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❋引き続き、レイモンド視点となります❋
「わたし…ばっかり酷いめに……」
「まだ分からないのか?お前は、自分の事しか考えていないからだ。自分の地位を守る為に平気で他者を見下し陥れて、悪い事をしても反省しないような奴に、誰が寄り添うと言うんだ?でも…良かったじゃないか。元の世界に戻れるなら、そこにはお前に寄り添ってくれる者達が居るのだろう?」
「……そう…よ……日本にもどったら私だって……その前に……ケガをなんとかしてよ!このままだと──」
「レイモンド、10分経った。それと…メグが…」
「メグ?」
約束の10分が経ったようで、アラスターが入って来たが、そこにはメグの姿もあった。
「めぐみ!あん…たっ………」
メグの姿を見て叫び出したユラだが、アラスターの視線を受けると口を噤んだ。
「少しは学んだようで……良かった。元の世界に戻れたとして…口が利けなければ大変だろうからね」
どうやら、あの頬にある傷と関係があるようだ。一体何があったかは分からないが、静かにしてくれるなら何でも良い。
「私の願いで還すから、お別れを言って、ちゃんと見届けようと思って……良いですか?」
「勿論。メグの思う通りにすれば良いよ」
「ありがとうございます」
頭を下げて礼をするメグ。聖女が王太子に頭を下げる必要も無いのだが、メグはよく頭を下げてお礼を言ったり謝ったりする。本当に、メグとユラは同じ世界の同じ国の人間なんだろうか?
「結星、今から結星を日本に還す予定なんだけど…正直、ちゃんと戻れるかどうかは…私にも分からないの」
「ちゃん…と…還れるように…しなさいよ!」
「するつもりではいるけど……でも……例え何か問題があったとしても、ワザとじゃないから赦してくれるよね?結星が…そう言ってたから」
「なっ!めぐみのっくせに!」
「それだけ怒れるなら、大丈夫だね。結星…今迄ありがとう。日本に還っても……元気でね……さよなら……」
メグが最後の挨拶を口にすると、ユラの足下に真っ白な魔法陣が現れた。ユラは、未だ頬と左足からは出血が続いている。魔法陣が展開して、元の世界に還れると分かったのか、苦痛に耐えていただけの顔に安堵の色が見えた。
「こんな…世界……もう…二度とっごめんよ!」
ユラがそう叫んだ後、魔法陣と共にユラの姿は消えて無くなった。
「最後まで、ユラはユラだったな……」
「日本に還れたら良いけど……あの怪我も、すぐに治療できると良いけど…」
「「…………」」
メグは知らない。対魔獣用の短剣に塗布されている毒の解毒剤は、この世界にしかないだろうと言う事を。その毒は、毒を体内で作る、とある魔獣の血で、解毒剤もその魔獣の血を元に作られる。メグ達の世界には、魔獣どころか魔法が無い。と言う事は──ユラが無事に元の世界に還れて治療を受けれたとしても、その毒からは逃れられないと言う事だ。
この毒は、体内で血が流れている限り、その血と共に体中を巡り続ける。常に毒に侵されている状態になり、体中が痺れて、時には激痛にも襲われたりもする。
アラスターが付けたであろう頬の傷が、魔法によって付いた傷なら、魔力耐性の無いユラであれば、傷痕は残ってしまうだろう。自慢の顔に傷痕があり、体は更に自由になる事がないユラに、一体どれぐらいの人間が残ってくれるのか───
そこまで分かっていながらも、私はユラの怪我を治癒する事はしなかった。したくなかったが正しい。
「兎に角、メグには申し訳無いが、ユラがこの世界から居なくなってくれて良かったと思っている。これで…アラールの負担が減って、アラスターの機嫌が良くなるだろうから」
「ふふっ……レイモンド様は…素直な方なんですね…そうですね…その通り…ですけど…やっぱり、私は少しだけ…寂しいです」
笑いながらも少し涙を浮かべているメグ。寂しく思う事は仕方無い事だ。ユラに救われた事も事実だったろうし、長い間一緒に居たのだから。
「メグ、暫くはゆっくりした方が良い。リューゴ商会にはアラスターから伝えてもらって、メグはこのままユーグレイシアに帰って来ると良いよ」
「はい…そうします。ヴェルティル様、すみませんが、宜しくお願いします」
「俺も、アラール殿下を連れて戻って来ます。それでは、ここで失礼します」
アラスターは、私とメグを置いたまま、急ぎ足で地下牢から出て行った。
「ヴェルティル様も、早くユーグレイシアに帰って来たいんですね」
「だろうね。今は、シーフォールスに居る意味が無いからね」
私はメグと2人で地下牢から出て王城へと戻ったが、その間、ユラの話をする事はなかった。
❋次話が短めで話が続いているので、もう1話更新します❋
「わたし…ばっかり酷いめに……」
「まだ分からないのか?お前は、自分の事しか考えていないからだ。自分の地位を守る為に平気で他者を見下し陥れて、悪い事をしても反省しないような奴に、誰が寄り添うと言うんだ?でも…良かったじゃないか。元の世界に戻れるなら、そこにはお前に寄り添ってくれる者達が居るのだろう?」
「……そう…よ……日本にもどったら私だって……その前に……ケガをなんとかしてよ!このままだと──」
「レイモンド、10分経った。それと…メグが…」
「メグ?」
約束の10分が経ったようで、アラスターが入って来たが、そこにはメグの姿もあった。
「めぐみ!あん…たっ………」
メグの姿を見て叫び出したユラだが、アラスターの視線を受けると口を噤んだ。
「少しは学んだようで……良かった。元の世界に戻れたとして…口が利けなければ大変だろうからね」
どうやら、あの頬にある傷と関係があるようだ。一体何があったかは分からないが、静かにしてくれるなら何でも良い。
「私の願いで還すから、お別れを言って、ちゃんと見届けようと思って……良いですか?」
「勿論。メグの思う通りにすれば良いよ」
「ありがとうございます」
頭を下げて礼をするメグ。聖女が王太子に頭を下げる必要も無いのだが、メグはよく頭を下げてお礼を言ったり謝ったりする。本当に、メグとユラは同じ世界の同じ国の人間なんだろうか?
「結星、今から結星を日本に還す予定なんだけど…正直、ちゃんと戻れるかどうかは…私にも分からないの」
「ちゃん…と…還れるように…しなさいよ!」
「するつもりではいるけど……でも……例え何か問題があったとしても、ワザとじゃないから赦してくれるよね?結星が…そう言ってたから」
「なっ!めぐみのっくせに!」
「それだけ怒れるなら、大丈夫だね。結星…今迄ありがとう。日本に還っても……元気でね……さよなら……」
メグが最後の挨拶を口にすると、ユラの足下に真っ白な魔法陣が現れた。ユラは、未だ頬と左足からは出血が続いている。魔法陣が展開して、元の世界に還れると分かったのか、苦痛に耐えていただけの顔に安堵の色が見えた。
「こんな…世界……もう…二度とっごめんよ!」
ユラがそう叫んだ後、魔法陣と共にユラの姿は消えて無くなった。
「最後まで、ユラはユラだったな……」
「日本に還れたら良いけど……あの怪我も、すぐに治療できると良いけど…」
「「…………」」
メグは知らない。対魔獣用の短剣に塗布されている毒の解毒剤は、この世界にしかないだろうと言う事を。その毒は、毒を体内で作る、とある魔獣の血で、解毒剤もその魔獣の血を元に作られる。メグ達の世界には、魔獣どころか魔法が無い。と言う事は──ユラが無事に元の世界に還れて治療を受けれたとしても、その毒からは逃れられないと言う事だ。
この毒は、体内で血が流れている限り、その血と共に体中を巡り続ける。常に毒に侵されている状態になり、体中が痺れて、時には激痛にも襲われたりもする。
アラスターが付けたであろう頬の傷が、魔法によって付いた傷なら、魔力耐性の無いユラであれば、傷痕は残ってしまうだろう。自慢の顔に傷痕があり、体は更に自由になる事がないユラに、一体どれぐらいの人間が残ってくれるのか───
そこまで分かっていながらも、私はユラの怪我を治癒する事はしなかった。したくなかったが正しい。
「兎に角、メグには申し訳無いが、ユラがこの世界から居なくなってくれて良かったと思っている。これで…アラールの負担が減って、アラスターの機嫌が良くなるだろうから」
「ふふっ……レイモンド様は…素直な方なんですね…そうですね…その通り…ですけど…やっぱり、私は少しだけ…寂しいです」
笑いながらも少し涙を浮かべているメグ。寂しく思う事は仕方無い事だ。ユラに救われた事も事実だったろうし、長い間一緒に居たのだから。
「メグ、暫くはゆっくりした方が良い。リューゴ商会にはアラスターから伝えてもらって、メグはこのままユーグレイシアに帰って来ると良いよ」
「はい…そうします。ヴェルティル様、すみませんが、宜しくお願いします」
「俺も、アラール殿下を連れて戻って来ます。それでは、ここで失礼します」
アラスターは、私とメグを置いたまま、急ぎ足で地下牢から出て行った。
「ヴェルティル様も、早くユーグレイシアに帰って来たいんですね」
「だろうね。今は、シーフォールスに居る意味が無いからね」
私はメグと2人で地下牢から出て王城へと戻ったが、その間、ユラの話をする事はなかった。
❋次話が短めで話が続いているので、もう1話更新します❋
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