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かけはし
しおりを挟む商人たちが去ったあとも、森には重たい空気が残っていた。紬は居間のテーブルでルミ、セイラ、フレアの妖精たちとライル、オルドを集めて相談を始めた。
「金で解決、なんて簡単に言ってたけど……そんな人がまた来たら、森が壊れちゃうかも。」紬は肩を落として呟いた。
「やれやれ、金儲けのことしか頭にない輩が来るとはね。」オルドは大きなリュックを背負ったまま椅子に座り、ため息をついた。「あいつらのやり方には俺も賛成できないな。」
「でも、森を閉じてしまうのも難しいよね。」ライルが頭を掻きながら言う。「掟を守れる人だけって言っても、どうやってそれを伝えるかが問題だ。」
「掟があること自体は良いけど、それを無視して押し入ろうとする人たちもいるよね。」ルミが光を揺らしながら言った。「森の守りをもっと強くする必要があるかも。」
「森を守る……」紬は考え込んだ。
その夜、紬は自宅の庭に立ち、夜空を見上げていた。満天の星が森全体を照らし出している。
「私は、どうすればいいんだろう……」
その時、不意に知恵の木の声が響いた。
「紬よ、悩んでいるのか。」
「うん。森を守りたいけど、外の人たちと敵対したくはないの。」紬は木の根元に座り込み、素直な気持ちを吐き出した。「森を壊す人たちから、この場所をどうやって守ればいいのかな?」
知恵の木はゆっくりと言葉を紡いだ。「森を守る方法は、一つではない。強く拒絶するだけでは、森は閉ざされたままだ。外と繋がる橋を架けることで、森の価値を理解する者を増やすことも一つの道である。」
「橋を架ける……」紬はその言葉を反芻した。
「掟を破る者は、森が拒む。だが、掟を尊重し、森と共に生きようとする者を迎え入れることを恐れてはならない。」
紬は頷いた。「ありがとう、知恵の木さん。私、やってみる。」
翌朝、紬は早速行動に出た。オルドとライルを呼び、森と外の町を繋ぐ「共存のルール」を作ることを提案した。
「ルール?」ライルが目を丸くする。
「うん、掟を分かりやすくして、森に来る人に事前に伝えられるようにするの。例えば、森の資源を乱獲しないこととか、住人たちの生活を尊重することとか。」紬は熱心に話す。「そうすれば、森を守りたい私たちの気持ちをもっと分かってもらえると思うんだ。」
「なるほどな。」オルドが腕を組んで考え込む。「確かに、具体的なルールがあれば、商人たちも勝手なことはしづらくなるかもしれない。」
「でも、それをどうやって広めるの?」ライルが尋ねると、紬は小さく微笑んだ。「それは、オルドさんに協力してもらおうかなって思ってるの。」
「俺に?」オルドは驚きつつも、すぐにニヤリと笑った。「なるほど、行商人を通じて情報を広めるってわけか。いいだろう、協力してやるよ!」
数日後、紬たちは「森の掟と共存のルール」をまとめた木製の看板を作り、森の入口に設置した。オルドは町へ戻り、ルールを人々に説明するためのチラシを配布した。
その中には、森の掟や資源を守る重要性だけでなく、森で作られる商品がどのようにして生まれているかの物語も添えられていた。紬の考えたアイデアは、単なる「禁止事項」ではなく、森の魅力を伝える方法としても機能し始めていた。
「これで、少しは安心できるかな。」紬は看板を見上げながら微笑んだ。
「これだけじゃないぜ。」ライルが肩を叩いた。「あとは俺たちがしっかり守っていけばいいだけだ。」
ルミたち妖精も賛同するように光を点滅させた。「私たちも手伝うよ!」
こうして、森を守りながら外の世界と繋がっていくための第一歩が踏み出された。
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