氷の騎士は、還れなかったモブのリスを何度でも手中に落とす

みん

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余話

追憶ーユイー①

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❋本編を整理中、回収しきれていない事に気付きました❋
Σ(๑ㅇㅁㅇ๑)


❋時系列的に、ハルが記憶を取り戻して落ち着いた後で、妊娠する前になります❋









******


「3人だけで出掛けるのは、初めてですね。」
「と言うか、俺はハルと出掛けるの……初めてじゃないかなぁ?」


はい、記憶がスッカリ戻ったハルです。
今日は、ゼンお父さんロンお兄さんと3人だけで、とある場所に向かっています。
私のチートな転移魔法でサクッと移動─しても良かったけど、『折角だから、親子3人で泊まりでゆっくり行って来ては?』と、提案してくれたのはディだった。その心遣いに感謝したのは良いけど……

コトネが居なくなる事に不安があるから、その不安を無くしてからになるけど…』

と、ニッコリ微笑まれた時には──遅かった。記憶を失くしてディを傷付けたのは……私だったし、そんな事を言われたら嫌だとも言えないし、そんなディから逃げられるワケもなく──

何度目かの“騎士の嫁のあるある”を喰らいました。

バートさんによってのは、3日目のお昼過ぎだった。

ーまぁ…それからもディの膝の上の住人だったけどー

アレは、やっぱり恥ずかしいし、全く慣れない。いつかは慣れる日が───来る事はないよね……。やっぱり、ディには手加減を覚えてもらうしかないよね?

「ハル、記憶が戻ってから暫く経つけど、大丈夫か?何か変わった事はないか?」

考え事をしていて黙り込んでしまった私を、お父さんが心配そうに見つめていた。

「全然問題ないです!スッカリ元気だから!」

「なら良いが…何かあったらすぐに言うようにな。」

ーコレだけは、お父さんには相談できないよね…してはいけない案件だよね!?ー

と、心の中でため息を吐きながら、馬車の窓から外の景色を眺める。

私達3人は、今、母─ユイが消息を断った場所へ向かっている。



『───お父さんの気持ちの整理がついたらで良いんだけど…。いつか…お母さん─ユイさんが姿を消したと言う場所に連れて行ってもらえますか?』



と、以前、私がお父さんにお願いしていたから。

その場所で、ユイが亡くなった訳ではないけど、一度行って見てみたい─と思ったから。

ー気持ちに区切りをつける為にも…ー





パルヴァン邸があるのは、隣国との境目で、王都からは一番離れた場所にあるが、母の生家のある場所は真反対の位置、王都寄りにあるそうで、馬車でも3時間程掛かるそうだ。


「ハルから見たユイは、どんな人だった?」
「私の母は───」


いつも笑っていた。

料理は少し苦手で、父の方が得意で、週末の休みは父がご飯を作ってくれて、母は、それをいつも「美味しい!」と、嬉しそうに食べていた。

スポーツ─運動は父よりも母の方が得意なものが多かった。走る事も好きで、父より母の方が足が早かった。今思えば…母がパルヴァンの人間だったからだろう。それに、キレると怖いのも…母だった。父はいつもフワフワ?ニコニコしている感じだった。そんな父がキレたのは、一度だけ。私が誘拐されそうになった時だ。

『どこのどいつがウチの娘を?』

と、完璧に目が据わった母を見て、直ぐに我にかえっていたけど。あの時の母が恐ろしかったのも、パルヴァン故だったんだろう。

「思い出せば思い出す程、母は……パルヴァンの人間だったんだなぁ…って……」

「ユイはユイだったって事だな。」

と、お父さんはいつもより優しい笑顔だ。

「それじゃあ、ハルの性格は父親似かな?絶対、母さんじゃないよね。」

「そうですね。よく、母と祖母から、“ハルはパパのミニチュアバージョンね”って言われてました。」


ーそう言えば、何となく…ゼンさんとお父さんは、雰囲気が似てる気がするけど、それは言わない方が良いよね?ー


馬車に揺られながら、母の事や最近の話をしているうちに、目的地に到着した。





そこは、崖の下に大きな川が流れていて、それを跨ぐように大きな木の橋が掛けられている。
この橋を馬車で渡っている時に橋が壊れて、馬車諸共落下してしまったのだ。

「きっと、だったら死んでいただろう。ハルの世界に転移して良かったんだ。」

お父さんは、自分に言い聞かせるように呟いた。



それから、崖の下に降りて、御者が亡くなっていた場所に花束を手向けた。


そこから少し下流へ行くと、川岸が広い場所があり、そこで、朝からお父さんとお兄さんが作ってくれたお弁当を食べる事にした。



「んー、やっぱりお父さんとお兄さんの作るサンドイッチは美味しい!」

勿論、蒼の邸ウチで出される料理だって美味しいけど。

「そう言ってもらえると、作り甲斐があるよ。でも、俺は、ハルの作ったクッキーが一番好きだよ。」

「お兄さん、ありがとう!クッキーは作って来たから、また後で食べて下さい。」

“お父さん”と“お兄さん”や“旦那様”──

他にも私の周りには、優しい人達が沢山居る。本当に、幸せだな─と思う。

ーお母さん、お父さん、おばあちゃん、私の事は心配しなくて良いからねー

心の中で呟くと、優しい風が私の髪を揺らしながら吹いて行った。





❋後編は、夜に投稿します❋



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