【三章完結しました】チートは無いけどAIがある!社畜OLの異世界立身出世録

星 見人

文字の大きさ
5 / 179

第5話 【売れるパンを作れ!社畜式商品開発大作戦!】

しおりを挟む

 翌朝、、
 ミサトは昨日の晩餐の余韻に浸る間もなく、村の広場に立っていた。

「リリィ、次のミッションは“パン改革”だよね?」

『はい。ミサト。その通りです。現在の村のパンは、栄養価はあるものの、硬度と味に大きな課題を抱えています。改善すれば新たな商品価値が生まれます』

「よしっ!それなら“商品開発ミーティング”始めよう」

◇◇◇

 村の奥様方が集まった小さな会議(広場の木陰)が始まった。

「お姉さん、パンを変えるって、どうするの?」
「うちの作り方は、代々伝わってるものだし……」

 みんな戸惑っている。無理もない。

『はい。ミサト。まずは“失敗が許される小規模テスト”を提案しましょう』

「みんな、いきなり全部変えようって話じゃないよ。
少しだけ、“試しに作ってみる枠”を作らせてくれない?」

「試しに?」

「そう。市場調査枠ってやつ!」

 わかるような、わからないような顔をする村人たち。
 でも、“失敗しても大丈夫”と伝わったのか、やがてコクリと頷いてくれた。

「よし、それじゃあ村長の家の裏で“パン試作チーム”立ち上げるよ!」

◇◇◇
 
 そして、、
 ミサトはエルナと村の奥様方と一緒に“パンの実験”を始めた。

「まずね、水分量を増やします。……え、こんなに使うの!?ってぐらい」
「ええぇ~贅沢だぁ……」

『はい。ミサト。彼女たちは“貴重な水”を使うことに心理的抵抗があります。ここで“効率論”を説明しましょう』

「でも、考えてみて。硬くて売れないパンを100個作るより、美味しくて売れるパンを10個作った方が、利益出るよね?」

「そ、そうか……!」

 ミサトの“社畜式コスパ理論”が、村人たちの意識を揺さぶる。

「次に、村で取れる蜂蜜を混ぜます。これで甘さとしっとり感が出るから」
「お、おお……!なんか生地がふわふわしてきた!」

 手探りでの試作が続く中、次第に“それらしいパン”が出来上がり始めた。

「焼き上げは温度調整が命。だから、焼きすぎ厳禁!」

「や、焼きすぎ……?」

『はい。ミサト。彼女たちは“焼けば焼くほど保存が効く”という固定観念に縛られているようです』

「美味しさを優先しよう!売れるパンは味が命だよ!」
 パンを焼く香ばしい匂いが、村の空気に広がっていく。

 とは言ったものの、、、
 最初からうまくいくわけがなかった。

「……これ、水分多くしたら、べちゃべちゃになっちゃった……」
 第一試作、、、失敗。

「蜂蜜入れすぎて、焼いたら焦げ臭くなった……」
 第二試作、、、失敗。

「火力落としたら、今度は生焼けだぁ……」
 第三試作、、、失敗。

「……ミサトさん、本当にパン屋さんだったんですか?」

「えっ?いや、……私OLだったから!パンは食べる専門だったんですけど…。 でも!料理動画は好きで観てたよ…」

 村人たちの視線がちょっと冷たくなり始める。
 さすがに焦りを感じたミサトだったが、リリィは冷静だった。

『はい。ミサト。ここで問題点を整理しましょう。失敗の原因は、火加減の調整が感覚頼りであること、材料比率が場当たり的であること。
 社畜ならここで伝家の宝刀、“PDCAサイクル”を回すべきです』

「そうだ、“行き当たりばったり”じゃダメだ……!
 計画、実行、評価、改善だぁぁぁ!」

 ミサトはメモ帳を取り出し、材料の比率、焼き時間、火加減、全てを記録し始める。

「よし、次はデータ取ってから挑戦しよう。PDCA、ガンガン回すぞ!」

◇◇◇

 翌日、、

「エルナ、この火加減で7分、蜂蜜は小さじ2杯、水分は生地に対して35%……この条件でいこう!」

 データに基づいた第4試作。
 焼き上がったパンは、、見た目こそ地味だが、指で押すと“ふわっ”と沈む。

「エルナ、試食お願い!」
 エルナが一口かじる。

「ふうわぁぁぁ、……ふわふわしてる!甘い!柔らかい!美味しい!」

 奥様方も次々にかじり、表情がパッと明るくなる。

「なにこれ、ほんとにうちの麦かい!?」
「いや~、びっくりしたぁ!」

 数度の失敗と試行錯誤を乗り越えた末の、確かな成功だった。

「おっしっ!これなら……街でも売れるかも……!」
『はい。ミサト。ミサトの“社畜式商品開発”は成功しました』
「ふふん、これが社畜8年分の経験値ってやつよ☆」

『はい。ミサト。PDCAサイクル、成功です。データを活用した改善プロセスが機能しました』

「あーはっはっ!これが社畜式商品開発だ!」
 ミサトは心の底からガッツポーズした。

◇◇◇

 夕方、村長の元へ、、

「村長、村の新商品が完成しました。“ふわもち蜂蜜パン”です」

「おぉ……これが……パン……だと……?」
 村長も一口かじり、感動のあまり無言で涙ぐむ。

「これをトーレル商会に“試作品”として卸します。村の新たな収益源になりますよ」

「お主、本当に村を変えようとしておるのだな……!」

『はい。ミサト。チャンスです。感動の波に乗せて、次の予算申請を出すチャンスです』
「オッケ、リリィ」

「なので村長、この“試作枠”の予算、次からもう少しだけ増やしてもらえません?」
「うむっ!よかろう!この村を、ワシらの手で輝かせようぞ!」

 交渉成立である。

◇◇◇

 夜、、
 ボロ家の粗末なテーブルに並ぶ“ふわもち蜂蜜パン”と麦酒を眺めながら、ミサトはしみじみ呟く。

「何度失敗しても、諦めなければ必ず成果は出るんだよ……ブラック企業で学んだことが、ここ、異世界で役立つとは思わなかったけどさ」
『はい。ミサト。失敗から学ぶ姿勢、それがミサトの最大の武器です』
「うん。まだまだ行ける!次は“売り方”でしょ?」

 異世界社畜OLの挑戦は、まだまだ加速する。


          続
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう

お餅ミトコンドリア
ファンタジー
 パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。  だが、全くの無名。  彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。  若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。  弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。  独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。  が、ある日。 「お久しぶりです、師匠!」  絶世の美少女が家を訪れた。  彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。 「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」  精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。 「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」  これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。 (※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。 もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです! 何卒宜しくお願いいたします!)

落ちこぼれ職人、万能スキルでギルド最強になります!

たまごころ
ファンタジー
ギルド最弱の鍛冶師レオンは、仲間に「役立たず」と笑われて追放された。 途方に暮れる彼の前に現れたのは、伝説の鍛冶書と、しゃべる鉄塊(?)。 鍛冶・錬金・料理・魔道具――あらゆるクラフトスキルを吸収する《創精鍛造》を極め、万能職人へと覚醒! 素材採取から戦闘まで、すべて自作で挑む“ものづくり異世界成り上がり譚”が今、始まる。 裏切った元仲間? 今さら後悔しても遅いぞ!

異世界にアバターで転移?させられましたが私は異世界を満喫します

そう
ファンタジー
ナノハは気がつくとファーナシスタというゲームのアバターで森の中にいた。 そこからナノハの自由気ままな冒険が始まる。

神様転生~うどんを食べてスローライフをしつつ、領地を豊かにしようとする話、の筈だったのですけれど~

於田縫紀
ファンタジー
大西彩花(香川県出身、享年29歳、独身)は転生直後、維持神を名乗る存在から、いきなり土地神を命じられた。目の前は砂浜と海。反対側は枯れたような色の草原と、所々にぽつんと高い山、そしてずっと向こうにも山。神の権能『全知』によると、この地を豊かにして人や動物を呼び込まなければ、私という土地神は消えてしまうらしい。  現状は乾燥の為、樹木も生えない状態で、あるのは草原と小動物位。私の土地神としての挑戦が、今始まる!  の前に、まずは衣食住を何とかしないと。衣はどうにでもなるらしいから、まずは食、次に住を。食べ物と言うと、やっぱり元うどん県人としては…… (カクヨムと小説家になろうにも、投稿しています) (イラストにあるピンクの化物? が何かは、お話が進めば、そのうち……)

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

現世にダンジョンができたので冒険者になった。

盾乃あに
ファンタジー
忠野健人は帰り道に狼を倒してしまう。『レベルアップ』なにそれ?そして周りはモンスターだらけでなんとか倒して行く。

異世界へ行って帰って来た

バルサック
ファンタジー
ダンジョンの出現した日本で、じいさんの形見となった指輪で異世界へ行ってしまった。 そして帰って来た。2つの世界を往来できる力で様々な体験をする神須勇だった。

竜の国のカイラ~前世は、精霊王の愛し子だったんですが、異世界に転生して聖女の騎士になりました~

トモモト ヨシユキ
ファンタジー
辺境で暮らす孤児のカイラは、人には見えないものが見えるために悪魔つき(カイラ)と呼ばれている。 同じ日に拾われた孤児の美少女ルイーズといつも比較されていた。 16歳のとき、神見の儀で炎の神の守護を持つと言われたルイーズに比べて、なんの神の守護も持たないカイラは、ますます肩身が狭くなる。 そんなある日、魔物の住む森に使いに出されたカイラは、魔物の群れに教われている人々に遭遇する。 カイラは、命がけで人々を助けるが重傷を負う。 死に瀕してカイラは、自分が前世で異世界の精霊王の姫であったことを思い出す。 エブリスタにも掲載しています。

処理中です...