【三章完結しました】チートは無いけどAIがある!社畜OLの異世界立身出世録

星 見人

文字の大きさ
72 / 179

第20話 【秘薬と泉、独占資源の価値】

しおりを挟む

 女王アエリアの宣言から数刻後、、。
 ミサトたちは、大樹の宮殿の奥にある小部屋へと案内されていた。壁一面に絡みつく蔦の隙間から淡い光が差し込み、空気は薬草の香りに満ちている。

 そこで差し出されたのは、小さな木箱だった。
 蓋を開けると、翡翠のように輝く葉が丁寧に収められている。

「これは……?」
 カイルが思わず身を乗り出す。

 女王の侍女が淡々と告げた。
「《聖樹葉》。我らが森にて百年に一度しか摘めぬ葉です。煎じれば万病に効く薬となり、擦れば傷の癒えを早める膏薬となるでしょう」

「ひ、百年に一度!?」
 ゴブ三郎が声を裏返らせた。
「ボス、これ絶対とんでもねぇ値で売れるやつだろ!」
「いやいやいや! 売り物にするって軽々しく言うなって!」
 ミサトは慌てて制した。
「女王様からの分け前なんだから、まずはちゃんと管理と用途を考えないと……!」

 リュシアがくすりと笑う。
「母上は“分け与える”と言ったでしょう? ただし、湯ノ花の里に限ってよ。だから、流通に出すにしても、他国に横流しされないよう気をつけてくださいね」

「なるほど……つまりこれは、独占資源か」
 リリィの落ち着いた声が脳裏に響く。
『はい。ミサト。帝王学における“資源独占”は、国家経営の要です。希少価値のある物を握り、信頼できる相手と限定的に分け合う。これにより市場での発言力を得られるのです』

「独占資源……かぁ…」
 ミサトは呟き、胃を押さえながら笑う。
「うわぁ……なんか急に商会どころか国家の戦略っぽい話になってきた……」

 さらにエルフの侍女は、青く輝く水の入った瓶を差し出した。
「こちらは《清泉水》。女王の御座の根元から湧き出る泉の水です。エルフはこれを薬湯として使い、身体を癒しております」

「薬湯……ってことは、温泉みたいな?」
 ミサトの言葉に、リュシアが頷いた。
「ええ。ただし、我らは薬としてしか用いてこなかったわ。けれど、ミサトさんたちが営んでいる“温泉宿”でなら、新しい使い方ができるんじゃないかしら」

 その一言に、ミサトの目が輝いた。
「薬効温泉……! それだよ! 普通のお客さんは“癒やし”として入れるし、病気や怪我の人には“治療”の意味合いで広められる……!」
『はい、ミサト。帝王学的にも、これは“付加価値の創造”です。既存の文化を輸入し、自分たちの強みと融合させることで、唯一無二の商品を作り出せます』

「唯一無二……うんうん、いい響きだね!」
 ミサトは拳をぎゅっと握った。

◇◇◇

 その夜、湯ノ花の面々は、与えられた客間で早速会議を開いた。
 卓上に並ぶのは、《聖樹葉》と《清泉水》のサンプル。
 みな一様に目を輝かせている。

「で、ボス。これをどう売り出すんだ?」
 ゴブ次郎が腕を組む。
「薬屋に卸せば即大金だろうけど……正直、オレらの懐にゃ危なすぎる代物だぜ」

「う~ん、、そうなんだよねぇ……」
 ミサトは頬をかきながら苦笑した。
「もしさこれを闇市に流したら、確実に狙われる。それに湯ノ花で売ってるって噂になれば盗賊とか貴族とか、ろくでもない連中が寄ってくるよね~」

「ははは、そうだな!じゃあやっぱり、温泉と一緒に使うのが一番だな。清泉水は温泉に混ぜて、《薬の湯》的な!」
 カイルが使い道を口を開く。
「温泉宿を中心にすれば、供給をコントロールできる。聖樹葉は少量を膏薬に加工し、宿に来た者だけに提供する。清泉水は温泉とブレンドして“薬湯”にする。これなら全部湯ノ花の懐に入るだろ?」

「なるほど……! それなら、独占資源を“観光資源”に転換できる!」
 ミサトは勢い込んで立ち上がった。
「一部は信頼できる商人に卸して、医薬品としての価値を広めてもいいけど……中心はやっぱり湯ノ花の里の温泉! そうすれば他国は勝手に手を出せないし、“行かなきゃ体験できない”強みになる!」

『はい、ミサト。帝王学的に言えば、それは“資源の囲い込みによる求心力”です。人は価値を求めて集まります。集まった人々が経済を回し、さらに国力となる。理想的な循環ですね』

「……おお、なんか私、めっちゃ国のトップっぽいことしてる……!」
 ミサトは思わず顔を覆った。
「きゃぁぁぁ~!私なんて社畜OLだったはずなのに、胃に穴を空けながら異世界国家運営って……キャリアプラン完全に狂ってるんですけど!?」

「ははっ、それでこそミサトだな!」
 カイルが微笑み、酒杯を掲げた。
「女王が認めたのも納得だ。だが……くれぐれも、気を抜かない事だな。これほどの資源を独占すれば、必ず狙う者が現れる」
「うっ……胃がまた痛くなるようなこと言うのやめてよ……!」

 そんなやり取りに、リュシアは穏やかに笑みを浮かべていた。
「でも……大丈夫。ミサトさんなら、きっと守れるわ。私も手伝うから」

 その言葉に、ミサトは一瞬だけ戸惑い、、そして照れくさそうに頷いた。
「よしっ!問題も解決したし、湯ノ花の里に帰りますか!!」ミサトのその言葉にみんなが頷いた。

◇◇◇

 こうして、湯ノ花の里は《聖樹葉》と《清泉水》という二つの独占資源を得た。
 それはまだ小さな村に過ぎなかった共同体を、一つの“地域国家”へと押し上げる大きな一歩となる。

 だが同時に、、その独占資源の存在は、外の世界に新たな火種を生むことにもなるのだった。

◇◇◇

 ミサト達を見送った女王アエリアはお土産で貰った温泉まんじゅうを一口かじると、瞳を丸くした。
「はぁぁぁぁん……なんと、優しい甘さ…手が止まらぬ…」
 次の瞬間には、もう二つ目を手にしている。ふんわりとした皮が溶け、蜜のような餡が舌を包むたび、女王の表情は子どものように綻んだ。侍女たちが慌てて盆を差し出す間もなく、女王は夢中でまんじゅうを頬張り続けた、、、。


          続
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう

お餅ミトコンドリア
ファンタジー
 パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。  だが、全くの無名。  彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。  若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。  弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。  独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。  が、ある日。 「お久しぶりです、師匠!」  絶世の美少女が家を訪れた。  彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。 「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」  精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。 「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」  これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。 (※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。 もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです! 何卒宜しくお願いいたします!)

落ちこぼれ職人、万能スキルでギルド最強になります!

たまごころ
ファンタジー
ギルド最弱の鍛冶師レオンは、仲間に「役立たず」と笑われて追放された。 途方に暮れる彼の前に現れたのは、伝説の鍛冶書と、しゃべる鉄塊(?)。 鍛冶・錬金・料理・魔道具――あらゆるクラフトスキルを吸収する《創精鍛造》を極め、万能職人へと覚醒! 素材採取から戦闘まで、すべて自作で挑む“ものづくり異世界成り上がり譚”が今、始まる。 裏切った元仲間? 今さら後悔しても遅いぞ!

異世界にアバターで転移?させられましたが私は異世界を満喫します

そう
ファンタジー
ナノハは気がつくとファーナシスタというゲームのアバターで森の中にいた。 そこからナノハの自由気ままな冒険が始まる。

神様転生~うどんを食べてスローライフをしつつ、領地を豊かにしようとする話、の筈だったのですけれど~

於田縫紀
ファンタジー
大西彩花(香川県出身、享年29歳、独身)は転生直後、維持神を名乗る存在から、いきなり土地神を命じられた。目の前は砂浜と海。反対側は枯れたような色の草原と、所々にぽつんと高い山、そしてずっと向こうにも山。神の権能『全知』によると、この地を豊かにして人や動物を呼び込まなければ、私という土地神は消えてしまうらしい。  現状は乾燥の為、樹木も生えない状態で、あるのは草原と小動物位。私の土地神としての挑戦が、今始まる!  の前に、まずは衣食住を何とかしないと。衣はどうにでもなるらしいから、まずは食、次に住を。食べ物と言うと、やっぱり元うどん県人としては…… (カクヨムと小説家になろうにも、投稿しています) (イラストにあるピンクの化物? が何かは、お話が進めば、そのうち……)

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

現世にダンジョンができたので冒険者になった。

盾乃あに
ファンタジー
忠野健人は帰り道に狼を倒してしまう。『レベルアップ』なにそれ?そして周りはモンスターだらけでなんとか倒して行く。

異世界へ行って帰って来た

バルサック
ファンタジー
ダンジョンの出現した日本で、じいさんの形見となった指輪で異世界へ行ってしまった。 そして帰って来た。2つの世界を往来できる力で様々な体験をする神須勇だった。

竜の国のカイラ~前世は、精霊王の愛し子だったんですが、異世界に転生して聖女の騎士になりました~

トモモト ヨシユキ
ファンタジー
辺境で暮らす孤児のカイラは、人には見えないものが見えるために悪魔つき(カイラ)と呼ばれている。 同じ日に拾われた孤児の美少女ルイーズといつも比較されていた。 16歳のとき、神見の儀で炎の神の守護を持つと言われたルイーズに比べて、なんの神の守護も持たないカイラは、ますます肩身が狭くなる。 そんなある日、魔物の住む森に使いに出されたカイラは、魔物の群れに教われている人々に遭遇する。 カイラは、命がけで人々を助けるが重傷を負う。 死に瀕してカイラは、自分が前世で異世界の精霊王の姫であったことを思い出す。 エブリスタにも掲載しています。

処理中です...