恋愛は見ているだけで十分です

みん

文字の大きさ
40 / 61
第三章ー学園生活ー

スペイシー侯爵家

しおりを挟む
「これは、極秘ではありませんが…ここだけの話でお願いします。」

と、前置きしてからアデル様から聞かされた事は─

聖女が絡んでいた事と、王家が後手に回った事で起こった事と言う事で、アドリーヌは完璧な被害者。婚約解消を受け入れてもらえず精神的に病み、貴族令嬢としても生きてはいけない─と言う本人の望みを叶える為に当時の国王とスペイシー侯爵が“除籍した”ように見せ掛けたそうだ。

ーお父様……ー

知らなかった。私は、本当に除籍されて平民になったとばかり思っていた。

「その、アドリーヌ様の婚約者だった人は…自殺した後は……」

「分かりません。その元婚約者の父親─侯爵だったそうですが、爵位を返上したそうです。その後の事や名前などは一切記録に残っていないので、私達も全く分からないのです。」

私も、彼の記憶だけがスッポリと抜けていて、名前すら思い出せない。唯一覚えているのが、最期に見た時の彼の冷たい瞳だけ。でも、その瞳の色もモノクロで、彼の本当の瞳の色すら思い出せないのだ。思い出す必要もないだろうし、思い出したくもないけど。

貴族名鑑を見ても何も反応しなかったのは、そう言う事だったのか。


「今のルードモント子爵も、“聖女の生家”とありますが、100年前の聖女と婿入りした第二王子の子は子爵を引き継がず遠縁の者が引き継いだそうなので、実際のところは、100年前の聖女とも、王族とも関わりが無いと言うのが事実です。」

聖女の生家で王族の血が入ったと言うのに子爵のままなのが不思議だったけど…なるほど。まぁ、その子供も、第二王子の子ではなかったのだから、仕方無い事だろう。

「我がスペイシー家も、嫡子であったアドリーヌ様が亡くなってしまったので、遠縁の方が後を継ぎました。」

アドリーヌわたしが…嫡子のままだったとは。
最後に両親に会った時、私はそれなりに元気になっていたから、“いずれはスペイシー家に戻って来れるだろう”と、思っていたのかもしれない。

100年経った今、アドリーヌわたしは本当に愛されていたんだと、至るところで思い知らされる。本当に…素晴らしい親だったんだ。

「それで……今の聖女様─シェイラ様は、また、動きそうなんでしょうか?」

「それは分からないけど、動かない事はないんじゃないかと思ってます。昨日と今日は特に何もなかったけど…どうも、彼女は苛立ってるようなところがあったからね。自分が掛けて、掛かっていた筈の魔法が解けている事が分かっているようだし…。多分、何もしない事はないと思ってます。」

だから、常に彼女には意識を向けています─と、ダレルさんの言う通り、私もシェイラがこのままおとなしくなるとは思っていない。

「そうですか…。なら、私達も、もしもの時の為に、色々と準備をしておきます。魔具に関して何かあれば、何でも言って下さい。兄─スペイシー侯爵当主からも、こちらの事を第一優先で動くようにと言われていますから。」

「ありがとうございます。」

ー本当に心強い限りだー

ダレルさんやモンテルアーノ様が居て……スペイシー家も居るのだ。同じ事を繰り返させたりは、絶対にさせない。その為には───





色々と話を詰めた後、3人揃って地下フロアから出て、図書館から出ると、こちらに向かって歩いてくる────モンテルアーノ様が視界に入って来た。

「今日は行けなくてすまなかった。今から帰るのか?」

「モンテルアーノ様、お疲れ様です。丁度、今、帰るところです。」

モンテルアーノ様とダレルさんが話しているのを、2、3歩離れた所からアデル様と並んで見ている。

「ナディアさんは、ルシエント邸で過ごされているんですよね?」

「あ、はい。王都に知り合いなんて居ませんから、ルシエント様の助手をしている間は、ルシエント邸でお世話になる事になってるんです。」

ールシエント様本人は、殆ど帰って来ないけどー

「スペイシーに帰る途中にあるから、一緒に─と思っていたのだけど…モンテルアーノ様がいらっしゃったのなら、必要ないかしら?」

「え?モンテルアーノ様と…何か関係ありますか?」

「え?あの…モンテルアーノ様とナディアさんは、恋人同士なんですよね?」

「なっ!?」

キョトン─とした顔で私を見つめるアデル様。何だろう…アドリーヌ昔の自分に見つめられているようで、何とも不思議な気持ちになってしまう。

「恋人では…ありません。そもそも、私はただの平民ですよ?」

「100年前に、アドリーヌ様の代わりに後を継いだ方ですが…男爵家の三男の方だったんです。その当時の当主が、“爵位は関係なく、能力があれば良い”と。そしてその方は、今ナディアさん達が身に着けている魔具の基礎を創り上げた方なんです。」

男爵の三男が……侯爵家に──

「その彼を迎え入れた時は、一族内からも批判を受けたようですが……“爵位が良ければ有能、善人とは限らない”と、全て突っぱねたそうです。そして、その彼もまた、期待に応え、当主を引き継ぐ頃には、誰にも反対される事はなかったそうです。」 

そう言うと、アデル様は一呼吸置いてから私に微笑んだ。

「爵位なんてものは、アクセサリーのようなモノと…私は思っています。平民だから─と、自分の価値を下げてはいけません。それに……身分差と言うものは、恋愛においては……良いスパイスにしかなりませんわ。」

今度はニッコリ微笑むアデル様。

ーあ、コレ、“恋人じゃない事を信じてません。隠さなくても良いんですよ?”的な笑顔だー

本当に、噂を通り越して……真実になってしまっているようだ。





勘弁して欲しい────










❋エールを頂き、ありがとうございます❋
٩(。˃ ᵕ ˂ )و♪

しおりを挟む
感想 37

あなたにおすすめの小説

そろそろ前世は忘れませんか。旦那様?

氷雨そら
恋愛
 結婚式で私のベールをめくった瞬間、旦那様は固まった。たぶん、旦那様は記憶を取り戻してしまったのだ。前世の私の名前を呼んでしまったのがその証拠。  そしておそらく旦那様は理解した。  私が前世にこっぴどく裏切った旦那様の幼馴染だってこと。  ――――でも、それだって理由はある。  前世、旦那様は15歳のあの日、魔力の才能を開花した。そして私が開花したのは、相手の魔力を奪う魔眼だった。  しかも、その魔眼を今世まで持ち越しで受け継いでしまっている。 「どれだけ俺を弄んだら気が済むの」とか「悪い女」という癖に、旦那様は私を離してくれない。  そして二人で眠った次の朝から、なぜかかつての幼馴染のように、冷酷だった旦那様は豹変した。私を溺愛する人間へと。  お願い旦那様。もう前世のことは忘れてください!  かつての幼馴染は、今度こそ絶対幸せになる。そんな幼馴染推しによる幼馴染推しのための物語。  小説家になろうにも掲載しています。

【長編版】この戦いが終わったら一緒になろうと約束していた勇者は、私の目の前で皇女様との結婚を選んだ

・めぐめぐ・
恋愛
神官アウラは、勇者で幼馴染であるダグと将来を誓い合った仲だったが、彼は魔王討伐の褒美としてイリス皇女との結婚を打診され、それをアウラの目の前で快諾する。 アウラと交わした結婚の約束は、神聖魔法の使い手である彼女を魔王討伐パーティーに引き入れるためにダグがついた嘘だったのだ。 『お前みたいな、ヤれば魔法を使えなくなる女となんて、誰が結婚するんだよ。神聖魔法を使うことしか取り柄のない役立たずのくせに』 そう書かれた手紙によって捨てらたアウラ。 傷心する彼女に、同じパーティー仲間の盾役マーヴィが、自分の故郷にやってこないかと声をかける。 アウラは心の傷を癒すため、マーヴィとともに彼の故郷へと向かうのだった。 捨てられた主人公がパーティー仲間の盾役と幸せになる、ちょいざまぁありの恋愛ファンタジー長編版。 --注意-- こちらは、以前アップした同タイトル短編作品の長編版です。 一部設定が変更になっていますが、短編版の文章を流用してる部分が多分にあります。 二人の関わりを短編版よりも増しましたので(当社比)、ご興味あれば是非♪ ※色々とガバガバです。頭空っぽにしてお読みください。 ※力があれば平民が皇帝になれるような世界観です。

偽聖女として私を処刑したこの世界を救おうと思うはずがなくて

奏千歌
恋愛
【とある大陸の話①:月と星の大陸】 ※ヒロインがアンハッピーエンドです。  痛めつけられた足がもつれて、前には進まない。  爪を剥がされた足に、力など入るはずもなく、その足取りは重い。  執行官は、苛立たしげに私の首に繋がれた縄を引いた。  だから前のめりに倒れても、後ろ手に拘束されているから、手で庇うこともできずに、処刑台の床板に顔を打ち付けるだけだ。  ドッと、群衆が笑い声を上げ、それが地鳴りのように響いていた。  広場を埋め尽くす、人。  ギラギラとした視線をこちらに向けて、惨たらしく殺される私を待ち望んでいる。  この中には、誰も、私の死を嘆く者はいない。  そして、高みの見物を決め込むかのような、貴族達。  わずかに視線を上に向けると、城のテラスから私を見下ろす王太子。  国王夫妻もいるけど、王太子の隣には、王太子妃となったあの人はいない。  今日は、二人の婚姻の日だったはず。  婚姻の禍を祓う為に、私の処刑が今日になったと聞かされた。  王太子と彼女の最も幸せな日が、私が死ぬ日であり、この大陸に破滅が決定づけられる日だ。 『ごめんなさい』  歓声をあげたはずの群衆の声が掻き消え、誰かの声が聞こえた気がした。  無機質で無感情な斧が無慈悲に振り下ろされ、私の首が落とされた時、大きく地面が揺れた。

【本編完結・番外編追記】「俺は2番目に好きな女と結婚するんだ」と婚約者が言っていたので、1番好きな女性と結婚させてあげることにしました。

As-me.com
恋愛
ある日、偶然に「俺は2番目に好きな女と結婚するんだ」とお友達に楽しそうに宣言する婚約者を見つけてしまいました。 例え2番目でもちゃんと愛しているから結婚にはなんの問題も無いとおっしゃりますが……そんな婚約者様はとんでもない問題児でした。 愛も無い、信頼も無い、領地にメリットも無い。そんな無い無い尽くしの婚約者様と結婚しても幸せになれる気がしません。 ねぇ、婚約者様。私は他の女性を愛するあなたと結婚なんてしたくありませんわ。絶対婚約破棄します! あなたはあなたで、1番好きな人と結婚してくださいな。 番外編追記しました。 スピンオフ作品「幼なじみの年下王太子は取り扱い注意!」は、番外編のその後の話です。大人になったルゥナの話です。こちらもよろしくお願いします! ※この作品は『「俺は2番目に好きな女と結婚するんだ」と婚約者が言っていたので、1番好きな女性と結婚させてあげることにしました。 』のリメイク版です。内容はほぼ一緒ですが、細かい設定などを書き直してあります。 *元作品は都合により削除致しました。

はずれの聖女

おこめ
恋愛
この国に二人いる聖女。 一人は見目麗しく誰にでも優しいとされるリーア、もう一人は地味な容姿のせいで影で『はずれ』と呼ばれているシルク。 シルクは一部の人達から蔑まれており、軽く扱われている。 『はずれ』のシルクにも優しく接してくれる騎士団長のアーノルドにシルクは心を奪われており、日常で共に過ごせる時間を満喫していた。 だがある日、アーノルドに想い人がいると知り…… しかもその相手がもう一人の聖女であるリーアだと知りショックを受ける最中、更に心を傷付ける事態に見舞われる。 なんやかんやでさらっとハッピーエンドです。

聖女は友人に任せて、出戻りの私は新しい生活を始めます

あみにあ
恋愛
私の婚約者は第二王子のクリストファー。 腐れ縁で恋愛感情なんてないのに、両親に勝手に決められたの。 お互い納得できなくて、婚約破棄できる方法を探してた。 うんうんと頭を悩ませた結果、 この世界に稀にやってくる異世界の聖女を呼び出す事だった。 聖女がやってくるのは不定期で、こちらから召喚させた例はない。 だけど私は婚約が決まったあの日から探し続けてようやく見つけた。 早速呼び出してみようと聖堂へいったら、なんと私が異世界へ生まれ変わってしまったのだった。 表紙イラスト:San+様(Twitterアカウント@San_plus_) ――――――――――――――――――――――――― ※以前投稿しておりました[聖女の私と異世界の聖女様]の連載版となります。 ※連載版を投稿するにあたり、アルファポリス様の規約に従い、短編は削除しておりますのでご了承下さい。 ※基本21時更新(50話完結)

捨てられた私が聖女だったようですね 今さら婚約を申し込まれても、お断りです

木嶋隆太
恋愛
聖女の力を持つ人間は、その凄まじい魔法の力で国の繁栄の手助けを行う。その聖女には、聖女候補の中から一人だけが選ばれる。私もそんな聖女候補だったが、唯一のスラム出身だったため、婚約関係にあった王子にもたいそう嫌われていた。他の聖女候補にいじめられながらも、必死に生き抜いた。そして、聖女の儀式の日。王子がもっとも愛していた女、王子目線で最有力候補だったジャネットは聖女じゃなかった。そして、聖女になったのは私だった。聖女の力を手に入れた私はこれまでの聖女同様国のために……働くわけがないでしょう! 今さら、優しくしたって無駄。私はこの聖女の力で、自由に生きるんだから!

婚約破棄された私は、処刑台へ送られるそうです

秋月乃衣
恋愛
ある日システィーナは婚約者であるイデオンの王子クロードから、王宮敷地内に存在する聖堂へと呼び出される。 そこで聖女への非道な行いを咎められ、婚約破棄を言い渡された挙句投獄されることとなる。 いわれの無い罪を否定する機会すら与えられず、寒く冷たい牢の中で断頭台に登るその時を待つシスティーナだったが── 他サイト様でも掲載しております。

処理中です...