13 / 75
森の橋を渡る者たち
しおりを挟むその日、朝早くから森の入口付近で妖精たちがざわめいていた。光を揺らしながら飛び回るルミが、紬の家に急いで飛び込んでくる。
「紬!紬!森の入口にたくさんの人が来てるよ!」
「えっ?」紬はハーブティーを淹れていた手を止めた。「たくさんの人って……どれくらい?」
「10人くらい!ドワーフも獣人もいるみたい!」
驚いた紬は急いでライルとオルドを呼び、入口まで向かった。そこには、まさに妖精が言った通りの光景が広がっていた。
頑丈そうな体格で短躯のドワーフたち、動物の耳や尻尾を持つ獣人たち――彼らは皆、疲れ切った様子で橋の前に集まっていた。
「こんにちは!」紬が橋のこちら側から声をかけると、先頭にいたドワーフの男性が驚いたように振り返った。
「おお、君がこの森の管理人か?」ドワーフの男性は大きな斧を背負っていたが、どこか穏やかな目をしていた。
「そういうわけじゃないけど、この森で暮らしてる紬だよ。」紬は少し緊張しながらも微笑んだ。「みんな、どうしてここに?」
「俺たちは、町から追い出されて行き場をなくしていたんだ。」男性は真剣な表情で答えた。「町の人間たちは、俺たちを異質な存在として疎んじていた。ここに来れば、新しい生活ができるって聞いたんだ。」
その言葉に、オルドが小さく息をついた。「ああ、そうか……俺の話を聞いて来たのか。」
「オルドさんが?」紬が驚いて振り向くと、オルドは少し申し訳なさそうに笑った。「悪いな。森での暮らしを自慢したら、こんなことになっちまった。」
「いいよ。森は広いし、みんなが掟を守ってくれるなら大歓迎だよ!」紬はすぐに明るく答えた。その言葉に、橋の向こうのドワーフと獣人たちは安堵の表情を浮かべた。
「ありがとう……」先頭のドワーフが頭を下げた。「俺はドルン。これからよろしく頼む。」
「私はリュカ!」耳の長い獣人の少女が元気に手を挙げた。「森でどんな仕事をすればいいの?」
「えっと、まずはみんなでお家を作ろうか!」紬は笑顔で答えた。
個性豊かな新たな住人たち
新たに加わった10人はそれぞれ個性が強く、紬たちの生活を賑やかにしてくれた。
• ドルン(ドワーフの長)
頼れるリーダー格で、無口ながらも周囲をよく見て行動する職人気質。金属加工や鍛冶が得意で、森の資源を活かして便利な道具を次々と作り出す。
• リュカ(獣人の少女)
快活で人懐っこい性格。動物と心を通わせる力を持ち、森の動物たちと協力して食材の採集や森の見回りを担当する。
• バルト(ドワーフの戦士)
大柄な体格で、力仕事を一手に引き受ける頼れる存在。見た目は怖いが、実は裁縫が趣味で森の住人たちの衣服を直してくれる。
• フィン(獣人の青年)
控えめな性格だが、森の中を走る速さは誰にも負けない。情報伝達や森の警備に貢献する。
• ガリック(ドワーフの年長者)
森の伝説や外の世界の知識に詳しく、子どもたちに物語を語ることが好き。森の歴史に関するアドバイザー的存在になる。
• ミア(獣人の女性)
料理が得意で、森で採れる食材を使った新しいレシピを考案するのが趣味。紬と一緒に料理を作りながら、森の住人たちの胃袋を支える。
ほかにも、手先の器用なドワーフたちや、森での探索が得意な獣人たちが加わり、森の生活は一気に賑やかになった。
新しい家と森の発展
知恵の木の協力を得て、住人たちは自分たちの家を作り始めた。樹木と共存する家や地下に掘られた頑丈な住居、木の上に作られた隠れ家的な住処――それぞれの性格や特技を活かした家々が森の中に次々と出来上がっていく。
「なんだか、森が町みたいになってきたね!」紬は完成した家々を眺めながら、嬉しそうに言った。
「町っていうより、家族だな。」ライルが笑いながら肩をすくめた。「みんなで力を合わせれば、もっと良くなるさ。」
315
あなたにおすすめの小説
『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?
釈 余白(しやく)
ファンタジー
毒親の父が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い、残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。
その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。
最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。
連載時、HOT 1位ありがとうございました!
その他、多数投稿しています。
こちらもよろしくお願いします!
https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394
精霊さんと一緒にスローライフ ~異世界でも現代知識とチートな精霊さんがいれば安心です~
舞
ファンタジー
かわいい精霊さんと送る、スローライフ。
異世界に送り込まれたおっさんは、精霊さんと手を取り、スローライフをおくる。
夢は優しい国づくり。
『くに、つくりますか?』
『あめのぬぼこ、ぐるぐる』
『みぎまわりか、ひだりまわりか。それがもんだいなの』
いや、それはもう過ぎてますから。
神による異世界転生〜転生した私の異世界ライフ〜
シュガーコクーン
ファンタジー
女神のうっかりで死んでしまったOLが一人。そのOLは、女神によって幼女に戻って異世界転生させてもらうことに。
その幼女の新たな名前はリティア。リティアの繰り広げる異世界ファンタジーが今始まる!
「こんな話をいれて欲しい!」そんな要望も是非下さい!出来る限り書きたいと思います。
素人のつたない作品ですが、よければリティアの異世界ライフをお楽しみ下さい╰(*´︶`*)╯
旧題「神による異世界転生〜転生幼女の異世界ライフ〜」
現在、小説家になろうでこの作品のリメイクを連載しています!そちらも是非覗いてみてください。
スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
料理スキルで完璧な料理が作れるようになったから、異世界を満喫します
黒木 楓
恋愛
隣の部屋の住人というだけで、女子高生2人が行った異世界転移の儀式に私、アカネは巻き込まれてしまう。
どうやら儀式は成功したみたいで、女子高生2人は聖女や賢者といったスキルを手に入れたらしい。
巻き込まれた私のスキルは「料理」スキルだけど、それは手順を省略して完璧な料理が作れる凄いスキルだった。
転生者で1人だけ立場が悪かった私は、こき使われることを恐れてスキルの力を隠しながら過ごしていた。
そうしていたら「お前は不要だ」と言われて城から追い出されたけど――こうなったらもう、異世界を満喫するしかないでしょう。
辺境のスローライフを満喫したいのに、料理が絶品すぎて冷酷騎士団長に囲い込まれました
腐ったバナナ
恋愛
異世界に転移した元会社員のミサキは、現代の調味料と調理技術というチート能力を駆使し、辺境の森で誰にも邪魔されない静かなスローライフを送ることを目指していた。
しかし、彼女の作る絶品の料理の香りは、辺境を守る冷酷な「鉄血」騎士団長ガイウスを引き寄せてしまった。
異世界転生したので森の中で静かに暮らしたい
ボナペティ鈴木
ファンタジー
異世界に転生することになったが勇者や賢者、チート能力なんて必要ない。
強靭な肉体さえあれば生きていくことができるはず。
ただただ森の中で静かに暮らしていきたい。
10歳で記憶喪失になったけど、チート従魔たちと異世界ライフを楽しみます(リメイク版)
犬社護
ファンタジー
10歳の咲耶(さや)は家族とのキャンプ旅行で就寝中、豪雨の影響で発生した土石流に巻き込まれてしまう。
意識が浮上して目覚めると、そこは森の中。
彼女は10歳の見知らぬ少女となっており、その子の記憶も喪失していたことで、自分が異世界に転生していることにも気づかず、何故深い森の中にいるのかもわからないまま途方に暮れてしまう。
そんな状況の中、森で知り合った冒険者ベイツと霊鳥ルウリと出会ったことで、彼女は徐々に自分の置かれている状況を把握していく。持ち前の明るくてのほほんとしたマイペースな性格もあって、咲耶は前世の知識を駆使して、徐々に異世界にも慣れていくのだが、そんな彼女に転機が訪れる。それ以降、これまで不明だった咲耶自身の力も解放され、様々な人々や精霊、魔物たちと出会い愛されていく。
これは、ちょっぴり天然な《咲耶》とチート従魔たちとのまったり異世界物語。
○○○
旧版を基に再編集しています。
第二章(16話付近)以降、完全オリジナルとなります。
旧版に関しては、8月1日に削除予定なのでご注意ください。
この作品は、ノベルアップ+にも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる