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第44話 【援軍の旗、湯ノ花に集う】
しおりを挟む玉座の間には、また国王の怒声が響き渡っていた。
「あの兵隊長カリオスの裏切り、リュウコクの行方不明……余をどれだけ愚弄するか! だがよい。我が軍があれば十分だ! 小さな村一つ、我が手で塵に帰してくれよう!」
臣下が恐る恐る口を挟む。
「し、しかし陛下……。湯ノ花は城を築いたと……兵も侮れぬかと……。ゴブリンまで飼い慣らしてると言う話しです……。」
「黙れッ!!!口答えするなっっ!!」
国王は玉座を叩き割らんばかりに立ち上がり、顔を朱に染めて怒鳴り散らす。
「余を誰と心得る! このラインハルト王国の王だぞ!! あの村ごとき、余の足元に跪かせてみせるわ!」
怒気を孕んだその声に、将軍や兵たちは凍りつきながらも命令に従うしかなかった。
こうして、国の正規軍がついに湯ノ花に向け進軍を始めようとした。
◇◇◇
一方そのころ、高台から軍の動きを見下ろす二つの影。リュウコクとカリオスだった。
「くっくっく……動き出したな。まるで怒った猪だ」
カリオスが口角を吊り上げる。
「ははっ、予想通りだよ。父上は己の影すら見失った。あの軍勢は、勝っても負けても国を削る」
リュウコクは涼しい顔で言い放つ。
「で、俺たちはどう動く?」
「簡単さ。余波に備えるだけでいい。湯ノ花も、父上も、、勝手に疲弊していく。その時が僕らの出番だ」
松明の赤い光に照らされながら、二人の目は怪しく輝いていた。
◇◇◇
湯ノ花の里では、不安な空気が漂っていた。
「国の軍が来るだと……?」「ど、どうすりゃいいんだ……」
広場で村人たちがざわめく中、ミサトは頭を抱える。
「うわぁ……これってもう詰んでない? こっち、温泉まんじゅうと笑顔しか武器ないんだけど!」
『はい、ミサト。歴史上、農村が大軍に対抗する場合、必ず“外部との連携”が鍵になります』
「リリィ、そんな冷静に言われても……。外部って誰よ?!」
まさにその時だった。
「おーい! 湯ノ花のみんなぁー!」
山道を駆け下りてきたのは、見覚えのある顔、、
カッサ村の面々だった。
領主代理、カルネが、汗を拭いながら叫ぶ。
「ミサト、聞いたぞ! 国が攻めてくるんだってな!湯ノ花が落ちれば次はどうせ俺たちだ! 一緒に踏ん張らせてくれ!」
背後には荷車が連なり、米袋や干し肉が山積みされている。
「兵糧持ってきたぞー!」「女衆も炊き出しで手伝うからな!」
村人たちがわっと沸き立ち、ミサトは思わず目を潤ませた。
◇◇◇
さらに別の方向から声があがる。
「待ちなされ! シルヴァン村も遅れてはならん!」
穏やかな口調と共に現れたのは、あのシルヴァン村の長老だった。
「昔から湯ノ花には助けられてきた。今こそ恩を返す時よ」
後ろには、村の若者たちが槍や木弓を手に並んでいる。
「俺らも戦うぜ!」
「畑ばかり耕してきたけど、鍬だって武器になる!」
その姿に、湯ノ花の空気が一気に熱を帯びる。
◇◇◇
だが援軍はそれだけでは終わらなかった。
里の門前に、ひらりと舞うような影が現れる。
「うふふ、お久しぶりです、ミサトさん」
透き通るような声。緑銀の髪を靡かせるその主は、エルフの姫リュシアだった。
「りゅ、リュシア!? なんでここに!?」
「ミサトさんのピンチと聞き、お母様から助けに行く許しをいただきました。湯ノ花を支えるために行ってこいとお母様の弓隊を率いて助けに参りました。あとお土産で温泉まんじゅうを買って来てと…。お母様あれから温泉まんじゅうが大好きで……」
その背後には、森から現れた精鋭の弓兵たち。
全員が同じ調子で弓を掲げ、静かな威容を放っていた。
「エルフの弓だぁ……」「本物の森の戦士だぞ……!」
人々は息を呑み、畏敬と歓喜の声が同時に上がった。
リュシアは一歩進み出て、ミサトに深く頭を下げる。
「ふふ、本当は暴力は嫌いなのですが…戦となれば話しは別です。微力ながらどうか私たちにも戦わせてください」
その言葉に、ミサトは胸をいっぱいにしながらも叫んだ。
「ありがとう……ありがとうみんな! でもっ! できれば……できればみんな死なないでねぇぇ!!」
場が一瞬しんとした後、爆笑が巻き起こる。
「そりゃそうだ!」「死んじまったらまんじゅう食えねぇもんな!」
みんなの士気は天井を突き抜けた。
「俺たちは負けねぇ!」「湯ノ花を守るぞ!」
声が広場に響き、熱狂は祭りのようだった。
『はい、ミサト。これを“士気の昂揚”と言います。ただし……』
「ただし……?」
『はい。ミサト。兵力差は依然として絶望的です』
「やっぱりぃぃぃ! ここで冷水かけちゃう感じ!?リリィ、空気読んでよぉぉぉぉ!」
◇◇◇
みんなの熱狂の渦が続く中、ミサトはこっそりリリィに小声でぼやいた。
「ねぇリリィ、私……“ブラックを避けてホワイトで生きる”って最初に言ってなかったっけ??戦って……完全パワハラブラックだよね……?」
『はい。ミサト。記録によれば、第一話目から一貫してそう言ってました』
「第一話目とか言うなぁぁ! 読者目線やめて!今は生死がかかってんだから!!2回目のだけど…」
『はい、ミサト。こういう時は“歴史は人を選ぶ”とか“我が覇道を止めてみろ”とか言うとカッコつきますよ。それが有効的です』
「えっ? そう言う事言っちゃう選ばれる人って偉人とか英雄でしょ? 私ただの“異世界転生元社畜OL”なんですけど!?」
『はい。ミサト。ご安心を。ただのではありません。ブラック企業を8年耐えたミサトの実績は英雄級です』
「ははは、、褒められてる気がしないんですけどぉぉ!」
ミサトの喚きに、近くのゴブ次郎が「うぉぉぉん!!ボスが一番勇ましいぞ!!皆も続け!!うぉぉぉぉん!!」と勘違いして吠える。
その声に村人たちがさらに盛り上がり、気付けば里全体が士気MAXになっていた。
笑いと熱狂の渦の中、戦の足音は着実に近づいていた。
続
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