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新しい日常
しおりを挟む翌朝、森の空気は澄み渡り、鳥のさえずりが聞こえていた。紬が家の外に出ると、父親が森の中を慎重に見回しながら歩いている姿が目に入った。
「おはようございます!」紬が手を振ると、父親も微笑みながら会釈を返した。
「おはようございます。昨日は本当にありがとうございました。息子もだいぶ元気になりました。」
「よかったです。今日は少し森を案内しましょうか?」
「それは助かります。ここに何かお役に立てることがあれば、ぜひやらせてください。」
「もちろんです!それじゃあ、みんなで行きましょう!」
家族全員で森を歩くことになり、最初に訪れたのは家庭菜園だった。
「すごい……こんなにたくさん育ててるんですか?」母親は驚いた様子で畑を見つめた。
「はい。これでも最初は全然うまくいかなかったんですけど、妖精たちに手伝ってもらったり、工夫を重ねて何とかここまで育てられるようになりました。」
「妖精……?」母親が不思議そうに首をかしげたその時、ルミがひょっこり現れた。
「こんにちは!新しい人たちだね!」
「えっ、これが妖精……!」家族全員が驚きで声を上げる。
「可愛いでしょ?」紬は笑顔でルミを紹介した。「こっちが光の妖精のルミ。他にも水のアクア、火のフレアがいるんですよ。」
「初めて見ました……なんて綺麗なんだろう。」母親は目を輝かせていた。
「ルミたちと協力して畑仕事をすると楽しいですよ。もしよかったら、お手伝いお願いできますか?」
「もちろん!こんな素敵な場所で役に立てるなら、ぜひ!」
その日の午後、父親は菜園の拡張作業を手伝い始めた。ライルが作った簡易な農具を使いながら、慣れない手つきで畝を作る。
「ふう……なかなか大変ですね。でも、こうやって土に触れるのは久しぶりで楽しいです。」
「いいですね、土いじりが楽しくなるなんて。ライルが作った道具、使いやすいですか?」紬が尋ねると、父親は笑顔で頷いた。
「ええ、助かります。こういう作業は慣れてくると癖になりそうです。」
一方で、母親はセイラと一緒に森の川辺で採集をしていた。セイラが川の中を泳ぎながら、薬草や食材になりそうなものを次々と見つけていく。
「こんなにたくさんの薬草が……現実の町では見たこともないものばかりです。」
「ここでは普通に手に入りますよ。」セイラは得意げに笑う。「でも、使い方はちゃんと知らないと危険だから、私が一緒に教えますね。」
「ありがとうございます!すごく頼りになります。」
一週間が経つ頃には、家族全員が森での生活に馴染んでいた。父親は菜園や水車の補修作業を担当し、母親は薬草や果物を使った料理や保存食作りに腕を振るうようになった。そして、元気を取り戻した男の子は、妖精たちと遊びながら簡単な仕事を手伝うようになった。
「これでこの家族もすっかり森の一員だね。」ライルは嬉しそうに言った。「この森に人が増えていくのを見るのは、なんだか楽しいな。」
「うん、みんなが少しずつ役割を見つけてくれるのが嬉しいよ。」紬は微笑みながら言った。「ここが本当に『家』になってきた感じがするね。」
その夜、家族は紬や妖精たちと一緒に夕食を囲んだ。母親が作った保存食が並び、紬はそれを口に運んで感激した表情を浮かべた。
「これ、すごくおいしい……!私じゃ絶対作れなかったです!」
「紬さんのおかげで、こんな素敵な材料が手に入ったからですよ。」母親は笑顔で答えた。「ここでなら、家族みんなが幸せに暮らせる気がします。」
紬はその言葉を聞き、心の中で決意を新たにした。自分の作りたい場所は、人々が安心して過ごせる家であり、希望を持てる未来そのものだと。
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