闘するディートフリート。 二人に巻き込まれてしまった、男装の王弟。 時に笑い、時に泣き、諦めそうになり、奮闘し…… 全ては、愛する人と幸せになるために。 他サイトと重複投稿しています。 全面改稿して投稿中です。

【完結】異世界転移したら騎士団長と相思相愛になりました〜私の恋を父と兄が邪魔してくる〜

伽羅
恋愛
愛莉鈴(アリス)は幼馴染の健斗に片想いをしている。 ある朝、通学中の事故で道が塞がれた。 健斗はサボる口実が出来たと言って愛莉鈴を先に行かせる。 事故車で塞がれた道を電柱と塀の隙間から抜けようとすると妙な違和感が…。 気付いたら、まったく別の世界に佇んでいた。 そんな愛莉鈴を救ってくれた騎士団長を徐々に好きになっていくが、彼には想い人がいた。 やがて愛莉鈴には重大な秘密が判明して…。

【完結】たれ耳うさぎの伯爵令嬢は、王宮魔術師様のお気に入り

楠結衣
恋愛
華やかな卒業パーティーのホール、一人ため息を飲み込むソフィア。 たれ耳うさぎ獣人であり、伯爵家令嬢のソフィアは、学園の噂に悩まされていた。 婚約者のアレックスは、聖女と呼ばれる美少女と婚約をするという。そんな中、見せつけるように、揃いの色のドレスを身につけた聖女がアレックスにエスコートされてやってくる。 しかし、ソフィアがアレックスに対して不満を言うことはなかった。 なぜなら、アレックスが聖女と結婚を誓う魔術を使っているのを偶然見てしまったから。 せめて、婚約破棄される瞬間は、アレックスのお気に入りだったたれ耳が、可愛く見えるように願うソフィア。 「ソフィーの耳は、ふわふわで気持ちいいね」 「ソフィーはどれだけ僕を夢中にさせたいのかな……」 かつて掛けられた甘い言葉の数々が、ソフィアの胸を締め付ける。 執着していたアレックスの真意とは?ソフィアの初恋の行方は?! 見た目に自信のない伯爵令嬢と、伯爵令嬢のたれ耳をこよなく愛する見た目は余裕のある大人、中身はちょっぴり変態な先生兼、王宮魔術師の溺愛ハッピーエンドストーリーです。 *全16話+番外編の予定です *あまあです(ざまあはありません) *2023.2.9ホットランキング4位 ありがとうございます♪

処理中です...