【三章完結しました】チートは無いけどAIがある!社畜OLの異世界立身出世録

星 見人

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第27話 【私の番だ】

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 朝靄がまだ残る天守閣の一室。窓から差し込む光が、まだ眠たげに揺れるカーテンを透かしていた。
「ふあぁぁ~……おっはよ~、ミサト!」
 掛け布団を蹴飛ばしながら伸びをしたのは、昨夜ミサトの部屋に泊まったマリーだった。
 豪快に笑いながら髪を結い直し、窓の外をのぞき込む。
「へぇ~、ほんっとに変わったな、この里。昨日見て歩いたけど、子供らが笑ってて、ゴブリンがお巡りやってんだぜ? すげぇな!ミサト」

 ミサトは寝ぼけ眼をこすりながら、のそのそと起き上がった。
「ん~……まぁ、なんとか形にはなってきたかなぁとは思ってんだけど……ふぉぉぉん…てか、、今何時??」
『はい。ミサト。現在時刻、午前5時40分になります。形になって来たって、、あなたが“形にしてきた”んですよ。自覚なさすぎです』
 隣の机に置かれた小型水晶から、リリィの声が響く。

「5時~!? 海賊、起きるの早っ! おはよリリィ。マリーおはよ。 あ、そうだマリー、お泊まりしちゃってアルガスは大丈夫なの?」
 問いかけると、マリーの顔がパッと明るくなった。
「順調、順調! リリィが残してったマニュアル通りに、みんな動いてくれてる。バレンティオの野郎なんかさ、あいつ毎朝“善行ノート”つけさせられてるし、結構真面目に働いてんだぜ」
 ミサトは思わず吹き出した。
「えぇっ!? あのダメ国王が? ……善行ノートって、小学生の反省文じゃん!あははっ!」

『はい。ミサト。けれど習慣化こそ更生の第一歩です。怠け癖には“日々のルーチン”が効果的なんです』
「うぅ……リリィにそう言われると妙に納得しちゃうのが悔しい……」
 ミサトがうなだれると、マリーはふふっと笑い、少し声を落とした。
「それに……妹のフィオナ。あの子もすっかり元気になったんだよ!」
「えっ!ほんと!?よかった~♪」
「おう! 顔色も良くなって、今じゃ庭駆け回ってる。医者も驚いてたさ!今度連れて来るよ」
 
 マリーが柔らかく笑う。
「それに最近じゃ、宮殿の中庭で花を植えて、それを見に来た商人や海賊に“水やり手伝って”って頼むんだ。最初はみんな戸惑ってたけど、結局断れなくてな。気づけば偉そうにしてた悪党連中まで膝ついて一緒に土いじりしてるよ!あははっ!」

 その光景を思い出したのか、マリーは肩を震わせて笑った。
「“花が咲くとみんなが笑うね”って、あの子が言うんだよ。そしたら兵士も町の人も、不思議と真面目に働き出した。今じゃ『フィオナに笑ってもらいたいから』って理由で動いてるやつまでいるんだぜ。もちろんあのバレンティオもな!あはは!」

「あははっ!バレンティオまで??……すごい。小さな子供の一言で、人がこんなに変わるんだ」
 ミサトは感嘆を漏らし、リリィは静かに補足する。
『はい。ミサト。純粋な存在は、時にどんな権力よりも大きな影響を与えるのです。意外とミサトも色んな人に影響を与えてるかもしれませんね』

 ミサトは胸を撫でおろし、心からの笑みを浮かべた。
「いい影響ならいいけど……。 でも本当よかったぁ……マリーが頑張ったからだよ。ほんとによかったねぇ~♪」
 その言葉に、リリィが間髪入れず突っ込む。
『はい。ミサト。あなたのあの時の支援と交渉がなければエルフの薬も流通せず、環境改善も進みませんでした。つまり、功労者はあなたです』
「ちょ、ちょっと待って!? なんでそこで私に矢印が向くの!? 私は“よかったね~”って言っただけでしょ!?」
『はい。ミサト。ですが“影響力を自覚しない指導者”は、後世の歴史家に一番困られるタイプです』
「やめろぉぉ! 歴史に私の名前残すとかやめてぇぇぇ!!」

 バタバタ暴れるミサトを、マリーが腹を抱えて笑う。
「ははっ! やっぱお前らの会話はおもしれぇなっ!!あははっ!!」
「だ~か~ら! 笑ってんじゃないってばぁぁ!!こっちはいつも真剣っ!」

 そんな騒ぎの最中、重い扉がこんこんと叩かれた。
「ミサト、、今、少し入っても大丈夫か?」
 真剣な声音。カイルだ。
「んっ?おはよー♪大丈夫だよ!何かあった??」
 扉が開き、彼がゆっくりと歩み寄る。その表情には笑みがなく、空気が一変した。
「悪い知らせだ。……東の国に外交に赴いたリュウコク王が、牢に入れられたらしい」

「……えっ?、、なんで?、、」
 ミサトの体から一気に血の気が引く。

「な、なんで? だってあいつ、口も立つし、誰とでも渡り合えるはずなのに……」
「詳細は不明。ただ、現地で権力者の機嫌を損ねたのか、もしくは策に嵌められたのか……。情報が湯ノ花に来ていたザイールの商人の噂話みたいなものだから詳しくはわからない……」

 ミサトは拳をぎゅっと握りしめた。
「ふぅ~! 詳細は分からないけど…あいつピンチって事だよね……。あいつってさ、、いつもなんだかんだ助けてくれたんだよ。……だから、今度は“私の番”だよね!」

『はい。ミサト。三国志にも似た事例があります。関羽が捕らえられたとき、劉備は決して見捨てなかった。理由は一つ“関羽の忠義を信じていたから”です。あなたがリュウコクを助けるのは、その信義に報いる行為です』

 リリィの言葉に、ミサトの瞳がさらに強く輝く。
「……そうか。今回あいつは私にとっての“関羽”かもしれないな」

 横でマリーがにやりと笑った。
「んっ?行くの? んじゃ、あたしも行くかな? 面白そうじゃん☆東の砂漠の国! 行ってみたかったんだよね~」
「えっ!? 一緒に来てくれるの!?でもアルガスは?」
 思わず声が裏返る。
「当たり前だろ! あたしの親友が行くのに、指くわえて見てられるかよ!国はフィオナとリリィのマニュアルとバレンティオがいるから何とかなるだろ!あははっ!」
 マリーは腕を組んで得意げに言い放つ。

 カイルが静かに問いかけた。
「ミサト。兵を集めるか?」
 だがミサトは首を横に振る。
「ううん。そんなことしたら大事になる。また戦争なんてまっぴらごめん。……リュウコク助けたら、ちゃんとすぐ帰って来るよ!」

 少し息を吸い、皆を見渡す。
「だから、、カイル、あなたたちはみんなの湯ノ花を守って待ってて!必ず帰るからさ☆」

 真剣で、どこか楽しげな笑み。
 その決意が、朝の光とともに部屋を照らしていた。


          続
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